【問題】「勘違い系主人公が……(ピンポン!)自虐的クソザコ糸目女子の敗北CG回収物語! 異能闇組織の美少女ボスを添えて! 「正解!!」 ~何故だ! 何故分かる、バックショット!!~ 作:信頼できる語り手
彼女と対峙した異能者には、越えてはならない『線』が視える。
研ぎ澄まされた呼吸。あらゆる技術を吸収する頭脳。世界最高の印芽。ただ目を向けるだけで、死の間合いを作り出す視線。
──フコレ・リードという生命体は、この世に生まれ落ちた瞬間から完成していた。
「お腹が空いたわ」
「「はっ、直ちに用意いたします!」」
「そんなに畏まらなくても良いのよ?」
「いえ、リードは実力主義でございますので!」
歴史ある異能の血統『リード』。元々ファミリーネームだったその名は、いつしか彼女個人を指す称号へと役割を変える。
フコレが望んだわけではない。ただ、彼女と同じ血を名乗る重圧に誰も耐えられなかったのだ。
度を越えた非才か愚鈍でもなければ、彼女の異常性は瞬時に理解できる。アレは人間が張り合える存在ではない。神が気紛れに創り出した、奇跡の突然変異。
「こうやって使うのね」
「あ、扱いの難しい転移のシグネットを完璧に……! 隠れて練習していたのですか……!?」
「……? どうして、練習が必要なの?」
「「……ッ!!」」
恐るべきは、規格外の学習能力。その理解不能な成長速度を見て、リードの異能者達はフコレに対する『教育』を拒んだ。
彼女がこのまま育てば、遠からず自分達の手には負えなくなる。それどころか、地球連邦を脅かす爆弾にすらなり得るだろう。
故に、フコレに施されたのは一般的な異能教育ではなく、徹底的な『都合の良い正義』の刷り込みだった。
「おや、噂の最強少女が、随分と窮屈な檻の中で生きてるね。傑作だ」
「あんた、誰よ。悪党なら潰すけど?」
「俺はトゥルーエンド。親しい者からは『エリア000の黒幕』と呼ばれている。分かりやすく言えば……君の上司だ」
「そう。どんな人間が上にいようと、あたしは自分の信じる正義を執行するだけだわ」
「ああ、それで構わないさ」
神童『ミス・リード』の名は一種の抑止力として広く知られる事になる。ただし、あまりにも素早く戦闘を終わらせて帰投する為、彼女の姿に関する目撃情報は少ない。
「本日から実験部隊『コズソルク師団』の監督役に着任したフコレ・リードよ」
「団長のラウンドノーズだ。以後よろしく」
「余はサムネイルにゃ~。お前ちゃん、鬼強そうだね~。いやぁ、年下相手に勝てる気しないのは初めてだわ~。こんなのに見張られるとかマジ~?」
フコレは最強であり、怪物であり、挫折を経験していない『発展途上』の異能者である。……で、あった。
彼女が『敗北』を学んでしまった事は、果たしてどのような結果を招くのか。
それは、誰にも予想できない。
私は『勘が良い』らしい。
天気予報を見なくても雨が降る前は何となく分かるし、くじ引きやスクラッチでも当たりっぽい選択肢を絞る事ができる。
成長してから気付いたが、どうやら普通の人はこういう感覚を持ち合わせていないようだ。絶対音感のようなモノだろうか。
勿論、百発百中と言えるほどの精度ではないし、いつでも勘が発揮されるわけではない。特に
だから、いつの間にか。
嫌な出来事はさっさと忘れて、負荷の少ない『楽』な生き方を心掛けるようになった。
サーファーがボードに合った最適な波と風を待つように。あるいは、セールスマンが交渉相手の反応を見て話題を変えるように。
私は研ぎ澄ませた勘に従って、乗るべき『流れ』とそうでない『流れ』を見極める。そして、内心で不平不満を漏らしながらも、今この瞬間を楽観的に満喫するのだ。
それが『ヒトミ・クライシス』の信条である。
「フコレ様が、死線の『ミス・リード』……」
その場で軽快なステップを踏み始めたフコレを凝視するが、私に他者の実力を判断できる観察眼があるわけもなく。
あの警棒で殴られたら痛そうだなぁ……と、子供並みの感想しか出てこなかった。
「大ピンチですね」
「是」
「界壁割り『ワッドカッター』ね。80億
しかし、相手が誰であっても、私達にできる戦術は1つしかない。私が囮になって『偏見のシグネット』で隙を作り、ワッドカッターの『見えざる刃』で暗殺する。
「是……!」
さあ、フコレはどう動……。
「
「……は?」
先程までワッドカッターがいた場所に、フコレが立っていた。初めからそこにいたのではないかと思うくらい、自然に。
「戦術? 読み合い? 賢そうな言葉で飾っても、相手の全てを把握できない以上はただの『運勝負』じゃない。そんな遊びに甘んじてるから、あんた達は弱いのよ」
旅団級の異能者が、一瞬で退場させられた。
「技の起こりも、着地も、瞬きも、呼吸も。あたしの『転移』は戦闘中に生じる全ての隙をゼロにする。相手が何をして来ようと『必ず勝てる』から、最強なのよ」
疾過ぎる。準備に時間がかかるのが、転移のシグネット最大の弱点。異能学校でそう習ったのに……こんなの、反則だ。
「ふ……普通の異能者であれば、転移の発動こそが一番の隙なのですが……」
「あたしは普通じゃないの」
確かに。
「流石に悪党としての器が違うわね。目の前で最高幹部が消されても平然としてるなんて」
いえ、平然というか……。距離感あるバイトの先輩が消えても、泣いたりガチギレするほどの感慨が湧かないだけですけど……。
「……彼を何処に転移させたのですか?」
「監獄。閉鎖病棟『ギープキィ』の支配下にある、この世で最も閉ざされた地獄よ」
フコレが手首を振ると、ジャキンと特殊警棒が伸びた。犯罪者を傷付けずに捕縛する為のそれが、恐ろしく禍々しい凶器に見える。
「出たな、リードの末裔……! 下賤な連中を護る裏切り者がぁ……!」
「差別主義者『ゴシップ』。32億LP。まあ、そこそこの動きね」
3人目が消えた。
「次はあんたよ、バックショット」
「くっ……!」
「ちっ、やっぱり避けるのね……!」
狙ったわけではない運任せの回避だが、自分でも足の速さに驚いている。今日の私は体が軽い。今更になって、その理由に思い当たった。
フコレとの接触。世界最強のマナがずっと流入していたのなら、好調なのも当然だろう。
私は体内のマナが極端に少ない為に、他人のマナを高い吸収率で受け取れる。これが普通の異能者だったら、無意識に抵抗して弾いてしまうところだ。
「ちょこまかと、鬱陶しい高速移動……。あたしを撹乱できる活術使いは久々に見たわ」
(貴女のマナを借りていますからね!)
しかし、私にはマナを留めておく才能もない。実は今この瞬間もバブル崩壊のような勢いでマナが流出し、弱体化し続けている。
元々のフコレパワーが凄過ぎるおかげで、抜け切るまでにラグがあるだけだ。そろそろ、何か手を打たないといけない。
「でも、逃げてばっかり」
彼女に接近されれば、周囲の空間ごと転移の対象にされて終わりだ。できるだけ、ランダムに動いて的を絞らせないようにしないと……。
(……周囲の空間ごと?)
「そうよね。あの敗北はただの奇跡。鍛え直したあたしは誰にも負けない。奇跡は、二度起きない」
「さて、それはどうでしょうか?」
一か八か。私は両目を開いて、虹色の
「お気付きになりませんか、フコレ様? 貴女はもう負けているのですよ」
フコレは一笑に付す。
「そんな戯れ言……」
「勝利条件の話です。私は『オールヴルム号』に侵入した目的を既に達成しています」
ブラウスの胸ポケットに手を入れた。宝石状の何かを掴む仕草で、彼女の
印象操作。今の私のマナ量なら、最強相手でも辛うじてシグネットを通せるはずだ。
「まさか、神器!? ……ハッタリよ! 中枢部の結界を突破されたなんて報告は受けてない!」
否定する言葉とは裏腹に、焦燥を含んだ声音。それで良い。
私は神器の力を体験している。アレは恐ろしい道具だ。体制側のフコレはその名を無視できない。
そして、この身に受けた事があるからこそ、私は神器が放つ威圧感を精巧に再現できる。
「……っ! これは、神器の反応……! まさか、本当に……!?」
「ふふ、そこまで驚いて頂けるとは」
「だ……だから何だって言うのよ! 神器の力を使えばあたしに勝てるとでも!?」
「いいえ。ですが、予め忠告しておこうと思いまして。私を空間ごと監獄に転移させたら、大事な神器まで失われてしまいますよ、と」
「そ、それは……!」
手応えあり。口八丁でここまで時間を稼げるとは嬉しい誤算だ。
「他はともかく、あの神器は……っ! さ、先に神器だけ転移させれば……? でも、その瞬間の隙をバックショットに狙われたら……!」
彼女はとてもやりやすい。頭が悪いとは少し違う。騙されやすいという表現でも、しっくり来ない。
いや……そうか。
多分、フコレは『弱者の嘘』に慣れてないんだ。彼女を前にして怯えず言葉を紡げる人間は強者であり、彼らは『その場凌ぎのハッタリ』なんて言わなかったから。
彼女の実力を理解できないほどの無才を相手にする時の定石なんて、最強が知るわけもない。
「……バックショット。やっぱり、あんたは脅威だわ。だけど、あたしの限界を見誤ったわね」
フコレの姿が消える。
「片手で神器を奪いながら、もう片方の手であんたを監獄に送る」
視界の端に、チカチカと。
「事前にイメージを作れば、簡単よ。あたしに考える時間を与えたのは失敗だったわね」
──雷光が瞬いた。
「いや、それがベストだ」
フコレの体が浮き、床に叩き付けられる。
「よく持ち堪えた、バックショット」
亜麻布のキトンを着た、黒髪ウェーブの女性。僭賞濫刑のボスは雷を纏って現れた。
「……最低の脱獄犯『ラウンドノーズ』」
フコレは手を使う事もせずに、自身を転移させて身を起こす。限りなく呼吸に近い、天与の異能行使。
だが、それは向かい合う女性も同じ。
「500億LP……!!」
「不足はないだろう?」
我が家の居候は不敵に微笑んだ。
「お待ちしておりました、ラウンドノーズ陛下。状況は把握しておられますか?」
陛下ー! 信じてましたよ、陛下ー! 最強気取りの『死線』とやらに、僭賞濫刑の力を見せ付けちゃってください!
あっ、お邪魔になるといけないので、私は後ろで応援していますね! へいか、がんばえー!!
私は腰巾着にジョブチェンジした。
「ああ、僕に任せろ」
やだ、格好良い……!(キュン)
「マナの流動性を利用した非接触の投げ技? また面白い『お遊戯』を覚えて……本当に暇人ね、ラウンドノーズ」
「僕の切り札の1つを遊戯扱いか……。君こそ変わらないな、死線。いけ好かない個人主義者め」
バリバリと空気が爆ぜる。
「竜の姿にはならないの?」
「こんな狭い場所で印芽を展開しても、良い的になるだけだ。君こそ、使わないのか?」
「飛行船の中は色々と制約があるのよ」
「そうか。ところで、1つ質問だが」
陛下の腕から放たれた雷をフコレが警棒で絡め取り、霧散させた。
「世界最強の君を倒せば、僕が『兵団級』に認定されるのか?」
「馬鹿ね。倒せないから最強なんでしょ。あたしに勝てた事が一度でもあった? 『亡国鬼』と2人がかりでも敵わなかったのに」
「人は成長するものだ。それに……君はバックショットに負けたのだろう? ならば、完全に無敵というわけではない」
フコレの転移先を読んだのだろう。陛下が勢いよく跳躍し、天井に逆さまで着地する。
「否定はしないわ。師団級全員に囲まれたら、ちょっとキツいかもね。試してみる?」
「笑わせてくれるな。あの中でまともに動かせるのは『傭兵』くらいだろう」
「『後追い』は?」
「女装趣味の根無し草に会う手段がない」
怪物2人の動きは目茶苦茶だ。間合いも上下左右も、あらゆる概念を壊していく。
「君を潰せば地球連邦に痛手を与えられる。──摘出手術の開始だ、悪性腫瘍」
「秩序を乱す悪は断罪するわ。──上があんたを捕まえて来いって煩いのよ、大犯罪者」
陛下が両手の甲を前に向け、フコレが応えるように半身で構えた。
「あの……私、帰って良いですか?」
「「駄目」」
ぴえん。
(陛下……流石に押され気味ですね)
フコレの奇襲に備えて足を動かしつつ、私は戦場を俯瞰して考える。実家で寝食を共にしてきた仲だ。陛下の余裕のなさは何となく感じ取れる。
それに、私の直感が告げていた。フコレ・リードから逃れる為には、もっと大きな『流れ』を生み出さなくてはならない。
頭の中で情報を繋ぎ合わせて、あの怪物を倒す方法を模索してみる。
(直接触れると転移の餌食。これだけでも選択肢が狭まりますが、では遠距離攻撃なら効くかと言うと……。まあ、無理でしょうね)
フコレを観察して分かった事がある。彼女は移動中の物体も対象にできる『エネルギー保存型』の転移能力者だ。
通常、転移のシグネットの行使には『標的の動きを止める』という前段階が不可欠らしい。それくらい、複雑で繊細な異能なのだ。
動いている物体を動いているままで転移させる事は、空間系の異能者にとって『全力疾走中の患者を手術する』ような神業。
だが、もしも……その机上の空論を完璧に実践できる人間がいたとしたら。それは、理論上最強と呼んでも過言ではない。
(銃弾もミサイルも、転移で『向きを逆にして』しまえば、運動エネルギーを保存したまま撃った側に返ってくる。おそらく、生半可な遠距離攻撃は通用しないでしょう)
陛下が何とか戦り合えているのは、雷のシグネットを精密に操作し、幾重にもフェイントを交えているからだろう。それでも、攻撃は届いていない。
(フコレ様の反応速度を出し抜く事が攻撃を当てる最低条件。ですが……)
私は差別主義者『ゴシップ』が落としていった拳銃を拾おうとした。瞬間、フコレの顔がギョロりとこちらを向く。
(やっぱり、攻撃の意思を察知する能力が高過ぎます。……実質、無敵じゃないですか)
飛行船に乗り込んだ時にフコレを気絶させられたのは、私が彼女を意識していなかったからこその奇跡だったのだ。
(もしや、ワッドカッター様は『
都合が悪いので、深く考えるのはやめよう。過去に囚われない気持ち、大事。
(しかし、こうなると……。サブソニック様の腕力やホローポイント様の搦め手を加えたとしても、勝てるイメージが全く湧きませんね。こうなったら、もう……!)
『ユーが行けば良いじゃないか』
(そうですね。ユー様が……。……えっ?)
今、何か……?
(……気のせいでしょうか)
『ノー。そういう小さなノーティスをペンディングするのはユーの欠点だ。もっとフラットにシンキングしないと。オーケー?』
訂正。気のせいじゃなかった。私はこんなエセ意識高い系みたいなウザい思考はしていない。
『ファザーから教わっただろう? バイアスを手放せ。思考をフリーにして、フィーリングに委ねるんだ』
私の視界が奇妙な記号で埋め尽くされる。拷問神父『ファラリス』と戦った時にも、こんな事があった。だが、今回はもっと凄い。
思考がクリアになる。拡大鏡でも覗いているかのように、世界の解像度が上がる。
私はキュロットスカートをはためかせながら、勘に任せて側転した。
「嘘っ……!? この不意討ちを躱すの!?」
フコレの驚いた顔が目に映る。
「転移後の硬直。君にしては珍しいミスだな」
「うっ……! しまった、痺れ……!!」
眠りから覚めた気分だ。今なら、何でもできる気がする。
『──さあ、全て壊そう。マイシスター』
頭の中に囁くような声が響いた。
(え、嫌です)
『え?』
(え?)
いや、私……別に破壊衝動とかないし……。上手く逃げて無事に帰宅できれば、それで……。
(というか、貴方……誰ですか?)
当然の疑問を思い浮かべる。マイシスターって何ですか。私は一人っ子です。
『イェア……ユーは何も知らないのか。では、改めて。ハロー、
体の芯が疼く。また、あの感覚だ。世界の全てを理解できそうな全能感。
『アイアム、
破滅装置を名乗る存在は、私に問いかけた。
『シャル・ウィ・ミラクル?』
暴れて欲しいラスボス人気投票
-
女性:【死線】ミス・リード
-
女性:【最低の脱獄犯】ラウンドノーズ
-
女性:【亡国鬼】サムネイル
-
男性:【後追い】ナゼ
-
男性:【眠らない傭兵】ステム
-
女性:【閉鎖病棟】ギープキィ
-
男性:【推定無罪】トゥルーエンド