※この作品はR-18です。

【問題】「勘違い系主人公が……(ピンポン!)自虐的クソザコ糸目女子の敗北CG回収物語! 異能闇組織の美少女ボスを添えて! 「正解!!」 ~何故だ! 何故分かる、バックショット!!~   作:信頼できる語り手

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な……何事も挑戦するのに手遅れなんて事はないはずです。とは言え、やはり限度はあるわけでして……。もし駄目だったとしても私を恨まないで頂けると……。いえ、別に予防線を張ってるわけじゃないですよ!

「お前はやはり私の子だな」

 

 子供の頃。手製の小舟で海に出ようとして失敗した日の夜、私は父様に呼び出された。

 

「父さんも昔、似たような挑戦をした事がある。貨物船を乗っ取って他国……ああ、他エリアまで行こうとしたんだ」

 

 当時はまだマナ科学が進んでおらず、完全電子制御の船が現役だったらしい。天才ハッカーでもある父様にとっては、ご自由にお取りくださいと言っているようなものだ。

 

「私とは大分スケールが違いますけど……?」

 

「そうでもない。重要なのは手段ではなく、遠い地を目指そうとした動機だ」

 

 父様はいつでも淡々としている。母様なんて私を連れ帰る為に、銛を抱えて遠泳するくらいテンパってたのに。

 

 それで実際に救助された身としてはツッコみづらいけど、母様は本当に人間なのだろうか。片手で鮫とか仕留めてましたよ。

 

「私の場合は探究心だ。様々な条件に身を置く事で、自分の中に根付く無自覚な『偏見(バイアス)』の形を把握し、この世界を正確に観測したかった」

 

「偏見(バイアス)……?」

 

「思い込みの事だ。私達が世界を知る術は限られているからな。個人の意識で処理できる程度の情報量から理解しようとすれば、必ず勘違い(ゆがみ)が生まれる」

 

「……よく分かりません」

 

「素直だな。ヒトミは研究者に向いている。理解できない事を無理に消化してはいけない」

 

 父様は部屋の照明を消す。真っ暗になった。

 

「私の姿が見えるか?」

 

「見えません」

 

「では、私はここにいると思うか?」

 

「思います。父様の声が聴こえるので」

 

「根拠としては弱いな。私の声真似が上手い影武者か、もしくは予め録音した台詞を流しているのかもしれない」

 

 あ、確かに。

 

「これが人の限界。偏見のない『真実』を知る事は誰にもできない。しかし、人間の脳は勝手に『正しい世界』を構築する。そして、より強い者の『信条』に世界は染まっていく」

 

 その理不尽に抗いたかった、と父様は言った。

 

「……つい、喋り過ぎたな。私の悪い癖だ。次はお前の動機を訊かせてくれ」

 

 部屋の照明が復活する。急な眩しさに、私は普段から細い目を更に細めた。

 

「はい、父様。私は毎日が楽しくて仕方ないのです。なので、広い世界を知ればもっと沢山の『楽しい』が見付かると思いました」

 

「なるほど。簡潔でよろしい。だが、それで大怪我をしたらどうする? これまでの『楽しい』日常まで失う可能性もある。果たして、あの試みはリスクに見合っていたか?」

 

「怪我……」

 

 父様の指摘について深く考える。

 

「しませんよ」

 

「ん?」

 

「怪我なんてしません。だって」

 

 ようやく、明るさに慣れた。私は目を大きく開いて、対面に座る父様の顔を見る。

 

「──だって、そうならないように『選び』ましたから」

 

 だから、無事に帰れない不安はなかった。

 

「それとも、これも私の思い込みでしょうか?」

 

「……いや、偏見に囚われていたのは私の方かもしれないな。お前はむしろ……」

 

 父様は私の虹色の瞳を凝視する。

 

「ヒトミ。どうしようもない緊急時以外は、客観的に見て安全な方を選択してくれ」

 

「死ぬ可能性の低い方、ですか……?」

 

「そうだ。蘇生の術式は完璧じゃない。記憶や人格が破損して、楽しい事を感じられなくなるのは嫌だろう?」 

 

「……嫌です」

 

 せめて、この小さな体が大人っぽく成長するまでは死にたくない。私は素敵な男の人と知り合って、父様と母様みたいなラブラブ大恋愛を楽しむんだ。

 

「分かりました。気を付けます、父様」

 

 

 

 拝啓、父様、母様。如何お過ごしでしょうか。

 

 貴女の娘は今、巨大飛行船『オールヴルム』の……何かよく分からない配管に嵌まっています。ええ、それはもうズッポリと。

 

「くっ、胸が邪魔……!」

 

 オールヴルム号は『世界最大級の大型船がそのまま空を飛んでいる』と形容できる規模の空中要塞だった。自然の浮力ではあり得ない、最先端マナ科学の結晶。

 

 ワッドカッターが空けた船体の穴も既に塞がっている。自動修復機能もあるらしい。 

 

 そんな飛行船に侵入した私達はスパイものよろしく整備用通路を伝って目的地を移動していた。そこまでは良い。問題はその後。

 

 主戦力であるワッドカッターに人質を預けるわけにもいかない私は、刑事さん──フコレを背負って運んでいる。しかし、無口な暗殺者はそんな事情を考慮せずに先へ進むのだ。

 

「ふっ、ふっ……!」

 

 私はきめ細やかな白髪を追って、必死に匍匐前進をする。自慢の巨乳と巨尻が何度か引っ掛かるが、背中のフコレがスレンダーなおかげでギリギリ止まらずに済んだ。ナイス。

 

 フコレの体から流れ込んでくるマナで肉体を強化し、どうにか広い空間へと出る。全身が痛い。私は実力差も忘れてワッドカッターの胸ぐらを掴んだ。

 

「ワッドカッター様……そういうところですよ。女性への気遣いが足りないから、陛下に男性として意識して貰えないのでは?」

 

「……非」

 

「この際、言わせて頂きます。貴方は任務の遂行に忠実なのでしょうけど、それだけでは恋愛や交際には発展しませんよ」

 

 好き放題言ってしまったが、ワッドカッターは清聴している。そうか、任務中にペアを傷付けるのは陛下の意思に背く行為。彼は今、私に何もできない。

 

「陛下から私の性的絶頂を手伝う役を頼まれたみたいですけど、きっぱり断って恋心の告白に繋げるべきだったのではありませんか?」

 

 ああ……安全圏からのポジショントークって、凄く気持ち良いですね!!(恍惚)

 

「……是」

 

 ワッドカッターは講義を受ける学生のような顔で頷いた。その真剣さに少し怖くなる。

 

 な……何事も挑戦するのに手遅れなんて事はないはずです。とは言え、やはり限度はあるわけでして……。

 

 もし駄目だったとしても私を恨まないで頂けると……。いえ、別に予防線を張ってるわけじゃないですよ!

 

「ま、まあ、それに関しては後日話し合いましょう。とりあえず、何処に向かいます? 私達の任務は主要戦力の撃破らしいですけど……」

 

 エリア000の拠点戦力ともなれば、異能者の上澄みに決まっている。僭賞濫刑の最高幹部でも囲まれたら危ない。

 

 船内の警備兵達が銃撃戦の音を奏で始めていた。ちなみに、現代の銃は使い手の印芽と接続してマナを動力にする為、私には使いこなせない。不平等な話だ。

 

 ワッドカッターが銃声のしない道を指差す。

 

「こちらでよろしいですか?」

 

「是」

 

 まあ、妥当な判断だ。暗殺に長けた彼がわざわざ人の多い方に行く理由はない。

 

 

 

 有名な指名手配犯には多額の懸賞金が懸けられている。

 

 しかし、そんなモノは地球連邦が『無法者に屈しない』姿勢を示す為の飾りに過ぎない。危険度の指標としては『兵力換算(FR)』という基準の方が有名かつ正確だ。

 

 その存在に対処する場合、どの程度の人員を動員すべきか。秩序側の人間も一律で評価されている為、賞金額より信頼性が高い。

 

 兵力換算は、分隊・小隊・中隊・大隊・連隊・旅団・師団・兵団の8階級。

 

 一番下の分隊級ですら特筆すべき戦力だが、師団級以上はもう次元が違う。エリア000でも逮捕を諦めるような化け物しかいない。

 

 亡国鬼『サムネイル』。閉鎖病棟『ギープキィ』。後追い『ナゼ』。最低の脱獄犯『ラウンドノーズ』。眠らない傭兵『ステム』。推定無罪『トゥルーエンド』。

 

 そして、世界唯一の兵団級。彼女が体制側にいる限り、地球連邦の敗北はない。あらゆる闇組織にそう言わしめる怪物。

 

 死線の『ミス・リード』。

 

 いずれも、規格外の異能者だ。1級異能者程度が調子に乗って挑めば、最低でも一生残るトラウマを植え付けられるに違いない。

 

 以上、匿名掲示板『ラフトラック』より抜粋。

 

 

 

「いかんなぁ……。まだ生きているではないか。トドメを刺し忘れた部下は折檻しなくては」

 

 床に倒れていた船員の心臓を半透明な枝が貫く。伐根種(ヘルラス)の印芽を携えた男は神父の格好をしていた。

 

「不謹慎だろう。世の中には人を殺したくても殺せない、可哀想な子供達もいるのに。我々は丁寧に感謝して、殺人を完遂せねばならないのだ。おお、神よ、彼らを救いたまえ」

 

 神父は船員の遺体を両腕で抱え、そっと壁際に置いて祈りを捧げる。暑い。広い通路にサウナのような熱気が充満していた。

 

「熱のシグネット……! まさか、拷問神父『ファラリス』ですか……!?」

 

 以前に戦った『NSFW』のボス。私の記憶が正しければ、旅団級の指名手配犯……! こんな大物の賊が、私達以外にも潜り込んでいたなんて!!

 

「如何にも。お初にお目にかかる、確率反逆者『バックショット』。君ほどの実力者を討ち取れる好機が巡ってくるとは、正しく信仰の賜物だろうな」

 

 この状況は不味い。ワッドカッターは……。

 

「『界壁割り』を初手で放逐できたのは大きかった。彼の強さは慎みがない。転移能力を持つ部下を大量に特攻させて、ようやく場外勝ちとは。まったく、不謹慎な話だ」

 

「転移能力……。空間系でも希少な人材を使い捨てるなんて、贅沢な……」

 

 高温で頭がくらくらする。汗が流れ過ぎて脱水症状も表れている。体が怠い。

 

「金で動く俗な連中と違って、無償の愛が我らNSFWの信条。故に、目的を遂げられればコストなどは気にしない」

 

「プロ意識が、ないですね……」

 

「当然だとも。我は自身がアマチュアである事を誇りに思っている」

 

 私は堪らずに服を脱ぐ。羞恥を感じる余裕もない。無意識の生存本能だった。ファラリスがそんな私を見下ろしている。

 

「さて、そろそろ限界だろう。我に先手を譲ってしまった時点で、もはや手遅れ。異能者であっても人間は人間だ。人は熱に耐えられない。……フェイスベールは脱がなくて良いのかね?」

 

「脱がせて、みたら、どうです……?」

 

 息も絶え絶えになりながら挑発した。ファラリスの意識が口元に向かった隙に、靴下に隠しておいたテープ剤を足に貼る。

 

(信じますよ、陛下……!)

 

 絶頂補助薬。こうなったら、未だに全貌が不明瞭な『敗北絶頂予知』に賭けるしかない。

 

「ふむ、濡れているのか。君は男の欲情を煽る体をしているな、バックショット。これもまた、神の配剤」

 

 熱中症のせいか、薬のせいか、私の思考は急速に蕩けていく。時間の流れも曖昧になって、意識が散逸する。

 

 ただ、植物の蔦のような印芽が絡み付いた陰茎が挿入され、膣肉を掻き抉られる快感だけが脳を焦がした。

 

「あ……っ!」

 

 私が喘いだ瞬間、ファラリスが眉を顰める。

 

「違う」

 

「ほぇ……?」

 

「何だ、今の中途半端な喘ぎ声は! 君は神から与えられた潜在能力をまるで引き出せていない! 半音下げるか、もしくは上げる! そうでなくては、宝の持ち腐れだ!!」

 

 神父は意味不明なキレ方をしながら、私の腰を掴んで前後に動いていた。

 

「あ゛……っ!」

 

「膣内もだ! せっかくの名器なのに、収縮のリズムが悪い! もっと呼吸を合わせたまえ!」

 

「いっ……あぐ……っ!」

 

「胸は指1本分大きく揺らすべきだ! どうして、こんな事も分からない! 神が与えた才能に胡座をかいて! 何と不謹慎な!!」

 

 私は何故、説教されているのだろう。これまで感じた事のない怒りと屈辱。しかし、下腹部は震えるほどの熱を帯びている。

 

「貴方、絶対、許しませ……! あ゛……っ! やだ、やだ……! 離して、ください……! こんな人の……! 奥で、イ……キ……っ!!」

 

 

 

 私は白髪の暗殺者の腕を握った。

 

「待ってください、ワッドカッター様。こちらには拷問神父『ファラリス』とその部下達がいます。気を付けて進みましょう」

 

「……?」

 

「ええ、どうやら私達以外にも乗り込んでいる集団がいたようです。私が先に行って隙を作るので、ワッドカッター様がまとめて暗殺してくれますか?」

 

「是」

 

 こんな時、事情を詮索しない相手はありがたい。私は背負っていたフコレを床に転がし、周囲を警戒しながら慎重に歩く。

 

 呪術で気配を消して、慎重に。

 

「こんにちは、NSFWの皆様」

 

 私に注目が集まる。既にワッドカッターの見えざる刃は振り抜かれた。

 

「では、手早く終わらせましょうか」

 

 雑兵達が一斉に絶命する。おそらく、その刃はファラリスの首にも……。

 

「界壁割り『ワッドカッター』。どれだけ愚民の血に紛れ込もうとも、選ばれし人間は匂いで分かる」

 

「流石だ、ゴシップ。君の慎みに感謝しよう。まあ、一撃くらいなら自力で防げたが」

 

(差別主義者『ゴシップ』……! 他にも旅団級がいたのですか……!? しまった!!)

 

 私の意識が走馬灯のように加速した。速すぎて見えなかったが、多分ワッドカッターの急襲は失敗に終わっている。この隙に熱波が来たら……。

 

 ゴシップとワッドカッターが睨み合っている間に、私はファラリスの方へと走った。とにかく、どうにかしないといけない。

 

「我が狙いか。君のような美人に迫られるとは光栄だな、確率反逆者(スロット・カウンター)『バックショット』」

 

 植物状の印芽が具現する。両者のスペック的に考えて、直接対決では勝ち目がない。だが、私がやるしかないのだ。

 

 敵を視界に捉えろ。活路を見出だせ。思考ではなく反射で避けろ。

 

『立ち止まれ(フリーズ)!!』

 

 脳内に誰かの声が響く。私は反射的にビクリと足を止めた。鼻先を何かが掠める。

 

『ゴー!!』

 

 私は再度、駆け出した。視界が謎の記号で埋め尽くされる。私には何となく分かった。あれは……数字だ。

 

「ぬ……!?」

 

「美人だなんて照れますね。お礼に少しサービスしてあげましょう」

 

 視える。どう動けばファラリスの攻撃を躱せるのか。安全地帯を選んで踏み込める。私は両足を完全に開いて腰を落とし、首狙いの枝を避けながら床を滑った。

 

「何という柔軟性……!」

 

「子供の頃にダンスを習っていたので! だから、リズム感がないのは貴方の方です!」

 

「ぐっ……こうなれば、最大出力で範囲加熱を! 巻き込むが恨むな、ゴシップ!!」

 

 やっぱりだ。薄々、違和感はあった。旅団級の異能者にしては、ファラリスの攻撃は控え目過ぎる。小回りが利かない能力故に、普段はセーブしているのだろう。

 

「ふふ、貴方の言った通りですよ、ファラリス様。異能者であろうと、人は熱に耐えられない」

 

 私は全身のバネを使って全力で後退した。突然の行動にファラリスが動きを止める。

 

 

 

 ワッドカッターのシグネットは、空間を刃に変形させるという単純なものだ。

 

 水を巻き込めば水の刃。火を巻き込めば火の刃。だが、彼が普段から好んで使うのは、単純に空間を固めた見えざる刃である。

 

 その巨大な刃が数枚。隙間のない立方体となってファラリスを閉じ込めていた。

 

「ぐ、ああああ……っ!」

 

 逃げ場のない空間。最大出力の加熱が彼自身の身を焼く。

 

「ファラリス……! くっ、下賤な愚民が……!」

 

「非」

 

「ぁ……」

 

 ズバッと。ゴシップの体が裂けた。暗殺者から一瞬でも目を離せば、死が待っている。

 

「や、やめろおおお……! 暑、い……っ!」

 

「ありがたい説教のお礼です! 自分の印芽(さいのう)で自滅しなさい……!!」

 

 これで、私達の勝ち……。

 

「このような不謹慎……認められるか!!」

 

「なっ……!?」

 

 ワッドカッターの刃が歪み、熱が外に漏れ出す。ファラリスはその隙間から脱出した。

 

「くっはは、掴んだ! 掴んだぞ! 今際の際でシグネットに指向性を持たせるコツを掴んだ! 不謹慎だが、喜ばずにはいられんなぁ! さあ、反撃の時間……」

 

「いいえ、時間切れよ」

 

 神父の姿がフッと消失する。

 

「あんた達……NSFWは民間人に多大な被害を出している。見逃す理由はないわ」

 

 几帳面に手入れされた黒の革靴が床を叩いた。私は口に手を当てる。

 

「空間系の転移シグネット……? 高濃度のマナを含む異能者の体は、直接能力対象にできないはずでは……!?」

 

「そうね。でも、周りの空間には作用できるの。問題点があるとすれば、能力調整の難度が高過ぎてあたし以外にやれる人がいない事ね」

 

 舟形帽の下の怜悧な目が私を睨んだ。

 

「説明するまでもなく、分かってるでしょ? ……僭賞濫刑のバックショット」

 

 彼女は時代錯誤の婦警制服から警棒を取り出し、私に向ける。

 

「このあたし──死線の『フコレ・リード』に対して唯一勝利を収めた、あんたなら」

 

 死、線……。え、ちょ……嘘……。

 

「あんたには感謝してるわ。人生で初めての敗北を経て、あたしは自分の正義を見詰め直した。だから……全力で倒す」

 

 あー。……私、死んだかも。




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