※この作品はR-18です。

天使様じゃなくなるとき   作:小松 美堂

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22.天使様の朝

◇◇◇

 

朝陽がカーテンの隙間から差し込んできた時、真昼はぼんやりと目を覚ました。

(……あれ?ここ……どこ……?)

 

一瞬混乱する。

見慣れない天井と匂いに気づき、昨夜の記憶が一気に蘇る。

(そうだ……あの人と……ラブホテルに……)

 

慌てて隣を見る。

腕枕をしている卓夫が穏やかに寝息をたてている。

厚い胸板と太い腕が視界に入る。

 

「……っ!」

 

声にならない叫びが漏れる。

顔が燃えるように熱い。

全身が硬直し、心臓が早鐘を打つ。

 

(な……なんてことしてるの私……!腕枕で穏やかに寝てるなんて)

 

同時に昨夜の痴態が脳裏に浮かぶ。

(寝バック?とかで……あのまま……一緒に……)

 

思わず恥ずかしさに顔を覆う。

 

指の隙間から卓夫の寝顔を盗み見る。

無防備に眠りこけるその表情に奇妙な安心感を覚える自分に愕然とする。

 

(どうして……落ち着くんだろう……逃げたくなってもいいのに。タバコ臭いのに)

 

 

◇◇◇

 

「ん……?」

 

卓夫がゆっくりと目を開ける。薄目で真昼を捉えると微笑む。

「おはよ」

低く掠れた声に真昼の体がびくんと跳ねる。

 

「あ……お、おはよう……ございます」

 

卓夫の顔を見つめていたことを知られたくなくて、顔を覆ったまま応じる真昼。

耳まで赤いことはバレバレだろう。

 

「よく眠れた?」

卓夫が腕枕を直しながら尋ねる。

 

「は……はい……」

「そっか。なら良かった」

そう言って彼は真昼の額に軽くキスをする。

 

「ひゃっ!」

思わず身をすくめる真昼。

「急に……びっくりします……」

 

抗議の声も弱々しい。

身体は昨日の余韻でまだ火照っている。

 

「ごめんごめん。でもね」

卓夫が真昼の髪を優しく撫でる。

 

「こんな風に外で泊まって誰かと一緒に朝を迎えるのって……初めてで嬉しくてさ」

「あっ、マンションで朝を迎えたりしたのは、ノーカンね」

 

茶化した言葉だがその眼差しは真摯だった。

 

真昼は何も言えず俯く。

確かに自分も妙な安堵感を覚えたのは事実だ。

しかも、腕枕で快く目覚めてしまった。

 

(……どうして?私には……周くんがいるのに……こんな男に……)

 

「ねえ、起き抜けで悪いけどさ。コレ鎮めてくれない?」

「ひゃっ」

そこにはビンビンに勃起した肉棒があった。

 

「朝……から……こんなに」

「朝立ちってね、自然現象みたいなもんだけど、突っ張ってきついんだ。

 真昼のお口で鎮めて欲しいなぁ」

 

「えぇっ……嫌です」

「じゃあ、エッチでもいいか」

「それは……もっとダメです !」

 

「ふぅ、これ立ったままだとおしっこが凄くしにくくて辛いんだよ……」

急にガッカリして見せる卓夫。

 

「そうなんですか……」

そんな姿を見せられると、心優しい真昼は

「……はぁ、少しだけですよ」

と、思わず了承してしまう。

 

「おぉっ、ありがとう !!

天使様に起き抜けにフェラしてもらえるなんて、今日も良い一日になるぞぉ」

 

「はいはい」

そのあまりにも子どもじみた豹変ぶりに、呆れるしかない真昼。

先ほどまで、周への罪悪感で朝から暗い気持ちだったのが、どこかに行ってしまった。

 

 

バスローブから飛び出したその勃起に、恐る恐る近づく真昼。

むわっとした男臭いにおいがする。

汗と精液と、ひょっとしたら真昼の愛液も混じった香り。

 

濃密なそこに近づくと、真昼の頭は朝の爽やかな気分から、

妖しいものに塗り替えられていく。

 

手で鎮める方法もあるはずだが、なぜか躊躇なく口を肉棒の先端に近づける。

そこは、既に我慢汁でてらてらと光っている。

 

軽くその勃起をさするとすぐに、

かぷっ、真昼がその小さなお口を精一杯広げて、亀頭を含んでいく。

 

(早く出させれば、すぐ終わるわ)

まだ僅かな経験しかないのに、繰り返し自分とつながり、縦横無尽に翻弄した生殖器に

奉仕することに、あまり違和感はなかった。

 

 

ちゅっちゅっ、ぢゅっぢゅっ……

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ……

ぺちゃぐちゃ

 

真昼は懸命に頭を動かし、舌でカリまわり中心にねぶっていく。

 

「うぅ、いいよ。うまいよ」

 

卓夫は、真昼の頭を優しく撫でながら堪能する。

時々胸元に手を伸ばして、真昼の柔らかい双つの果実を楽しむ。

時に、可愛らしい実も摘まむ。

 

「うんっ…うんっ……」

「だめよ、できなくなっちゃう」

乳首の快感でついつい口がおろそかになる。

 

そんなやり取りをしながら、卓夫はたちまち追い詰められていく。

 

「で、出るよ……飲んで」

びゅっ、びゅーーーーっ……どくどくどく。

 

真昼は口中で全て受け止める。

青臭い匂いに、こぼしそうになりながらも、ごくんと飲み込む。

ケホケホと咽る。

 

(ふぅ、不味いわ……どうして、わたしはあっさり引き受けたの……)

後悔に襲われる。

 

が、

「ありがとう、真昼ちゃん。朝からすっきりしたよ」

その無邪気な笑顔に、まあいいかとも思えた。

 

 

「さてと」

卓夫が起き上がりベッドの端に座る。

「シャワー浴びてくるよ。その後で朝メシ食べようか」

「……はい」

小さく頷く真昼。

相変わらずのマイペースな男だ。

 

◇◇◇

 

浴室から水音が聞こえる。ベッドに残された真昼は昨夜のことを回想する。

(……あんな風に……激しくされて……気持ちよくされてしまった)

(……そして最後は優しく……寝バックで……)

(……そのまま……二人で……)

 

(しかも、あんなに恥ずかしいことたくさん言うなんて……)

 

思い出した途端に、ずくりと子宮が疼く。

「……どうしてわたしは……」

自嘲気味に呟くも否定できない。

身体が覚えてしまった快感。

最早受け入れてしまったその感覚。

 

◇◇◇

 

シャワーを終えた卓夫がバスローブ姿で戻ってくる。

手にはメニュー表。

 

「ここのデリバリー朝食なかなか評判いいらしいよ」

「……私はパスです」

「どうした?体調悪い?」

心配そうな顔をする卓夫。

「いえ……ちょっと……」

「まぁいいか。なら俺だけ食べるよ」

 

 

注文した朝食が届き卓夫がテーブルに並べる。

トーストとスクランブルエッグ、ベーコン、コーヒーの典型的な洋朝食。

「いただきます」

彼が食べ始めるのを真昼はベッドの端に座って見つめる。

 

「やっぱり食べない?」

「……今はいいです」

「そっか」

卓夫は黙々と食事を続けながら時折真昼を見る。

 

「汗流したら?気持ちいいよ」

「……はい、そうですね」

真昼は重い腰を上げた。

 

シャワールームで温かい湯に打たれながら真昼は考える。

 

(……終わりに……しなきゃ……)

(……でも……でも……)

股間に手を伸ばすとまだ敏感になっている。

(……本当に……私の身体……おかしくなってる……)

自らの変化に愕然とする。

 

◇◇◇

 

着替え終わった真昼がリビングに戻ると卓夫が煙草を吸っていた。

「あっ……」

思わず後ずさる真昼。

 

「ごめん。でももうすぐ消すよ」

卓夫は携帯灰皿に押しつけ火を消す。

「君の服の匂いにつくと悪いし」

気遣いに真昼は複雑な表情を浮かべる。

こんな些細な優しささえ心に染みる自分が情けない。

 

「……何ですか?」

「いや……その格好可愛いなと思って」

昨夜、出かける用として着て来たワンピースとカーディガンに着替えたのだ。

 

「……」

褒められるほど居心地が悪くなる。

そのまま流されてしまう恐怖と快感が交互に襲う。

 

 

「それじゃあ……帰ろうか」

帰り支度を始める真昼に卓夫が声をかける。

 

 

◇◇◇

 

ラブホテルを出てクルマで街に戻る。

休日の朝とはいえ行き交う人々の姿はそれなりにある。

 

「ここでいいの ?」

卓夫がクルマを停めたのは、マンションに近い24時間空いているスーパーの駐車場だ。

ふたり一緒にマンションに朝帰りするのはまずいし、真昼が買い物をするために。

 

「ありがとう……ございました」

ドアを開け降りようとする真昼。その手を卓夫が掴む。

「ちょっと待って」

 

振り返った瞬間唇を塞がれる。

「んっ……」

驚きつつも抵抗しない真昼。

むしろ彼女の方から舌を絡めに行く。

 

 

この歪な一夜が終わってしまうことを名残惜しく思うように、

ふたりの舌は何度も何度もお互いの口内を行き来して、唾も呑ませ合う。

やがて真昼の頭にまたも霞がかかり、

朝のクリアな気持ちが昨夜に引き戻されていく。

 

乳房をブラ越しに卓夫の手が緩く愛撫し、片手は真昼の手を取り、遠慮なく

自分のモノに絡ませる。

真昼が、それをさわさわと触れば、すぐに硬くなる。

 

何も言われなくても、ジッパーを下して、ペニスを出そうして

また四苦八苦していると、卓夫がベルトを緩め、ポロンと出せば、

早くも先走りで濡れたそれが姿を現す。

 

真昼の指先は、カリを中心に、先走り汁をまとわせて愛撫する。

卓夫は、スカートの中に潜り込んだ手で真昼の秘所にすぐ指を這わせる。

 

「朝から、こんなに……だよ」

真昼の目の前にべったりと濡れた指先を見せ、そのまま自分で舐める。

 

「朝一の真昼のラブジュース、おいしいよ」

「もぅ、バカぁ !」

真昼はペニスから手を放してポカポカと胸を叩く。

 

「ねっ、スーパーに行く前に、いいだろ」

「時間が……」

「何かあるの?」

「いえ……そういうわけじゃ」

(言えない……)

 

そのまま、卓夫は真昼を後部座席を倒して導く。

朝早いとはいえ、スーパーは営業中なので、誰が来るかわからないというのに。

 

早くも燃え上がってしまったふたりは、

繋がりたくてそれを考えないように流されていく。

外ゆえ服はそのままで、卓夫はズボンを少し下して、真昼はショーツだけを脱いで

たちまちつながる。

 

「あんっ、入ったぁ……」

「今朝も気持ちイイね」

「……うん」

 

すっかり卓夫のペニスを受け入れることに慣れ切った真昼の身体。

すぐにきゅうと肉棒を食い締める。

 

ユサユサと、卓夫が性急にピストンを始めると、小型車の車体も揺れる。

外から見て妖しいことこの上もない。

時間はかけられないので、卓夫は速く強い動きで進めていく。

 

(こんなところで、いけないのに。またしてしまってる……ダメなわたし)

真昼も、場所の背徳感もあって急速に上り詰める。

 

お互い、口も吸い合い上下でつながる一体感で、同時にイこうと合わせる。

「くっ、ダメだ早いや。もう出そうだ」

「待って、わたしも……」

 

真昼も、卓夫の頭と腰にしがみつき、腰は精一杯奥までつながろうと押し付けられ、ぐりんぐりんと回して追いつこうとする。

 

「出るっ……」

「あんっ、いっくぅ~~っっ」

ドクン、卓夫が短く強く吐き出す。

「あぁんっ、出てるぅ……」

 

ハアハア息をつき見つめ合う二人。

どちらからともなく、口をつけ、激しく事後の気持ちを伝えあう。

 

長いキスの後、涙目で真昼が見上げる。

「……もぅ、朝からダメなのに。困ります」

「わかってる」

卓夫は真昼の髪を撫でる。

「でも我慢できなくて」

 

真昼は一瞬迷った後、そっと卓夫の頬に触れた。

「……バカ。わたしもよ……」

罵倒しながらもその指先は優しい。

 

身づくろいしながら卓夫が口を開く。

「次はまた金曜日かな?」

その言葉に真昼は一瞬固まる。

 

暗黙の了解と化した毎週の逢瀬の約束。

「……はい」

小さく頷く真昼。

 

「楽しみにしてる」

卓夫の笑顔に胸が締め付けられる感覚を覚える真昼。

(わたし……どうしてこんなに普通に応えてしまってるの……)

 

 

◇◇◇

 

真昼は、スーパーで食材を買い込みマンションに向かう。

土日はいつも朝食の時間からずっと、周で過ごすことが最近多い。

 

『ごめんなさい、今朝は寝坊した上に食材も足りないからブランチにしてください』

 

と、朝卓夫がシャワーを浴びている隙に、周に偽りのメッセージをしていた。

(周くんに、平気でこんな嘘送れてしまうんだ……)

 

そして、ブランチとしたから、今朝の情事で少し時間がかかっても大丈夫と考えてしまっていた。

 

 

(この後、周くんの部屋で、どうやって顔を合わせたらいいの……)

(……何も知らない周くんに……)

(……今朝もエッチした、こんな汚れた私……)

 

そんな想いと裏腹に、

マンションに向かう途中の道で、周と出くわしてしまった。

 

「よっ、おはよう」

「周くんどうして……おはようございます。今朝はごめんなさい」

 

「真昼も、最近時々寝坊するよね」

「ごめんなさい」

「いゃあ、完璧な天使様じゃない姿を俺の前で見せてくれるのは、うれしいよ。

 だから、今朝はそのお寝坊姿を見ようと真昼の部屋を訪ねたらいないからさ、

 買い物とあたりをつけて、散歩がてら来てみたんだ。大正解 ! 」

 

「ふふふ、そう書いてましたよね」

「あっ、そっか」

真昼と周は笑いながら、ふたりでエレベーターに向かう。

 

その笑顔が真昼の胸を締め付ける。

(ごめんなさい、ごめんなさい。嘘ばっかりで、ごめんなさい。

優しいあなたにごめんなさい……)

 

並んで入り、ドアが閉まり空気が動くと

 

「うん? なんかタバコ臭いな」

「そう……かしら?」

「タバコが嫌いな真昼なのに、この臭いわからないかな」

「どうかしら、前に乗った人がヘビースモーカーだったのかしらね」

 

(タバコの匂い、わたしはあの人のタバコで鈍くなってるんだわ……)

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