※この作品はR-18です。

天使様じゃなくなるとき   作:小松 美堂

9 / 37
9.天使様のアクメ

◇◇◇

 

浴室から出た二人の間に重い沈黙が漂う。真昼は震える手で服に着替えながら、鏡に映る自分の疲れ果てた顔を睨んだ。

卓夫はといえば、満足そうにソファに沈み込みテレビをつけている。

 

「ああ……もう六時か。おなかすいたな」

突如卓夫が思い出したように言った。

「真昼ちゃん。さっきの野菜使って何か作ってよ」

 

あまりに自然な命令口調に真昼の顔が強張る。

「な……何を言ってるんですか?こんな状態で料理なんてできるわけ……」

 

「できるよ。別に何も身体に傷ついてないでしょ?」

ソファから半身を起こした卓夫が冷たく言い放つ。

 

(わたしの一番大切なところと心を傷つけたくせに……ぬけぬけと……)

 

卓夫を視線で殺められたら、という気持ちでじっと睨む真昼だが、

口に出たのは、別な言葉だった。

 

「そもそも……この野菜は親御さんがあなたのことを思って送ってくれたものですよね?

 そんな大事なものを使って……

 こんなことして、親御さんに恥ずかしくないんですか !!」

 

その言葉に、一瞬卓夫の顔が歪む。

まるで古傷を抉られたような痛々しい表情が浮かび、すぐに自嘲気味の笑みに変わった。

 

「あぁ……アレ?」

テレビのリモコンを弄りながら呟く声は乾いていた。

 

「嘘だよ。全部スーパーで買った普通の野菜」

 

 

「……え?」

「うちの親はずっと家庭内離婚してるみたいなもんで、最後にまともに会話したの中学の時だし、高校は全寮制に入ってそれから連絡も取ってない。

大学も就職も全部自分で決めたんだ」

 

投げ捨てるような口調に真昼は息を飲む。

「あっ、もう離婚したとは聞いたな」

 

(なっ……なに ? この人も……家族から愛されずに育ったの?)

 

「だから親御さんとか……そんなもん知らないよ」

 

なぜか、この太々しい男の背中が妙に小さく見えた。さっきまでの横柄さが嘘のように。

 

「だから、気にしないで野菜使って何か作ってよ。お高いスーパーで買ったんだよ」

キッチンの床に転がったトマトを見つめながら卓夫が呟く。

その横顔には孤独が色濃く滲んでいた。

 

 

真昼の胸の奥が微かに疼く。

(わたしだって……お母さんもお父さんも仕事ばかりで……)

 

真昼の家庭も、血は繋がっていても、愛はなかった。

そんな自分と同じような境遇を持つ憎い男を見つめる。

だからと言って、彼にされたことを許せるわけもない。

しかし、心のどこかで理解できない同情が芽生えている自分にも気づく。

 

「……わかりました」

自分でも驚くほど自然に出た言葉。

 

「ですが、一つだけ約束してください。もう……暴力はやめてください」

「あぁ、乱暴なことはしない。約束するよ。スタンガン痛かったよな?」

卓夫の声は珍しく真摯だった。

 

 

◇◇◇

 

 

包丁を握る真昼の手が僅かに震えていた。

(この包丁を使ってわたしが脅すとか、考えないのかな?……舐められてる?

それとも、わたしがやらないと信じてる? ……)

 

そう考えつつ玉ねぎを刻みながら、先ほどの卓夫の告白が頭を巡る。

冷たい家庭環境が自分と似ているという事実……その偶然が胸を締め付ける。

 

(だから、わたしを信用してるとか ? ……ダメだめっ ! そんなこと考えちゃ。

同情をひくための嘘かもしれないし)

 

 

「真昼ちゃん」

いつの間にか後ろに立っていた卓夫が背後から覗き込んできた。

 

「危ないですから離れてください」

「僕も手伝うよ」

「結構です!」

思わず強めの口調になってしまった真昼が振り返ると……

 

「そっか。ありがとう」

 

卓夫がぽつりと呟いた。その瞳に宿る感謝の色がなぜか純粋に視えて、真昼は言葉を失う。

(なんで……そんなに弱々しい目をしているの?)

 

気づけば卓夫の手が真昼のうなじにそっと触れていた。

「ひゃっ……!?」

ゾクッとした衝撃が真昼に走る。

 

「だから、危ないって」

「ごめん。つい……」

慌てて手を引っ込めようとする卓夫の指が不意に止まる。

 

「真昼ちゃんの肌……やっぱりすごく触り心地がいいし、うなじが綺麗過ぎて」

フロに入る時に、髪をアップにしたままにしていたので、うなじがむき出しのままだったのだ。

 

その一言に身体が火照るのを感じた真昼は慌てて料理に集中しようとする。

切ったトマトがまな板に散乱するのも構わず包丁を持ち替える。

 

(ダメだ……こんな奴に……へんな気持ちを……)

 

「真昼ちゃん?」

 

卓夫の声が再び耳元に降ってくる。

振り払うべきなのに真昼は動けない。

ただ鍋に水を注ぎ火をつける音だけがキッチンに響く。

 

 

◇◇◇

 

 

出来上がったのは質素な野菜炒めとスープ。

卓夫が「美味しい」と何度も言いながら食べる姿を、真昼は複雑な気持ちで眺めていた。

 

作った料理を食べてくれている姿を見るのは好きだ。相手がどんな人でも。

憎むべき相手のはずなのに、どこか満足感のある自分がいる。

その矛盾に苦しんでいると――

 

「ねぇ真昼ちゃん」

不意に卓夫が立ち上がる。

 

「ご飯食べたら……もう一度お風呂に入ろうか?」

「……は?」

「今度はもっと優しくするから」

テーブルに置かれた手が震えているのに気づく。

「本当の意味で『優しく』してほしいなら……協力してくれるよね?」

 

卑劣な脅迫だった。けれど卓夫の目には哀願するような光が揺らめいている。

まるで迷子の子供みたいだと真昼は思った。冷え切った家庭で育ち、愛情を知らず、歪んだ形で求め続けた末路……それが目の前の男なのだ。

 

もちろん、考え過ぎかもしれないしねそんな生い立ちだからといって、こんな非道なことが許されるわけがない。

ただ今は従うしかない。

 

(周くんには、知られたくない。助けを求めても、今は隣にいるわけではないから、すぐには来れない。

警察を頼ったら、あの両親にも伝わってしまう。それは嫌だ。)

 

「……わかりました」

 

 

◇◇◇

 

 

浴室の白い湯気が二人を包む。湯気の中で裸で向き合う二人。

 

卓夫はバスタブのへりに座り、真昼はその前に棒立ちになっている。

 

「ほら……真昼ちゃん。先に僕を洗ってよ」

 

卓夫が指さしたのは彼の股間。

さっきまで自分の中にあった異物が湯気の中で緩やかに勃ち上がろうとしている。

(こんなもの……触りたくもない……)

 

のろのろと膝立ちになる。

唇を噛みしめながらスポンジにボディーソープを含ませる。

震える指でそれを掴み、恐る恐る卓夫のペニスに押し当てた。

 

「ああもう、敏感なところだからスポンジじゃくなて手で洗ってよ」

泡を手につけ、肉棒にまとわりつかせる。

 

「真昼ちゃんを気持ち良くさせるものだよ、大事にね」

「そのままぬるぬる動かして」

「もっと強くしてもいいよ?」

細かな指示と軽口に苛立ちを覚えながらも必死で上下に擦る。

 

ぬめった泡越しに感じる歪な形状。

先端が妙に柔らかく根元に行くほど硬くなる感触が生理的嫌悪を呼ぶ。

 

(本当に……さっきまでこれがわたしの中に入って……)

 

「あ~よくなってきた。気持ちいいよ真昼ちゃん。その感じで続けて」

 

陶酔したような声が耳障りでしかたない。

早く終わらせようと焦り、手の動きをリズミカルにする。

 

「おっおっ、いいよ。そのままっ !」

突然、ペニスがピクピクとしたかと思うと、ぴゅっぴゅーっと射精が始まる。

「きゃっ」

 

勢いよく放出された精液が真昼の顔を襲う。

「いゃあ、うまいから出ちっゃたよ」

 

「ひどい」

顔面を直撃されて、目・鼻や口元がべとべとになる。

 

慌ててシャワーを取って洗い流すが、なかなかうまく流れない。

なんとかぬぐうと

 

「出すなら、そう言ってください」

 

「ごめんごめん、気持ち良くて。さぁ、もう一回キレイにして」

またやり直し。真昼はうんざりしながらもう一度泡立てからだ。

 

 

ようやく一通り洗い終えたときには真昼の心は冷えきっていた。

 

「ありがと」

満足げな笑みを浮かべた卓夫が今度は真昼の前にしゃがみ込む。

 

「次は真昼ちゃんの番だね」

 

「やっ、いいです。嫌です……」

「まあまあ」

拒否する間もなく彼の太い指が太ももの付け根に滑り込む。

 

「ひっ……!」

「大丈夫だって……きれいにするだけだから」

 

泡を纏った指が無遠慮に秘裂を左右に広げる。

さっきまでの行為で充血した粘膜が外気に晒されヒヤリとした。

 

「あれ……おかしいな?」

わざとらしい声色で卓夫が呟く。

 

「なんだか……お湯じゃないものがいっぱいあるんだけど?」

 

「やめてっ!」

反射的に卓夫の手を止める真昼。顔が一気に熱くなる。

心は冷めきっていても、身体は違うようだ……

 

「へぇ……まだ何もしてないのに濡れてるんだ?」

からかうような口調に怒りで拳を握りしめる。

 

「お風呂だから……身体が火照るんです!」

「ふ~ん?まあそういうことにしといてあげるよ」

 

屈辱的な笑みを浮かべながらも、卓夫は意外と素直に手を引いた。真昼は慌てて自分で泡を泡立てる。

(さっき……散々触られたから……)

 

そう自分に言い訳しながらも、触れられた箇所がじわりと熱を持っているのは否定できなかった。

 

 

「じゃあ入ろうか?」

結局湯船にまで一緒に入ることになった。

が、バスタブは男と女が並んで入るには明らかに狭い。

 

「真昼ちゃんは僕の前に来てね」

「……嫌です」

 

「しょうがないなぁ」

にっこり笑った卓夫がいきなり真昼の腕を掴み強引に抱え込むように座らせた。

 

後ろから抱きかかえるような体勢で、背中には弛んで見えるのに以外と固い卓夫の感触。お尻の割れ目に何かが当たっている……さっきまで洗っていたあの熱い塊だ。

 

「やっ……離れて……」

身を捩る真昼の肩を卓夫が強く押さえつける。

 

「大人しくしなさい。僕らもう……その……カップルみたいなもんじゃない?」

 

「誰がっ!?」

 

「だって……何度も……したでしょ?」

 

卓夫の指が湯の中で真昼のお腹を撫でる。その指先が少しずつ下がっていく。

「今度はゆっくり……ね?」

耳元で囁かれる声に真昼はただ俯くしかなかった。

 

 

しばらく無言のまま卓夫が真昼の身体をまさぐる。

 

くちゅくちゅ、ぐちゅぐちゅ

「んっ、んっ、あん……やっ……」

ちゃぷちゃぶ

「あっ、あっ、あっ、もぅっ」

 

湯気の向こうで時計の針が進む音だけが聞こえる。

ふと卓夫が何かを探るような動きを見せた。

湯船の隅に置かれていたのは小さな四角いパッケージ――コンドームだ。

 

(いつの間に、こんな準備まで……)

 

呆然とする真昼の隙をついて卓夫の指が割れ目を直接探る。

 

「んっ……あぁっっ、やんっ」

 

不意の刺激に漏れた吐息の強さを卓夫は聞き逃さない。

 

「真昼ちゃんも……期待してる?」

「違っ……」

 

否定する間もなく卓夫は素早くコンドームを装着すると、後ろから真昼の腰を浮かせるように持ち上げた。

硬くなった先端が正確に秘裂に狙いを定める。

 

「やっ……やめて……」

「大丈夫……もう慣れてきたでしょ?」

 

ゆっくりと……しかし確実に体重がかけられていく。

抵抗しても狭い浴槽の中では身動きが取れない。

 

「あっ……!!うんっ……」

ズブリ……と一気に根元まで突き入れられた。

 

「ああ……やっぱり真昼ちゃんの中は最高だ……

ほどよく締め付けて、真昼ちゃん中は、お風呂のお湯より、もっと熱いよ」

 

卓夫が陶然とした声を漏らす。真昼は湯船の縁を握りしめて苦痛に耐える。

しかし先ほどまでの強烈な痛みはない。

代わりに広がるのは奇妙な圧迫感と……奥底から湧き上がる微かな疼き。

 

(また……こんなこと……さっきより、奥まで入ってる)

真昼の体重分、しっかりと卓夫のペニスが膣内に収まり、より圧迫する。

 

「動くよ?」

卓夫が背後からしっかりと真昼の細腰を支えて前後に揺さぶり始める。

湯が激しく波打ち水面に汗と泡が混じり合う。

 

「あっ……あんっ……」

自分の口から漏れる甘い喘ぎに真昼は愕然とした。

湯のせいで体温が上がり感覚が鋭敏になっているのか、それとも……

 

「ほら……ここだよね?」

卓夫の先端が確実にさっきも攻めたてたGスポットを突く。

指でも触ったこともない場所を直接抉られる鋭い衝撃が背骨を駆け上がる。

 

「ひゃっ!?」

「いい反応だよ真昼ちゃん……可愛い声が出るじゃないか」

 

揶揄する声も今の真昼には遠く聞こえる。腰の奥で何かが急速に膨らみ始めた。

さっきまでの快感とは比べものにならない巨大な波が迫ってくる気配。

 

(だめ……このままだと……わたし……)

 

蕩けていると、顎をつかまれて振り向かされ、唇をおおわれる。

すぐさま、舌を取られ絡み合う。

舌を強く吸われ、乳房を強く握りしめられると、頭がボーっとしてきて、霞がかかる。

 

小刻みに動かされる憎らしい棒から、快感の刺激がテンポよく伝わってくる。

段々真昼の気持ちは持ち上げられる。もっともっと感じたいという気持ちが高まっていた。

 

(わたし……こんな男に犯されて……気持ちよくなってる?

こんなこと……ありえない……)

 

真昼は必死で否定しようと目を瞑るが、下半身から這い上がってくる快感は止まらない。

むしろ目を閉じたことでより鮮明に卓夫のペニスの形や熱が伝わってくる。

揺れる湯の感触すら愛撫のように感じる始末だ。

 

(ダメ……もう……我慢できない……!)

 

卓夫のペニスが、Gスポットを掠って、強く突き上げられた。

次の瞬間――頭の中を何かが通り抜けた。

 

(あっ……なにか、くッ……くるぅ……!!)

 

言葉にならない叫びと共に真昼の全身が弓なりに反る。

膣壁が急激に収縮し卓夫の肉棒を万力のように締め上げる。

 

「くぅっ……真昼ちゃん……!」

卓夫も堪らず低く呻く。

真昼の絶頂に合わせて彼もまた射精を果たした。

 

コンドーム越しに熱いものが放出される感覚が膣内に広がる。

 

(わたし……セックスで……気持ち良くなった……?)

 

湯気の立ち込める浴室で二人の荒い呼吸だけが響いていた。

真昼は呆然と宙を見つめる。

 

「真昼ちゃん、イってくれたの?」

卓夫が満面の笑みで覗き込む。

 

「イク?」

「ものすごく気持ち良くなったんでしよ? 

僕はオトコだからわからないけれど、頭が爆発するみたいな」

 

(わたし、わたしイカされたの !? こ、こんな男に…な、なんで…)

 

しかし、イカせられたと無邪気に喜んでいる卓夫を見ると、怒るのもバカバカしくなる。

 

「イったんでしょ?」

「あの、何かくるような感じがイクということなら、そうなんでしょうね」

 

真昼は、できるだけそっけなく答えて、湯舟から立ち上がる。

 

そのまま、浴室から出ようとすると、がばっと卓夫が背中から抱き留める。

 

「せっかくイったんだから、復習して覚えなきゃ」

「もぉっ、もお十分満足したでしょ?」

「まだまだ」

 

(なんだろう、このやり取り。セックスするのが当たり前みたいな。どうして……わたしは……)

 

真昼はドアに手をつけさせられると、ズブリと後ろから挿入される。

もう身体の方が卓夫の形に慣れてしまったのだろうか、すんなり受け入れてしまう。

 

(あん……また……感じちゃう)

 

パンパンパン……浴室に激しい衝突音が響く。

さっきより激しいセックスが始まった。

 

さっきまでの戸惑いはない。

真昼はどんどん快感が高まっていくのがわかる。

ぐちゅぐちゅぐちゅ、結合部からは激しい水音がし、お湯ではないものが溢れる。

透明ではなく白く濁ってきことが、真昼が感じていることを示す。

 

卓夫はうなじをぺろぺろと舐め、時に吸い付く。

耳を甘噛みされると、ゾクゾクしてしまう。

 

両方の乳房を同時にゆさゆさと揉み上げられ、時にぎゅっと乳首を強く摘ままれると、鋭い快感が襲う。

(こんな、こんな激しいことされたら、また……またすぐにあの感じが……)

そんな思いに身をゆだねる。

 

「あっあんあん……また……くッ……あ…くるぅ……」

「もうイキそうなの? もうイっちゃうんだ?」

「イクってちゃんと言うんだよ」

 

パンパンパン ! 卓夫と真昼の身体が、淫靡なリズムを奏でる。

やがて、そのリズムが早まると

 

「ひぃーいいい……あんあんあんっ……ーい、イクぅー!!」

さっき以上の、何か頭の中が真っ白になるような光が走る……

 

二度目だというのに、二度目だからこそ、先ほどより激しいアクメを迎えた真昼は、

全身を反らせるとビクンビクンと痙攣させる。

 

そしてその直後に卓夫がまた膣内で脈動を爆発させた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。