※この作品はR-18です。

【問題】「勘違い系主人公が……(ピンポン!)自虐的クソザコ糸目女子の敗北CG回収物語! 異能闇組織の美少女ボスを添えて! 「正解!!」 ~何故だ! 何故分かる、バックショット!!~   作:信頼できる語り手

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ミステリーで的外れな推理をするタイプの刑事に目を付けられていますが、話せば分かると思います。

 私達が異能を行使する時、例外なく『印芽』が展開される。

 

 半透明な角、牙、爪、殻、羽、尾、等々。

 

 多くの場合、印芽は幻想生物を模したような形をとり、その大きさからマナ量──異能出力の高さを判断できるらしい。

 

 雑魚異能者は印芽を出しても精々がコスプレ程度の変化だが、実力者になると人外フェチが喜びそうな外見になり、一握りのトップ層は完全に異形化する。

 

 その代わり、印芽は弱点部位にもなり得るので、一流の戦いでは部分展開などの工夫が必要だ。私は三流以下なので関係ない。

 

 なのだが……。

 

「……っ! 何をしに来たのかしら?」

 

「自首ですよ、自首。私を逮捕してください」

 

 そう言った途端、顔見知りの刑事さんは血相を変え、厳重に保護された特殊な通信機を取り出す。明らかにトップ層(バケモノ)を収容する為の前準備にしか見えない。

 

「あの、すみません……。私に対して、厳重な拘束は無意味ですよ?」

 

 シグネットも弱いし印芽もショボいので、わざわざ拘束する労力が本当に無駄だ。普通に見張っておくだけで充分だろう。

 

「くっ……!」

 

 いや、何をそんなに悩む事があるの……? 犯罪者が自分から捕まりに来たんだよ? 鴨が葱を背負ってきたようなものでは?

 

「なるほど。あたしが僭賞濫刑について嗅ぎ回ってる事を見抜いて、わざわざ手を引けと警告しに来たわけね。涼しい顔して悪辣じゃない、バックショット」

 

「いえいえ、まさかまさか」

 

 いや、怖いよ。私の一挙手一投足を深読みしないで。私は単純に、僭賞濫刑を足抜けしたいだけなんだって。

 

「でも、貴女とお話するのも案外楽しいかもしれませんね。ふふ、そう思いませんか?」

 

 営業スマイル。捕まる前に少しでも心証を良くして、色々と便宜を図って貰いたい。

 

「……殺すなら殺しなさい。どれほど相手が強大だろうと、あたしは恐喝には屈しない!」

 

 ふぇぇ、言葉が通じないよぅ……。誰か通訳係を呼んでくれ。サブソニック以外で。

 

 この刑事さん──フコレは本当に思い込みが激しい人だ。あらゆる事件を私の仕業だと決めつけてくる。ミステリーの無能刑事かな?

 

 しかし、現実にその誤解を訂正し、真犯人を指差してくれる探偵役はいない。でもまあ、フコレ以外に伝手もないし、外出中に偶然会ったから、丁度良いかなって……。

 

「ふふ、今日のところはこれで失礼します。いずれ、また会いましょう。次はもう少し……私の期待に応えてくださいね、フコレ様?」

 

 何にせよ、意思表示できただけ1歩前進だと思いたい。間に人を挟んだ伝言ゲームみたいな事をすると、一生誤解され続けるからね! 直接会うの、凄く大事!!

 

 後は僭賞濫刑の連中にバレないように内部情報をチクりまくれば、フコレも私が信用に足る人物だと気付くはずだ。

 

 

 

「話は終わったか、バックショット?」

 

 秒でバレました。

 

「陛下、これは……」

 

「ああ、分かっている」

 

 僭賞濫刑のボス──ラウンドノーズの体がゆらりと揺れると、次の瞬間には黒のウェーブ髪が目の前にあった。

 

「陽動、ご苦労。付近の連中が君の行動に警戒を向けていたおかげで、僕達は楽に作戦を実行できた。礼を言う」

 

 礼を言われても困ります。過大評価やめてください。今日、何らかの作戦(はんざい)が行われていた事すら初耳です。

 

 皆様、私が何でも知ってる前提で話しかけないで頂きたい。知覚系のシグネット持ちじゃないんだから。言われた事しか分からないよ、私は。

 

「しかし、流石だな。印芽を展開すらせずにプロの尾行を撒いてみせるとは」

 

 私、尾行されてたの!?(無知無知女)

 

 あと、印芽は常時展開してました! 察知できないくらいの低出力でごめんなさい! 多分、象が蟻に噛まれても気付かないのと同じ理屈ですよね!?

 

「私は陛下のような強者ではありませんから」

 

「強者、か……」

 

 ラウンドノーズの表情が曇る。私、何か気に障る事言っちゃいました……? く、靴とか舐めましょうか……? へ、へへ……。

 

「君の言う通り、飛竜種(ティゴン)という希少な印芽タイプを持ち、マナ量も多い僕は世界的にも強者に分類されるだろう。だが、僕が欲しいのはもっと圧倒的な力だ」

 

「世界の秩序を破壊する為、でしたっけ? 僭越ながら、私程度の視座では想像ができませんね」

 

 彼女が事あるごとに掲げているスローガンだが、正直ピンと来ていない。

 

「具体的な手段を問うか。いや……確かに、最高幹部となった君には知る権利がある」

 

 陛下が端末の画面を見せてきた。綺麗な宝石の写真が私の目に入る。ちなみに、私はこういう物に大金を払う感覚を理解できない。

 

 石じゃん。同じ石ならソシャゲのガチャ石でも買った方がまだ有用だ。

 

「ただの宝石ではない。神の力を内包した『神器』。この写真に映っているのはその中の1つだ。識別名は『信桜』。他にも似たような神器が世界各地で発見されている」

 

「神器、ですか……?」

 

「かつて紛争時にこれが使用され、エリア083の都心部が丸ごと『蒸発』した」

 

「……蒸発!?」

 

 小国でも国として認められているという事は、防御結界が張り巡らされているはず……。それを全てぶち抜いたとなると、兵器なんて次元の火力じゃない。

 

 正しく、神の御業。

 

「故に、コズソルク条約で『神器』の所持は堅く禁じられている。破れば情状酌量の余地なく即刻死刑……いや、処刑か。まあ、一般には秘匿されている情報だ」

 

 どうしよう。陛下が物騒な情報を畳み掛けてくる。純度100%の厄ネタじゃん。

 

「世界中に散らばった神器を強奪し、現行の秩序を破壊する。それが僕達『僭賞濫刑』の最終目標だ」

 

「なるほど……」

 

 最悪だ。アウトローなのに、無駄に計画性がある。もっとフワッとした悪の組織であって欲しかった。

 

 いや……まだだ! そもそも私は仕事の最中、シグネットで外見の印象を変えている!

 

 流石の陛下にも『バックショット』の表の顔が『ヒトミ』だとは分かるまい! 今ならまだ逃げられる!!

 

「ああ、それと」

 

「何でしょう、陛下?」

 

 もう何が飛び出しても驚きませんよ!

 

「言うまでもない事だが、家では『陛下』でなく『ラノ』と呼ぶように」

 

 私は絶望した。……泣いて良いですか?




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