家に帰ると、すぐに風呂に入って、念入りに身体を洗った。男の手の感触を拭い去りたかった。そして、真一の身体のぬくもりも……。
でも、少女に言われたことが耳から離れない。
(おねえちゃん、セックスのこと、教えてあげようか)
床についても、胸騒ぎは収まらない。
真一に抱きすくめられたときの汗の匂い。肌の感触。男の子とこんなふうに接触したのは、はじめて。
いや、だったはずなのに。
マユの身体の中に、疼きを感じてしまった。
でも……でも……。
思い返すたびに、しだいに身体が熱くなる。
首筋に汗がにじんできた。
胸がはち切れるように固く張り詰め、その先端が敏感になる。
眠れない。
冷房は効いているはずなのに、部屋の空気が変によどんで、粘っこいような気がする。
眼をつむって、シーツを頭からかぶった。
奇妙な胸騒ぎがして、落ち着かない。
(マユ……)
だれかが呼びかけているような気がする。
眼を開けると、視界が薄ぼんやりとかすんで見えた。枕元の灯りをつけると、ぼうっと光った。はっきりと見えるようにはならない。
部屋の中に、白い霧が立ちこめているようだった。
「マユ……」
どこからか、声が聞こえる。だれもいないはずなのに。
マユは起き上がった。そして問いかけた。
「だれ……そこにいるのは」
「わたしよ」
「?」
霧の中から、次第にその姿が露わになる。
それは、少女だった。
このところ公園で、ずっとマユに話しかけていた――そしてさっきまで、あの公園にいたはずの。
どうしてここにいるのだろう。
「あなたは……」
「さっきも言ったでしょ。教えてあげるって」
「!」
「まだわからないの?」
思い出した。
彼女の姿は、見たことがある――。
「まさか、お母さんに変なことをしてたのは、あなた? お母さんと、どんな関係なの?」
その問いには答えず、にっこり笑っただけだった。
「すぐにわかるよ……それより、セックスのこと、知りたいでしょ」
「そ、それはいやよ」
マユの拒絶には耳を貸さず、彼女の身体は音もなくマユのもとに近づいてくる。
「いや……こないで」
マユの懇願には耳を貸さず、少女はベッドサイドまで近づいてきた。マユは思わず後ずさり、ベッドに投げ込まれるように尻を落とした。
そして少女はマユの眼を凝視する。
「さあ、わたしの眼を見なさい」
「いや……怖いわ」
少女の眼は次第に、異様な輝きを放つ。マユは眼を背けようとした、でも、身体が思うようにならない……!
「眼をそらさないで! そう……よく見るのよ」
(動かない……身体が、動かせない)
首を降ろうとしても、立ち上がろうとしても、マユの身体は彼女の意思を受け付けない。金縛りに遭ったように、身体がしびれてくる。
視界が白くぼんやりとかすんでいった。
部屋に漂う霧がどんどん濃くなり、部屋の中が見渡せなくなった。いまのマユは、少女の眼にきらめく光から眼が離せなかった。
「な、なにが起きてるの……」
「そう……いい子ね」
少女は深呼吸をして、フーッと息を吐く。すると、ひゅっと、マユに向かって一陣の風が吹いた。
風はマユのネグリジェを剥ぎ取った。ボタンが外れて袖が肩から抜け、ふわりとベッドに落ちた。続けてプツッと小さな音がしてブラジャーの金具が外れ、同じように剥ぎ取られる。もうマユが身に纏っているのは、下腹部を隠すショーツ一枚だけだ。
「ああ……」
マユの身体は動かないままだ。
「!」
マユの裸身を霧が包んでいく。そして、その中から少女の顔が真っ正面に現れた。
少女は艶然と微笑みを浮かべていた。ぺろり、と舌を出して自分の唇を舐めた。
「……!」
少女は唇からすこし舌を突き出して、マユに顔を近づけてくる。
マユの唇に熱い吐息がかかり、かわいい舌が唇にそっと触れた。そして少女は唇を押しつけ、舌を差し入れてくるのだ。
「あ……あ」
拒絶しようとしたが、なすがままにされた。
やがて、少女の舌が、マユの舌に絡まってきた。彼女の舌は生々しく蠢いてマユの唇や舌を優しく愛撫する。そのたびマユの背筋にぞくぞくした快感が走る。
唇を離すと、唾液が糸を引いた。マユはまだ残っていた理性で、拒絶した。
「いやっ!」
激しい鼓動。荒い息をつくマユ。
「もう、強情なんだから……でも、気持ちよかったでしょ。マユ、乳首立ってるよ」
「……う、うそよ」
「うそじゃないよ。ほら、感じてきちゃった……」
そういってマユの乳房に手を伸ばした。
ぷっくりした指先が白い丘に円を描き、優しくつかんでゆっくり揉む。そのたび、じんわりした快感が生まれる。そして不意に先端をいじくると、こんどは鋭い快感がマユを襲うのだった。
膨らんでサクランボのようになった乳首に、少女は爪を軽く立てた。そのたび、マユはビクッと背筋を震わせる。羞恥心と快感でマユの白い肌はピンク色に染まった。
「いや……こんなの……ああ……」
「そうよ……だんだん尖ってきた……もっと、してあげるね」
少女は掌をマユの胸から離した。そしてマユの前でゆっくり動かすと、こんどはマユを包む空気が揺らめき、腰や太ももを優しく刺激した。
「あ……ああ……」
少女は、オーケストラの指揮者がするように、マユに向けた手や指を動かし続ける。
そのたびに、マユの首筋や足先にはびりびりした快感が走っていく。
指先が胸に向けば、マユの硬くなった乳首にツーンとした刺激が襲う。
「んんっ!」
指を動かすと、その快感が、へそからしだいに下腹部に移動する。
無数の触手で全身をなで回されるような快感に、次第に引き込まれていくのだ。
「ああっ、あ……あ……うう」
声が次第に大きくなっていく。そして不意に鋭い快感が身体を貫き、叫び声を上げた。
「いやあー!」
マユのあえぎ声は、まるで少女によって奏でられているようだ。
おへそや脇の下、そして感じるところが次々に変わっていく。優しかったり、むずがゆかったり、ときに強く刺激されたり。様々な快感が、マユの身体に生じていた。そのたびに低く高く声を上げる。マユは自身の肉体が奏でる快感のシンフォニーに、いつしか酔いしれていった。
「ああっ、うぅ……ん……やめて……こんなの……」
「どう、いいでしょ……これから、もっといい気持ちにしてあげるわ……身体がふわふわ浮くみたいで、しまいには、どうにかなっちゃうくらい気持ちよくなるから……」
少女は腕を大きく動かす。
白い霧がマユの身体を取り囲むように渦を巻いていった。暖かく、密度の高い空気が皮膚を愛撫していく。
とろけてしまいそうに気持ちがいい。
霧は無数の舌先のように皮膚に粘つき、無数の指先のようにしなやかに、マユの乳首や首筋を柔らかくなでていった。
「はあ、はあ」
身体の奥から突き上げてくる快感の波にさらわれそうで、マユはぎゅっとシーツをつかんだ。
それを見つめる少女の瞳は爛々と輝いていた。
霧が内股を刺激する。少女がぱちんと指を鳴らすと、マユの足が持ち上がり、ショーツがするりと脚のあいだから脱げる。
「いや!」
足を閉じようとしたが、言うことを聞かない。
「足を開くのよ。さあ、もっと」
少女に命じられるがままに、意思に反して足が開いてしまう。隠しておきたい身体の部位が剥き出しになる。
「いや、いや……」
足のあいだの敏感な部分を、霧が包んでいく。
霧は丘をなでて茂みをそよがせ、襞のあいだにも入り込み、マユの下腹部を優しく刺激し続ける。
「ああ……だめ……、でも、気持ちいい……わたし……どうにかなっちゃいそう……」
隠されていたピンク色の芽がうずき出す。そこにも刺激がくわえられ、マユは快感のあまり身体をよじった。
熱いものが溢れていく。
ぞわぞわ。ぞわぞわ。
ぞわぞわ。ぞわぞわ。
もう我慢できない。自然に声が漏れ、身体が動いてしまう。
喘ぎながら、マユは少女に問うていた。
「あ……あなたは……だれ……だれなの」
ふっと笑みを浮かべて、少女は答える。
「あたし? あたしは、お願いされたのよ。素直になれないあなたが心配だって。セックスのことを教えてあげてって」
「ど、どういうこと? だれに……あ!」
そのとき、熱く優しい刺激が下腹部を襲った。マユは思わずのけぞった。
「あなたも、よく知ってるわ……ふふ、これからが本番よ。さあ」
少女がそう囁くと、マユの身体中を包んだ霧は、やがて下腹部に向かって密度を増していく。
「ああ」
足がいっぱいに開かれて、腰がせり上がる。秘められた部分が露出する。
そしてずん、と強い刺激が股間を襲った。亀裂をくぐり抜けて体内に侵入した霧が、熱く、密度を増していった。
身体の中で脈動するたびに、痛みと混ざった快感が突き上げる。
「……ぐうっ! ううう……」
歯を食いしばるマユ。うめくような声が漏れる。少女はささやきかける。
「だいじょうぶ、すぐに気持ちよくなるから……ほら、濡れてきた……」
その声に促されるように、熱いもので押し広げられる感覚が股間を満たした。
「あ!」
マユの目の前で霧が集まってゆき、やがて、ひとつの姿を取ろうとしてた。
ひとの形だった。
大理石の彫像のような筋骨隆々とした、男の身体だ。でもその大男には、首から上がない。
隆々と盛り上がった肩のところは、真っ平らだ。
首のない大男の下半身は、マユの下半身と密着している。
「いやあ!」
たくましい手がマユの肩をつかみ、ベッドに押さえつける。
大男は腰を前後にスライドし、激しく摩擦する。
粘膜がこすられる感触とともに、えもいわれぬ快感が身体の奥からほとばしる。
腰が、自分の意思に反して動いてしまう。
少女は唄うような口調でマユを快感に誘う。
「そうよ、その調子。もっと腰を動かすの」
「ああ……ゆるして」
マユはもう、自分が分からなくなっていた。
自分がなにをされているのか。こんなにいやらしいことは、ダメ。でも……でも……。
マユの意思を裏切るように、リズミカルに腰が前後する。かろうじて残っていた理性で、拒絶の意思を表した。
「もうやめて……やめさせて……ああ……おねがい」
「ダメよ。最後までいきましょう……もうすぐ、もっともっとよくなる」
「たすけて……あ……いい」
恥辱と拒絶が快感に塗りつぶされていく。その有様を愉しむように眺めていた少女は、マユに命じる。
「さあ、四つん這いになって」
「だめ……はずかしい……」
意思に反して、身体は快楽を求めて勝手に動いてしまう。
うつ伏せになって、尻を高く上げると、股の間にあるものが露わになる。
また、熱いものが肉襞を押し広げて、マユの中へ入ってきた。腰を動かすと、さっきとは違う部位が激しく刺激される。
固いものが先端部が子宮の入り口、ポルチオにぐりぐりと押しつけられる。そのたびに、電撃のような快感が背筋を貫く。
いつのまにか、マユの右手は股間に伸び、クリトリスを刺激していた。隙間からは蜜が垂れ流される。
「はっ……ああ……」
首なし男に両の二の腕を掴まれ、上体を起こされる。
いつのまにか正面に、霧の中から現れた少女の顔があった。マユはあえぎながら訴える。
「おねがい……許して……もう許して……おねがい……」
少女は哀願するマユを突き放すように言い放った。
「そろそろ、いっちゃおうか……」
そして少女は再び唇を押しつける。濡れた舌が入ってくる。粘膜がこすれ合う快感。マユは夢中で舌を絡めた。
なにかが膨れ上がってくるような感覚が、下半身に生じた。腰の動きはいっそう激しくなった。
男はマユの脇の下から腕を入れ、両手はマユの乳房にのびた。
指で乳首を弄び、そっと爪を立てたり、つまんだりする。
そうされるたびに、じんわりと快感が先端から拡がっていく。
下半身と胸と、口の快感が一体になって押し寄せてくる。
口元からは唾液が、股間からは愛液がしたたり続ける。
少女はマユから唇を離して、突き出た乳房に持っていく。マユの胸の膨らみを口に含んで、その先端を舌で転がした。
「ああっ、あっ、い、いい……気持ち……うっ」
それがとどめになって、マユの性感は絶頂へ向かって一気に高まっていく。
快感が背筋を駆け上がっていく。それが頭の中ではじけると、マユはひときわ高く、嬌声を上げた。
「あーーーっ!」
天上へ突き上げられるような快感。目の前が光で塗りつぶされた。達しきると、こんどは急速に力が抜けていった。マユの身体は落下していった。奈落の底に、果てしなく――
マユはベッドに、仰向けに横たわっていた。
遠くなっていく意識の中で、だれかの声が聞こえたような気がした……。
(これですこしは、ましになるかもね……でも、これからが大変よ。一度歓びを覚えたら、癖になっちゃうかもね。うふふふ……)
その声は、マユに聞こえたのかどうか……
「うう、ん、やめて……おねがい」
マユはうなされているような寝言を呟いていた。少女の姿は、霧の中へ消えていった。