全てを抜き去る転生者 ~TS痴女のルサンチマンは過酷な栄光を掴み取る~ 作:信頼できる語り手
君、次やったらマジで『これ』だからね?
「ランカー狩り……でございますか?」
黒髪の従者『
「人聞きが悪いな。僕達はダンジョン攻略の最中に『偶然』ランカーと遭遇し、『運悪く』決闘になって、『幸運にも』万全の備えをしていたおかげで返り討ちにするんだ」
生身で彼女に会うのは久し振りだ。僕とした事が、少し饒舌になってしまう。
「正しく日頃の行いの賜物だよ。華のある女性供献者という話題性も後押しし、視聴者からの信仰も集まるだろうね。そして何より、『決闘』の絶対的ルール」
「……敗者は勝者に信仰を奪われ、アバターの力は大きく減衰する」
僕は明亜の理解に満足し、頷いた。
アバター間の関係性を『係累』と呼ぶ。兄と妹、師匠と弟子、上司と部下、主人と従者。ダンジョン内で築かれた偽りの絆は、強固なイメージをアバターに与えるのだ。
決闘の勝者と敗者となれば、言うまでもない。誰もが勝者に注目し、信仰が一気に移動する。僕の大好きな下克上だ。
「ですが、
「分かってるよ。当然、事前の仕込みはするさ。ダンジョンの外……この現実世界で」
凡人の宿命。器用だが天才には及ばない。そんな僕が世界の頂点に立つには、ルールの穴を突くしかない。
皆、勘違いしている。誰かの思惑で作られたショービジネスに参加して、主役になったと思い込んでいるのだ。奴隷の、家畜の、思考停止。
僕は違う。転生した瞬間から支配者の側を目指していた。有利なポジションを獲得する為に入念な調査と準備を行った。乳児でも指輪さえあればアバターは操作できるからね。
「久々に我々の肩書きが役に立ちそうですね。
「ああ、今回も『協力』してくれるかい? 新進気鋭のダンジョン研究者『
「仰せのままに」
今までは土台作りの為にチマチマ妨害行為をしていたが、そろそろ次の段階──
「ところで、シズリ様……」
「ふふ、何かな、白夢教授?」
「ほ、本当に……あんなモノを挿入れて、学内を歩かせるおつもりでしょうか……?」
教授室の机には遠隔操作式のローターと固定具が置かれていた。リモコンを誰が握っているのかは、言うまでもない。
「それは、勿論。他大学から共同研究の為に訪れた熱心な学生としては、是非とも尊敬する教授に学内を案内して欲しいね」
僕は来客用ソファに身を預けながら、白々しく建前を述べる。そして、足元に跪いている従者の頬を撫でた。
「ほら、舌が止まってるよ? 明亜が僕のおまんこを気持ち良くできないなら、他の子に頼んじゃおうかな。少し前に知り合ったレイフ君とか」
「……! いけません!」
明亜が再度、僕の股間に顔を寄せる。
「男性のペニスなどよりも私の方が優秀な奉仕ができますから! はぷ……っ!」
まるで人工呼吸でもするように大きく口を開けて、僕の膣口に吸い付いてきた。
クンニリングス。舌による丁寧な愛撫と、整った鼻先がクリトリスに擦れる感覚。美しい雌を完全に支配している事実が、前世から引き継いだ男性的な嗜好までも刺激する。
「ん……。そうそう、良い子だね」
これは確認作業だ。人は変わる。彼女が絶対服従しているかどうかを定期的に確認し、主従関係を刷り込む必要がある。
「愛液が床に落ちないように飲み込んでくれよ。上手くできたら、ご褒美をあげよう」
明亜は瞬きで了承の意を示した。長年の調教の成果である。
僕は肉体的な快楽で他者を縛れるとは思っていない。金と同じだ。即物的な報酬による主従関係は脆い。
だから、体ではなく心にアプローチした。僕に尽くす事が至上の快感に思えるように、時間をかけて価値観を植え付けた。
難しい事じゃない。快楽は心地良さとも言い換えられる。明亜という人間が何を求め何を不快に感じるか、徹底的に分析して寄り添っただけだ。
僕ほど彼女1人の為に時間と手間を投資した人間はいないだろう。愛の勝利だ。
「久々にソーププレイもしたいね。前みたいに、君の柔らかい太股を騎乗位で洗ってあげるよ」
「……っ、ふぁひ……!」
だけど、仮に彼女が僕から離れていったとしても、『あんなに良くしてやったのに!』なんて恩着せがましい事は決して言わない。
無意味な不平不満を吐き出していては、前世と同じ惨めな凡人で終わってしまう。それだけは許せない。僕は本気で頂点を目指している。
「楽しい夜を過ごそうじゃないか」
さあ、楽しい楽しい暗躍の時間だ。
人間を騙すコツは『騙されたい』と思わせる事だ、と詐欺師は言う。
理想のシチュエーション。全てが報われる予感。都合の良さが閾値を越えた時、人間はその誘惑に抗えない。
怪しい。疑わしい。でも、信じたい。
ほとんどの人間は論理的思考よりも先に結論を出している。愛煙家は理由を付けて結局タバコを吸うし、ギャンブラーは貯金が貯まってもギャンブルをやめない。
「せめて、幸せな幻想を見せてあげよう」
僕は仮想領域保安局のデータベースから吸い上げた対象の情報を、頭の中で反芻した。
全身鎧の供献者『ボブルヘッド』。
本名は『ピスト・アダルトゥール』。現実世界での特徴はスキンヘッド。実力的に上位ランカーには数歩及ばず。しかし、今の僕達と比較したら遥かに格上。
嫉妬、共感、懐疑。記録を感情と結び付け、いつでも引き出せるように循環させる。
そして……彼の隣に座った。
「摂理学、好きなのかい?」
ボブルヘッドが本から顔を上げる。綺麗に剃られた禿頭に照明が反射して光った。
「俺っちに言ってんの?」
「そうだよ。飛行機にはあまり乗らないから、待ち時間が退屈で仕方ないんだ。どうにか暇を潰そうとしてたら、面白そうな本を読んでいる君が目に入ってね」
利用客の多い大空港のラウンジの隅で、僕は極力ゆったりと会話を繋げる。本格的に仕掛けるのは標的が釣り餌に食い付いてからだ。
「勝手に手元を覗いた非礼は詫びるよ」
「それは別に構わんけど……アンタ、見た感じ学生っしょ? 摂理学に興味ありがちなんて変わってんね。ダンジョン専門家の間でも供物とかアバター研究の方が人気がちなのに」
『摂理』とはダンジョン内の空間やアバターにのみ適用される、現実の物理法則とは異なるルールである。俗な言い方をすると、ゲームの仕様だ。
ただし、この分野の研究はあまりメジャーではない。摂理について解明する為には供献者の全面協力が必須だが、各自のスポンサーの意向もあり、情報提供に応じる者は少ないからだ。
酷い場合は、嘘の情報を教える供献者もいる。弱肉強食。蹴落とし合いの世界なのだ。
「確かに、摂理に関しては未だに不明瞭な部分が大きい。深く調べたところで実用価値が伴う学問でもないから『流行らない』」
「へー、分かってんじゃん。そんじゃ、金持ちのお嬢ちゃんの道楽?」
「いいや。多分、君と同じ理由だよ」
ここ数日繰り返した練習通りに言葉を発する。付け焼き刃は僕の得意分野だ。
「ルールを知らずに負けてからじゃ、取り返しが付かない。だから、必死で備えるのさ」
「……アンタ、供献者だったりしがち?」
「さて、どうだろうね。当ててみなよ」
ボブルヘッドの意識が明確に僕を捉える。食い付いた。ここで敢えて席を立つ。
彼は飄々とした外面と裏腹に支配欲が強く、興味の対象を手中に収めたがる傾向がある。一度引いた方が効果的だろう。
「コーヒーを貰ってくるよ」
「……お嬢ちゃん、名前は? ああ、俺っちはピスト。ピスト・アダルトゥールだ」
「シズリ・ラウンドノーズ」
「混血がちっぽい見た目だけど、活動拠点は日本ってとこかね?」
「そこまでヒントはあげられないな、ピスト君」
ヒラヒラと手を振って席を離れる。第一印象としては及第点。焦らず関係を進めよう。
大丈夫だ。まだまだ、時間に余裕はある。
ダンジョン外でアバターを召喚する行為は国際法で禁じられているが、幾つかの例外も規定されていた。
移動中のラウンジの全景が歪み、突然の大雪に呑み込まれる。多くの客が呆気に取られる中、状況を理解した一部の人間がパニックの悲鳴を上げる。
……そんな人々の誰よりも早く、僕は『例外』を確信して行動していた。
「──顕現しろ、
ネックレスとして胸元に隠していた指輪を嵌め、迷わず起動する。普段のダンジョン攻略と違い、現実の肉体に重ねるようにアバターを出現させた。
「仮想領域保安局へ! 応答求む! ……ちっ、遅かったか。もう『外』との通信はできないね」
電源を切った通信端末の画面に、銀髪の女騎士の凛々しい顔が映る。僕は溜め息を吐いた。
「自然現象に空気を読めと言うのも馬鹿らしいけど、流石に少しはタイミングを考えてくれないかな……」
間違いない。僕達は本当に偶然、ダンジョン顕現に巻き込まれたらしい。
「まったく、ラウンジの中に日頃の行いが悪い人でもいたんだろうね。傍迷惑な話だよ」
とりあえず、現状で真っ先に警戒すべきはボブルヘッドに身バレする事だ。
このまま合流すれば、確実に『同一人物ではないか?』と疑われる。ほとぼりが冷めるまでは彼の前に姿を晒したくない。
……静かに距離を稼ごう。僕のアバターはそれなりに知名度がある。一般人が騒いでしまえば、ボブルヘッドに見付かりかねない。
とにかく、静かに。気配を消して……。
「氷頭さん!?」
若々しい男性の声がラウンジに響く。野暮ったい作業着を纏ったアバターを見て、僕は額に浮かんだ青筋を押さえた。
「やあ、レイフ君。君も近くにいたんだね」
「はい! ちょうど、日本で一番高い塔を観光してた時に、ダンジョンが発生して……」
早口で興奮気味に捲し立てるレイフ・フィーンドの顔を抱き締め、彼の口を強引に塞ぐ。
「ひ、氷頭さん……! む、胸が……!」
「君は少し声を抑え……」
……いや。
いや、待て。今、何と言った?
「日本で一番高い塔にいた……?」
「? そうっすけど」
血の気が引く。これは異常事態だ。僕達がいた空港とあの塔はかなり離れた場所にある。
だとしたら、このダンジョンは『何処まで』範囲内なんだ……?
「『シヴァルリク・オース』の氷頭……」
気が付くと、鎧姿のアバターが僕達の横に立っていた。慌てて僕の胸から抜け出そうとするレイフを、むしろ強く抱き寄せる。
「ちょっ、氷頭さん……!?」
「……レイフ君、お願いがあるんだけど」
僕は情熱的な抱擁を交わしながら、レイフの耳元で囁いた。
「このダンジョンを出るまで、僕の彼氏になってくれないかな?」
予想外の事態? ……上等だ。
人間も環境も全部利用して、僕が利益を独占してやる。
「クールがちな見た目で意外とお熱いじゃん、お嬢ちゃん。確か名前は氷頭、だったっけ?」
「ごめんね。『彼氏』に会えたから、つい」
僕はレイフの唇にキスをしてから答えた。
「君ほどの有名人に覚えて貰えているとは、恐悦至極だよ。ボブルヘッド君」
「俺っちも結構マイナーがちじゃね?」
「日本では人気があるんだよ、刀術の達人。君の『居合い抜き』はね」
「なるほどな。──『打刀』」
ボブルヘッドの姿が残像を残して消える。次の瞬間、熊の頭が床に転がった。
「お見事。やっぱり、近接武器は絵になるね。──『グレイシャ・ブレット』」
僕は供物を捧げて、拳銃から特殊な弾丸を放つ。先制攻撃に怯んでいたもう1体の熊は、あっという間に氷漬けになった。
「そっちこそ、なかなか映えがちじゃん」
「ふふ、ありがとう。……でも、妙だね。発生した直後のダンジョンにしては、モンスターが強過ぎる。まるで……」
「「神のダンジョン」」
ダンジョンの
そういった存在が眠るダンジョンは普通のダンジョンとは全くの別物で、供献者からは特別視されており、同時に攻略難度の高さを理由に恐れられてもいた。
ボブルヘッドはこの雪のダンジョンがソレではないかと言いたいらしい。
「君はもしかして、自力でダンジョンを攻略するつもりなのかい?」
「こんな好機を見逃しがちな供献者、いないっしょ」
「確かに、そうだね。……じゃあ、僕達もお供して良いかな?」
僕が控え目に提案すると、鎧は先導するように歩き始める。
「足手まといがちにならないなら、好きにしな」
ある意味で、レイフの出現は都合が良かった。多少の修正は必要だが、考え方次第では計画の進行を早める事ができる。
ボブルヘッド。僕の人格分析によると、彼は。
──病的なまでの、寝取り趣味だ。
活躍を期待するトップランカー人気投票
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①世界1位『@』
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②中衛代表『オクシモロン』
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③後衛代表『ミスター・エチケット』
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④前衛代表『差分』
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⑤女性最強『フレネミー』