真夜中になっても、まだ蒸し暑い。
家に帰ってきて、マユはまず風呂場で汗を流すことにした。
シャワーを浴びて、ボディソープを手に取ってから、よく泡を立てる。清潔を保っておきたいところに塗りつける。
この時季は油断をすると、自分で自分の匂いが気になってしまうのだ。
よく泡を洗い流して、湯船に浸かりながら、マユは自分の胸に手を当ててみる。
まだ膨らみきってないけど、先端は固く尖っていた。
その先端を指でこすってみると、甘い疼きが拡がった。
やがてマユは、もじもじと太ももをすりあわせる。肌と肌をこすり合わせる快感に、陶然となる。
これが、自分の肌じゃなかったら、どんなにいいだろう――。
(……ねえ、したいでしょ……だれと、したい……?)
心の中で、声が聞こえたような気がした。
そして、太ももの付け根に指を差し入れる。皮膚の合わせ目をゆっくりなでる。
「……!」
指先のふれたところから、じいんという快感が拡がっていった。
そして指は、割れ目とその内側の肉襞に入っていく。
(お母さんも、していた……)
あのビデオ動画を思い浮かべてしまった。
指が奥に進むにつれ、指の動きは、いっそう激しくなった。
そのとき、誰かの声が聞こえたような気がした。
(マユ。だれに触られたい? だれにしてもらうのが、いいと思う?)
頭の中で、ぼやけた映像が浮かんで、それが像を結びそうになった。そのとき、何かが弾けた。
「あ……!」
吐息が漏れて、背筋がピクンとした。
それは酷く生々しく感じた。
その途端、我に返った
(これが……オナニー……いけない)
はしたないことをしてしまった。
指のあいだで糸を引くものが、酷く汚いもののように思えた。
忘れられないことがある。
中二の、秋の日だった。
マユはハンドボール部に入っていた。
その日、部活の先輩に、ひとけのない体育準備室に誘われた。
メガネをかけて、頬はそばかすだらけ。野暮ったく地味な感じだったので、そんなことをされるとは、全く思わなかったのだ。
染みついた汗と黴のにおいがかすかに漂う空間で、抱き寄せられた。
「何をするんですか?」
「水橋さん、あなた……かわいいわ」
そして、頬ずりしてきた。
ジャージの上から胸をさすってくる。
マユの首筋に鼻を寄せ、こう囁く」
「いい匂い……」
気持ちが悪い。鳥肌が立った。
「ああ、いやです」
「あの日でしょ……うふふ、すぐ分かるわ。あなたの匂い、すてきよ。ずっと前から、気になっていたの……」
怖かった。
そして、先輩は言った。
「こっちも、さわってくださる?」
スカートをたくし上げる。
ストッキングに包まれた太ももと、パンツが露わになる。
「……!」
そして、手を掴まれて、パンツの中に手を入れさせられた。ざわっとした茂みと、その下のじっとりと汗ばんだ肌、そして粘膜の感触。
先輩の息が荒くなる。
「ねえ、もっとよ」
奥まで指を入れると、そこは……濡れていた。
「あ……」
先輩は感に堪えかねたように吐息を発した。
「ゆっくり動かすのよ……そう……」
指に絡みつく分泌物はどんどん増えていった。指を動かすと、一気に奥まで入ってしまう。
「!」
先輩が身体をビクッとさせると、マユは驚いて、指を動かすのを止めた。先輩はそれを制した。
「もっと……続けて」
言うとおりにすると、やがて、先輩は身体を弓なりにさせた。穴はきゅっとすぼまって、指を締め付けた
「ああっ、いいいーっ!」
肩で息をした先輩は、ゆっくりキスをしてきた。そして粘液でびちゃびちゃになった指をハンカチで拭いてくれた。
「これはわたしと水橋さんの秘密だからね」
そういって頬にキスをしたのだった。
またある日は。
上級生はマユの前でパンツを脱ぎ、足を開いた。そして自分で股間に手をやり、指でいじくる有様をマユに見せつけたのだ。
「水橋さん、見て」
彼女の息はだんだん荒くなっていった。
「もっと見て……ああ、いい気持ち……」
「……」
「あ……」
自分のものだって、まともに見たことはない。それなのに、見せつけてくるのはどうしてだろう。
そう思っているあいだにも、先輩は人差し指と中指でピンク色の膨らみを刺激する。そこはにじみ出た液体で光っていた。彼女はのけぞり、何度も痙攣した
びくん、びくん。
亀裂の奥からは液体が溢れ、したたっていく。
「すごい……あ、ああ、いっちゃう」
顔を歪めて、声を上げた。
そしてすべてが終わった後、荒い息をつき、マユに微笑みかけた。
「あたし、自分でするの好きよ。あなたもオナニーするでしょ?」
「……いえ」
そうとしか言えなかった。
「知らないの? 気持ちいいよ……うふっ」
そういって手を伸ばす。
「じゃあ、水橋さんも気持ちよくしてあげるよ」
服の上から、胸を触ってきた。
「あ」
乳房をゆっくり揉まれた。声が出てしまった。
先輩はもう片方の手を、スカートの中に入れてきた。布越しに股間の亀裂に触れる指。
だがこのときマユは、身体を引いたのだ。そして首を振った
「いやです!」
「……そう」
マユの真剣な拒絶を見て、先輩は憑き物が落ちたような表情をした。
「じゃあ、やめよっか」
そう言って、乱れた服を直して席を立った。
「気が変わったら、また、しましょうね」
それ以来、誘われることはなかった。
その体験をだれにも言えないまま、先輩は卒業していった。
それからも、なんどか先輩から携帯にメッセージが来たが、返事はしていない。
マユの頭の中では、ずっと、気になっていたのだ。