超昂大戦SS ダイビート5周年! 君も見よ! 始まりの夜、紅蓮の超昂 作:環 藍河
「いつも通りにお過ごしいただきたい。」
いささか意外な進言が、トキサダの虚を突く。
「それが堕天使の心の侵食を防ぐ、シンプルで最強の盾になるのです。」
「ハダル…」
「いつも通りにダイビートの5周年謝恩企画を執り行う。
パトロールも作戦行動も、いつも通りに遂行する。
堕天使たちに『お前達の存在で揺らぐ我らではないぞ』と暗黙のメッセージを送ることが重要なのです。」
「しかしだな…?」
節目となるメモリアル・デーだからこそ、目下の敵…堕天同盟ティルスも、手段を選ばず妨害工作に打って出るのではないか。
「いいかもよ? 私は賛成。」
「ユーノ?」
「オズウェルもカンザエルも、もちろんエクシール・リバースも、トキサダや超昂戦士の心の隙を突こうと手ぐすね引いているのは間違いないわ。
こちらが動じないことは、何よりの抑止力。」
「しかしだな、ユーノ…」
「…それに。」
ずいっ。
「最近はあまりに、みんなが心を揺さぶられることばっかりだったから。
みんな、内心は不安よ。」
女神の慈愛の微笑みで、身を乗り出した副官が凛と進言する。
「超昂戦士に心の充足を与えるのも、長官の重要任務でしょ。わかってるわね?」
…反論の余地はなかった。
…
……
ダイビート設立5周年イベントは、盛況のうちにつつがなく幕を閉じた。
空にサンタンジェロ城が浮き、地上の我ら人類に、そして神騎たちに睨みを効かせる中でも、市民はダイビートを歓迎し、超昂戦士たちとの交流を心から楽しんでくれた。
相変わらず、俺は胴上げで成層圏まで飛ばされそうになったが、まあご愛敬だ。
そして。
「魔王さん。私たち、今日はこのまま警戒態勢を敷きます。」
「ユリエル…?」
「記念すべき5周年のこの日を滅茶苦茶にして、市民に絶望を刻み込む。
堕天使たちが今日動く理由があるなら…私たちは阻止するために全力を尽くします!」
「こうなったらユリエルは聞かないからね~。あたしは勇者さまが無茶しすぎないよう、見張るしかないね。」
「…ホントはヤダけど! 記念日! パパとイチャイチャしたいけど!」
「あんたはあんたの平常運転! ほら配信行ってこいっ!」
「うう~っ…!!」
……
…
宴の昂奮さめやらぬまま、向かい合う二人。
いつもの、トキサダの部屋。
そしてトキサダの目の前には、ダイビート最古参の若き超昂戦士。
彼女がこの部屋で長官と二人きりになることは、珍しくはない。
だが、ここは彼女が超昂戦士として真に歩み始めた、始まりの部屋。
設立5周年のこの日は、彼女の…園崎アカリの、特別な日だった。
「私で、いいんですか? 大事なこの日にご一緒するのが、私で…?」
「キミがいいんだ。大事な今夜、いちばん大事な『いつも通り』を、キミと過ごしたい。」
「…いつも通り、ですか…?」
「ああ、いつも通り。」
「…わかりました。」
一歩引き、決意に満ちた顔を上げて、背筋を伸ばす。
「フラックスプロ-ジョン・ビートチェンジ。」
かっ…!
「紅蓮の光は不滅の炎。
超昂戦士エスカ・ルビー。長官のお部屋に…只今参上。」
いつもは凜々しく高らかな口上だが、今日は柔らかく、少し艶っぽく。
アカリとトキサダの出会いから、5年。
以来、今日まで戦いを重ね、幾多の敵を撥ねのけ、今やエスカ・ルビーは超昂戦士のシンボル。
そしてその原動力…エナジーと勇気をトキサダから注がれるDチャージも…初めての夜から、まる5年。
「5度目の記念日ですから…初めての日と同じ、このフォームで。」
(………。)
互いに吐息の掛かる距離で、立ちすくむトキサダ。
瞳だけがルビーの姿を撫で回すように揺れ動くばかりで、言葉も出ない。
「…あの、も、もしかして…」
「…?」
「がっかり、させちゃいましたか…? 私のノーマルフォーム…
…そ、そうですよね。使い古した服ですしね。
わたし…ムード考えてませんでした。すみませ…」
がばっ!!「きゃあっ!?」
逞しい両腕で、うろたえるルビーを引き留めるように両肩を抱きしめる。
左手は戦士の左肩をカラーごと掴み、胸の中へ力強く引き寄せる。
右手は少女のうなじを優しく包み、ツーサイドアップを弄る指先で、俺だけを見ろと無言で語る。
「ルビーと俺が重ねた絆が、隅々まで満たされた服だ。
カラーも、レオタードも、スカートも。グローブもブーツも。
飽きるなんて、あり得ない。」
(……!)
身体は火照り続け、心臓は高鳴るのに、その言葉で、両腕から伝わる熱い思いで。
ルビーは心臓が止まったかのように動けなくなる。
「ルビー…ありのままの君が欲しい。」
「…嬉しいです…!」
熱が瞳を蕩かし、頭が、心が、じわりと痺れていく。
二人は心の同調に従うように、最後の5センチを半分ずつ近づける。
「んっ…んふっ、あむっ…!」
幾度も重ねたはずの唇は、始まりのぎこちなさの記憶を呼び覚まし、蜜の甘露と羞恥の苦味を2人に染みこませる。
(…あの日は…ただ、長官にお任せで…
キスの意味なんか、わからなくて…)
…
……
Dチャージ本番をかたくなに志願した、あの日。
(これで…強くなるんだ…!)
はやる心で、ただ背伸びして。
だから。
唇を、身体を…そして、心を。
女が男に預けることの意味を、あの日のアカリは知らなかった。
「んっ…れろっ、ふむっ…!」
ペッティング止まりだったDチャージから、一線を越えた初めての日。
吐息を、舌を、粘膜を重ね…自分も知らない自分の奥をトキサダに覗かれた。
(…これが…キス…)
人類を侵略から護るため、破滅の未来から命賭けで現代に落ち延び、ダイビートを設立した人。
駆けだしの超昂戦士を凜然と導き、恐ろしい敵にも臆さない、勇敢な人。
それが今は、本能の赴くままにまぐわい、駆け出し超昂戦士の戦闘服をずり下ろし…
左胸を揉みしだき、唇を求めて息を弾ませる。
ルビーは一瞬、初めて見るトキサダにたじろいだ。
だが、瞳の奥の慈しみが、かたくなになりかけた心の壁を下ろさせた。
(ルビー。俺を信じてくれ。
君の初めて…俺が絶対に、最高の『初めて』にする。)
無言の誓いが、強張るルビーを溶かし、震える肩に温もりを注ぐ。
(頭の中…とろけて…じんじんしてくよぉ…)
……
…
(…もっと…今日は…!)
「うっ…!?」
あの日と同じベッドで、同じ服で。
ルビーは唇をマウントし、舌を縦横無尽に泳がせる。
じゅるっ…ぺちゃっ、ちゅぷっ…
「れろっ…んんんっ…くちゅっ…。」
(う…んむっ、ルビーっ…?)
ここに舌先が、ここに舌の根が、こっちに歯の裏が。
グローブで両の頬を包み、左右の指を耳の裏からうなじに絡め、トキサダを引き寄せる。
(長官…私に、ぜんぶ預けてください…
あの日、私に教えてくれたみたいに…!)
今やトキサダの全てを知り尽くすルビーは、口腔の局所を的確に責める。
ルビーが伸ばす舌先の全てが、トキサダのスイートスポットをくすぐり続ける。
(はあっ…むふっ、あむっ…ふうっ…)
ルビーの命の脈動がこめられた吐息は、トキサダの喉から肺腑の先までを甘く満たす。
初心者だったルビーが、今やただのキスだけで、Dチャージを知り尽くす百戦錬磨のトキサダを凌駕する。
…ぷはっ。
はあっ、はあっ…。
「ルビー…。」(……?)
胸の早鐘を冷ますひと息。その呼吸の間も、二人は見つめ合い、心を交わす。
ちゅぷっ。「あっ…んんっ!!」
ちゅうううっ…ぴちゃっ、ちゅぷっ、じゅるるっ…どくんっ。
(す…凄いよお…いつもより…!)
ルビーの最高の舌運びに、トキサダが全力の口づけで返す。
キスだけで高みに至るかのように、ルビーは頭のてっぺんからショーツの下まで、全身の痺れに心を預けていた。
……
…
運命の邂逅から5年。
トキサダとエスカ・ルビーは、始まりの日にこの日を重ね、今もてる全てで互いを求め合う。
今宵、その昂ぶりを二人だけのものとするべく…ダイビートは総力を結集。
何しろ、オズウェルにはやすやすとトキサダの寝処に忍び込まれ、エクシール・リバースに基地襲撃を赦したばかり。
その反省を活かし、ダイビート技術主任・さやかがセキュリティシステムを再構築。
加えて、超昂戦士と想破上弦衆、天界神騎も地上神騎も加わり、さらに旧ジークフリート派、ガンダーラから派遣の魔女たち…
いずれ劣らぬ一騎当千の戦士たちが厳戒態勢で護衛を続ける。
虫一匹這い出る隙も無い、対ティルス防衛シフトでトキサダとルビーを護る。
(…長官さん…ルビーさん…
…お二人とも、凄い、です…はわわ…!)
(これは…すごい秘密だね…!)
(やれやれ…さすが上弦衆頭領、これで平常運転とは…)
(ああっ…トキサダが…私の隣でぇ…!)
(聴こえる…求め合う心が奏でる、綺麗な韻律…。)
(魔王どの…これで、良いのです…!)
紅蓮の超昂戦士と、地球防衛組織の長が繰り広げる、5年の時を超えた昂りの一夜は…
衆人環視のもと、まだ始まったばかり。【続く】
フェイクルビーシリーズが未完のままですが、5周年記念に1週間遅れの失態を越えて、新作投稿です。
SSの準備はしていて、完結してから投稿しようと思っていましたが、今日(11/19)公開された記念イラストのルビーが尊すぎて…
衝き動かされて、前半だけ公開です。
後半…頑張るます!