※この作品はR-18です。

最強のハーレム八男に転生って、最高でしょう!   作:大紫蝶

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ヴェルを狙う者2

side:ヘルムート三十七世

 

「ブライヒレーダー辺境伯家が財政難からどうにか脱却し、安定した領地経営をしているのか」

「はい。どうやら牛乳や卵を使った料理を始め、ブライヒレーダー辺境伯の奥方には相当な宝石の付いたアクセサリーを購入しているとか」

「報告が確かなら、数千万セント近い価値があるの……」

 

 余ヘルムート三十七世が、その報告を聞いた感想は困惑であった。

 

 ブライヒレーダー辺境伯家とは、このヘルムート王国南部の雄と呼ばれる在地貴族として最大規模の貴族だ。だが、この家は数年前に大事件を起こしよった。

 

 余が王位を継いでからしばらくして、ブライヒレーダー辺境伯家による大規模な出兵が行われ、その時に当主や主だった家臣などが全員死亡するというあり得ない事態が起きたのだ。その理由は『嫡男である息子の病を治すために、魔の森にいる言い伝えがある古代竜の血を手に入れるため』というものだ。世にも息子がいるので、子どもが可愛いと思う気持ちは否定しないし、そのために最大限努力する事も問題ない。だが、それで全滅は止めて欲しいと思うのは当然であろう?

 

 しかも寄り子であるバウマイスター騎士爵家からの要請という事にして、その家の者達も強制的に出兵させてしまった。当然ほぼ全滅となり……王国平和のため『全責任はバウマイスター騎士爵家にある』という事になった。……余なら自害を考えてしまうであろうな。

 

 まあ、そんな家が立て直したというのだから、本来なら喜ばしいことだ。それだけの大貴族がグダグダでは王国の統治に関わるし、貴族のプライドから王国も助け辛いのだ。余や閣僚、官僚たちも手を尽くしていたのだが……逆に足を引っ張るクソ野郎も大勢いた。戦争があれば、奴らを最前線に送り込んだのだがな!

 

「また、領内では質の良い武器が出回っており、ブライヒレーダー辺境伯家の兵士たちの装備もレベルが上がっていると。これは単純に、高性能な武器が安く、大量に手に入るからだと思うのですが……」

「どこでそれを手に入れた? いや、そもそも数千万セント相当の宝石、領内で産業レベルにまで牛乳や卵を使用できることもおかしい」

 

 ブライヒレーダー辺境伯家がいままで隠していた? そんな自身の隙をさらしてまですることではない。

 

 では、急に手に入った? どうやって?

 

(あまり人の疑いたくないのだが……裏くらいは取らないと不味いな)

 

 余とて『ブライヒレーダー辺境伯家が努力して立て直した』という話であるなら、それに越したことはない。現在の当主は『先代の尻ぬぐい』『代替わり直後のブロワ辺境伯家との紛争』で苦労してきた。その苦労が報われた結果なら、余とて手放しで喜べるのだが――王国の平和を脅かすというのなら、話は別だ。

 

「クリムトを呼べ。あの者に話がある」

 


 

side:アームストロング導師

 

「陛下、某に話とは?」

「実はな――」

 

 某は、クリムト・クリストフ・フォン・アームストロング男爵。軍閥の家系であるアームストロング伯爵家の次男であり、王宮筆頭魔導士でもある。普段は面倒な貴族連中と顔を合わせないために王城にいないのだが、流石に陛下から直接の呼び出されば、話は別である。まぁ、嫌な親戚から呼び出しを食らっていたので、丁度近くにいたのであるが。

 

 話を戻して、陛下から伝えられたのは微妙な話であった。『ブライヒレーダー辺境伯家が建て直したから調査してくれ』という、人としてどうかと思う依頼である。まあ、あの家の損害は相当だったので、信じられないのは分かるのであるが……。

 

「余とて『ブライヒレーダー辺境伯家が頑張った』で終わってほしいのだ。だが、そう思うには、あの遠征は、な?」

「はい。例の件でブライヒレーダー辺境伯家が失ったものは大きすぎますから」

 

 当主や家臣を失ったことは、当然痛手である。だが、それ以上に痛手となったのは筆頭魔法使いであったアルフレッドの死亡であった。

 

 そもそもアルフレッドはブライヒレーダー辺境伯領の出身でもなければ、縁もゆかりもないもなかったのである。それでも家臣となったのは、汚い貴族社会の抗争に巻き込まれたという、しょうもない理由であった。それで当時『最強』『天才』の名を欲しいがままにしていた上級魔法使いを失うなど、王国にとっても損失である!

 

 ――その件がなければ、王国の未開地解放、王都近くにいるグレートドラゴン討伐などが行えたというものを。

 

「嫌な仕事だが、よろしく頼む。くれぐれもブライヒレーダー辺境伯家に気づかれぬように……いや、不快に思わせないようにな」

「お任せください」

 


 

 陛下との謁見が済んだ某は、本来の用事であったホーエンハイム子爵家を訪れていた。

 

 ここには某の妹であるニーナが嫁いでおり、姪のエリーゼも住んでいる。このエリーゼは聖魔法使いであり、『ホーエンハイム家の聖女』とまで呼ばれている天才である。伯父である某も、鼻が高いのである!

 

「それで、一体何の用であるか?」

 

 だが今回、某を呼びつけたのは可愛さが0どころかマイナスの『妖怪』ホーエンハイム枢機卿である! 息子は印象が薄いが、それなり以上に人格・能力共に優秀な人間である。それなのにこいつは……。

 

「実はお主に頼みたいことがあっての。なに、陛下の頼みのついででいいのだ」

 

 なぜ、ついさっきの出来事を知っているのか。こいつが魔法使いで、陛下との謁見の様子を盗み見して、『瞬間移動』で戻ってきたとしか思えないのである!

 

「どうせブライヒレーダー辺境伯領に行くのであろう? あの家は不思議な事ばかりであるからな」

「ふんっ! お主の存在に比べれば、この世の大半は普通である!」

「それはお互い様じゃろう? 今の歳になっても魔力量の限界が訪れず、成長し続けているのだからな」

「それで、一体何の用なのであるか? 某、忙しいのである」

 

 この妖怪の事だから、恐らく教会の汚点――クズな聖職者の抹殺か、似たような貴族の抹殺当たりであろう。ニーナの件で親戚となったのだから、極秘裏の暗殺をタダでやれとか言われるに決まっているのである!

 

「実はな――『アルフレッド・レインフォードの弟子』を探して欲しいのだ」

 

 

 

 

 

 …………は?

 

「ブライヒレーダー辺境伯領で起こっているいくつかの不可解な事象じゃが、あやつの弟子が関わっている可能性が高い」

「ちょっ、ちょっと待つのである! どういう事であるか!!?」

 

 アルフレッドに弟子!? そんなの聞いたこともないのである!!

 

 某にとって憧れであり、親友であり、好敵手でもあったアルフレッド・レインフォード。彼の死は、ヘルムート王国全土に凶報として伝えられた。

 

 某はアルフレッドの遺体だけでも回収するべきと考え、同じ考えを持つブランターク殿とともに協力者を探したのだが――くだらん貴族連中の横槍で頓挫してしまったのである。アルフレッドの遺体を回収することはブライヒレーダー辺境伯家の家臣たちの遺体回収もすることになり、一貴族家に便宜を図ることはできない、などというゴミクズ以下の意見であった。

 

 王国は稀に見る魔法使いの豊作と沸き立っているが、その魔法使いを死なせるか、アクセサリーの様に貴族の横で金か権力にしがみつくか、国の害となるクズに育つかという地獄であった。その中で希望であったアルフレッドが死に、多くの魔法使いを指導してきたブランターク殿も国や貴族に忌避感を持ち、教え子たちもそれに続いた。まったく笑えない話である。

 

 まあ何が言いたいのかというと、それだけの偉大な魔法使いであったアルフレッドの弟子なんて、王国中を探してもいないはずなのである。

 

「いや居ただろう」

「あんな”自称(笑)”なんて、存在すら認めていないのである!!」

 

 何故かアルフレッドの死後に弟子、家族、子どもなどが湧いて出てきたらしいのであるが、お話にもならない遺産目当てのクズばかりである! アルフレッドの弟子に求める基準は異常に高かった。赤ん坊の頃に捨てられたアルフレッドに家族など居らず、結婚も恋人もいない――形式上の婚約者はいた――ので配偶者や子どもすらいないのである。

 

「そもそも、アルフレッドが死んでから何年経っていると思っているのであるか? 仮にいたとすれば、とっくに周知されているはず」

「そうだな。なら――死後に弟子を取ったとしたら?」

「っ!!!!!」

 

 死後! それならありえなくはない!!

 

 ブランターク殿から「アルがアンデットになった可能性が高い」と言われていたことを思い出す。実際、アルフレッド程の男ならリッチなどの高位アンデットになってもおかしくないのである!

 

「だが、アルフレッドが求めるレベルの魔法使いなど……」

「いないだろう。それにアンデット――それも語り死人などになった奴の行動範囲は狭い。少なくとも、ブライヒレーダー辺境伯領にすら行けなかっただろう」

「なら、誰かが会いに行ったというのであるか? あの魔の森に?」

「……ここからはわしの推測――妄想の類になるが」

 

 そう前置きをしたホーエンハイム枢機卿のこうであった。

 

 1.魔の森に魔法使いの素質を持つ子供(おそらくエリーゼと同じくらいの年齢)が入る

 2.語り死人になったアルフレッドが子供に気づく

 3.アルフレッドがその子供を弟子にする

 4.その子供がブライヒレーダー辺境伯家遠征軍の遺品を、ブライヒレーダー辺境伯家に返却する

 5.その子供によって新たな産業がブライヒレーダー辺境伯領で始まる

 6.ブライヒレーダー辺境伯家の財政が回復する

 

「いや、いくらなんでも……」

「わしからすれば、そなたの存在こそ『いくらなんでも』なんじゃがなぁ。だが、これくらいのイレギュラーがなければ、かの家の問題は解決せんのだ。それに、『神の使い』の件もある」

「それは一体?」

 

 どうやら某が知らなかっただけで、ブライヒレーダー辺境伯領に『神の使い』と呼ばれる魔法使いが現れたそうである。その子はエリーゼくらいの年齢で、『失われた手足すら復活させる回復魔法』『瞬間移動』が使えるらしい。

 

「しかもブライヒレーダー辺境伯は、その子供の捜索をしていないそうだ。家臣連中は捕縛しようと頑張っているそうじゃがな」

 

 普通の貴族なら、自分の力を強めるためにも囲い込みをするであろう。それも余裕のないブライヒレーダー辺境伯家なら当然のこと。それをしない時点で、彼がその子供について知っていると自白したに等しい。

 

「幼いながらも優秀な魔法使いはエリーゼの様にいる。そして、普通なら魔法使いは生まれた場所の貴族に重宝され、領地の発展に扱き使われるはずじゃ。それをせずに時間がある事、魔の森に自由に入る事ができるなどから推察するに」

「魔の森を支配下に置く貴族家の人間……」

 

 なんという事であるか! 考えれば考えるほど、このありえない状況に説明がついてしまうのである! そもそもありえない『ブライヒレーダー辺境伯家の凶行』『超短期間でのブライヒレーダー辺境伯家の財政回復』であるのだから、常識を捨てた方がいいのである!!

 

「そして、決まった曜日にブライヒレーダー辺境伯家の筆頭魔法使い・ブランタークが、かの家の所有する森林の方角に隠れて向かっているという情報が入った。それも、普段は誰も入らない実りの少ない、不毛な土地へだ」

「『瞬間移動』が使えるなら、その様な場所はむしろうってつけ……」

「そうだ。お前にはそこに来るであろう『アルフレッドの弟子』に接触して欲しい。別に教会に引き入れろとか、わしの前に連れてこいなどとは言わない。その者と友好関係を築いて欲しい」

 

 なるほど。要は『貴族に悪印象を持たれる前に、ブライヒレーダー辺境伯家に完全に引き抜かれる前に、王国に良い印象を持って貰え』という事であるか。上手くいけば、某の次の王宮筆頭魔導士になるかもしれないのである。

 

 貴族からの命令や依頼など大金を貰ってもやりたくないのであるが、こういうことなら別である!

 

「待っているのである! アルフレッドの弟子よ!!!」

 

 某はそのままブライヒレーダー辺境伯領へ向かった。アルフレッドが死んだ原因は中途半端に貴族に関わった事、なにより近接戦の用意をしていなかったことである。某の『魔導機動甲冑』だけでも習得していれば、アルフレッドも死ななかったはずである! あの後悔を二度としないためにも、その弟子には無理やりにでも習得してもらうのである!!

 

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