※この作品はR-18です。

月のわらう世界(マーリン夢小説)   作:ゆんぎつね

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オベロン登場回。

弊カルデアでは、オベロンのマーリン避けスキルは千里眼は弾けているが肉眼は弾けていない、という設定になっております。


役者が違う

「あれ?マーリン?」

「おや。……これは失礼。客がいたんだね」

 

新たに召喚したサーヴァント――オベロンを連れてマイルームに入ったら、マーリンが私のベッドの上に座っていた。

 

別にそれ自体は珍しいことでも何でも無いのだが、タイミングが珍しかったので、思わず声をかけてしまったのだ。

 

新たにサーヴァントを召喚したら、カルデアを案内した後、マイルームに寄っていろんな話をする。それがいつものことで、そういうとき、マーリンはそれを見越して部屋からは去るか、そもそも入室していないのがいつものことだった。

 

「――マーリン?」

 

私の後ろで、オベロンがマーリンの名に反応した。え、と思って振り返ると、オベロンは一瞬とてつもなく冷めた目を向けた後、にこりと柔和な笑みを浮かべ直したのだった。

 

「やぁ、これはこれは。かの有名なマーリンか。そんなのまでいるなんて、やっぱりカルデアはすごいところだ!」

 

ニコニコして言ってるがどう聞いても皮肉だ。おいおいと思いながらオベロンに声をかけようとしたら、マーリンがベッドから立ち上がって私たちに近づいた。

 

「見ない顔だが、いつの間に召喚したんだい?」

「え?ちょっと前……多分十分くらい前だよ」

「ふうん……?」

 

マーリンが訝しげに首を傾げる。けれどすぐさまいつも通りに笑ってみせると、オベロンに対してにこやかに話しかけた。

 

「挨拶が遅れたね。私はマーリン。人呼んで花の魔術師、もちろんクラスはキャスターだ。マスターとはそれなりに付き合いが長い方で、たいていのクエストには私がいる。一緒に編成されることもあるだろうし、よろしくお願いするよ」

「……ああ、よろしく。……」

 

マーリンの挨拶に対して、にっこりと笑いかけながらも、それ以降特に挨拶もしないオベロンに、「オベロン?」と声をかけると、「何かな」と返されて困った。

 

「いや、何って……」

 

自分は名乗らないつもりかと小突こうとしたら、マーリンが「オベロン?古妖精の?」と声を上げた。……古妖精?

 

「――いや。僕は妖精王オベロン。ウィリアム・シェイクスピアが書いた戯曲、夏の夜の夢の性質が強く出たものさ」

「ほう、妖精王?いつの間に縁を結んだんだい、マイロード」

「え?……何言ってんの?」

「え?」

 

妖精國の旅路だって覗いていたと、マーリンは私にそう言った。というか、じゃないとあんなタイミングよく現れられないだろう。

ならばオベロンのことだって知らなきゃおかしいのに、マーリンはまるでオベロンのことなど初めて知ったかのようだった。

 

「はは!」

 

急にオベロンが声を上げて笑った。びっくりしてそちらを見ると、爽やかな笑顔を向けられる。

 

「マスター、二人で話すんじゃなかったのかい?いつまでもこうしていろって?」

「え、あ、いや、ごめん。……まぁいっか。マーリン、ちょっと部屋空けてくれる?」

「……」

「マーリン?」

 

ゆっくりと私に視線を合わせたマーリンが、少しだけ――嫌そうに顔を顰めた。

珍しい表情にぎょっとして、思わず口をぽかんと開いたら、マーリンが私の頭にぽんと手を置いた。

 

「後でね、マイロード」

「っ、う、うん」

 

そう言うと、ひらひらと手を振ってマーリンは部屋を出た。マイルームの扉が、ぷしゅっと音を立てて閉まる。

 

「……」

「マスター?僕はどこに座ればいいのかな」

「あ、うん。好きに座って」

「好きにって……適当すぎないか?」

 

多大に呆れを含んだ声でそう言って、オベロンが冷たい目を向ける。オベロンに今更気を使うことも無いから、と言うと、私はベッドの前に置かれた椅子に座った。それを見て、オベロンがベッドに腰掛ける。

 

「きみさぁ。いつも新しいサーヴァントに自分のベッドに腰掛けさせてるわけ?」

「人による。オベロンは別にどこでもいいでしょ」

「特別扱いか~、嬉しいな~。それで?そんな特別な僕と今更どんな話をしたいのかな?」

「いや、今からするのは全サーヴァントに絶対する質問だからそこは特別でも何でもありません。でも、その前にまず聞きたいんだけど。……マーリンに何かした?」

 

ログ保存用に、ベッド脇に置かれたタブレットを操りがてら、ちらりとオベロンの方を向いて問う。

 

「何かって何?随分抽象的な質問だなぁ」

 

目を細めて笑うオベロンを見て、確信した。さっきのマーリンの態度には何かある。

 

「マスターには、サーヴァントのステータスが見えるって知ってる?」

「そういう知識はあるね。どう見えてるかは知らないけど」

「人によるらしいんだけど、私にはスキルとランクが説明付きで見えてるんだよね。意識しないと見えないから、今気づいたんだけど……この対人理ってナニ?」

 

胡乱げに目を細め、じとりと睨みながら聞いてみると、オベロンは肩を竦めた。

 

「そのまんま、きみが見えてる通りのスキルだよ」

「……私、スキルの説明で親類とかでもない一人を名指ししてるの、初めて見たんだけど……」

 

何だこの、マーリン拒否スキルは。

 

とりあえず手元のタブレットに情報として記入しておくが、これめちゃくちゃ厄介だな。

大嘘吐きなのは分かってたし、何もかもが気に食わないというのも知っていたが、……マーリンをここまで拒絶しているとは、流石に思わなかった。

 

「いやぁ、だってほら。遠くから覗かれてるとか、怖気が走るだろう?」

「…………。……あぁ、はい。なるほど」

「何?」

「気にくわないんだ。マーリンが物語の消費者だから」

 

合点が行って、頷きながらそう言うと、オベロンは不機嫌そうに押し黙った。

 

「他人事みたいに言うけど、自分が消費されてる側って自覚ある?」

「うーん。……まぁ、そう言われれば、そうかも」

 

マーリンの見たい景色に向かって走っている自覚はある。……そのゴールにマーリンはいないから、走れば走るほど、足が重くなるのだけど。

 

「でもそうだな、私が主人公の物語って考えたら……マーリンはもう傍観者なんかじゃないよ。役者としては、ずいぶん大根かもしれないけど」

 

ニッコリ笑ってそう言うと、オベロンが何かを答える前に「さて、じゃあ質問していくね」と話を切り上げた。

 

舞台を鑑賞するだけだったマーリンを、ステージに引きずり出したという自負だけはある。

この物語を一番消費しているのは、私なのだ。




この話はこれだけですが、ちょいと別の話にも関わります→
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