【問題】「勘違い系主人公が……(ピンポン!)自虐的クソザコ糸目女子の敗北CG回収物語! 異能闇組織の美少女ボスを添えて! 「正解!!」 ~何故だ! 何故分かる、バックショット!!~ 作:信頼できる語り手
私達が異能を行使する時、例外なく『印芽』が展開される。
半透明な角、牙、爪、殻、羽、尾、等々。
多くの場合、印芽は幻想生物を模したような形をとり、その大きさからマナ量──異能出力の高さを判断できるらしい。
雑魚異能者は印芽を出しても精々がコスプレ程度の変化だが、実力者になると人外フェチが喜びそうな外見になり、一握りのトップ層は完全に異形化する。
その代わり、印芽は弱点部位にもなり得るので、一流の戦いでは部分展開などの工夫が必要だ。私は三流以下なので関係ない。
なのだが……。
「……っ! 何をしに来たのかしら?」
「自首ですよ、自首。私を逮捕してください」
そう言った途端、顔見知りの刑事さんは血相を変え、厳重に保護された特殊な通信機を取り出す。明らかに
「あの、すみません……。私に対して、厳重な拘束は無意味ですよ?」
シグネットも弱いし印芽もショボいので、わざわざ拘束する労力が本当に無駄だ。普通に見張っておくだけで充分だろう。
「くっ……!」
いや、何をそんなに悩む事があるの……? 犯罪者が自分から捕まりに来たんだよ? 鴨が葱を背負ってきたようなものでは?
「なるほど。あたしが僭賞濫刑について嗅ぎ回ってる事を見抜いて、わざわざ手を引けと警告しに来たわけね。涼しい顔して悪辣じゃない、バックショット」
「いえいえ、まさかまさか」
いや、怖いよ。私の一挙手一投足を深読みしないで。私は単純に、僭賞濫刑を足抜けしたいだけなんだって。
「でも、貴女とお話するのも案外楽しいかもしれませんね。ふふ、そう思いませんか?」
営業スマイル。捕まる前に少しでも心証を良くして、色々と便宜を図って貰いたい。
「……殺すなら殺しなさい。どれほど相手が強大だろうと、あたしは恐喝には屈しない!」
ふぇぇ、言葉が通じないよぅ……。誰か通訳係を呼んでくれ。サブソニック以外で。
この刑事さん──フコレは本当に思い込みが激しい人だ。あらゆる事件を私の仕業だと決めつけてくる。ミステリーの無能刑事かな?
しかし、現実にその誤解を訂正し、真犯人を指差してくれる探偵役はいない。でもまあ、フコレ以外に伝手もないし、外出中に偶然会ったから、丁度良いかなって……。
「ふふ、今日のところはこれで失礼します。いずれ、また会いましょう。次はもう少し……私の期待に応えてくださいね、フコレ様?」
何にせよ、意思表示できただけ1歩前進だと思いたい。間に人を挟んだ伝言ゲームみたいな事をすると、一生誤解され続けるからね! 直接会うの、凄く大事!!
後は僭賞濫刑の連中にバレないように内部情報をチクりまくれば、フコレも私が信用に足る人物だと気付くはずだ。
「話は終わったか、バックショット?」
秒でバレました。
「陛下、これは……」
「ああ、分かっている」
僭賞濫刑のボス──ラウンドノーズの体がゆらりと揺れると、次の瞬間には黒のウェーブ髪が目の前にあった。
「陽動、ご苦労。付近の連中が君の行動に警戒を向けていたおかげで、僕達は楽に作戦を実行できた。礼を言う」
礼を言われても困ります。過大評価やめてください。今日、何らかの
皆様、私が何でも知ってる前提で話しかけないで頂きたい。知覚系のシグネット持ちじゃないんだから。言われた事しか分からないよ、私は。
「しかし、流石だな。印芽を展開すらせずにプロの尾行を撒いてみせるとは」
私、尾行されてたの!?(無知無知女)
あと、印芽は常時展開してました! 察知できないくらいの低出力でごめんなさい! 多分、象が蟻に噛まれても気付かないのと同じ理屈ですよね!?
「私は陛下のような強者ではありませんから」
「強者、か……」
ラウンドノーズの表情が曇る。私、何か気に障る事言っちゃいました……? く、靴とか舐めましょうか……? へ、へへ……。
「君の言う通り、
「世界の秩序を破壊する為、でしたっけ? 僭越ながら、私程度の視座では想像ができませんね」
彼女が事あるごとに掲げているスローガンだが、正直ピンと来ていない。
「具体的な手段を問うか。いや……確かに、最高幹部となった君には知る権利がある」
陛下が端末の画面を見せてきた。綺麗な宝石の写真が私の目に入る。ちなみに、私はこういう物に大金を払う感覚を理解できない。
石じゃん。同じ石ならソシャゲのガチャ石でも買った方がまだ有用だ。
「ただの宝石ではない。神の力を内包した『神器』。この写真に映っているのはその中の1つだ。識別名は『信桜』。他にも似たような神器が世界各地で発見されている」
「神器、ですか……?」
「かつて紛争時にこれが使用され、エリア083の都心部が丸ごと『蒸発』した」
「……蒸発!?」
小国でも国として認められているという事は、防御結界が張り巡らされているはず……。それを全てぶち抜いたとなると、兵器なんて次元の火力じゃない。
正しく、神の御業。
「故に、コズソルク条約で『神器』の所持は堅く禁じられている。破れば情状酌量の余地なく即刻死刑……いや、処刑か。まあ、一般には秘匿されている情報だ」
どうしよう。陛下が物騒な情報を畳み掛けてくる。純度100%の厄ネタじゃん。
「世界中に散らばった神器を強奪し、現行の秩序を破壊する。それが僕達『僭賞濫刑』の最終目標だ」
「なるほど……」
最悪だ。アウトローなのに、無駄に計画性がある。もっとフワッとした悪の組織であって欲しかった。
いや……まだだ! そもそも私は仕事の最中、シグネットで外見の印象を変えている!
流石の陛下にも『バックショット』の表の顔が『ヒトミ』だとは分かるまい! 今ならまだ逃げられる!!
「ああ、それと」
「何でしょう、陛下?」
もう何が飛び出しても驚きませんよ!
「言うまでもない事だが、家では『陛下』でなく『ラノ』と呼ぶように」
私は絶望した。……泣いて良いですか?
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