偽マキマ(♂)になった男、異世界でハクスラをする 作:超これゐと人
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生命の人格は、生まれ持った魂によって決定されるわけではない。
そのほとんどは環境や教育で変わるものだ。
それでも稀に、在り方が決まっている"型を持った魂"も存在することを、私は知っている。
彼らは魂に刻まれた"在り方"を求めずにはいられない。
それ故に、他者への共感や興味が著しく薄いこともあり、その逆もある。
一つ言えることは、彼らは生まれ持った天命に抗うことはできないということだ。
そのはずだった。
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自他ともに認める自堕落である僕は、その日も仕事をさぼっていた。
権能を使えば他の世界を覗くこともできるが、結局自分の世界が一番かわいいものだ。
そう思っていつもの通り、下界を覗いた。
だから、僕がその家族を見つけたのは偶然だった。
両親は子を愛し、子も両親を愛していた、唯の温かい家庭。
しかし、それこそが異常だった。
息子の魂は、どうしようもないほど"支配者"を象っていた。それこそ、名を
異常だった。
他者と対等な関係を築き、ましてや敬うことなどありえなかった。
支配とは、他者を自らの下に置き、管理し、搾取することなのだから。
だから、興味が湧いた。分霊を送り込み、彼とコンタクトをとるほどに。
教育や環境が良くても、支配者の性を抑えることなどできるはずがない。
彼の友人を装えば、理解できるのではないか。もしくは、ボロを出すのではないか。
・・・彼と接しているうちに、気づいたことがある。
面倒くさがる割に世話焼きなこと。
偏食を嫌うこと。
動物に好かれやすいこと。
いつの間にか、彼といると落ち着くようになっていること。
一人のときも彼を考えてしまうこと。
彼が自分を見てくれないと、不安になること。
彼と親しい人たちも、恐らく自分と同じであること。
果たして、目的は果たされた。
彼はその善性で、"支配"の本能を抑え込んでいる。
しかし、その全てを誤魔化せているわけではない。
"愛"という形で、他人を支配しているのだ。誰かを愛し、愛されることで。
なんて歪なのだろう。
なんて悍ましいのだろう。
なんて愛おしいのだろう。
『・・・欲しい』
自分は自他ともに認める自堕落だ。
だからこそ、"こんなミス"しても誰も違和感を覚えない。それを人間に尻拭いさせたところで、上司は呆れ怒るだけだろう。『神としての自覚を持て』『勝手なことをするな』と。
あの世界、あのダンジョンは魂を鍛える儀式として用意した。
もともと魂の"格"が高い彼なら、きっと至ってくれるだろう。
僕と結ばれるのに相応しいほどに。
神であっても、僕らの邪魔をできないように。
「だから、多少の
それが彼を──カワマキマコトを愛し、愛されるために必要ならね。
そう
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入学までの流れは順を追って話そう。
俺は女神の言うとおり、"
やけに美化された姿で祀られていた女神様の言葉を、二人はどうやら聞くことができるらしい。
受け取った"支配"の能力の影響か血筋にない筈の赤髪の赤子として生まれた俺を、躊躇うことなく受け入れてくれた。
また、やはり俺の目的も把握しているらしかった。
彼らは女神から聞いたであろう、様々なことを教えてくれた。
順当にいけば、原作開始と同タイミングで入学できること。
豊葦原学園は完全推薦型で、一般入試を行っていないこと。
悪魔が発生するのは女神が世界を覗いていた時期。つまり、原作開始後の豊葦原学園から行けるダンジョン内のみであること。
校内での弱い学生の扱い。
男女の立場の違い。
etc.etc...
最も急務なのは、推薦元の確保だった。
幸い信者の中には元卒業生がおり、両親が親交を深めることでお願いできたのだが、一つ条件があった。
『私には耶麻音という義理の娘がいるのですが、片親ゆえ、構ってあげる時間をとれないのです。私が忙しい日は、御宅で預かっては頂けないでしょうか』
どこか影のある子だな。
初めてヤマネにあった時、そう感じた。
おどおどとした態度は、単なる人見知りではない。
恐らくは、不信。父親がおらず、母も忙しいうえ血がつながっていない。
彼女がそれをどれだけ理解しているか分からないが、頼れる人間がいないのは寂しいものだ。
だから、ヤマネがくる日はできるだけ甘やかすことにした。他人の痛みがわかるほど大人じゃないけど、よりかかる場所くらいにはなりたかったから。
その甲斐あって、ヤマネは想像以上に懐いてくれた。
『私も同じ高校行く!』って言いだしたときは焦った。
一般生にはダンジョンで死んでも生き返ることだけ伝えられているが、これはノーリスクではない。
一度でも死んだ者は、生殖機能と大幅な寿命を失ってしまうことになるらしい。
しかも、学園の女子のほとんどは男に性的暴行を受けることになる。
情報を伝えて『やめたほうがいい』って言ったら『分かった!』って納得してくれたけどね。
何はともあれ、そこまで大切に思ってくれるのは嬉しいものだった。
そんなこんなで時は進んで。
俺が新たな生を受けて、15年目の春のこと。
俺はついに、舞台である豊葦原学園へと足を踏み入れていた。
「こんな辺境なのに、結構活気がありますねぇ。緊張しますが、私とマキマの新生活が始まるのは嬉しいです!」
・・・ヤマネ、着いてきちゃった。
あれぇ?あの元気な返事は何だったのかなぁ?
もう、どうしようもねえよ・・・推薦状書くの、ヤマネの母さんなんだもん・・・説得済みだったもん・・・
なんかやけに乗り気だったし。『マコトくんならダイジョブでしょ。耶麻音を守ってあげてね☆』とか謎ポーズ取りながら言われたし。きゅぴきゅぴしたポーズなのに、歳の割に似合ってたのが腹立たしかった。
・・・ええい、チート転生者が友達一人守れないでどうする!ヤマネが着いてくると決めたのは俺のせいなんだ。その選択を後悔させないようにせねば!
「さっきも言ったけど、女子寮内以外は監視つけるから。悪いけど、ヤマネを守るためなんだ。許してくれ」
「えへへ・・・マキマになら、いつ視られてもいいですけどぉ。その
「どうしよう・・・うざったい幼馴染で困っちゃいますねぇ。あと、マキマ呼びやめて。それ、苗字の要素を多分に含んでるからさ」
この学園では、苗字を他者に知られることは避けるべきなんだそうだ。女神さまによると呪術的な云々らしい。
今世でも俺の名前は変わらず河牧慎である。中学の友達からは間をとってマキマと呼ばれていたが、念のため控えてもらうことにした。
「はいはい。じゃあマコト?同じクラスになれるか分かりませんが、
「・・・ああ、よろしく」
天真爛漫といった風に笑う彼女を見て、自然と笑みがこぼれる。
これからの学園生活の不安が、少し和らいだ気がした。
◆◆◆◆◆
豊葦原学園、灰鳩寮。
荷物を運びこみ終え、ひと段落ついた俺は洗面台の前に立っていた。
「こうしてみると俺、すげぇマキマさんに似てるな…」
成長した俺は、綺麗な赤髪の美少年になっていた。男体化…というよりは、少し童顔でベリーショートのマキマさん、と言った方が正しいだろうか。特徴的な目もそのままだが、本家よりは可愛げがあるぞ。
「個人的にはもう少し短くてもよかったんだけど。母さん、これ以上髪を切ると悲しい顔するから、切れなかったんだよな…」
人によっては、女性と見間違えるかもしれない風貌。最初は違和感があったこの容姿も、15年も過ごせば慣れてくる。
とはいえ、この学園で"カワイイ"男子って目を付けられそうだし、切っとこうかな…?
「えー?切らない方が僕は好きだけどな?」
「!?うわっ!!」
気づいたら、部屋の入り口に小さな人影があった。中性的な顔立ちだが、制服から男子だとわかる。
豊葦原学園の寮は基本2人部屋。恐らく彼は、俺のルームメイトだろう。
「ごめん、気づかなくて!荷物運び手伝うよ」
「ふふ、ありがとう。だけど心配いらないよ。荷物、届いてるやつだけだから」
そういうと彼は荷物と共に腰を下ろし、向き直る。
「僕の名前は…
「俺は
「ふふ、実は僕も。学校が学校なだけに、おっかない人がルームメイトだったらどうしようかと思ってた」
実際俺はかなりホッとした。俺はこの学園の価値観に染まりすぎたくない。
ルームメイトとは、学園生活でも関わりが深くなりやすい存在だ。彼がまともな人間なら、行き過ぎない為の指針になる。
「何はともあれ、これから宜しくね」
「ああ。宜しく!」
五年間の学園生活と、悪魔退治。
行く先は不安だけど、同時に期待だってある。
そんな学園生活が今、始まろうとしていた。
こちらを見つめる麓斗のどろりとした笑顔に、気が付かないまま。
tips:女神さま
どこにでもいる普通の恋する女神さま。
様々な権能を持っているが、分霊は使えるものが限られているらしい。
全然関係ないけど、日本において鹿は神の化身らしいよ。