(R-18)ただのモブ(大嘘)が、TSした原作主人公〈我口調銀髪武士♂→♀〉の代わりに男女逆転世界で頑張る話 作:つくもいつき
本編のR-18番外編となります。息抜きに作成しました。
シリーズ名「二周目が勝手に始まるってなに? クリア特典もらったけど前のルートにどうにか戻りたい ―ただのモブ(二周目)が元男のTSパーティと逆転世界で頑張る話―」となります。
本編とは異なる時空の話となりますので、本編が本作どおりの展開になることはありません。
あくまでそういった未来もあるんだなーぐらいに思っていただければ。
ぼちぼち追記していく予定です。
第1話 勝手に始まった二周目
──俺はこの世界が「二周目」であることを知っている。
……すまん。自分でも何を言ってんだっていう自覚はある。
ただ、信じてほしい。俺は自分で見たこと、体験したことを伝えただけだ。
強くてニューゲームってシステムがあるよな?
あの、RPGとかでラスボスとか隠しボスを倒したあと、クリア特典を貰って新しくゲームを始めることができるシステムだ。
ゲームによるけれど、最初から強かったり資金が豊富だったり、物語後半で入手できるアイテムをはじめから持っていたりと、プレイヤーは楽ができる。
とにかく、有利な状態で新しくゲームを始めることができるって部分がミソだ。
──俺はこの世界が「特別な才能を持った男主人公がいないと救われない」ことを知っている。
俺はいわゆる転生者だ。もともとは、日本人で学生だった。
なんの因果か、昔攻略したゲームと似た世界に、俺は主人公以外の男として転生してしまった。
この世界に詳しいってのもそんなんが理由だ。
──俺は「一周目で男主人公が
前の周では、昔攻略したゲームどおりの展開にはならなかった。
そのせいで、俺は必死で生きあがくことになって、世界を救う羽目になった。
「ラスボスが女性特効能力持ちなのに主人公が女体化して詰んだ」「ただの男は、射精すると経験値を失うから育成不利」と嘆いたのも、いまとなっちゃいい思い出だ。
苦労した分、かけがえのない絆も手に入れたんだ。
──俺はこの世界が「勝手に始まった二周目」であることを知っている。
……どうしてこうなったんだろうな? 俺も聞きたい。
愛する仲間も、家族も、友人も。
いなくなったり、別人となっていたり、一周目の世界とはだいぶ様変わりしていた。
ぶっ殺すぞクソ。こんな目に遭うんだったら特典なんかいらねーんだよボケ。
これから語るのは半分、俺の愚痴みたいな話だ。もう半分は性事情。
クリア特典で原作男主人公と同じ特別な才能を宿した俺が、元男のTSパーティとどう関わる羽目になったのか。
そして、二周目が勝手に始まった原因を突き止め、どうやって一周目の世界に戻ったのか。
それを、語らせてもらいたい。
◆□◆
おっす俺、モブ・アイカータ二十一歳。
目が覚めたら、制服姿で教室の自席に座っていました。
以上。
「……はあ?」
俺は自分の体をくまなく見る。濃紺のジャケットにズボン。まごうことなく学校の制服だ。
さっきまで俺、別の大陸いたよな? これから凱旋する予定だった気がするんだが? 装備どこ行った?
なにがなんだかわからず、俺は癖で自分のステータスを見ようとする。
特殊な目を発動──視界が赤に染まる。
そのまま自分の手のひらに視線を落とし、俺は視界に浮かび上がった情報をひとつひとつ確認していく。
【名前:モブ・アイカータ 年齢:二十一歳
職業:水の王国上級冒険者学校一年生
性別:男
才能:〈第四の目:ステータスチェック〉
〈女神の祝福:射精による経験値低下デバフ無効〉
〈白濁神:美容健康なんでもござれ〉
レベル:3
精力:99/99……】
……どういうこと? なんでレベル下がってる? 〈女神の祝福〉? 〈白濁神〉? なんで一年生?
二十一歳で一年生なんて留年どころの話じゃない。俺が入学したのは十八の頃だ。
むしろ今シーズン卒業予定だったろうと、俺はいぶかしむ。
視界を元に戻す。
教室内の女性陣の視線が痛い。遠巻きに俺を見ながら、ひそひそと何かをささやき合っている。
わけのわからぬまま俺は辺りを見回していると、途中、前の席に座る生徒と目が合った。
「だ、大丈夫? アイカータくん」
青い瞳が俺を見つめる。金糸のようなさらりとした短髪が窓辺の光を照り返し、温かな印象を与えている。彼もまた、濃紺のジャケットにズボンを身に付けている。
俺は目の前の優男に見覚えがあった。だが声音も前とどこか違うし、肩幅も異なる。何より胸元にふくらみがある。
嫌な予感がする。動悸が止まらない。
念のため特殊な目〈第四の目〉を発動して、俺は情報を確定しようとする。
【名前:ミカエラ・ヒーロイック 年齢:二十歳
職業:水の王国上級冒険者学校一年生
性別:男→女
才能:〈女神の祝福:射精による経験値低下デバフ無効〉
〈男神の気まぐれ:性別変換の呪い〉
レベル:3
体型:B92/W58/H89……】
……お、女になっつるーっ!?
俺の記憶じゃ男だった人物が、
「な、な、な……!?」
「ど、どうしたのっ」
「……やかましいぞ、アイカータ、ヒーロイック」
ミカエラの奥から鋭い声が届く。
声色が高い。恐る恐る俺は声のする方に視線を向けた。
これまた見覚えのある相手だ。
翡翠グリーンのショート、青緑のとげのある眼差し。
俺の親友であり、弟分として可愛がっていた相手と酷似している。そのまま、俺は視界を赤に染めて、おそるおそる情報を確かめる。
【名前:レン・リーダ 年齢:十八歳
職業:水の王国上級冒険者学校一年生
性別:男→女
才能:〈女神の呪い:射精による経験値低下デバフ〉
〈男神の気まぐれ:性別変換の呪い〉
〈大魔導士の資質:知力ステータス大幅+、
筋力ステータス-、
取得魔法レベル上限+1〉
レベル:2
体型:B79/W53/H76……】
「
「あ、アイカータくんっ!?」
レンの情報を見て、俺は今度こそ卒倒する。
意識を手放す。俺はこれが夢であることを願った。
◆□◆
ところがどっこい、夢じゃありません……!
すぐに目を覚ました俺は、ミカエラとレンの制止を振り切って教室を飛び出した。俺は校舎裏でひとり壁に腕を打ち付ける。誰もいないのをいいことに、込み上がる感情を吐き出した。
「~~ッ!?!????」
ひととおり叫び終わり、俺は校舎の壁を背に座り込む。
膝の上に肘を掛け、影の中から
どうしてこうなった?
俺はいま自分の身に起きていることをひとつひとつ整理しようとする。
そんな中、脳内に響く声を俺は聞いた。
《モブ殿……。モブ殿……》
(──ッ!?
右手で胸元を押さえる。胸元に手を当てたまま、俺は視線を落とした。
俺の体の内側から半透明の黒い蛇が這い出て来る。
赤の
思わず頬の筋肉が緩む。不安が少しばかり緩和されていくのを、俺は実感した。
(お前もいたんか! よかった~~……)
彼女はいわゆる精霊みたいな存在で、ここ一年は俺の体の中に棲んでいた。
なんの戦闘力もないが、感知に優れ、俺が捉えることができない事象を彼女は観測してくれていた。
ずっと俺の心の支えになってくれた、大事な仲間である。
《なにやら、大変な状況のようでござるな。主はどこに……?》
(いや、わからん。校内にはいなかった)
彼女が主と呼ぶ、カナメ・ビゼン。
黒蛇は元はカナメから生まれた存在であり、カナメを主と呼んで仕えていた。
カナメは銀髪ポニテ将軍娘であり、
探し回ったが、この学校のどこにもカナメの姿はなかった。
それどころか、俺がパーティを組んでいた仲間たちもいない。
いったい何が起きているのか。
わけもわからず、俺は頭を抱える。
ほんとうにここは俺がいたところなのか?
《……ここは、拙たちがいた世界とは別の世界なのかもしれませんな》
(……かも、な。近いけど、遠く感じちまってる)
黒蛇の仮説はあたっているのかもしれない。
そう考えるのが、一番しっくりきた。
《……モブ殿。実は先ほど、教室で妙な波長を感じました》
(ほんとか!?)
俺は左腕を持ち上げ、黒蛇に顔を近づける。
ちょうどその時だった。
俺の耳は小走りする音を捉える。
曲がり角から現れた金の貴公子を、俺は視界の端で捉えた。
「ふぅ……どこ行ったのかな……」
曲がり角のほうを見る。
胸を大きく弾ませ、彼いや彼女が辺りを見回す。
ひと筋の汗が顎先からしたたる。彼女はそれを袖で拭った。
やがて、青の瞳が俺に留まった。
「あ、いた。アイカータくん。おーいっ、探したんだ……」
「ミカエラッ!」
「わわっ!」
俺に近づこうとした際に、ミカエラのつま先がくぼみに引っかかる。
ぽんこつかこいつ? 俺は座った姿勢のまま片足で地面を蹴り、反射的に飛び出した。
やはりレベルが下がっている影響か。
蹴り足が鈍い。思ったよりも遅く、思ったよりも姿勢を乱した状態でミカエラに到達する。
それでもミカエラが転びきる前に、俺は彼女を抱えることに成功した。
ミカエラを腕に収めたまま地面に転がる。少しばかり土煙が舞っていた。
右手は腰、左手は背中に回す。手のひらに柔らかいものが吸い付く。俺の腹にはこれまた柔らかい物体が押し付けられている。やっべ♡ 俺は下半身が膨張してしまったのを感じた。
「え゛? え゛?」
(うわぁあああああ! レベルを下げないために禁欲し続けた弊害がここに!?)
ちょうどミカエラの腹部に俺のアレがズボン越しに押し付けられる形となっている。
バカ野郎クソ野郎! 俺の猿! 変態!
すぐさま俺はミカエラから手を放し、彼女に背を向けてあぐらをかいた。
誤魔化すような声を上げ、気を逸らそうとする。
「す、すまんっ! 怪我はなかったか?」
「う、うんっ……。おかげ、さまで……」
ミカエラの声がまるで遠くから聞こえる。
はっきりいってそれどころじゃなかった。ズボンが破けんばかりにテントが張っている。
頼むから鎮まってくれ愚息。
ちらりと肩越しにミカエラを見ると、口元に軽く握った左手を添え、膝を崩して座っている。
頬どころか耳まで朱に染まり、視線はあらぬ方向に定まっている。
か、かわいいかよ……! その恥じらい、イエスだね! 男物の制服を着ていることを忘れそうなほど、俺はミカエラに女を感じてしまっていた。
その瞬間、胸の奥で黒蛇が小さく身じろぎした。
転がった拍子に、黒蛇は俺の体の内側へ戻っていたらしい。
浮ついていた頭に、冷たい水を差されたような声が響く。
《──これでござるな。波長のひとつは》
(は? どういうこった?)
《先ほど教室で感じた波長です。ミカエラ殿から出ております》
(ミカエラから?)
《ええ。しかもいま、モブ殿と触れたことで、少し濃くなりました》
(……なんで!?)
《そこまでは。ただ、糸口ではありそうですな。レン殿と、もうおひと方にも、同じ波長があるはず。改めて確かめたいところでござる》
黒蛇の新たな仮説に、俺は返事を失った。
接触? 波長? ミカエラが恥じらうことと、俺がここにいることに、どういう因果関係があるんだ?
俺が黙り込んだせいで、妙な沈黙が落ちる。
その沈黙に耐えきれなくなったのか、ミカエラが急に腰を上げた。
顔を俺から背けたまま、立ち上がる。
「ご、ごめんなさいっ!」
「あ、おいっ! み、ミカエラ!?」
両手で顔を覆い、ミカエラが駆けていく。
なにがなんだかわからず、俺は頭をひとかきした。
改めて考えを整理する。
(ミカエラやレンが原因で、俺がここにいる可能性がある……? さっぱりわからんな……)
黒蛇が感じた波長。
その糸口がミカエラにあるというのなら、無視するわけにはいかない。
元の世界へ戻るために、ミカエラたちと向き合う必要があるなら、やるだけだった。
(……何があっても帰るぞ、俺は)
俺の脳裏に過ぎるは、銀髪将軍娘の横顔。そして苦楽を共にしたパーティメンバーたち。
彼女らのいない世界なんて、俺にとっては意味がないに等しい。
俺は立ち上がる。
ズボンに付いた土ぼこりを払って、ミカエラが消えた方角を少しの間見つめた。
◆□◆
-ミカエラSide-
「あうぅうう……♡」
ミカエラ・ヒーロイックは草むらに潜んで、屈みこんでいた。
二限目を告げる鐘の音が、校舎から離れたこの場所にも響く。
立ち上がらなければと思うも、足は言うことを聞かない。
つい一昨日、呪いで変容したと告げられた体が、微熱をもってミカエラを苦しめている。
厚みのある手のひらが触った場所が熱い。
たくましい胸板に擦れた箇所が熱い。指を伸ばし、それを指先でかすめると、喉奥から思いもよらない声が上がった。
「お゛っ♡」
とっさにミカエラは口を塞ぐ。焦って、周囲を見回すも誰ひとりとしてミカエラを注視するものはいなかった。
安堵して、ミカエラが今度は自分の腹部をさする。
彼の恐ろしい塊が押し付けられた場所。その考えが脳裏に過ぎると、たちまちにミカエラの全身をしびれが貫いた。
腹を押さえたまま、ミカエラは片手を地面に立てる。
ミカエラは恐怖する。自分の体が、自分の知らない反応を返してくることが、どうしようもなく怖かった。
(どうしちゃったんだろう、ボクの体……)
乱れた呼吸を整え、ミカエラは激しい自己嫌悪に浸った。
男であった頃と違うと感じるも、ミカエラはそれを言葉に置き換えることができない。
いまはただ、制御のきかない体に対して戸惑うばかりであった。
高評価や作品のお気に入り追加、これまで読んでみての感想やここスキを頂けると、今後の執筆の大きな励みになりますのでぜひ。
感想やここスキについては今後の展開の参考にしたいと思います。