ホテルの部屋へ忍び込むようになって数日、流石に姿を見ただけで意識してしまって話にならないというようなことはようやく無くなったものの、じゃあ、と迫ると、相変わらず無理だダメだと言われて、私はなまえに行為を拒否され続けていた。
「……分かった分かった。何もしないよ」
しぶしぶなまえの上から起き上がり言う。
そっと私を見上げる瞳に安心するよう微笑みかけながら「一緒に寝るだけ」と伝える。
「ホントに何もしない?」
「しないよ」
「ホントのホントにしない?」
いやしたいよ物凄く。
だってあの顔は私でないと見られない顔で、あれだけの熱も、私が触れることでしか生まれないんだもの。
だから再会したら絶対やるって決めていたし、なまえだって喜ぶと思っていたのに、好きすぎて逆に無理とか、本当に人間の恋心ってやつは摩訶不思議だ。
なまえが放つ熱情は以前のものと遜色なく、私の胸ごと焦がすほどに熱い。
この熱に絆されて、ついには陥落してしまったのだけど、この恋を打ち明けるつもりは無かった。
このまま私を求め続けて、そして一度も応えなかった憎らしいひとと思えばいい。
今受け入れてもらえないのは私の方なのだけど。
「ホントホント」
密かな思考を悟られまいと、軽く言ってにこりと笑う。
けれども安心させようとしてそうしたにも関わらず、なまえは落ち着かない様子で身体の上で手を組み、何か言いたげに視線をよこした。
「……?」
不思議に思って目を合わせると、なまえは頬を真っ赤に染め上げて、困ったように眉を下げた。
もじもじと組んだ手や視線をうろつかせながら、おずおずと唇を開く。
「……ホントにしないの?」
かすれた声で囁かれたその言葉には、確かに甘い響きがあった。
「…………。……ふぅん?」
目を細め、もう一度ゆっくりとなまえの上に覆いかぶさる。
びくりと身体を揺らしたなまえが、やっぱりダメとでも言うようにぎゅっと強く目を瞑って自身の胸元を強く掴んだ。
「なまえ」
「、ぅ」
「震えてるよ」
「っだ、だっ、て」
ぎゅっと強く目を瞑ってしまったなまえに顔を寄せ、その耳元でそっと囁く。
「したい?」
「っ!」
「しない?」
「っう、し、……っ」
「する?無理?」
「……む、むり、ほんとに、むり……だけど……」
泣き出してしまいそうな顔をしてなまえが言う。
左腕で目元を隠しながら、右手は相変わらず寝間着の胸元を掴んだままだ。
右手の上に手を重ねると、ひくりとなまえが身をひきつらせる。
強く握られた手を開くように、そっと指を絡ませると、震えながらもなまえは胸元から手を離した。くしゃくしゃにしわの寄った寝間着が目に入る。
「無理なのは、本当で……でも、したい、のかな?」
「っう」
ゆっくりと右手から手を離し、しわの寄った寝間着を整えてやる。
ボタンに指が引っかかったのに反応して、なまえが腕で隠したままの顔を逸らした。
胸元に手を置いたまま、指でボタンを更にかちかちと引っかく。
「っふ、ぅ」
「でも、無理なんだろう?」
「っう、ぅ、でも、うー……っ」
なまえはぶんぶんと首を振ると、両手で顔を覆った。そのまま駄々をこねるように唸るなまえに、ふ、と笑みを漏らす。
「キミに無理はさせたくなかったから、慣れるまで待とうと思ってたんだけど……」
「っ!」
するすると胸元を撫でながら言い、乳房を服の上から柔く掴む。
大きくなまえの身体が震えて、息を呑んだのが分かった。
「したいのに出来ないんなら、仕方ない」
顔の上に置かれたままの手を掴む。
「無理矢理、するね」
「ぁ、わ、あっ!?」
ぐいと手を引き、無理矢理なまえを起き上がらせる。
背後に回るとなまえを跨ぐように足を回し、後ろからしっかり抱き締めた。
「っま、マーリン……っ」
「良いよ、抵抗しても。絶対やめないから、安心しておくれ」
「……!」
急に抱き締められ、狼狽し身動いでいたのが、私の言葉で硬直する。
カッと顔に朱が走り、瞳は潤み身体は熱を生む。どくどくと鼓動は高鳴り、一言も口を聞けないでいる。
人間の恋心は不思議だ、と先刻の感想が再び蘇る。
私となまえは挿入こそしていないものの、幾度と無くその肢体をさらけ出して、淫らな言葉を交わした仲なのに。ほんの少し会わない間に、こうも恥ずかしがるようになるなんて。
腰に回した手を寝間着のボタンにかけると、上から順番に外していく。
抵抗しても良いと言ったものの、ふるふると震えたままなまえは動こうとはしなかった。
私の姿が目に入らないよう背後に回ったのは正解だったようだ。
「なまえ……」
「んっ……」
ちゅ、と
初日に触って以来の感触に、ほぅと息が漏れた。柔らかくて滑らかで、触り心地がいい。
そっと乳房を両てのひらで包み込み、むにゅんと指先を沈める。ぴくりとなまえの肩が跳ねた。
「ふ、ぅっ♡」
「ん」
「ひっ!」
きゅっと両方の乳頭をつまんで引っ張ると、大袈裟なまでになまえの身体が震えた。
柔らかさを堪能するように指先を揺らしながら、親指と人差し指で乳首を更にくいくいと引っ張ってみる。
「ふっ♡うっ、ぁっ」
「なまえって、乳首こんなに敏感だったっけ?」
「っぅ、しら、なっ、あっ♡」
「こういうのが好きだったかなぁ。どう?」
「っふぁッ♡♡」
すりすりと指先を擦り合わせて乳首をこねる。
もたれかかるを通り越して、背中を私に押し付けながらひぃひぃ息を吐く姿は初々しくて、愛らしいのだけど、以前よりも戸惑いが見て取れた。
「どうだい?こういうの、好き?」
「っ♡♡やっ、ぁ♡わかっ、んッ♡わかんなっ、よぉ……っ♡」
「ちょっとご無沙汰してる間に、忘れちゃったみたいだね。大丈夫、ちゃんと思い出させてあげるからね」
「う……♡」
「確か……こんなのにも、キミは弱かったかな?」
「ひぅっ!んんっ、ふぁ……っ♡」
つまんでいた指を離すと、突起の周囲をなぞりながら胸を揉む。
途端に物足りなげに脚をこすり合わせる様が何とも素直で愛らしい。
私の指の動きに翻弄されるなまえに面白くなって、今度は乳首を押し潰しぐりぐりとこねてみる。
「ぁ、あ!や、ぁ、つよっ、ひぁあっ♡♡」
「おっと。ごめんよ、強く刺激しすぎたね」
「ぅ……♡は……っ♡」
「前みたいに感じられるように、ちゃあんとゆっくり慣らしてあげるよ」
「っぅう……、っ!♡」
ちぅ、と首筋に吸い付きながら顎をするりと撫でると、やはりなまえはびくびくと身体を揺らした。
ベッドシーツを強く握り締めるのが目に入り、その上から手を握る。
すると手をくるりと返して指を絡めてきたので、私もまたその手を握り返してやった。
「こっち向いて、なまえ」
「ふぁ、はい……っ♡」
「ん」
「っふ、ぁ♡」
素直にこちらを振り向いたなまえに、唇を食むよう口付けると、なまえはすぐに意図に気づいて、自らもそっと唇を開いた。
舌先を口内へ侵入させ、にゅるりと絡め合う。
無理だ駄目だと言っていたわりには、従順に私の舌にされるがままになるなまえに気を良くして、握っていない方の手でなまえの身体全体をゆっくりと撫でさすった。
「んぅっ、うー……っ♡」
キスと身体を這う手の感触に焦れて、なまえが身を捩る。
その姿に小さく笑みを漏らし、「足りない?」と尋ねると、ぴくんと身体を揺らす。
困ったような目を向けたかと思うと、またしてもなまえは俯いてしまった。
素直に言えないなまえの意を汲み、下腹部に手を伝わせ、そっとショーツの下に手を差し込む。
ひっとなまえが声をひきつらせて反射的に腕を掴んできたけど、その反応は無視して、つうと割れ目に指を這わせた。
「ひゃ、ま、って」
「だって、足りないんだろう?」
「っい、いってない……っ」
「否定もしなかったじゃないか」
「ぁ、あ♡やら、まって、まって♡」
ぬかるみに指を這わせ、割れ目を左右に開く。
とろりと漏れ出る愛液は、なまえの感度に変わりはないことを私に教えてくれた。
「ゆっくり、て、言ったのにぃ……っ♡」
「なまえのココは寧ろ早くって言ってるみたいだけど?」
「あ、あ♡や、ぁ、ゆび……っ♡やらぁ……♡」
掴んだ腕をぎゅうと握り、なまえはふるふると首を振る。
だけど無理矢理どかせようとはしないのを良いことに、私は健気な意思表示を無視して、指先を跳ねるように割れ目へと這わせた。
かき出すまでもなく愛液が次から次へと漏れ出して、下着も寝間着もずぶ濡れになる。いや、このショーツの下に指を潜らせた時点で、もう既に衣服は湿ってしまっていた。
「汚れちゃったね」
「っう♡」
「気持ち悪いだろうし、脱いじゃおうか」
「ひゃ、あ♡やぁああ……♡」
脚を捩り、か弱い力で抵抗しようとするのを無視して、なまえの寝間着を下着ごと剥ぎ取る。
ついでに上の方も取り払い全裸にすると、所在なさげに縮こまるなまえの脚に己の脚を引っかけ、股を開いてやった。なまえが小さく「うぅ」と呻く。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ゆっくりしてあげるって、そう言ったろう?」
「は……っ♡」
ぐちゅ♡と音を立て、なまえの陰部へともう一度指を這わせる。
そのままクリトリスの周囲へと愛液を塗り広げるように、そっと指で円を描くと、なまえの体がひくひくと震え出した。
「はー……っ♡はっ……♡」
「身体、すごく熱いね」
「はッ♡ひぅっ♡」
「どう?慣れてきた?」
「あっ♡まっ、やら、ぁ、あっ♡」
陰核の周りを、ぬるぬると愛液を塗り込んでは揉むようにして焦れったい刺激を与え続ける。
だんだんとなまえの息が荒くなっていき、フーッ♡フーッ♡と息切れしたように細かくなる。
「あぁごめん、ちょっと急すぎたかな」
「ふっ、は……っ♡う、うぅ」
「ゆっくり優しく、してあげるからね」
「……っ、……」
もの言いたげに振り向いたなまえに目を細めて見つめ返すと、なまえはやっぱり顔を赤くし伏せてしまう。
どうやらまだまだ本調子にはほど遠いようだ。以前のキミなら、欲を煽る甘さを湛えた瞳を、恨めしげに向けていたろうに。
顎を捕らえると上向かせ、唇にかぶりつく。
きつく目を瞑るのを見つめながら大きく舌を動かして口内を責め立てる。
「はひっ、ふ、ぅ♡あっ!?」
上顎に舌を滑らせながら、手先を再び股座へと潜り込ませる。折角なので胸も揉んでおく。
時折先端を指先が掠めると、なまえはそのたびに肩を跳ねさせた。
「あ゛♡ま、っ、いっぱ、ぃ、むり、っ」
「へーきへーき」
「ふぅあッ♡」
三か所同時に刺激され、いっぱいいっぱいになってしまったようで、なまえがもぞもぞと腕の中で身じろいだ。
胸からてのひらを滑らせ顎を捕らえると、下唇を押さえ口を開かせる。
私も口を開いたまま舌を出し、ぬろぬろと舌で舌を舐る。
固く目を瞑っていたなまえがつられてそっと目を開き、目が合うと舌と身体を引いたので、引き寄せて唇を飲み込んだ。
「んぅううッ♡」
「っは、こぉら、逃げるな」
「うぅうう……」
もう一度固く目を瞑ると、なまえはとりあえず大人しくなった。
どうしても目で見てしまうと駄目なようだが、そう来るならそれはそれで責め方はいろいろある。
両手でなまえの耳を覆うとしっかりと閉じ、更にぬぷぬぷと口内を責め立てる。
わざと大きく音を立ててやれば、なまえは顔を真っ赤にして思わず目を開き、まなじりに涙をためていやいやと首を振った。
「っふ♡ぅ、あ♡おとっ、ぁ♡むりっ、ぁ、やらぁっ、んんぅっ♡」
泣きそうな顔でぶんぶんと顔を横に振るなまえを更にしっかりと押さえつけて、内耳に直接水音を叩きつける。
頭の中まで響き渡る卑猥な音色に、なまえはとうとうまいってしまって、強い抵抗を示し始めた。
「やらっ、やらぁ、まってよぉ……っ」
震える身体を何とか動かして、縋るように私の胸元を掴むと、キスの合間に必死で訴える。
そのあまりにも懸命な仕草に、流石に私も動きを止め、こめかみに優しく口付けてよしよしと頭を撫でてやった。
まったく、どうしてそんなに消極的なんだか。
キミって子は、恥ずかしさや恐怖より、快楽への期待が勝ってしまうような、そんなどうしようもない子だった筈なのに。
私が与えた快楽の数々も、とっくに忘れてしまったというのだろうか。
だとしたら、うん、ちょっと……
イラつくな。
「……、マーリン……?」
頭を撫でたまま何も言わない私に不安になったのか、なまえが消え入るような声で私の名を呼ぶ。
にこりと微笑んで返すと、やっぱり顔を赤くしてなまえは顔を伏せてしまった。
そのまま伏せられた頭をぐいと押さえつけると、なまえが「ひゃっ!?」と声を上げる。
「っま、マーリン?」
「なまえってばちっとも顔に慣れてくれないし、こっちの方が寧ろ良いのかな」
「えっ……!」
抱き締めていた身体を離し、腰元になまえの頭をぐいと押し付ける。
戸惑うような声を無視して、手を掴み自身の股へと誘導すると、なまえは咄嗟に手を引こうとした。
「逃げるな」
「っ」
「って、言ったよね?」
低く発した声に震えるなまえに、継いで穏やかに問いかける。
そのままもう一度手を引くと、今度は抵抗しなかったので、自身の股間になまえのてのひらを添え、その上から手の甲を握った。
「ほら。これなら、顔を意識することは無いだろう?」
「うぅ……っ、で、でも……」
「私に無理矢理される方が良いと言うのなら、遠慮しないけど」
「……うー……っ」
半分泣いているような声で呻くと、なまえは私が指示を出す前に、震える手でベルトに手をかけ始めた。やれば出来るじゃないか。
拙い動きは焦らされているようで、フッと息が漏れる。
躊躇いながらもジッパーを下げるなまえに合わせて腰を上げると、インナーごとまとめてずり下げられた。
すっかりと固く勃ち上がった自身を握ると、なまえの口元へ宛がい、ほら、と促すよう囁く。
「……っ、……ん、ぅ」
「ん…………」
そっと亀頭に口付けると、なまえは躊躇いがちに舌を出し、先端を舌でつついた。
控え目な刺激に逆に煽られて、頭に添えた手に力を籠めたくなってしまう。
誤魔化すように髪を撫でると、なまえはおそるおそる陰茎を口に含んだ。
「んっ♡っふ、ぅ♡」
息を漏らしながら、なまえは懸命に舌を絡める。
最初はたどたどしかった舌使いも、徐々にやり方を思い出したのか、次第に器用に動かし始めた。
付け根から裏筋へと舌を這わせ、亀頭を吸い上げる。
「ん……っ」
ぞくぞくと背筋が震え、思わずなまえの前髪をくしゃりと撫でる。
声を上げたのに気を良くしたのか、なまえの舌の動きが早まり、手まで使って扱き始めた。
「っ、は、いいね、上手いよ……」
「っ♡ふ、ぅ、んッ」
「ん……、なまえの舌、気持ちいい……」
なまえの動きはどんどん良くなっていき、褒めれば褒めただけ更に没頭していくようだった。
カリ首を舌で刳り、亀頭に向かって小さく舐め上げながら、添えた手で強く擦られ、みるみる息が上がる。
「っは、ぅ……ッ」
「んんっ♡ぁ、んぶっふ、ぅ♡」
私が息を漏らすたびに、なまえも嬉し気に甘い声を上げた。どこも弄っていないのに、まるで気持ちよさそうに息を吐く。
じゅぷじゅぷ音を立てながら、夢中で私のものに吸い付き、すっぽりと口内で性器を覆う。
「ぅぐっ♡むっ♡」
「大丈夫かい?」
キミの口のサイズだと、だいぶ苦しいと思うのだけど。
そこまで無理はしないで良いと引き離そうとしたものの、なまえは陰茎に吸い付いたまま、喉奥までそれを招き入れる。
そして次の瞬間、案の定えずいた。
「っぶ、ぐっ!えほっ、え゛っ」
「ああこら、だから言ったのに」
そっと性器を抜き取ると、肩を掴んでごろりと仰向けに寝転がらせる。
涙目のなまえが、咳き込みながらもぼうっとした顔で私を見上げるのを見て、ようやく忌避感よりも行為に溺れ始めたかと、心中でほくそ笑んだ。
「っ、うまく、できなくて……ごめんなさい……」
「そんな事ないよ。とても気持ちよかった」
「まーりん……♡」
瞳をとろかせたなまえが甘えたように声を上げ、私に向かって手を伸ばす。
その手に身を委ねるようにしてなまえに覆い被さり、柔らかな肢体を抱き締めた。背中になまえの手が添えられる。
少しだけ身体を離すと、じっと至近距離でなまえを見つめてみた。
「マーリン……まーりん」
「ん……」
ぐいと裾を引かれ、暗にキスを強請られる。
意地悪せずに口付けてやれば、なまえは嬉しげに応じた。
どちらからともなく舌を差し出し、互いに絡め合う。
刺すような熱も今は身を潜め、ただなまえからは甘くとろけるような好意が感じられる。
「もう、恥ずかしくない?」
「ぅっ……、は、はずか、しい、けど……」
不意に口を離してそう尋ねると、なまえは照れたように目を逸らしながらもごもごと言った。
私の性器を舐めさせられ、自分だけが辱められるのではなく、私に快楽を与えることが出来るのだということを思い出したせいか、もう震えてはいなかった。
少し起き上がり、改めてなまえの肢体をまじまじと見つめると、やはりなまえは恥ずかしげに身じろいで目を逸らした。
構わずするりと手で胎の辺りを撫でると、「ひゃっ」と愛らしい声を上げる。そのまま臍の下に指先でくるりと円を描いた。
「ちゃんとコレ、残ってるね」
「んぅ♡あ、それ……♡消えて、ない……?」
コレ、とは私がなまえに施した、貞操を守る為の魔術だ。
施した直後は紋が刻まれていたが、すぐに消えてしまったので、存在を感じることが無かったのだろう。
もう一度紋を浮かび上がらせると、「消えてないよ」と教えてやった。
「あのね……♡私、マーリン、に、これ、つけられたの……嬉しかった、の♡」
「……知ってるよ」
私が他の誰ともセックス出来ないようにした、というのが、なまえには嬉しかったようなのだが、これはなまえが思っているようなものではない。
キミは、私がキミへの罰としてこれを付けたのだと思い込んでいるが、実際には違う。
私が、いずれなまえへの欲を抑え切れなくなるかもしれないから付けた、私の為のセーフティだ。――なんて、それを言葉にしてしまえば、それこそなまえは大喜びするだろう。
だから言えないし、私も何も言わずに罰ということにしている。
身を屈めると、紋の上から口付ける。
本当にこれが最後の砦だ。
いっそ共にいられる間、すべてを奪ってしまってもいいじゃないかと、やはり頭の隅に過るのを、この紋が戒めてくれる。
過去の自分は慧眼であった。すべて奪いたくなる衝動がこの身の内にあることを、察していたのだから。
「ぁ、……あ♡」
ちゅ、ちゅ、と口付けを降下させ、なまえの股まで降りていく。
しとどに塗れたそこにも口付けると、つんと陰核を舌先でつついた。
「あぅっ!あぁあッ♡」
「ふふ、やっとキミらしい反応を見せるようになってきたじゃないか」
そう、キミは私に舐められるのが大好きで、ココを舌で責めるとすぐさま大声を上げてよがっていた。
かぷりと割れ目にかぶりつくと、ぐり、と舌先を入口にねじ込む。
ぢゅっと音を立てて愛液を啜ると、なまえは背をしならせて喘いだ。
「あッ、あーーーーッ♡♡しょれっ、あ♡あ゛♡」
動かないようがっちりと腕でなまえの身体を押さえつけながら、じゅるじゅると愛液の味を堪能する。と言っても私に味など分からないのだが、こうすることで放射されるなまえの情動は、とてつもなく刺激的で、ぶつかるたび破裂しては快楽を撒き散らすように思われた。
クリトリスの周囲に舌をねじ込み、むき出しになった裏筋を抉る。
そっと歯を立てると、なまえが悲鳴のような声を上げて仰け反った。
「ぎッ♡イぁっ、あ゛ッ!あ゛ーーーーッ♡♡」
「……ッ、は」
ばねのように身を踊らせ、なまえがよがり狂う。
そうして放射される熱は、思考をも奪いかねないほどの酩酊感を、私に齎した。
「あ゛ッ、イっ、イぐ、ぅ♡イぎっ、あ゛♡」
「イくときはどうするんだったかな?」
「ひぐっ!?イ、イっ、ぎま、ぅ!イぁっ、イっで、イっ、ぢゃっ、あ゛ッ♡あ―……ッ♡」
きゅ♡とクリトリスを指でつまみながら問うと、なまえはきちんと絶頂を報告しようとして、間に合わず達してしまったようだった。
ひくひくと震える入口から、どろりと愛液が零れ落ちる。
「どうだい、なまえ。久々に絶頂した感想は?」
「っ♡おかし、く、なりそ……♡れす……♡」
はー♡はー♡と肩で息を吐きながら、なまえは素直にそう言った。
もう少し苛めたい気もしたけれど、私も久々になまえの痴態を目の前にして、だいぶあてられ気味だったので、なまえの手を引っ張ると身を起こし、落ち着かせるように背を叩いてやった。
「ふ、ぅっ♡はっ……♡」
くったりと私に身を預けるなまえの柔さに、密かに息を吐く。
この感触を肌で感じたくて、この感情を味わいたくて、仕方なかった。この上キミの中で快楽を感じられたなら、私もおかしくなってしまうかもしれない。
だから望みが合致していても、そこを破ることはせずにおいた。
なまえのすべてが知りたいけれど、なまえをまるごと知ってしまえば、もう本当に、手放せる気がしなかったから。
あぐらをかくと、向き合うようにしてなまえを脚の上に乗せる。
性器同士が擦れるよう腰を揺らせば、なまえもそれに合わせて自ら腰を押しつけ始めた。
「は、いいね……淫らで、とっても可愛いよ」
「っふ♡ぁ♡」
「そう、キミはとても淫らでいやらしくて……気持ちいいのが大好きな子だ。思い出した?」
「っぉ、おもっ、だし、たぁっ♡」
「いい子だね。ご褒美にもう一回イかせてあげよう」
「ひっ♡♡あ゛、あ゛ッ!」
竿に割れ目を滑らせるようにして腰を揺らしていたなまえのクリトリスに指を潜り込ませ、こしゅこしゅと扱いてやる。
途端に強くしがみつかれ、そそりたつ陰茎の側面に、ぶちゅりと愛液にまみれた入口が強く押し付けられた。
しがみつくなまえの片手をほどくと竿に添える。刺激するよう促すと、なまえは震えながらも手を動かし始めた。
「んっ……、は、なまえ、一緒に、イこうね」
「ひッ、イぅ♡♡いっじょにぃ、イぐぅ♡♡」
「はは、凄い顔だな」
真っ赤な顔に歯を食いしばり、瞳は今にも涙が零れそうなほど潤んでいる。
「まーりんっ♡ま、りんっ♡♡」
「うん」
「しゅき♡らいしゅきっ♡」
「……うん」
僕も。
――返事の変わりに口付けると、なまえの舌を絡め取り、それ以上喋れなくしてやる。なのに、なまえからは好き、好き、と際限なく恋情が溢れ出て、たちまち私の中を満たしていった。
――苦しい。
呼応するように胸が熱くなり、零れた熱が思考を溶かしていく。
ずっとこのままでいてくれるのなら、キミが変わらずいてくれるというのなら――僕は、僕だって、キミと――
「あ゛♡あっ♡も、イっ、イき、そ♡れす♡♡」
「んっ、は……うん、僕も……イく、ね」
「イ゛っ、あ゛♡あ゛ーーーーっ♡まーりん……っ♡♡」
なまえの手の動きが速まり、私もクリトリスの周囲を掠めるようになぞっていた指を滑らせ、そのまま押し潰してやる。
ぎゅうと性器を強く握られ、そのまま扱かれるのに従いなまえの腹へと射精した。同時になまえの身体が大きく震える。
ずりゅんと竿へ割れ目を滑らせながら、腰を強く押し付けるようにして、なまえは果てた。
「っは……♡ぁ、ん……♡」
「なまえ……」
「ん…………マーリン……」
顔を寄せ、今日何度目かの口付けをどちらからともなく交わす。
今度は舌を絡めはせず、唇を重ね合わせるだけのキスを幾度も贈る。
熱は収縮し、暖かな情が零れ落ちて、なまえは幸せそうに笑ってみせた。
◆
共にシャワーを浴び、お互いの身体を洗いあって、二人で湯船に浸かる。
カルデアに比べてホテルの湯船は広くて、私がなまえを抱えてなお、二人とも足を伸ばす余裕があった。
「……今更なんだけど」
「うん?」
「マーリン……ホントに何しに来たの?」
「何しに来たってひどいな」
だから、キミに会いに来たんだよ。
そう言ってもなまえは怪訝な顔を更に険しくして、顔を半分湯船に沈めてしまった。ぶくぶくとお湯の中で息を吐いて、遺憾の意を示される。
「もう一生会えないみたいな雰囲気だったのに……」
「はは、ごめん」
「ははっで一笑に付すな!」
「いや~あのときのキミは見ごたえがあったよ」
「こ、こ、このやろう……」
人がどんな思いで……!とぶつくさ呟くなまえの身体に腕を回し、その頬にすり寄ると目を瞑り当時を思い返す。
突き放すようなことを言った私に、キミは泣いてしまって。
だけどそれでも、笑って言った。「マーリンを好きになって、よかった」と。
あれはとても、痛かった。
「悲しい別れとか嫌いだって、言ったろう?」
「なら最初からこれが最後じゃないって言っといてよ!」
「そこはホラ、ネタバレは厳禁ってね」
「人の心がない!!」
「ちょっとはあるよ」
ほんのちょっと、二人ほどに割く程度には。
だけどそれも如何ほどのものか。所詮夢魔の恋は夢魔の恋。
何も変えられはしないし、キミの夢を守ることでしか、恋の証も立てられない。
キミに好きだと告げることすら、出来ないでいる。
「そのちょっとの、ひとかけらだけでもくれればいいのに」
不貞腐れたようになまえが言って、再び顔を半分湯船へと沈める。
よしよしと頭を撫でながら「あげられるほどは無いもので」と答えると、なまえに脚の脛をつねられた。
「痛い痛い、こらっ」
「ひゃっ!ちょっ、くすぐった!」
真似してお腹をつまんで軽くひねると、なまえがばしゃばしゃと暴れ出す。
どさくさ紛れにお湯をかけられて、「わぷっ」と口に出すと、なまえはきゃらきゃらと声を上げて笑った。
――ああ、眩しいな。
「んっ!」
こちらを振り向き笑うなまえに口付ける。
驚いて目を瞬かせるなまえに、「可愛い顔しちゃって」と囁くと、即座に顔を真っ赤にして「そう言っとけばいいと思ってるでしょ」とふくれ面で抗議される。
ほんの少しの別離だったように思っていたけれど、こうしたやり取りを実際にしてみると、不思議と懐かしい気分になる。
懐かしい、なんて感情も、なかなか経験が無いものだから、妙にむず痒い心地がした。
ウンウン、これだよ、と思いながらなまえを抱き締めすりすりと頬を寄せ、その感触を堪能する。
やっっっっっっっっとまともに触らせてもらえて、ようやく思う存分堪能出来るようになって、本当に良かった。
自分でも思っていた以上に我慢を強いられていたらしく、こうしていると本当に心地いい。
思わずため息が漏れた。あぁ、なまえの感触、最高。
「んんっ、なに?」
「充電してる」
「疲れたのはこっちなんですけどぉ」
「これはなまえ不足充電の方」
「……。……あ、あの、さー」
「うん?」
「寂しいとか、こ……っ、恋しいとか言ったの、本気?……なの?」
「うん」
あっさりと頷いてみせると、なまえは口をぱくぱくと開いては閉じてを繰り返した。
「私が寂しがりなの、知ってるだろう?」
「知っ、いやっ、それは……そうだけど!だ、だって……ひつよう、ないって!」
「必要は無いよ」
と、言いながらもなまえをぎゅうぎゅうと更に強く抱き締める。
本当に。キミも私も、お互い必要なんて無いんだよ。
ヒトはヒトの中にあってこそ、己たるものだけれど、私がいて変わるものなど、何も無いんだ。
――なのに、キミが好きなのだと、そう感じてしまったから、おかしいのだ。
「ホント、まいっちゃうなぁ……」
「へ?」
ぽそりと呟いた言葉に首を傾げたなまえの頭を引き寄せ、ぐりぐりわしゃわしゃと撫でてやる。
「ちゃんと幸せになるんだよ~」
「は!?親か!ちょ、ホントに何!?」
なまえが声を荒げて言う。
親心でも男心でも夢魔心でもなんでもいい。それでも、キミの幸せを願いこうして駆けつけたこと、それ自体がもう、私にとっては有り得ざる奇跡で、手にする筈の無かった
これを私は、喪いたくない。
なまえに恋をした、そう自覚してしまってから、いつも胸のどこかで何かがささめいている。
焦燥に駆られ手を伸ばせば、無い筈の心が燃える。
その心地よさに身を委ねてしまいたくなるのを、必死でいつも堪えている。
燃え尽きてしまったら。
なまえが追いかけてくれなくなったら。
手放せないと、そう感じてしまったら。
どれもこれも感じたことのない懊悩で、どうしたら良いのか、自分で分からない。
だから結局、ちょっかいをかけては楽しいうちに引き下がり、相対しては、なまえがまだ私を好いていることに安堵して――馬鹿げている。
恋心とは、実に不毛で不合理だ。
そんなものを後生大事に抱こうとする、それ自体が理解不能だ。……理解出来ないから、抑制出来ない。
「なまえは凄いね」
「さっきから何?」
「私に振り回されて、よく飽きないなと思って」
「喧嘩売ってんの?」
むに、と今度は頬をつねられて、左右に引っ張られる。そんな他愛ない行為にすら、胸中がさんざめく。
「振り回されてるから、飽きないんでしょ」
呆れたようにそう言って、なまえが頬から手を放す。
自分で頬をさすりながら、なるほど、と呟いた。
安心した。
それなら、私も飽きることは、きっと無い。