◇◇◇
やむなくトイレで軽く自慰行為をして、身体が少し鎮まった真昼は、保健室に向かった。
四十代半ばほどの女性養護教諭に許可を取り、ベッドに横たわる。
保健室のベッドに横たわる真昼は天井を見つめていた。
シーツの感触が身体の火照りを和らげてくれている気がする。
養護教諭が、暫く席を外すと聞いた真昼は、早速……
トイレでは不完全燃焼だった真昼は、はしたないと思いつつ、下腹部に手を伸ばす。
ショーツに潜りこんだ手の甲は、べったりと蜜が貼り付いてしまい、その惨状は考えたくない。
右手の指は、人差し指と薬指で陰部を開き、中指を送り込む。
熱くヌルヌルしているため、中指はするすると入り込み、全て埋まる。
「あぁっ……ようやく……」
少し充足し、小刻みに動かすとくちゅくちゅと水音をさせながら、掌の付け根がクリトリスを圧迫すめことで、ひくっひくっと膣が指を食い締めてくる。
(わたし、何も考えずに指を……)
今までは、指を入れるのは怖くて、クリトリスを主に包皮の上から押さえつけるように刺激するのが真昼の自慰の精一杯だった。
なのに、今日は何の躊躇せず、当然とばかりに指を目いっぱい送り込み、遠慮なく抜き差ししていることに、愕然とする。
それでも
(足りない、わたしの指じゃあ、全然届かない……あのひとのは、もっと……)
今までの自慰で思い浮かべるのは、藤宮周とやがては結ばれることを想像することもあった。具体的にはあまりイメージできなかったけれど。
(だめだめっ……どうしてあの男のモノを入れられることを……)
だが、当たり前だがリアルでもう何回も挿入されているのだ、とても抑制できはしない。
自分を食い荒らした憎らしい欲棒の熱さと固さと力強さを思い浮かべ、指を抜き差しし、物足りない部分は左手の指で、クリトリスの皮を剥いてくじることで補強した。
そこが保健室のベッドであることも忘れ、シュッシュッと衣擦れをさせながら、水音も響かせる。
(あの大きいモノが、わたしの中を我が物顔で擦って……それが気持ち良くて……)
その威容と力を思い浮かべ、強くクリトリスの頭を弾くと、軽く瞑った眼の裏に火花が飛ぶ。
右手も痛いほど小陰唇を開き中指の動きを激しくすると、自分の欲深い膣が指をきゅうと巻き締める。
(キタ、これで、イケるぅ……くぅっ……)
軽く達することができた。
卓夫におあずけを食らってから、ようやくのことだ。
ハァハァ、顔を紅潮させ、少しだけ満足感を得る。
(落ち着かなきゃ……)
少しだけ満足したこともあり、暫しうつらうつらする。
保健の先生が戻って来たようで、
「椎名さん? 具合はどうかしら」
優しい声に薄目を開けると、カーテンを少し開け養護教諭が微笑んでいた。
「少し良くなりました……ありがとうございます」
まだ身体は少し火照っているが身体を起す。
「何かあったのかな。顔色があまり良くなかったわね」
その観察眼にギクリとする。
まさか朝からのセックスの後遺症ですなど言えるはずもない。
「ちょっと疲れていただけです。もう大丈夫ですから」
そう言って起き上がる。
礼を言って保健室を出る。
廊下の冷たい空気が肌に心地よい。教室に向かう。
◇◇◇
教室に戻ると周くんが心配そうに駆け寄ってきた。
「大丈夫か? 何かあったのか」
「ごめんなさい、迷惑かけてしまって。体調悪くて保健室で休んでたの。もう大丈夫」
作り笑いで誤魔化すと周はまだ納得していない様子だったが、一昨日言い合いをしたばかりだけに、
それ以上追及してこなかった。
他のクラスメイトたちも遠巻きに見守っている。
放課後、スマホを見ると卓夫からメッセージが届いていた。
『朝はごめんね。仕事のトラブル対応でさ。』
ため息混じりに画面を消す。
(お仕事だもんね……)
その文面に不思議と怒りは湧かなかった。
強要されているはずのセックスを中断されたことに苛立つ自分と、
謝るレイプ犯という意味不明な構図になっている。
(わたし、どうなってしまったんだろう……)
◇◇◇
帰り道、夕陽に照らされた街並みを一人歩く。
制服の袖から伸びる腕がやけに細く見える。
卓夫との関係が始まってから二週間が経とうとしていた。
当初は強姦まがいの行為に抵抗しかなかったのに、今や身体がすっかり慣らされてしまっているように感じる。
(これが堕落というものなのかしら……もう天使じゃなくて、堕天使ね……)
◇◇◇
帰宅すると珍しく卓夫から電話がかかってきた。
「もしもし?」
「お帰り。今日大丈夫だった?」
「何がですか?……普通に授業受けて帰ってきましたよ」
嘘ではない。卓夫に答えていく。
「ごめんね、中途半端で。
朝からスマホと固定電話両方に鬼電かかってくるって、激ヤバ案件なんだけど、
やっぱりでね。クレームで……」
卓夫が延々とトラブル内容を説明するが、全く理解できない。
「事情はわかりました。それではこれで」
真昼が切ろうとすると
「ところでさあ……」
卓夫の声が急に艶めいたものに変わる。
「今夜来れる?遅い時間でいいよ。物足りなかったでしょ」
拒否する理由はいくらでもあった。
けれど真昼の口からは予想外の言葉が出た。
「はい……」
電話を切った後、呆然と立ち尽くす自分に気づく。
なぜ了承してしまったのか。
卓夫の命令に従っているだけだと自分に言い聞かせようとしても説明がつかない。
(だって……もう私の身体は……)
自ら進んで男を求めている。
そんな考えが脳裏をよぎり慌てて打ち消す。
だが否定できない部分もあった。
今朝、途中で終わってしまい「イケなくてもの足りない」などという浅ましいことを考えたのは自分なのだ。
◇◇◇
シャワーを浴びながら再び思考が巡る。周くんのこと。卓夫のこと。自分自身のこと。
どちらに対しても同じ質問が浮かぶ。
「この関係を続けて何になるの?」
答えは出ない。
ただ一つ確かなことは、今日の身体だけは明確に答えを示しているということだった。
「周くん……どうしよう」
呟いた言葉は湯気に混じって消えたが胸に刻まれる。
◇◇◇
いつのものように、周くんの部屋で夕食をつくり、たわいもない話をして一緒に食事をする。
その後は、一緒にテレビを見たりお茶とお菓子を楽しむ。
穏やかな時間……周は、朝の不調について尋ねることはない。
いつになく、距離を感じる。
一番大切な、そばにいたいと思った人なのに。
(でも、その原因をつくったのはわたし。もっと早く、彼を頼っていたら……)
時間は、ゆっくりと過ぎていく。
それをもどかしく思う自分を、できるだけ意識しないようにしながら。
◇◇◇
「おやすみなさい」
自室に戻る真昼を見送った周は彼女のことを考える。
(真昼……朝の体調不良以外は、いつもの真昼でいつもの日常だった。
でも、何かおかしい。
何より、あの雰囲気はどうしたんだろう。
そりゃあいつもとびきりの美しさだけど、今日はいつにも増してだし、何より色っぽいというか、彼女を求めたくなるような……
そう、いつもは清楚な近寄り難い美少女という感じなのに、今日は人を魅きつけるオトナの女性みたいに感じた。
自分だけじゃなく、クラスの男子たちも色めき立っていたんだから、みんな何かを感じていたんだ……)
真昼と周が付き合うようになってから、真昼は変わったと言われたし、
美しさは拍車がかかったと思ってる。
だけど、どうしてまた急に変わったのか……
「真昼、なにか何かあったのか……? 僕には言えないことが?」
「いや、真昼に限って……」
「『……もっと、見ていてください』『捕まえておいてください』と言われたのに、僕は真昼のことをちゃんと見れていないし、捕まえられてもいないのか。
どうして……」
想いは千々に乱れて、夜は更けていく。
まさか、真昼が自室で休むのではなく、その後裏切りの訪問をしているなどと
周が知る由もないまま……
◇◇◇
◇◇◇
午後十一時過ぎ、チャイムが鳴る。モニターには俯き加減の真昼の姿。
その白い肌は緊張で青ざめているようにも見えた。卓夫の胸は期待に高鳴る。
「いらっしゃい」
ドアを開けると真昼が小さく会釈をした。
今夜の部屋着なのかショートパンツ姿で、白い太ももが煽情的に見える。
もしかして……と思いつつ彼女を招き入れた。
ソファに座る真昼にコーヒーを渡す。
だが彼女はほとんど飲まずカップを置いた。
沈黙が流れる。
「真昼ちゃん」
振り向いた彼女の瞳には警戒と同時に……期待の色が浮かんでいる気がした。
「キスしてもいい?」
真昼は一瞬躊躇したが拒まなかった。
ゆっくり近づくと真昼の唇がほんの僅かに開いた。
舌を入れるといつもより積極的に迎えられる。
(なんだ……これ……)
口腔内を蹂躙する度に真昼の喉が小さく鳴る。
唾液を絡め取り吸い上げると甘い匂いが鼻腔を擽った。
「んっ……」
真昼が鼻から抜けるような吐息を漏らす。
その瞬間卓夫の理性は完全に吹き飛んだ。
ベッドに押し倒す。ショートパンツの裾から覗く太腿に手を這わせると肌が粟立った。
すりすりとさすると、すべすべの肌が気持ちよい。
顔を下半身に向け、両腿の間に顔を入れ、手ではなく顔でその感触を堪能する。
「いいね、ショートパンツ。これが部屋着だなんて、反則過ぎる !!」
「ふ、ふつうの格好ですよ」
「そうかなぁ。いつも周くんはムラムラしてると思うよ」
「彼のことは言わないで……」
「ごめん、ごめん。じゃあ脱がすよ」
了解を得ずに一気に剥ぎ取るにかかるが、真昼も腰をあげて協力する。
ショーツが露わになると、そこはべったりと染みになっている。
それも脱がすと、愛蜜が糸を引く……
「んふふ、ごめんねぇ、今朝はお預けで、こんなに期待持たせて」
脱がせたショーツの証拠を突き付ける趣味の悪い卓夫だ。
「知らないっ。やっ、やっぱり帰ります」
真昼は顔をそむけ、起き上がろうとするが卓夫に抑えられて抜け出さない。
本気ではない感じで、卓夫が裸にするに任せる。
露わになった乳房が部屋の灯りの下、浮かび上がる。
淡い桜色の乳首が既にピンと勃ち上がっていた。
「もう、準備万端だね?」
問いながら右の突起を口に含む。左は指先で転がす。
「ああっ!」
いつもより高い声が寝室に響く。
真昼は両手で口を覆ったがもう遅い。
卓夫は確信した。
彼女は今日完全に開き直って受け入れていると。
「今日は、気持ちをちゃんと声に出すんだよ」
優しく命じると真昼は頷いた。その姿があまりに従順で愛おしい。
「卓夫さん……」
突然呼び掛けられて顔を上げる。真昼の目が蕩けるようで、潤み切っていた。
「お願い……もう……」
(あぁっ、とうとう天使様が自分から、この僕を……)
卓夫は胸中で勝利の快哉を叫ぶ。
◇◇◇
卓夫のモノが入ってくる瞬間を想像しながら真昼は身を震わせた。
もう隠すつもりはない。この快楽に溺れてしまう自分を認めよう。
どんなに罪深い行為でも、今はただ彼が欲しかった。
「来て……」
自分から足を開くなんて信じられない。羞恥心が逆に興奮を煽る。
慌ててゴムをまとった卓夫の剛直が入口に当てられる。
ゆっくりと押し込まれていく感覚に背筋が仰け反った。
「あぁっ……入ってくる……」
いつもよりも深く入ってくるように感じる。
Gスポットだけではなく、奥まで満たされる感覚が未知の領域へ誘う。
なんと、更に自ら腰を揺らし始める真昼。
卓夫の腰の動きに呼応して、パンパンという乾いた音と共に卓夫の抽挿が始まった。
最初は優しく次第に激しくなる律動に真昼の意識が飛びかける。
パンパンパンパン、、、くちゅくちゅくちゅ、、、ぐちゅぐちゅぐちゅっ……
「ああっ……そこ……気持ちいいっ」
初めて口に出した言葉に自分でも驚いた。
だが声に出すとさらに快感が増幅する。
(あんっ……どうして……?)
不思議に思う暇もなく膣内が勝手に収縮を始めた。
卓夫の形を記憶するかのように締め付ける。
「くっ……凄い締め付けだ」
卓夫が呻く。彼の腰使いが一段と荒くなった。
「もっと……もっと強く……」
止まらない言葉。
羞恥より欲望が勝る瞬間だった。
◇◇◇
抽挿のスピードが上がり子宮口を直撃する度に火花が散るような快感が走る。
「ひゃうっ!そこダメェ……」
言葉とは裏腹に腰が浮いてしまう。
Gスポットだけでなく膣全体が性感帯と化していた。
「ポルチオ感じるようになった?」
「ポル……??」
「おまんこの一番奥のことっ !!」
卑猥であけすけな言葉に、卓夫の問いかけに首を横に振るしかできないが、
本当に子宮口で、膣の一番奥で感じているのは事実だ。
そして、トントンと奥を責められていると……真昼は告げる
「ねっ、ねぇ……あの……わ、わたし……イきそうなの……」
自ら限界を告白するなど初めてのこと。
しかし言葉にするごとに絶頂への階段を駆け上がっていく。
「うん。イっていいよ」
卓夫の囁きが引き金となり真昼の背中が大きく仰け反った。
膣内が激しく痙攣し精液を搾り取るかのように収縮する。
同時に意識が一瞬遠のいた。
「あっ……ああっ。あーーーーーーっっっ!!」
今までにない深さの絶頂だった。
頭が真っ白になり何も考えられない。ただ幸福感だけが身体を包んでいた。
◇◇◇
息を整える間もなく二回目の波が来た。
今度は卓夫のペースで突き上げられる。
「待って……まだ敏感で……」
抗議の声も虚しく深いストロークが続く。
ポルチオを執拗に攻められると身体が勝手に反応してしまう。
「いやぁ……おかしくなる……」
「こ、今度は…僕も出すよ」
「わ、わたしも……また……」
最後の一突きが子宮口を捉えた瞬間同時に達した。
「出るっ !!」
「あんっ、イっちゃう。イっく~~~ !!」
卓夫の汗臭い身体を両手で抱きしめ、思わず唇を開き、卓夫の臭い匂いをものともせずに舌を絡めると、そこからも痺れが頭に流れ込む。
ゴム越しでも、熱い奔流が流れ込むような感覚に真昼は恍惚とする。
まるで卓夫のモノが、自分の一部になってしまったかのような一体感だった。
◇◇◇
「なんか、すごかったね」
「うん……」
素直にうなずく真昼。
ベッドに横たわる二人には、
疲労感と共に奇妙な安心感が訪れていた。
ふたりでひとつの事をやり遂げたような充足を感じる。
卓夫の腕枕で横たわる真昼。
「真昼ちゃん」
「なに?」
「好きだよ」
そんな言葉を発してしまった卓夫自身驚いたし、
その唐突な告白に真昼は戸惑ったが、口から出た言葉は意外なものだった。
「そんな……困ります……」
拒絶の言葉を出さないといけないのに。
自分の発した言葉に驚く。でも偽りはなかった。
周くんへの罪悪感は相変わらずあるけれど、
今日のこの時間だけは確かに幸せを感じていた。
その相手の愛の告白を、ただ拒絶はできない気がして、
思わずそんな言葉が出てしまったのだ。
「わたしには、周くんという大切な大好きなひとがいます……」
「そうだよね。こんなおじさんから、そんなこと言われても困るよね。
強姦魔だし。
ごめんごめん、いい気になって何言ってんだろう。忘れてくれ……」
そう言いながら卓夫は、強い拒絶を食らうはずが、そうではなかったことで、心の中で快哉を叫んだ。
(真昼は、少しずつ僕のことを受け入れはじめてる。いいぞぉ。)
喜んだ卓夫は、更に真昼に挑み二回も絶頂に導いた。
「真昼、愛してる。ひどいことしてごめん、でもずっと好きだったんだ」
と身勝手な愛の言葉を叫びながら。
真昼は、痺れる頭と身体で、その言葉をただ聞いているしかなかった。
満足した卓夫は、いつしか眠りこけていた。
真昼はと言えば、その横でぐったりしながら、罪悪感の底に沈んでいた。
「ごめんなさい、周くん。わたしはあなたにふさわしくない。
今日、あんなに心配そうな顔をさせておいて、また罪を重ねました。流されて……」
それぞれの想いを重ねて、眠りにつく……