自分で言うのもなんだが、ここ最近の私は人気者だ。
「ふぁ……、……1時、か……」
ひっきりなしに訪れるマイルームへの訪問者をさばいていたら、あっという間に深夜1時。
とっくに消灯時間は過ぎており、本来ならもう床に就いていなければまずい時間帯だ。
明日がオフとはいえ、ちょっと長引かせすぎてしまった。
寝るための準備を手早く済ませ、電気を消すとのそのそとベッドに潜り込む。そのまま目を瞑り眠ろうとして――私はぱちりと目を開いた。
「…………はぁ」
しばらく、マーリンと話せていない。
以前であれば、外でどれだけ私が他のサーヴァントとつるもうが、部屋に帰ればマーリンがいて(いないこともあるけど)夜だけは共に過ごすことが出来たのだけど。
最近は、夜も部屋を訪れてくる客が多いせいか、マーリンが部屋で待っていることが無くなっていた。
カルデア内で見かけることはある。あるけど、話しかけるタイミングが無かった。
だから、姿は見ているけど、会話は出来ていない。勿論触れ合ったりも出来てない。
…………寂しい。
マーリンが意地悪して会いに来てくれていないわけではない、と思う。単に、私が客を招き入れるから、遠慮している……のだろう。多分。
みんなが会いに来てくれるのは嬉しいし、その時間も楽しい。でもマーリンと話せてないというのは……寂しさはもちろん、焦ってしまう。
だってもう、あとどれくらいマーリンと一緒にいられるのか、分からないのに。
マーリンは、そんなこと無いのかなぁ。
私とあんまり会えなくても、気にならないのだろうか。
……私のこと、恋しかったって言ってたくせに。
入口の方に目を向けると、溜息を吐いて布団を頭まで被る。
「…………まーりん」
ぼそり。
小声で呟いてみて、じっと身じろぎせずに息をひそめる。
「………………」
けれど、特に何かが起きることはなく、布団から頭を出すと、入口をもう一度見つめた。
「………………」
そのまま暫く、ごろごろしながら待ってみたけれど、10分経っても誰かが来る気配はなく。
諦めて目を瞑り、私はようやく眠ることを決めたのだった。
◆
「……ぁっ、う、あ♡」
??
あれ、なんで、こんなことになってるんだろう。
私、今、何を……?
「ん、なまえ、こっち向いて」
「ふぁ♡あ、まーりん……?」
ベッドの上で、マーリンに背後から抱えられている。
いつの間にこんなことになっていたのか、よく思い出せない。
「んぅ♡あ、ぁ♡」
「ん、ふ……」
マーリンが私に口づける。その右手は私の股にあてがわれ、秘部からはぐちゅぐちゅと卑猥な音が響いていた。
「なまえ……、あぁ、なまえ……」
「ふ、ぅ♡マーリン……♡」
「ん……ふふ、かわいい」
「あ♡あ……っ♡」
ショーツの中に差し込まれたマーリンの指が、突起をぐにぐにと嬲る。いつもに比べたらひどく乱暴な愛撫だったけど、その刺激に下腹部は熱く煮えて、じんじんとした快楽が集まっていくのを感じた。
「ま……、りん、なん、でぇ?♡」
「何でって、何?」
「ぁ、たし、ぅ♡なん、でぇ、こ、な……あぇ……?」
「どうしてそんな事気にするんだい?それより、ねぇ、もっとよがってみせておくれ」
「ふぁ♡あぁっ、んぅ♡」
お腹に回された腕をマーリンが引き、強く抱き締められる。
私に頬をすり寄せながら、マーリンはいっそう指の動きを激しくした。
「あっ♡はげしっ♡よぉ♡まーりんっまーりん♡♡♡」
「はは、そんなびくびくしちゃって、ホントかわいいなぁ」
マーリンの言うとおり、細長い指先が突起を抉るたびに、私の身体はビクビクと震え、強くその胸板に身体を押しつける格好となった。そんな私にうっとりとした目を向けるマーリンに胸が締め付けられ、さらに熱が溜まる。
マーリンとこういうことをするのは、何だか随分久し振りな気がする……。
快楽に蕩ける思考の隅で、ぼんやりとそんなことを思う。
触れたくて触れたくてたまらなかったひとが、私に自ら触れてくれている。
「はっ♡まーりん♡」
「なぁに、なまえ」
「ぁ♡きもち、ぃ♡きもちぃよぉ♡」
「ん、素直でいい子だね、なまえ」
「んむ、ぅ♡」
「はぁ、かわい……ん、なまえ、もっと……」
「ふぅ、ぇあ♡んぐ♡ぅ♡♡」
熱い息を零しながらマーリンがそう言って、私の唇に食いつく。ぬろりと舌が口内を這い、その感触にぞくぞくと身体が震える。
呼吸する隙がなかなか得られず、むぐむぐ呻く私などお構いなしに、マーリンは私の唇を貪った。
「ふぁっ、ま、っ、ぁ♡息っ、れきな、ぅうっ」
「ん、は……っ、鼻は閉じてないよ」
「限度がっ、あるでしょお……っ」
ようやく唇を離されて、はぁはぁと荒く息を吐く。
だけどマーリンは私が一息ついたのを確認すると、また唇に食いついた。ショーツの下に差し込まれた指は、いつの間にか突起を挟むようにしてあてがわれ、二本の指がこしゅこしゅと先端を行き来する。
「――っ♡♡ふぅあぁっ♡♡♡」
「は、なまえっ、かわいい、ふふ、かわいいよ」
「ぅあ、あ♡んぐぅ!むっ、ぅ、む――っ♡♡」
思わず腰が跳ねるのを、マーリンの腕が強引に押さえ込む。口端から漏れた唾液が顎を伝い、舌先が呼吸ごと奪うように口内を這い回る。
あ、ぁ、もう。もう、ダメ。
「ん――ッ♡♡♡」
「んぅ、」
ぶるぶると身体が大きく震える。
キスされながらクリトリスをいじられて、私はそのままイってしまった。
「ふ…………♡」
「ん……、大丈夫かい?」
「っ、は、だいじょぶ、じゃな……っ」
「ふふ、ごめん」
はっはっと浅く呼吸を繰り返しながら文句を言う私に、マーリンは軽く笑って謝った。 こっちは呼吸困難で死ぬかと思ったんだからね。
「そんなに膨れないでおくれよ、ごめんってば」
「ん、ぅ!……っ、また……!」
今度は舌を飲まれるような荒々しいキスではなかったが、またしてもどさくさに紛れて口づけられる。これ以上は本当に窒息しかねないっていうのに、もう。
「こんないっぱい、キスされたら死んじゃうよ……」
「おや、嫌だったかな?」
「…………いや、なわけ、ない……」
分かり切ったことをあえて聞いてくる、マーリンのいつものやつだ。分かってても、惚れた弱みで正直に答えるしかないからムカつく。
膨れながら答えると、マーリンが今度は頬にちゅ、と口づける。楽しそうにくすくす笑う声が耳を撫でた。
「今まで僕が貸していた魔力を返してもらってるってことで」
言って、マーリンが再び頬に口付ける。
……何それ。
「……そのために、キスしてたの?」
もう魔力供給の言い訳なんて、とっくの昔にどうでもよくなってると思ってたのに。
むすっと唇を尖らせてそう問うと、マーリンは更に楽しそうにくすくすと笑った。
「ごめんごめん、嘘だよ」
キミが可愛いから口づけてるのさ、と囁くと、マーリンが私の唇を啄んだ。私もまたマーリンの頬に口づけると、首に腕を回してぎゅうと抱きつく。
「まーりん……会いたかった……」
「会ってたろう?」
「そういうことじゃないって、分かってるくせに」
回した腕の力を強めると、マーリンもまた、私の背に腕を回して抱きしめてくれた。
「冗談だ。先に言われてしまったのでついね。……僕も会いたかった。だから会いに来たんだよ」
優しい声音でそう言って、マーリンが頬をすり寄せる。じんわりと喜びが胸に広がって、ほうと熱い息が漏れた。
「ねぇもっと、僕を呼んで」
「うぁっ」
マーリンが顔を寄せたかと思うと、そのままシーツの上に転がされる。マーリンにしがみついたまま仰向けに押し倒された格好になり、至近距離にマーリンの赤らんだ顔がある。
どきりと、胸が強く高鳴った。
マーリンは、綺麗で、優しくて、気さくで、穏やかで……普段はちっとも顔を歪めないくせに、えっちのときだけは違う。
意地悪な顔したり、切羽詰まったような顔になったりする。
そして今は、凄く……興奮しているように、見える。
「なまえ、ねぇ。名前、呼んで?」
「ぅ、ま、まーりん……」
「ん、なぁに、なまえ」
「ま、マーリンが呼んでって言うから」
「うん」
マーリンはクスクス笑いながら、僕がそう返したかっただけだよと囁いて、首筋に口付けた。くすぐったくて身をよじると、次第にマーリンの頭が徐々に胸の方へと降りていく。いつの間にか寝間着のボタンを外されていて、露わになった先端に吸い付かれる。
「んぁっ♡」
「ん、かわい」
「やぁ、もう……っ!」
さっきからかわいいかわいいって、そう何度も言われると何だか恥ずかしい。
マーリンはこんなときばっかりそうやって褒め殺しにしてくるからたちが悪い。
そう思っていると、マーリンの手が私の乳房にあてがわれて、むに、と指先を沈められる。
「んぅ、」
「やっぱりこっちも可愛がっとかないとね」
「は、ぅ♡」
ちろちろと舌先が乳房の先端を這い、体がぞわりと浮く感触がして、腰に痺れが走る。もう既に一回イってしまっているせいか、胸への刺激だけではもの足りず、だけど中心が強く疼いて物凄くじれったい。
「ひゃ、あ、や♡っ、ま、まーりん……っ♡」
乳頭を右手の指先で触れるか触れないかの距離で撫でながら、もう片方に強く吸いつき周囲を舐る。そうして気持ちいいのにじれったい、胸ばっかりの刺激がたまらなくて、脚をマーリンの体に回してしがみつくと、腰をグイグイと押し当ててみせた。
「ふふ」
小さくマーリンが笑い、唇が離されたと思うと、腰を捕まれ、今度はおへその辺りに口付けられる。
「んぅうっ」
そのままマーリンは下腹部に向かって口付け、最後にショーツの上から恥丘に唇を押し当てた。
「あっ……♡」
するりとショーツにマーリンの指が引っかけられて、そのままずり下げられる。たまらず腰を浮かせれば、そのままショーツを脚から引き抜かれた。
「はぁ、なまえの匂いがする」
「ば、ばか!」
「いい匂いだよ?」
「く、ぅっ♡」
言いながらマーリンが股に顔を埋め、ぷっくりと膨らんだ陰核に口付けた。びりっとした刺激が下腹部を走り、ぶるりと身体が震える。
「あ、ま、まーりん……っ♡」
この後訪れるであろう快楽への期待に、はぁ、と熱い息が漏れる。
「ひぁあああっ♡」
ちゅう、と陰核を吸い上げられ、待ちわびた快感に背をのけぞらせて嬌声を上げる。
強い刺激に足でシーツを引きずると、マーリンが両腿をぐっと押さえつけてぬろりと割れ目ごと陰部を舐め上げた。
「ひゃ、あッ♡ひぅっ、ううぅうっ!あ、あっ♡♡」
入口を割り入って舌が侵入り込む。割れ目の内側を舌でなぞりながら、クリトリスの裏側を舐め上げられる。
そのまま熟れた突起を舌先で執拗につつかれ、私の体はばねみたいにびくびくと跳ねた。
マーリンにこうして舐められるのは、本当に気持ちがいい。
指ですら中まで入れてくれないマーリンだけど、舌でかきわけられる程度なら、私の内側も抉ってくれる。
マーリンの唾液なのか、私の愛液なのか分からないけど、中心がべちゃべちゃに濡れそぼっているのが自分でも分かる。
そうして溢れたものをまたマーリンの舌が掬い取り、じゅぷじゅぷと音を立てて、私の理性を奪っていく。
「ひッ、あぁああッ♡ひぁっ、は、あ、あっ!!♡♡」
強烈な刺激に折れそうになれば、マーリンの舌先はその周囲を這い、物足りないと感じたら、また中心に強烈な快楽を叩きつける。
そうやって熱が弾ける寸前まで、丁寧に丁寧に、マーリンの舌が私の陰部を行き交って、燃えてしまうんじゃないかってくらい身体が熱くなっていく。
「ふ、ぅ、なまえ……」
「あっ♡あ、あ、まーりんっ、まーりん♡♡」
名前を呼んでくれたのが嬉しくて、腰をくねらせながら名を呼ぶと、マーリンの舌の動きが激しくなった。
先ほどまでの丁寧さが吹き飛んで、べろべろぐろぐりとクリトリスをこねられる。
「あ゛ッ、あ゛ーーーーッ♡♡らめらめらめッ♡♡もうイぐッ♡すぐイっぢゃう゛♡♡♡」
じんじんお腹が熱くなって、中心がきゅうと震える心地がする。
ぶしゃりと何かが爆発したみたいに熱が弾けて、それに合わせるように腰を持ち上げると、マーリンがぢゅるぢゅると音を立てて愛液を吸い上げた。
「は……、ぁ…………♡」
愛液を拭うように這わされる舌の感触に、イったばかりの身体が甘く痺れる。
ようやく顔を上げたマーリンに目をやると、乱暴に唇を拭いマーリンもこちらを見た。
フ、とマーリンが口端を吊り上げる。
「……っ」
ぞく、と肌が粟立つ。
マーリンは小さくはぁ、と息を吐くと、私の上に覆いかぶさった。頬に手を添えられ、そのまま髪を優しく梳かれる。
仕草はとても穏やかなのに、マーリンの顔は先刻よりさらに紅潮し、その目は、欲に潤んでいた。
「あぁ、なまえ……」
譫言のようにマーリンが震える声で呟いて、私の唇を飲み込む。
さっきまで私の股を這っていた舌が、今度は私の舌を絡め取ろうと口内を這いまわる。
「んん!んぅっ、う、ふ……っ」
獲物を追い詰めるように容赦のない責めに、息が上手く出来ない。さっきよりももっともっと原始的な、ともすれば舌を噛まれてしまうのではと危惧してしまうほど、その口づけは乱暴だった。ふるふると身体が震える。
「っは、ま、っあ、」
「なまえ」
「っえ、」
くちり、と中心で水音が小さく響く。
何かをあてがわれた感触がして、びくりと大きく身体が震えた。
「……ま……、ぁ、は……っ」
「ん……」
「ぁ!あ……ッ♡」
ぐ、と、強く、何かが押し込められようとしている。
何かって、そんなの、この状況で一つしか無くて、それは、私がずっとずっと欲しいと思っていたもので。
どうして、なんで、なんて考えるよりも前に、それを招き入れようと、私は大きく脚を開いて、マーリンの背中に腕を回すと、ぎゅうと強く抱き着いた。
「――――ッ!」
「、ぁ、…………まーりん……?」
ビクン、とマーリンの身体が大きく震え、ずり落ちるようにしてもたれかかってくる。自分の頭の横にマーリンの頭が伏せられて、わけも分からずその頭をとっさに撫でる。
「――我ながら、出来のいい術を施したものだよ」
「?」
暫くぐったりとのしかかったままだったマーリンが、不意にぽつりと呟いて、重そうに身体を持ち上げた。
私を見下ろす顔はどこか辛そうに歪められ、無意識に手が伸びる。
術。そう、そうだ。私はマーリンと、いや。誰とも、性交を許されていない。
際限なく求めようとする私に、マーリンはそうやって罰を施したから。
なのに今、その罰が、どうやらマーリン自身を苛んでいるようだった。
持ち上げられた身体に腕を回し、再び引き寄せる。胸元に頭を抱き込むと、後頭部に口づけながら、髪を梳くようにしてその頭を何度も撫でた。
「マーリン、……すき」
「っは、……なまえ」
すり、とマーリンが私の胸に頭を擦り付け、そのまま胸元に口づけていく。
マーリン自身がかけた魔術なんだから、解いちゃえばいいのに、マーリンはこの術を解こうとは決してしなかった。
今のように、マーリンだって私との行為を望んでくれることが、過去にだって――、――……あれ、えぇと、いつのことだったろう、それは。
「なまえ……なまえ」
「んんっ、ふぁ、マーリン……」
胸元を通って鎖骨、首筋、おとがいと、マーリンに吸い付かれ、ほのかな疑問は霧消して、ふわふわとした浮遊感に包まれる。
こんなにたくさんマーリンに触れられるなんて、本当に私は幸せ者だ。
「まーりん、すき……すき」
胸が熱くなって、ぽろりぽろりと言葉が零れ落ちる。
好きだと伝えて好きだと返ってくることはないのに、どうしてか私の胸の奥からは、それでもマーリンが好きだという気持ちが溢れて、一向に消えて無くならない。
「なまえ……、なまえ、なまえ」
「ん、んんっ」
何度も何度も名前を呼ばれて、それが嬉しくてたまらなくて、回した腕に力を籠める。
とうとうマーリンは私の唇に吸い付くと、欲に潤んだ瞳を、今にも泣きそうに瞬かせながら、苦しそうに声を絞り出した。
「あぁ、なまえ、キミが欲しい」
かすれた声で落とされた言葉に、胸の灯が強く点る。
“欲しい”なんてそんな今更なこと、そんなにも縋るようにして言うなんて、まったくマーリンは何にも分かってない。
「私は、マーリンのモノだよ」
なんて、当然のように答えようとしたけれど、こみ上げる感情に喉がつかえて、声が震えてしまった。ちょっと恥ずかしくなって、見つめ合っていた目を逸らすとぐいとマーリンの頭を引き寄せる。あぁ、と耳元でマーリンが息を吐いて、私の身体に腕を回した。
「……、なまえ、なまえ……」
「なぁに?」
「キミが、欲しいんだ……」
「うん、いいよ、全部持ってって」
「……なまえ……」
肩口にマーリンの唇が触れる。かぷりと歯を立てられたかと思えば、舌の這う感触に震える。
「ん、ぅ」
「っは、ぁ」
「んっ……、マーリン……、」
「あぁ、本当に……、どうして、こんな……」
美味しそうなんだろう。
そう呟くと、マーリンは再び私の首元に顔をうずめて、牙をむくように柔肌へと噛みついた。
「
痛みに驚いて、反動でくしゃりとマーリンの髪を握ってしまう。それだって痛いだろうに、マーリンは意に介した様子もなく、更に強く、今度は肩にかじりついた。
「ぅあッ、い、った……っ」
愛しさに潤んでいた目に、痛みによる涙が滲む。
痛くて痛くて、やめてほしいのに、放してほしくはなかった。
マーリンがこうして私に噛みつくのは、珍しいことではあるけど、今までも無かったわけではない。
私の身体はマーリンへの「好き」で出来てるんじゃないかって自分で思うくらいだから、マーリンにとっては私の身体すらも、補食対象に思えるのかもしれなかった。
マーリンが求めているのが、私からの好意という
それがマーリンを追いつめるほど美味だと言うなら、もうそれで報われているのかもしれないとぼんやりと思う。
がじがじと私の身体をかじるマーリンの頭を、痛みに呻きながらも撫でる手を止めない。
そのままマーリンは、満足するまで私の身体をかじったり、舐めたり、愛撫したりと、弄り回したのだった。
――マーリンに抱き起こされ、向かい合う形で抱き合う。
疲れ果ててくったりとマーリンにもたれかかると、先刻までとはうってかわって、マーリンは私を優しく抱き留め、背を撫でた。
「……マーリン」
その優しい手つきに、嬉しくなって顔を上げて名を呼ぶ。
それ以上何も言わずとも、マーリンに唇を寄せられ、私たちは穏やかに口づけあった。
唇をそっと離して目を開けると、まだ何か、名残惜しそうなマーリンと目が合う。
「……?どうか、した?」
「もう、時間だ」
「え?」
「朝になる」
このままがいい、と駄々をこねる子供のような声でマーリンが囁く。
ああ、そうか、と、急にすべてが腑に落ちて、すり寄るマーリンに私も頭をすり寄せた。
「私も二人きりがいいよ」
「……そうだろうとも。キミは僕が大好きだから」
「マーリンも、私と会えなくて寂しかったんでしょう」
そろそろいい加減認めればいいのに、と小さく笑って言いながら、きっとこれは私に都合のいい、私の見ている夢なんだと納得する。
こういう夢を、たまに見ることがある。
マーリンが私を求めてくれる、そんなとても幸せな夢を。
そして、夢だと理解した瞬間、その夢から私は覚める。
次に目を開けたら、私はマイルームのベッドで仰向けに寝ていて、その隣には、やはり誰もいなかった。
「…………」
ごそ、と寝返りを打ってみる。
さっきまで、痛い痛いと思っていた筈の痛みは、今は夢の名残を告げるように、甘い痺れとして残っているだけだ。
時刻はまだ、起床予定よりもだいぶ早かった。
むくり、起きあがって、支度を始める。
二度寝したらまたマーリンが夢に出るかも、とか、そんな幻想は抱かない。
いつもは夢を覚えていない私だけど、ごくたまに、マーリンの夢を覚えていることがある。
だけどその大半は、そばにいないマーリンを求めて彷徨う夢で。
いつも何かに阻まれて、マーリンをつかみ損ねる夢ばかり。
それでも本当にごくまれに――こうして、マーリンと私が、まるで両想いかのような夢を、見ることがあった。
夢の中の私は、マーリンが自分を求めてくれることに、大して疑いを持たない。
身体を求められることも、きっと好きだと告げられても、「あり得ない」なんて思わずに、すんなりと受け入れることが出来た。
そんな、不安に思うことすらないような幸せな夢を、忘れられるわけなんてなくて。
触れ合えない寂しさが生んだ幻なんだろうけど、あんないい夢を見れたのなら、ちょっとはその寂しさも拭われた気もした。
だけど。
それはそれとして、今は早くマーリンに会いたい。
起きて対面したマーリンは、きっといつも通りの朗らかさで、何でもないような顔をしているのだろう。
あんな感情むき出しで私を求めるマーリンなんて現実にいない。
でもそれでいい。
夢は夢でいい。
私のことを絶対求めてくれないマーリンでも、今は現実のマーリンに、一秒でも早く会いたかった。
いろいろと限界になりつつある。