手を引かれてマイルームに来たものの、いつもと違うマーリンにどうしていいか分からず、私は自室に突っ立って固まっていた。
手を握ったままマーリンが穏やかな顔で私を見ている。凄く居たたまれない。
「えっと……お、お茶でも飲む……?」
「貴方が望むようにしましょう」
うーん!やっぱり慣れないな!!
慌てて顔を逸らして、部屋の真ん中に置かれた小テーブルへと歩を進める。
そしたら何故かぐいと強く手を引かれてそれを阻止された。え?
見上げたマーリンは悠然と微笑んでいる。
困惑する私をよそに、マーリンはもう一度強く手を引くと私をベッドへと誘った。
そのままぼすりとベッドに座らせられ、マーリンもその隣に腰掛ける。
「え……?お茶飲むんじゃ……」
「貴方が望むように、と言ったでしょう?」
聖人のように穏やかな顔でマーリンが言う。
……え、えっと?
「わ……私は別に、何も」
「おや……そうでしたか?私を独占したかったのではありませんか」
「そ、それはマーリンの方でしょ!?」
私を独占したいと言ったのはマーリンの方だ。
それを言ったのは普段のマーリンで、この聖者のような顔をしたマーリンでは無いけれど……。
「いけませんね、なまえ」
窘めるようにそう言って、マーリンが私の顎を指先で掬う。
見上げた先にある顔が、心なしかいつもより更に美貌に磨きがかかったような気がして怯んでしまう。
私を見下ろすように伏された瞼に白いまつげが連なって、ああ、そんなのいつもの事なのに、どうしてこうも繊細にうつるのだろうか。
「私は貴方の師なのでしょう。ならば、相応しい呼び方をしなくては」
穏やかな声音が、耳を通って脳を揺さぶる。
厳かにすら感じられるその言葉に、私は戸惑いながら口を開いた。
「まー……りん、さ、ま」
「よく出来ました」
ふわりと微笑んで、マーリンが私の頭を撫でた。
思わずその顔に見とれてしまう。
「――さて。では、貴方の望みを伺いましょうか」
端然と微笑むと、頭をなでていた手をするりと頬へ滑らせながらマーリンが言う。
望み、って、言われても。
どうしていいか分からず、撫でられた頬のくすぐったさに瞑った目を怖ず怖ずと開いて、マーリンを見上げてみる。
「どうかしましたか」
「あ……の」
望み、望み。マーリンにしてほしいこと。
そんなのいっぱいあるけれど、この賢者然としたマーリンには何を望んでいいのか分からない。
普段のマーリンが見えない心細さに、そっとローブの先をつまむと、少しだけ身を寄せてみる。
「さわっ、ても、いいですか?」
「ご自由に。弟子である前に、貴方は私のマスターなのだから」
様付けさせておいていけしゃあしゃあと宣うマーリンにむぅと眉をしかめながらも、そっとローブを掴んでいた手を腕へと滑らせる。柔らかで手触りの良い袖越しに感じる腕の感触はいつも通り固く張りがあって、握り込んでも到底指が回らないほど太い。手首をぎゅっと握ってそれを確認すると、するりと指先を掌へ這わせて、そっと指同士を絡ませる。
「…………」
指先に力を込めて手を握ると、マーリンも優しく握り返してくれた。優しく触れる感触もいつも通りなのだけど、不思議と焦らされているような気持ちになって、握る手の力を強めた。
自分がこのマーリンに何を求めているのか、全然分からないけれど、衝動のようなものを感じて胸がざわつく。
「なまえ」
「っ」
「これで、満足ですか?」
「ぅ……」
問われ、顔を窺うと、やはり慈愛に満ちた顔がそこにあり、ぎゅうと胸が締め付けられる。何だかものすごく恥ずかしい。
満足か、という問いは、そうではないことを見透かされているようで、無性に隠れてしまいたくなった。
「も、ぅ、ちょっと」
「はい」
「……えっと……さ……、っ」
触ってもいいか、もう一度聞こうとした私の手の甲を、マーリンが指先で撫でる。
びく、と背中が震えて、ちらりとマーリンを窺う。
「なまえ?」
「……っ、さ……さわ、って、ほしい」
「はい」
優雅に答えて、マーリンはごく当然のように私に手を伸ばし、握った手の甲の上に、空いた手をそっと添えた。そのまま、私がしたようにするりと腕の方へ掌を滑らせる。
「、ぅっ……」
腕を滑る掌の感触にむずむずとした感覚が走り、ぴくんと肩が震える。マーリンは両手で私の手を取ると、そのまますりすりと指先で掌を撫で始めた。くすぐったさと焦れるような感覚に、息を呑む。
「ふ、ぅっ……」
「貴方の手は、小さくて愛らしいですね」
「ぅ、えっ」
そう言いながら、マーリンは己の長く美しい指先で、感触を確かめるように私の手を撫でていく。
ゆるりと握られた手首に回された手の大きさに、どきりと胸が高鳴る。さっき私がマーリンの腕に回した手は、指先が全く届かなかったのに、マーリンの指先は握り込まれていても全然きつくない。
ほぅ、と思わず熱い吐息が漏れる。私の手に向いていたマーリンの目がそっと持ち上げられて、ばちりと目が合う。瞬間、触れている手が燃えるように熱く滾る心地がして、物足りなさに身体が疼いた。
「なまえ。どうしてそんなに苦しそうなのですか?」
「っ、く、苦しい、わけじゃ……なくて……」
「では、何故そんな顔を?」
「っ!」
掌を撫でていた方の手で、マーリンがそっと私の頬に触れた。ぞくんと腹の底が疼く感触に、思わず足をすり合わせる。
「良いのですよ、何でも好きに言いなさい。私は貴方の望む通りに振る舞いましょう」
そっと囁かれた言葉に、ゆっくりと口を開く。
こんな綺麗な人に、こんな事お願いしていいわけがないのに、私はもう、止まれなかった。
「あの…‥あのね……足りない、です……」
「何が、足りないのですか?」
「さ……触る、のが、……もっ、と、…………いっぱい、身体…………触っ、て…………」
「……身体の、どこまで?」
「…………ぜん、ぶ、ぜんぶ……全部、さわっ、て」
「――貴方がそれを望むなら、触れましょう。貴方の、すべてに」
すべてに、そう言われた瞬間、中心がずくんと疼いて、思わずマーリンのローブを縋るように掴んだ。頬に触れていた手が、するすると首筋を伝って胸元まで下ろされる。
「ぅ、はっ……」
普段なら、いやらしい手つきだと思ったろうし、マーリンもニヤニヤしながら妙に色っぽい目で私を見下ろしているところだ。
だけど今のマーリンはただ穏やかで完璧な笑みを浮かべたまま、私の身体に触れていく。
何だか自分がドキドキしているのが後ろめたくて、でもそれがまたドキドキしてしまって。
相手はマーリンなのに、こんな事させてしまって悪いような気までしてくる。
お願いさせたのはマーリンなのに、どういうことだ。
するするとマーリンの手が私の身体を這い、スカートに差し掛かる。
ふと花のような笑みを浮かべると、マーリンはそっと口を開いた。
「中に、触れても?」
「……っ、う、ん」
流麗な声で尋ねられた言葉に、小さく頷く。
ホント何でこんな事になってるんだ、分からないけど、この状態のマーリンが私にどうやって触れるのか、知りたくて仕方がない。
つ、とマーリンの指がゆっくりと内股をさすって、その指先がつんとクロッチ部分をつついた。思わず漏れそうになった息を慌てて飲み込む。
エッチな雰囲気になっちゃいけないような、そんな気がするのに、マーリンの手は私のえっちな部分に触れていく。
なのに顔も手つきも、いやらしいとは思えなくて、高ぶってしまう自分が恥ずかしかった。
くっ、と布地の上からマーリンが指先に力を加えた。割れ目にショーツが食い込んで、きゅんとした刺激が中心を伝ってお腹まで上ってくる。
「もっとよく見せてください」
「ぁ……っ、は、い……」
言われて、両足を立てるとそっと開いて、股をマーリンの前に晒した。
何だかいつもよりずっとずっと恥ずかしくて、やっぱりいけない事をしているような気になってしまう。
私たちは本当に師弟なわけではないし、マーリンは聖人なんかじゃないのに。
そっとマーリンの顔を窺うと、目を伏せて真面目な顔をして私の股を見つめていたものだから余計に恥ずかくて、股を閉じてしまいたくなった。その足を自分で掴むと、震える身体ごと押さえつける。私の視線に気づいたマーリンが顔を上げて、微笑みながら口を開いた。
「素敵ですよ、なまえ」
「う、」
言いながら、その手がするりとショーツの中へ忍び込んでくる。
入り口をぬるぬると、感触を一つ一つ確かめるように指が這わされる。
「ぁ、あ……っ♡」
きゅん、と触れられた箇所に熱が宿り、甘やかな快楽が身体を伝う。
あくまで優しく緩やかに触れられているのに、生まれる熱がじわじわと欲を煽って、躊躇いをはぎ取っていく。
ねぇ、もう、良いんだよね?
私、えっちになっても、いいよね?
「っま、ぁ、まーりん、さま、ぁ♡」
「何ですか、なまえ」
「は、ぁ、きもち、ぃ、れす……っ♡」
「そのようですね」
特に咎めるようなこともなく、マーリンが優しく答える。
「っぁ♡っは、も、っと、きもちく、して……♡」
「ええ、貴方が望む通りに」
躊躇いを脱ぎ捨て、はっきりとおねだりしてみれば、マーリンが花のように笑んで、頷いた。
割れ目から滲んだ愛液を掬い取り、塗り広げるように指を這わせる。不意に指先がクリトリスに触れ、私は一際高い声をあげた。
「ん、ぅあッ!♡」
「ああ、やはり、ここですね」
「ぁ、あ……っ♡はいっ……そこ、です……♡あ♡」
マーリンが独り言のように囁いた言葉に、律儀に返事をして、もっともっとと暗にねだる。
マーリンの指先が皮を剥くように突起を撫でて、その感触に私は身体をぶるぶると震わせた。
「あっ、あーっ♡まーりんさま……♡くりとりす、きもちぃ、です♡」
「そのようですね。中はどうでしょう」
「あッ♡あーっ♡同時らめっ♡らめっ♡♡」
ずりゅんとマーリンの長い指が私の中へと吸い込まれて、その指先が敏感な箇所を擦りあげた。
「どうでしょう」などと言いながら、的確に私の弱いところを責め立てるマーリンはやっぱりマーリンだ。
こしゅこしゅと外と中を同時に責め立てられ、えも言われぬ快感が襲い掛かってくる。
足を無意識に引きずりながら、マーリンの手の動きに逆らわないよう必死で身体を押さえつけて、齎される法悦に身体を震わせた。
「ああ、いい子ですね」
「ふぐ、ぅうううッ♡」
褒め言葉に気をよくして、開いた足をなおさら強く押さえつける。ふぅふぅと息を吐きながら顔を真っ赤にして耐える私を見て、マーリンが「辛いですか」と優しい声で尋ねてきた。
「っ、くなっ、ぃ、ぃもちぃっ、れしゅ♡」
ぶんぶんと首を横に振り、必死に伝えるも、マーリンは眉を寄せると「やはりもう少しゆっくりにしましょう」と心配げに囁いた。クリトリスをこねていた親指が離され、その周囲をなで回される。ずくずくとした刺激が胸の内に湧き上がり、切なさに唇を噛みしめた。クリトリスへの決定的な刺激は避けながら、中の方は指の腹を使って私の弱い箇所をすりすりと擦られて、きゅうとその指を締め付けてしまう。
心配げな声なんて絶対に演技だし、白々しく焦らすような態度に文句をつけたくなったものの、今はマーリンに従う以外の行動を取る気にはなれなくて、黙って自分の足を押さえつける指に力をこめた。
「ぁ、あっ、ま、はっ、っぁ、りん、さまぁ……」
「苦しそうですね」
「ん、ぅ、らってぇ……」
「楽にしていいんですよ」
そう言うと、マーリンがそっと私の身体をベッドに横たえて、制服のベルトに手をかけた。下腹部への刺激は継続されたまま、器用に前を開かれる。中に着ていたインナーをするりと引き上げられ、何の躊躇もなく胸をむき出しにされて、思わず息を飲んだ。
「……っ!」
「これで少しは楽になるでしょう」
「っあ……っ」
膣壁をこする指とは別に、胸元をマーリンの手が撫でていく。熱く疼いた身体にその手の感触はじんわりと沁みて、熱を切なさへと変えていく。
「……ずいぶん、鼓動が速いな」
マーリンがぽつりと呟き、その白い顔を胸元に近づける。乳房をゆるりと掴まれ、そっと谷間に口づけが落とされた。
「っぁ、まぁりん……っ!♡」
慈しむような仕草に、恋しさが募って、身体が高ぶる。はぁはぁと激しい呼吸を零しながら、マーリンのローブを掴むと、懇願するように名を呼んだ。
「っも、ね、おねが、ぃっ♡ひどくっ、して♡」
「貴方に無理をさせるわけにはいきません」
「っやぁっ、も、らめなの♡がまんっ♡れきな、ぃっ♡♡」
「……分かりました」
駄々をこねる私に、マーリンが物憂げな顔で静かに了承の言葉を吐いた。中を擦る指先に少しだけ力が加えられて、何かを押し出すような仕草に変わる。むずむずとした感覚が下腹部に広がって、外に向けて何かを吐き出したい衝動がずくずくと私をつついてくる。
「っあ!まっ、♡ちがっ、ちが、のぉっ♡これぇっ、でちゃ、でっ、ぅあ♡」
こっちじゃない、これは、こんなの、恥ずかしくてイヤなのに。
ぶんぶんと首を横に振って、やめてと意思表示する私をあやすように、マーリンが私の頭を撫でた。
「ええ、思う存分、出してください」
「あぁあうっ♡やっ♡やらぁ♡♡あっ、もっ、でるっ♡♡でちゃうぅ♡♡♡」
「良いのですよ、なまえ。悪いものは全部出してしまいましょう」
「ひぎっ、うぅうううっ♡はぁああああんッ♡♡」
びしゅっ、びゅっ、と私の中から何かが溢れて、マーリンの指とショーツをずぶずぶに汚してしまった。
「っう、あ……」
「ふふ……よく出来ました、なまえ。こんなにたくさん」
「ぅ」
そう言ってマーリンは指を抜き取ると、ずぶ濡れのショーツの上から恥丘を撫でた。
おもらししたのを褒められたみたいで、意味不明な羞恥が襲ってくる。
「うぅ……濡れ、ちゃった……」
「ああ、そうですね。着替えなくては」
マーリンがショーツに手をかけて、私の脚から丁寧に引き抜いていく。
その行動が、まるで幼児扱いされているようで、更に私の羞恥心を煽った。
「このままでは汚れてしまいますから、全部脱いでしまいましょう」
「っ、ま、まって、じぶんでぬげる……っ」
そのまま私の服に手をかけようとするマーリンを制して、自分から服を脱ぐ。そんな私を、マーリンが穏やかな顔で見つめている。落ち着かなくて目を逸らし、何となくいつもより時間をかけて服を脱いでいった。
「美しいですね。なまえ」
全裸になった私に、マーリンがそう言った。
思わず顔を見上げたら、悠然とした笑みの中に、少しだけ尊いものを見るような眼差しが感じられて、いたたまれない気持ちになる。
私は、私は、貴方に浅ましい欲を抱いている、いけない女です。
「なまえ」
「っ、」
きまり悪さに再び俯いた私に、マーリンが優しく声をかける。そっと身体を引き寄せて、あぐらをかいた自分の膝の上に私を乗せた。
「あ……マーリン……」
「こら。そうではないでしょう?」
「ま、マーリン様」
「そう。貴方は物わかりの良い子ですね、なまえ」
いつの間にかズボンの隙間から自身を取り出していたマーリンのそれが、私の股にあてがわれる。いつもどおりに固く勃ち上がった様子を見て、何だかとてもほっとした。えっちな気分になってるの、私だけかと思ったから。
促されるまま腰を下ろし、それを全部飲み込むと、私はふうと息を吐いた。
そのままぎゅっとマーリンに抱きつく。
「今日はいつもより、幾分物静かですね」
「……マーリン……様、だって」
「貴方の命令ですから」
「…………どっちの私の方がいい?」
「……――」
淀みなく紡がれていた台詞が途切れる。
そっと身体を離してマーリンを見ると、真面目な顔で私を見つめていたので慌てて抱きつきなおした。
何だろう。困らせてしまったのだろうか。
「その質問は、私がする方かと思うのですが」
「う」
マーリンは後頭部に手を回すと、私の頭を撫でてそう言った。
よく考えなくてもその通りで、何を聞いてるんだと私は自分で自分に脳内で突っ込む。今日は何だか、いつも以上に支離滅裂だ。
「でも、そうですね。今日の少しだけ大人しい貴方も、好きですよ」
「……ん」
「勿論、いつもの貴方も愛しく思っています。さあ、いつものように出来ますね」
「……は、い」
ぎゅむ、とマーリンに強くしがみついて、両足を立てると腰を浮かせる。
そのまま勢いよく腰を下ろして、何度も何度も、マーリンの上で腰を踊らせる。
「んッ♡ふぁっ、はぁあっ♡」
「ん、」
「あっ、あ♡まーりんっ、まーりんもっ、あっ♡きもちく、なって……っ♡」
「気持ちいいですよ」
ふふ、と微笑ましげな笑みを漏らしながらマーリンが答える。
全然、気持ちよさそうとは思えなくて、悔しくなって私は更に腰を振った。
今度は前後にも動かして、マーリンの性器を自らの膣でしごきあげる。
「はァっ♡あっ、はっ、んぅっ♡」
「ふ、ぅ」
「んぅうう……ッ♡」
「く、」
最奥を穿つよう腰を深く落としたまま前後に腰を揺らせば、聖者のようなマーリンの顔に、漸く少し翳りが見えた。
もっとよく顔が見たくて、身体を離すとマーリンの顔を真正面から見つめたまま、ぐりぐりと性器を刺激してみせる。
「ぁああっ♡ま、りん、しゃま♡」
「……っ、は」
マーリンが息を吐く。嬉しくなって、更に更にと腰を動かす。
「ん……、上手ですよ」
「ふぁっ、ありぁと、ござ、まひゅっ♡」
自らの動きで私自身にも強い刺激が走っていく。
まともな言語も思考も散っていく私に反して、未だ聖者の笑みを崩さないマーリンに、自分の俗っぽさが申し訳なくなる。
マーリンとえっちな事をするのが好き。
マーリンに、私とえっちな事をしたいと思われたい。
もっと必死になって、私を求めてほしいと思ってしまう。
「こ、な……えっちで……ごめ、なさぃ♡」
「……全くだ。私を翻弄しようなどと」
ああ、マーリンにはすっかりバレてしまっている。
私がこんなにもあさましい女だと、そう、マーリンが知らない筈は無いのだ。
私の欲を、いつだってマーリンは暴いてしまう。
マーリンに触れられてしまうと、求める事をやめられない。
「あ♡だっ、て♡」
「黙りなさい」
「はぐっ♡」
言い訳を連ねようとする私をマーリンが制止して、頬を掴むと無理矢理に口付けた。
聖者の顔をしながら強引にキスしてくるのには、正直とても興奮してしまった。
口を開けてマーリンの舌を受け入れようとする私に、マーリンも応えてその舌が口内を這いまわる。
賢者と呼ばれたマーリンが、私の舌を舐めまわしている。
良いのだろうか、ああ、でも、とっても気持ちがいい。
「ふっ、んぅうっ♡」
「っ、ん……」
ぞくぞくと身体が震えて、中心が疼く。
そのつもりが無くてもマーリンの性器を締め上げてしまって、それに反応したマーリンがぴくりと眉を寄せた。
あ、感じてる。
「ぁ、りんぅ♡」
口づけの隙間に、グズグズに蕩けた言語能力で辛うじて名を呼ぶ。
「何ですか、なまえ」
きちんと解読したらしいマーリンが、私の口端に引っかかる髪を避けながら優しく返事を返した。
「きょ、ちがぅ、ひと、みた、れ、らめ♡」
「……駄目、とは?随分と嬉しそうに見えますよ」
「ぁ……♡そ、れす♡ちがう、まーりんに、こーふんしてます♡」
「……ふふ、常の私だけでは足りませんか?」
「んッ♡あの、ね、あの、ちがうの」
もう一度マーリンの体に腕を回して、ぎゅうと強く抱きしめる。
この感触はいつもと変わらない。ふわふわとした髪も、硬く鍛えられた身体も、花の香りの底にある、蠱惑的な薫りも。
「ほかのこ、より、すこしだけ……まーりんのこと、かんじれるの、うれしい」
ぎゅうぎゅうと抱きついたまま、脚も背中に回してしまう。
この嬉しい気持ちが伝わるように。
理由を理解できなくても構わないから、私がどれだけ喜んでいるのか分かるように。
二人のマーリンを一人で感じた女の子は、きっとそう多くない。もしかして、もしかしたら、私だけ、かもしれない。
そう思ったら嬉しくて嬉しくて、胸がきゅうと高鳴った。
全く呆れた女だと思う。誰よりも愛していると、恋をしたのだとそう言われて、あんなに欲していた身体の繋がりだけでなく、心まで彼は与えてくれたのに、まだ心のどこかで不満に思っている。
マーリンが数多くの女を抱いたこと。私はその一人でしか無いこと。
マーリンの恋心を手に入れて、それでも確かな違いを欲していた。唯一の女になりたいと願いながら、一番の女でいたいという感情を捨てきれない。
マーリンへの恋心を自覚するたびに、自分がただの女である事を思い知らされ、その隔たりの強固さに泣いてしまう。
以前よりずっとずっと恵まれている筈なのに、どうして私はこんなにも、無い物ねだりなのだろう。
もう充分だと言い聞かせていた「特別な何かがもっと欲しい」という欲望を、こんな形で叶えられてしまった。
もしかしたら、私だけっていうのは勘違いなのかもしれないけど……でも、やっぱり、そんなにはいないと思うから。
そうだよね?……確認するのは、やっぱり怖いな。
そんな風に考えながらむぎゅむぎゅと抱きついていた私を、マーリンがおもむろに抱え上げた。
「ひゃっ、あ゛!!♡」
「は……、よくばり、ですね、なまえは」
「ごめっ♡ごめんなさいぃっ♡」
「反省の色が見えません」
「あッ、あ゛!ゆるひっ、ゆるぃてッ♡ひゃあああんっ!!」
私を抱えながら下から突き上げるその動きに、たちまち翻弄されてしまい私はただただ叫んでいた。
嬉しい、気持ちいい、ごめんなさい。
マーリン、まーりん、マーリン、様。
またこれやろうね。
いっぱい気持ちよくしてね。
私も気持ちよく出来るようがんばるね。
すき、すき、すき、すき。
いっぱい、すきで、もう、だめ。
「――あぁあああ……ッ♡」
頭がたくさんの好きでいっぱいになってしまった私は、そのまま突き上げられてイってしまった。マーリンが遅れて私の中に吐精する。
ちょっとだけ、勿体ない事をしてしまったなと思う。
折角私が有利な体位だったのだから、もっともっと余裕を奪ってやりたかった。
でも仕方ないよ。だって私は中を責められるのにとても弱い。
それもこれも、これでもかと焦らされ続けた日々のせいだ。そんな日々も報われて、今はただただ気持ちがいいから、構わないんだけど。
息を整えながら、改めてマーリンの顔を見つめる。
ふ、と息を零した後、マーリンが花のように微笑んで私を見つめ返した。
ああ、やっぱり残念だ。私もっと、頑張らなくちゃ。
今日のマーリンは、何だか普段よりずっと冷静に思える。
いつものマーリンは、もっと欲に目をぎらつかせていると思うのに。でも今日は、少しもそんな感じがしなかった。
ずっとずっと、聖人のような穏やかな笑顔で、幼い私を見守るように、彼は私の身体を溶かしていった。
もしかしてこのマーリンは、普段のマーリンと使っている感情エネルギーも違ったりするのだろうか。
どこからどこまでがマーリンの人格と言えるのか、ふと考えてしまう。
でも、このマーリンも私を愛していると言ってくれた。
ならもう良いや。このマーリンがいつもとどう違ったって構わない。最後まで冷静さを保ったままでいられたのはちょっと残念だけど、それでも彼は言ったのだ。このマーリンが愛を囁いたのは、私だけだって。
ならもうそれで良い。だって彼は、間違いなく「マーリン」なのだから。
大魔術師、人を導く者、素晴らしき花の魔術師、伝説の賢者マーリン。
私の知らなかった、麗しのマーリン様は――今はもう、私のものだ。