中折れ傷心先生が蒼森ミネの雛鳥として甘々な救護をされてしまうお話 作:瑚白糖
「あら♡」
「おや、あなたは……」
それはつい先日、トリニティの食堂での出来事でした。注文した食事を待っていた所、私は補習授業部の浦和ハナコさんと出くわすことになったのです。
「ハナコさん、こんな時間に昼食ですか?」
「はい、資料集めに没頭してしまって……、良ければご一緒させて貰っても?」
「ええ、お構いなく」
救護活動によって昼食時は過ぎてしまい、食堂はすっからかんになっていました。親密という訳ではないですが、互いに顔見知りな関係。こうした時に親交を積むのも悪くはないと互いに思ったのでしょう。食器を洗う音をBGMにして、穏やかな昼食を共にすることになったのです。
「ハナコさん、サクラコさんからの勧誘がしつこいと耳にしていますが、何か言われてませんか?」
「流石に諦めたのか、最近は落ち着いて来ていますよ」
サクラコさんやセイアさん等、互いに親交のある人との共通点は多いため、彼女との会話は意外にもスムーズで楽しいものでした。そうしていたら彼女なら何か本題がありそうな、そわそわとした態度をしていていることに気が付きました。
「……ハナコさん。どうやら私に何か聞きたいことでもあるみたいですね?」
「……そうですね。ではそろそろ、本題と行きましょうか」
ハナコさんは突然私の方へと身を乗り出し、隠し事でもするかのような勢いで迫ってきました。その表情は真剣そのもの。シスターフッドやティーパーティーから目を付けられている彼女の事です。私はトリニティに何か重大な問題にも直面しているのかと身を構えていました。そして彼女は思いもよらない言葉を言い放ったのです。
「ミネ団長、貴方は先生と何処まで行ったのですか?」
「………………はぃ?」
「惚けないでください。私は先生のxxxについて聞きたいだけなのです♡」
ハナコさんのあまりにも予想外な物言いに、私はつい手に持っていたお箸をへし折ってしまいました。
「お付き合いしてるんですよね、ミネ団長♡」
「せ、先生と私はそのような……!」
「知ってますか?ミネ団長といる時の先生、私たちの前では見せたことの無い笑顔をするんです。それはミネさんにも言えるのかも知れませんが♡」
「……くっ…」
「大丈夫ですよ。この事は2人だけの秘密♡という事にしておいてあげます」
あの時の私はサクラコさんが浮かべるような渋い表情をしていたと言えます。勿論この事は誰にも公表していません。神に誓いましょう。しかし彼女の表情からは確固とした信念を感じ、私の口では誤魔化し切れないと判断しました。
「そ、そうですね……認めましょう。私と先生は今、異性として、お付き合いさせて貰っている身です……。しかしそれはプライベートなもので、シャーレを利用した政治的関与とは……」
「いえいえ、そんな事には全く興味ありません。先生は学園内外からも注目の人です。秘匿にするのは当然のことといえるでしょう」
「当然……ですか………」
先生は特殊な権限を持ってる事から、時に政治利用さえしてしまえる存在。私にも救護騎士団としての立場がありますから、そのように受け取られるのは好ましくありません。ですがハナコさんは聡明な方、私の判断に納得してくれました。そこまでは良かったのですが……。
「彼との関係を聞き出して、何が目的ですか?」
「知的好奇心、というのが正しいかもしれません。私が知りたいのは男女の営み。現実の性体験を聞ける事なんてキヴォトスでは滅多にありませんからね♡」
「性体験………ですか…………」
「はい♡先程も言った通り、私は先生とのセックスの話が聞きたいのです♡実物の***や***の匂い♡***の味や粘度♡***が***に抉られる快感♡愛し合う男女が抱きしめ合い得られる幸福感♡その全てを知ってみたいのです♡」
そこから続く彼女の妄想は止まりませんでした。彼女の口から発せられる言葉には何度もノイズが走り、正直何を言ってるのか殆ど聞き取れませんでした……。ですが私はあることに気付いてしまったのです。
「………ない……」
「へ?」
「ないんです……私、先生に抱かれた事が……一度も……」
「え?嘘でしょう…?そんな事があるんですか……?だ、だって男の人ですよ……?先生なんですよ…?そんな事があっていいんですか?」
「…………はい……」
「そんな馬鹿な事、あっていい訳がありません!」
私達の関係にハナコさんの顔色がみるみると悪くなっていくのが見て取れました。そうです。私達が肌を重ねたといえば良くて手を繋ぐの物。ハナコさんのいう男女の営みには到底達したとは言えません。
「そ、それでは普段どのような事を…」
「そ、そうですね……一緒に救護活動や備品探し、医療グッズ巡りにカフェで食事……とかですかね……」
私たちの間に沈黙が訪れました。ティーパーティー主催のお茶会にも似たような居心地の悪い空気だったと言えるでしょう。しかし、考えてみれば私達がしている事といえば、お付き合いする前と変わった事はありませんでした。それで満足する私が居たのも事実ですが……。
「ミネ団長、これは由々しき事態です」
「ハナコさん……?」
ハナコさんは腕を組み、真剣な表情で私の事を見つめて来ました。その色に嘘やからかいは見えませんでした。
「私達には理解の及ばない話ですが、男性の性欲というのは何処までも底がなく恐ろしい物だと聞いています。性欲に狂った挙句、全ての地位、富、力を一瞬にして失う権力者の逸話や神話はそれこそ無限大……」
「……はい」
「いくら紳士的な先生といえど、彼も男性。私達が今こうしている間にでも性欲に蝕まれていることでしょう……」
「そ、そうだったのですね……」
「はい。今の彼は狂気に犯される直前、彼の性欲が爆発してしまう前に手を打つ必要があります。そう、彼を護る為の行動が……」
「……………救護」
「ええ、その通り。そしてそれが出来るのはミネさん。先生に心許された貴方しかいないのです!」
私はハナコさんの言いたい言葉を理解しました。先生、貴方の性欲を解消してあげるこそが私に課された使命。私の救護なのだと。私は思わずハナコさんの手を握ってしまいました。
「ハナコさん!」
「は、はい」
「こんな目の前に…それもあの先生の救護サインを受け取れなかったなんて……。私は今自身の未熟さを痛感しています……救護騎士団失格ですね……」
「え、ええっと……そんな事はないと思いますが…」
「ですが!私は気付きました。今も性に悩む先生を救護してあげる事こそが私の使命なのだと。気付かせてくれたのは貴方です、ハナコさん。この御恩を忘れることは無いでしょう!」
「焚き付け過ぎたかも……ああいえ……、礼なんて要りません。ですがミネさん。今回の救護は今までの救護とはまた別次元の物になるかと思われます」
「と、言うと?」
「セックスとは互いに愛し合い、満たし合う為の儀式なのです。己を解放し、相手の願いを聞き入れ、繊細な技術で骨抜きにさせる。私たちの得意とする力押しは言語道断。想いだけでも、力だけでもダメなのです」
「想いだけでも、力だけでも……」
これを……、とハナコさんの鞄から2冊の本が私の元に手渡されました。
「私が入門する為に書き留めた指南書とさっき借りてきた官能小説です。付け焼き刃ではありますが、読んでおくことをお勧めします」
「いいのですか?」
「ええ、今の貴方には必要だと思いましたので。ことが終わったら返して下さいね」
そう言い残すと立ち上がりその場を去っていきました。
「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか……」
「いいえ♡また良ければお話になりますよ。吉報をお待ちしてます♡」
浦和ハナコ、彼女がこれ程までに頼りになるとは思いもしませんでした。お陰でその身に甘んじていた私の決心も固まったのです。
あ、その時食べた期間限定デザートが美味しかったです。 今度一緒に食べましょう。
「と、言うことがあったのです」
「と、言うことがあったのです。じゃないよ、何してくれたんだあの子は……」
トリニティの付近での仕事を終え、私はいつものように彼女の部屋に訪ねていた。普段であれば私の買ってきたスイーツをつまみながら彼女の好きな動物番組を見て談笑する流れだった。
「テレビも消して……、もしかしてずっと正座で待ってたの……?」
「はい。先生との夜伽に向け、ハナコさんから授けられた力を元に瞑想をしていました」
しかし今回は明らかに空気が違っていた。リラックス効果のある愛用のアロマも、興奮を誘う落ち着かない香りになっている。そしてミネ本人から漂う色気も段違いだった。寝巻きから髪のセットまで、あらゆる部分に気合いを感じさせられる。部屋に入った第一声「可愛い」と思わず呟いてしまい、彼女を紅潮させてしまった。今はその経緯に頭を抱えているのだが。
「まぁ、事情は分かったよ」
「はい。それでは……」
「けど……、ごめん」
「なっ!?どうしてですか!?」
私の予想外な返答にミネは困惑の色を浮かべている。それもそのはず、彼女は心の準備を万全に整えて来ている。救護という言葉を出されて尚、私に襲いかかる事なく私を待ち構えてくれた。判断の早すぎる彼女がだ。彼女の成長、私への信頼どちらも感じられて、涙を浮かべそうになってしまった。
「そうですか……私は抱きたくないと、その資格はないとおっしゃるのですね……」
「ち、違う!そうじゃない!そうじゃないんだ!」
「では何故!?」
「それは………」
抱けないわけがない。現に彼女への情欲が湧いているのが本音だ。彼女に落ち度は何も無い。ただ……。
「ミネ、聞いて欲しい事があるんだ……」
「はい、なんでしょうか」
「EDって知ってるかな…?」
「はい……、確か勃起不全、性交時の勃起を維持出来ないという男性特有の……」
ミネの言葉は途中で途切れ、こちらの顔色を覗いてきた。無理もない。今の自分がどんな表情をしているのか想像もつかない。
「多分、私はミネの思う程重い症状ではないよ。性欲はちゃんとある。ミネの事は本当に可愛いと思ってる。抱きたいっていうのも本当なんだ」
「そうなんですね……、では、その……、自分で御処理などは……」
「勿論、問題なく出来るよ」
「それなら!」
「ちょっと待って!その……前に話した事あるよね。交際は初めてじゃないって」
「はい。確か2人……、でしたよね」
シャーレの先生としてキヴォトスに来る前、私は2人の女性と交際した経験があった。その経験もあって女子生徒に溢れたこの環境でも、何とかやって行けてると思う。それ自体は良い。問題はその先にあった。
「ミネ、中折れって言葉は聞いた事あるかな……」
「はい、ハナコさんの指南書で覚えました。なんでも性交中に萎えてしまう現象だとか……」
「そんな事まで調べてるのかあの子は……」
「すみません。医学的なお話だったので興味深くて……」
話が早くて助かった。事の原因を褒めてやるのは癪に障るけど、この状況に置いては非常に有難い事だった。
「まあいいや。1人目の彼女の時その中折れが来ちゃったんだよね。そこから立て直せなくて失敗。それがトラウマになって、結局その人とは上手く行かなくなったんだ……」
「2人目の方も……」
「うん。長く続かなかった。私が不甲斐ないばかりに……」
一人で処理するのと他者との性交は訳が違う。私は彼女とのプレッシャーに押し負け、性交を満足に行えなかったのだ。
汗が止まらない、視界が滲んできた。覚悟はしていたけど、いざ打ち明けるとなると辛い気持ちが込み上げてくる。
「先生……」
「ごめんミネ……。いつか打ち明けるつもりではいたんだよ……。少なくとも今後の君に支障を起こさない、卒業を前には話すつもりではいたんだ……」
卒業さえすれば私よりも魅力的な男性なんて何処にでもいる。だからいつまでも縛られる必要は無い。大人になったミネの冷静な判断に委ねようと思っていた。けど、ここまで真剣に迫られた以上、私も打ち明けなければならなかった。
「1度真面目に考えて欲しい。先生と生徒、じゃない男の女の尺度として。多分私にセックスは出来ない。ハナコの言うような攻撃性さえ思う事が出来ないんだ。私は救護対象ではないんだよ。それも踏まえた上で考えた方がいい」
これで言いたい事は全て言った。もし彼女が拒むのならそれも甘んじて受けいれよう。惚れた女性くらいせめて幸せになる道を選ばさせてあげたい。
「先生、確認があります」
椅子に腰かけ項垂れている私の前にミネが顔を寄せてくる。嘘も誤魔化しも通用しない、暴力的で愚直な瞳、それは正しく救護の化身そのものだった。
「先生は私と別れたいのですか?」
「そんな事はないよ。でも……」
「そうですか。ではもう1つ、その病を治したいとは思いませんか?」
「勿論。ミネの為にも……、私のためにも……」
「わかりました。先生、お顔を上げてください」
弱々しくなった私の手に大きく柔らかな彼女の掌が添えられる。ミネが涙を垂らす私の前で微笑みかけた。月明かりのような優しい髪色。碧玉のような綺麗な瞳。思わず見とれてしまうような美しい顔立ち。今までに見た女性でも胸を張って一番と言ってしまえる程魅力的な女性。そんな天使の微笑みの前に私は息をのみ、ただ黙って彼女の言葉に耳を傾けた。
「私の救護を誰よりも必要としている人間、それは貴方なのだと判断しました。貴方の心的外傷体験、さぞお辛かったことでしょう。ですがご安心を、私の救護によってその心を癒してみせましょう」
「ミネ……。ふふ、そうだったね」
「な、なにか可笑しい事でも……」
「いや、自分は何を悩んでたんだろうって思ってね。こんなに素敵な人が目の前にいたって言うのに」
「なっ……」
聞くまでもない事だったのだろう。元々彼女にブレーキなど存在しない。どれ程可能性が低くても、やれると判断すれば誰よりも早く行動してしまう。その素早さで問題を起こす事もあるが、それだけ多くの人間を救ってきたのが彼女だ。
「ありがとう、ミネ」
「私はいつでも貴方の傍に……。お力になれるのならなんなりと」
「うん。頑張ってみる」
「ええ。私にもお手伝いさせてください」
気が付いた時には彼女との初めての口付けを交わしていた。強烈な勢いに流されるまま話が進んでいる気がする。けど、彼女のとの付き合いにおいては日常茶飯事、今更気にすることでもない。ミネの表情から覗かせる嘘偽りのない信念、彼女が見せるひたむきな愛情になんだか救われた気がした。
「はむ……」
「んっ……」
薄暗くなった彼女の部屋で口付けを交わす。シャワーを借りて汗を流し身体を清めている間にも、ミネはセックスの準備を整えていた。部屋は薄暗く調整され、私が出てくるのをお淑やかに待ち構えていた。ハナコの入れ知恵なのだろうが、そういう事を真っ直ぐに取り入れてくる所が彼女らしく可愛らしかった。
「ミネ、口を開けて」
「は、はい……」
「ちゅっ……」
「んんっ……ちぅ……」
肩を寄せ合い、彼女の口内へと舌を入れる。初体験で困惑しているミネを安心させる為、あの頃を記憶を頼りに私がリードする。最初は固い歯に閉められていたミネの口内が次第に和らいで行き、彼女の口から舌が顔を見せる。私はその舌に向けて自身の舌をねじ込み、彼女の粘膜へと触れ合った。これが大人のディープキス。ミネも受け入れたのか、互いに舌を絡め合う体制に入っていた。
「んっ……先生、そこは……」
「大丈夫、大丈夫だから」
キスはそのまま、私は彼女の豊満な胸へと手を伸ばす。女性の胸がどれ程快感に繋がるかは分からない。だけど過去に出会った女性からは悪い反応は見られなかった。だから多分、間違いではない。
「あぁっ……先生っ…」
「ミネ、気持ちいい?」
「はい……」
寝間着の上から優しく撫で回す。ミネの吐息が少しずつ荒くなっていくのが分かる。目を瞑り快感に浸っている彼女を様子を見ながら、服を脱がす事にした。
「ど、どうでしょうか……?」
「可愛いよ。ミネ」
フリルの付いた水色の下着が露になる。可愛い物を好む彼女らしい下着だった。優しく揉みしだき、唇を重ねる。上手くやれているのだろうか、悦んでくれてるのだろうか、心配になって仕方がない。
「…………」
前戯は順調に進んでいる。ただ、経験を頼りに進めていく事で、あの頃の記憶まで想起されてしまう。最後の最後で萎えてしまい、失望の眼差しを向けられたトラウマが蘇ってくる。
「あ、あの……先生…?」
最初のキスでは勃っていたはずの股間が大人しくなっていくのに気付いてしまった。次第にぎこちなくなっていく指遣いにミネが心配し始めた。今自分はどんな表情をしているのだろうか。
「ご、ごめん……ミネ……」
「先生……」
ミネの戸惑いと心配を含んだ表情が心に突き刺さる。そんな表情をしてもらうつもりなんてなかった。涙が溢れ、視界が滲む。力なく謝罪した私は俯いて項垂れる。自身の不甲斐なさから彼女の事を直視出来なくなってしまった。
「うっ……うぅ……」
溢れる涙が頬を伝う。普段ならコントロール出来るはずの感情が抑えられない。生徒の前、それも恋人の前で泣き崩れる私の姿は大人として、男として、人として見ていられ程に醜い存在と言えるだろう。
「先生」
暗い感情に閉ざされてしまった脳内に、透き通るような優しい声が響き渡る。暖かく柔らかい感触、不思議と安らぐ心地よい香りが緊張で硬直した身体を解されていくようだった。ミネは泣き崩れる私を抱擁し、優しく抱き留めてくれていた。
「安心してください、先生。私は貴方の傍にいますから」
「ミネ……うぅ……」
「大丈夫です。焦る必用はありません。ゆっくりと深呼吸をして、落ち着いて下さい」
今、彼女の胸の中に身を寄せている。言われるままに息を吸ってみる。心地よい香りが鼻腔を擽る。ミネを感じさせてくれる優しい香水が気持ちよかった。
「そうです、その調子……」
「すぅ……ふぅ……」
ミネの胸中に顔を埋め、彼女の匂いに酔いしれる。ごちゃついた脳に彼女の痕跡が刻み込まれる。その感触は気持ちの良い夢に浸るような感触だった。
「先生、落ち着きましたか?」
「うん……。ありがとう……ミネ…」
「礼には及びません。気持ちいいですか、先生?」
「うん。ごめん……」
私こそが上手にリードしなくてはいけないのに、彼女に主導権を委ねている。そんな事実に、生まれたはずの余裕が恐怖に染まっていく。ミネに無理をさせてしまった事実に罪悪感が込み上げてきた。
胸に顔を埋めながら、恐る恐る彼女の顔を覗いてみる。そこには慈愛に満ちた笑顔で私を迎えるミネの姿が瞳を照らした。
「ミネ………」
「どうかしましたか、先生?」
ミネは照れくさそうに僅かに微笑む。思わず見とれてしまい、言葉さえも思い浮かばなかった。嬉しかった。こんな醜態を晒してなお、私に微笑み返してくれる彼女の心が。
「先生、無理をなさらないで。ハナコさんも言っていました。これは互いに願いを伝え合い、愛し合う場なのだと。私にばかり気を遣わなくていいのです。私が、貴方を護りますから」
「ミネ……」
「だから教えて下さい。先生がしたい事は何なのか、私にしたい事を教えて下さい。貴方の願いを、私に下さい」
「うん……。それじゃあ、もっとこうしていたい……。ダメ…かな……、ミネ……」
答えこそ帰ってこなかったが、ミネは私を優しく抱き締めてくれた。まるで母に抱かれる赤ん坊のように、彼女の胸中に顔を埋める。心安らぐ彼女の香りが、背中を優しくさするその腕が、私を包み込むその翼が、嘘偽りのない慈愛の心が、全てが嬉しく、気持ちよかった。
「ん……」
「どうかしましたか?」
彼女に包み込まれるように抱かれたまま、幾ばくかの時間が経過した。彼女の抱擁により安らぎを得た事で、思考回路が少しずつ回復して来るのを感じられた。
「うぅ……おっぱい……」
「んっ…先生…」
抱き締められたまま、彼女の胸へと手を伸ばす。改めて感じた事だが、彼女の胸はふくよかで柔らかい。その感触の心地良さは今まで触れた中でも一番といえる。その気持ちいい感触を手放したくなくて、私は彼女の柔らかいおっぱいを鷲掴んでいた。
「柔らかい……気持ちいい……」
「せ、先生……そこはっ……」
いつの間にか下着も外れ、生の胸を堪能するようになっていた。マシュマロのように柔らかいおっぱいに浮かび上がる乳首が掌を擽る。その固く突起した乳首がアクセントとなり、私は夢中になって揉みしだいていた。
「ミネ……おっぱい、吸ってもいい?」
「……ええ、どうぞ。お召し上がりください」
心に湧いてきた新たなおねだりをするため、彼女の表情を覗き込む。ミネは顔を紅潮させ、息を弾ませながらも、満面の笑みで私を出迎えてくれていた。その心に嬉しくなり、私は無邪気にも願いを口に出していた。
「はむっ……」
唇が彼女おっぱいに触れる。やっぱり柔らかい。彼女の汗でしっとりとした塩味を感じられる。美味しい。気付いたら彼女のおっぱいにしゃぶりついていた。
「ちゅぅ……ちゅ…ちゅぱっ…」
「ふふ、意外と甘え坊さんなんですね、先生」
乳のみ子のよう、一心不乱に吸い付く私。舌で乳首の感触を楽しみ、出るはずのない乳を求めて必死で吸い上げる。母が子を愛でるようなミネの優しい声色に嬉しくなって多幸感に心を満たされていく。恐怖と重圧で押しつぶされそうだった気持ちは薄れ、ミネの持つ極上の女体に今までにない程に興奮している自分がいた。
「あぅ……」
「大丈夫ですよ。大丈夫。私に身を委ねてください」
私の股間にミネの指が触れる。私のペニスは硬く勃起し、その感触を楽しむかのようなミネの指によってまさぐられていた。気持ちいい。下着越しに擦られる快感に身を捩る。しかしその快楽の裏で一抹のトラウマが想起される。その恐怖に怯え、私は彼女の胸に必死で吸い付く。そんな私の怯え様に気付いたのか、ミネは私に優しく囁きかけた。
「先生、下着を脱がしますね。嫌だったら言ってください」
「うぅ……怖い……」
「大丈夫。私が付いていますので」
「うん………」
窮屈を感じていた下着が剥がされる。開放感に歓喜した勃起ペニスが彼女の太ももを擦りあげる。その感触に私は情けなく恍惚とした喘ぎ声をあげてしまった。
「先生、どうですか?怖くないですか?」
「怖い……けど……大丈夫、ミネがいるから……」
「ええ。私は離れません。だから教えてください。何をして欲しいですか……?」
「うん……ちんちんを触って欲しい……優しく……擦って……」
「ふふ、お任せ下さい」
「あっ…♡」
ミネの指が私のペニスに接触する。 精密機器を触るようなフェザータッチ。もどかしいながらも安心感を覚える優しい手捌きは私の心を的確に解きほぐしてくれる。私は彼女の乳に吸い付き、必死になって快楽を表現した。
「んっ……こうで……合ってますかね……私も…初めてなもので……」
揺れ動くカーテンのような手捌きから解放され、私の硬くなったペニスを優しく握る。そしてぎこちない手つきで私のペニスを擦り始めた。
「んん……んっ……んっ!?」
「んんっ!すみません……痛かったですか?」
擦られる途中、股間に痛みが走り、乳を強く吸い付いてしまった。違和感を察したのかミネが私の頭を撫でる。力加減を理解していったミネは、次第に私のペニスに快楽だけを刺激する様になっていった。
「ふふ、気持ちいいですか?」
「んんっ……ちゅぅ……♡」
私のおっぱいへの吸い付きに比例するようにミネの手つきが激しくなっていく。乳を吸いながら快楽を貪る。この倒錯的な快楽に逃れる術がある訳もなく、限界は急速に近づいていった。
「うぅ……ミネ…………」
「どうしましたか?もしかして……射精、ですか?」
「うぅ……」
ミネの口から発せられる性の言葉にぞくりと心を震わせる。他人の前で射精する経験がなかった私は、恐怖心を埋めるかのようにミネに涙目で懇願する。愛する女性に向けて性を放つ、ここへ来てまだそんな心の準備も出来ていない自分が情けなかった。そしてパニックに陥りぐちゃついた心を救い護ってくれたのも、ミネから発せられる音色だった。
「ええ、いいですよ!貴方の精子、全て出してください♡」
「~~っ♡」
耳元で囁かれる赦しの言葉。我慢の壁を破壊する最後の一言に、私は為す術もなく漏らしてしまった。
「あっあっ……♡あぅ…♡んんっ!」
「あつい……これが先生の……」
どぷどぷと溢れ出る精液が私のお腹に溜まっていく。彼女の手を汚し、絶頂に浸る顔、びくびくと震える全身、全てを晒けだす。
「はぁ……はぁ……」
ミネは精液によって汚れた手を恍惚とした表情で舐めとって行く。快楽にうち震える私を前に、ミネは慈愛に満ちた表情で見下ろす。そんな母性を感じさせる彼女の瞳からは、捕食者としてのギラついた色が浮かび上がっていた。
「お疲れ様でした、先生♡」
「うぅ……」
漏らした精液は拭き取られ、2人して横になる。気付いた時には暖かい布団の中、互いに一糸まとわぬ姿で抱き合っていた。ミネの体温が全身で感じられて気持ちいい。頭を撫でられ赤面した私を前に、ミネは優しく微笑んだ。
「如何でしたか、先生?」
「……ありがとう、ミネ」
恋人の前で絶頂出来た達成感、情けない姿を見せ付けた羞恥心、射精を通してさらに深まっていくミネへの好意心。全てが絡み合った末、私は無意識に彼女の唇を求めていた。ミネも同様にして私への唇を求め、一緒に笑い合い、口付けを交わした。
「これで本日の救護は完了ですね」
多幸感に包まれ微睡みに落ちる。最後に味わった彼女の口内は薄らとほろ苦い。今までにない程に幸せだった。