偽マキマ(♂)になった男、異世界でハクスラをする 作:超これゐと人
入学式当日。
「うぇーん!ああは言ったけど、やっぱり同じクラスがよかったですよぅ!」
「こればっかりはどうしようも・・・俺も一緒が良かったけどさ。ああ、もう。泣くなって!」
「・・・(真顔)」
「うわぁ!いきなり落ち着くな!」
貼りだされたクラス分けの紙を見た後、俺たちは人気のない場所に移動した。
ダンジョン内は兎も角、いたるところに監視カメラや盗聴用マイクがあるこの学園では基本、内緒話などできないのだが・・・
「なんてこった。
「ふっふっふ、マコトさん。おぬしもワルよのう・・・」
ここは女神さまに事前に教えてもらったスポット。
この場所を映す監視カメラは1台、付属するマイクも1つ。
それらを好奇心旺盛なカラスが偶然攻撃した・・・わけではもちろんない。
「マコトの『支配』は、やっぱり恐ろしいねぇ」
「まあ、カラスは基本”格下”だからね。協力してもらったんだ」
「私はカラスにも勝てそうにないですけどねぇ」
この学園には俺が用意した被支配下の野生動物を何匹か紛れ込ませている。
彼らの五感を拝借して情報を集めたり、ヤマネ周りの監視もさせてもらっている。
ヤマネにはこの能力を説明済み・・・というか、せざるを得なかった。
彼女が女神の存在を知っているのもあるが、一番は彼女自身の特異性にある。
俺の能力で『支配』をすると、被支配者とは不可視の鎖でつながれる。これは物理的な実体を持たない概念的なものなのだが、なぜか彼女には見えているらしい。
女神さま曰く、彼女は生まれつき『
これにより、彼女が理解できないものが視覚的に形となって視えることがあるという。
彼女は俺に自身が支配されていないと分かっているし、そもそも人間には使っていないことも分かっているからこそ能力を知っても俺と仲良くしてくれている。正直、嬉しい誤算だった。
「まあ、ダンジョンさえ解禁されればこんなリスクをとる必要もなくなる。結局一番最初が山場なんだ。問題はヤマネがファーストダイブで生き残れるかだ」
「支配済みの鼠を隠し持っていけばいいんですよね?」
「次善策だけどな。ファーストダイブは殺しにかかっているらしいから不安だけど・・・最悪、
正直
ファーストダイブは生徒を確実に殺すために”既知外領域”というレベルの高い敵がうろつく場所に送られるという。そもそも、俺が忍び込める確証もない。ヤマネが初見で生き残るのは難しいだろう。
だが、これはあくまで次善策。他に当てがないわけではない。
「ファーストダイブの日程は俺のほうが先だ。そこで一体、悪魔を『支配』する。そいつに無条件でヤマネと契約を結んでもらう。恐らく、これが最善だ」
「でもそうなると、マコトは初ダンジョンで生き残って且つ、悪魔まで倒さなきゃいけないわけでしょ?私のために頑張ってくれるのは嬉しいけど、それでマコトが死んじゃったら元も子もないじゃん」
「おいおい、俺は女神さまの寵愛を受けたマコトさんだぜ?策があるに決まってるでしょ」
「・・・無理はしないでくださいね。
「・・・それは、困るね。無茶しないよ」
なんともカッコ付かないまま生きて帰ることを約束し、俺たちは入学式に向かった。
◆◆◆◆◆
こんな変な学園でも、校長先生の話は長かった。
入学式を終え、自分の教室である壱年
原作主人公がいるのは確か
原作主人公である
どういった類の異常者なのかは知らないが、おそらく『自分を野原ひ〇しだと思い込んでいる一般人』の親戚か何かだろう。どちらにせよ当分関わりたくないものだ。
・・・いや、だからこそ知っといたほうがいいのか?
席に座った俺は近場に居た雀に、丙組が見える位置に飛んで行ってもらう。
雀など大抵の鳥類は獲物を捕らえるために視力がとてもよい。
少し離れた木に止まって視界を借り、部屋の中を覗き見る。
瞬間、無茶苦茶厳つい男と目が合った。
「ッ!?」
え、こわ、こいつ。感良すぎでしょ。可愛い雀さんがちょっと覗いただけですやんか。
雀を見つけることは流石にできなかったのか、見つけたうえで視線の主が鳥だと思いもしなかったのか。
すぐに彼は首を傾げ、目をそらした。
あまりにも彼の
あ、あれが船坂叶馬・・・
・・・俺、午組でよかった(切実)
「・・・い。おーい聞いてるか?」
「!ごめん、ぼーっとしてたわ」
いつもなら複数の視界を借りながら作業もできるのに、驚きすぎて反応できなかった。
どうやら、隣の男子が話しかけてくれたらしい。
「おいおい。新生活で浮かれるのも分かるけど、シャンとしたほうがいいぜ?俺は
「悪い、気を付ける。
「ああ、よろしくな!」
金髪に日焼けした肌とチャラそうな見た目だが、言動の節々に人の好さが溢れ出ている。遊んではいるかもしれないが、常識人の香りもする。
陰キャからは避けられがちだが、このタイプの陽キャにもいい人はざらに居るのだ。
偶にやばいやつもいるけど。
そういえばロクは───ああ、やっぱり同じクラスだ。同室だもんな。
少し離れた席にいたロクも視線に気づいたようで、こちらに手を振ってきたので振り返す。
そんなやりとりをしているうちに鐘の音が鳴り、オリエンテーションが始まった。
◆◆◆◆◆
今日はいよいよ午組のファーストダイブの日である。
俺たちの前にあるのは『穿界樹ユグドラシル迷宮』の枝界ダンジョンへと通じる、通称『羅生門』である。
今回使うのは第一『始界門』。使用者の魂魄パターンを登録するのが今回の目的である。
「はぁい、じゃあ一緒に潜るパーティで列をつくってねー」
担任のギャル系である
この学園は希望して入学した人だって勿論いるが、
綺麗な人ではあるが、仮にも学校側。
気を許しすぎないようにしなきゃな。
「でも、ほんとに良いのか?お前さえよけりゃ、うちのパーティに入ってほしかったんだがな」
「ごめん、でも初めてのダイブは一人でいろいろ試してみたいことがあるんだ。次また誘ってくれると嬉しい」
「うーん、大人数のほうが絶対いいと思うんだけどなあ・・・」
「次回は一緒に潜ろうね」
アキラとロクはわざわざ俺を誘ってくれた(優しい)が、今回は一人で潜らせてもらいたい。いくらチートがあっても、流石に誰かを守りながら生き残り、悪魔まで倒すのは骨が折れる。
俺はチート転生者の類だが、悪魔も人間も支配していない今の俺はちょっと身体能力のいい一般人だ。
・・・悪魔を倒しながら、失った
二人を見送った俺が一人で指定の二重円の中へと入ると、ケイ先生が声をかけてくる。
「え~?マコトくん、わざわざ一人で潜るんだねぇ。何か面白い策があるのかな?」
「そりゃあ聞くも雄編、見るも傑作な逸品がありますよ。聞いてみたいですか?」
「聞きたい聞きたい!」
まあ、聞きたいか。適当に誤魔化しとこ。
「
「・・・うん!まぁ、はは。頑張って生き残ってくれると先生も嬉しいよ!いってらっしゃい!」
そ、そんな可哀想な奴を見る目をしないでくださいよ。冗談ですやん・・・
沈んだ気分のまま、自分の身体が滲み、バケツの中の絵の具のように消えていく。
アルファベットや中国語などの、様々な文字に囲まれる。
不思議な視界に困惑し、その文字を解読しようとして・・・
瞬間、
酔うような眩暈と、圧迫感のある空気。現実味を帯びた非現実的な感覚。
「これがダンジョンダイブ、か・・・転生経験者でも、不思議な感覚だ」
・・・さて。悪魔を探す必要もあるが、事前準備としてある程度レベルも上げておきたい。まずはゴブリン狩りをしたいところだ。
周囲に人間の気配はない。既知外領域は広いと聞くし、やはり他の同級生とは離れているのだろうか。
そうして辺りを探索していると、視界の端に、3つほど緑色の小さな影が見えた。
「流石に、ここでやんなきゃ始まんないよな」
俺は事前に支給された警棒を両手に握り、こっそりと彼らに忍び寄る。
学校からの支給品は、やけに頑丈な制服と小さなプラスチック製の盾、そしてこの警棒である。
救急セットの類が無いことから、やはり学園側は、生徒に死んで
正直回復手段がないのは結構厳しいので、ここは無傷で仕留めたい。
「ハァッ!」
「!?グギャ!?」
最後尾のゴブリンの頭を、思いっきり叩きつける。
手ごたえはあったが、更に足を踏み込んで瞬時に下から股間に振り上げる。
原作マキマも肉体強度こそ人並だったが、真チェンソーマン相手に徒手空拳で渡り合うほど
・・・上々だ。
「グ、グギャ!?」
「ギギッ!!」
ようやく理解が追い付いたらしい
「ここからが本番、だな」
こうなっては速攻は愚策だ。一撃の威力を重視した俺は今、盾を持っていない。
そもそも、素人が小さな盾で攻撃を受けきるのも難しいだろうと判断。
今至近距離で殴り合って仕留めたとしても、必ず被ダメをうけてしまう。
「グギギッ」
「グギャギャ!」
一斉にこちらに走り出し、棍棒を─────振る。
「ふっ、ハァッ!」
振り終えた隙をついて、手前の一体に一撃を入れる。
言葉にすれば簡単だが、これがなかなか難しい。
ゴブリンの棍棒を振る速度は目で追える程度だが、それと避けきるのでは話が別だ。普通なら、身体が追い付かない。
その上、2体のゴブリンがほぼ同時に振らないと隙とはいえない。そういうときは欲張らず、距離をとって仕切りなおす。
正直、前世の身体で全てを捌ききれた自信はない。
「悪いな。おとなしく死んでくれ」
最後の一撃を加え、その身体が消えるのを見届けた俺はひとりごちる。
「俺、初めて人型の生き物殺したな」
ゴブリンはなかなかに凶悪な容姿をしているが、それでも二足歩行の生物だ。
動物を殺すことすらしたことのない俺にとって、想像以上に堪える事実。
急に実感が湧いてきて、その事実に吐き気を覚え、飲み込む。
死体が残らなくてよかった。ダンジョン内で隙を見せるわけにはいかないからな。
「あーくそ。俺は
ぱしん、と左手で頬を叩き、気合を入れ直す。
兎に角、最初の山場だった初キルは達成したんだ。
この様子ならゴブリンの『支配』もできるだろうし、そうなると”アレ”も使える。
ロリ女神さまの言い分的には、浅い階層にまで登ってきている奴がいるとしたら既知外領域でも
本当にやばい面々は、”めがみぱわー”とやらで下の階に抑えているそうだ。
つまり、この辺りにいるような奴は今の俺でも勝てる見込みはあるわけだ。
警棒を素振りしたり、跳ねたりしてみると、少しだけ体が軽くなった気もする。これがレベル上げの恩恵なのだろうか。
「タイムリミットまで五時間くらいか?なんにしても、レベルを上げないことには始まらないな」
ダンジョンの廊下は暗くはないが、奥まで見通せるほどでもない。
独りぼっちの不安に耐えながらも、俺は足を踏み出した。
しかいもんくん「えぇ、コイツの魂キモ。俺これ覚えなきゃいかんの・・・?あ、なんか勝手に転移しちゃった。きも・・・」