「ハァ!でりゃあァァ!!」
とある島の訓練場にて、1人の少年が人体を模したサンドバッグを相手に拳や蹴りをぶつけていた。
「オオッ…!」
鉄の装備に固められているにも関わらずボロボロになったサンドバッグが、武装色の覇気を纏った少年の回し蹴りで吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた先には同じサンドバッグが数十体倒れており、どれもが激しく損壊していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「…今日は訓練は休みの筈だったが?」
「先生!」
肩で息をする少年の元へ筋骨隆々の男が歩み寄る。
紫色の短髪に皺の深い顔、初老よりも更に老いた年齢でありながら衰えていない筋肉と覇気を持った巨躯の老兵。
「何の為に休日にしていると思っている。身体を休ませ、充分な力を保ってやるからこそ訓練に意味はある」
「はい…すみません。…ゼット先生」
ゼット。本名はゼファーと言い、『黒腕』の異名で知られた元海軍大将。
詳細は省くが、かつて海軍の演習中にとある海賊に襲われ、殆どの部下と自身の右腕を失い、妻子をも殺された過去から海賊に深い憎しみを抱くことになったゼファーは現在ゼットと名を変え、全ての海賊を抹殺すべくNEO海軍という組織を率いている。
「でもおれは、もっと強くなりたいんです。もう何も奪われたくない…誰も奪われてほしくないんです…!」
「…」
少年は傷だらけの拳を握り締める。
その目には深い悲しみと揺るがない決意が浮かんでいた。
少年は元々NEO海軍の部下が保護した一般人であったが、家族は海賊に殺され、天竜人に奴隷にと目をつけられたことで海軍からは謂れのない罪で追われるようになったという過去があった。
ゼットはすぐにはその話を鵜呑みにしなかったが、少年の語った国が海賊の襲撃により滅んでいるというニュース記事に、かつて海軍に所属していた時に何度も見た天竜人の所業。
そして何よりも海賊への復讐心と海軍への失望の混ざった瞳がゼットを信じさせた。その瞳は自分のものと全く同じだったからだ。
「…強くなるのに近道は無い。今日はもう休め…明日はおれが手ずから覇気を叩き込んでやる」
「…!…はい…ゼット先生…!」
「……フッ…見ろ。お前の女房が来たぞ」
ゼットが小さく笑い、目を向けた先から1人の女性が救急箱を持ってズンズンと歩いてくる。
「ア、アイン先輩…」
「
「ご、ごめんなさい…!」
深い青髪を伸ばしたアインと呼ばれた美女は少年、アベルに鋭い目を向けながら怒りの表情を浮かべる。
「アイン。おれからもう伝えておいた…あまり言ってやるな」
「先生…」
アインはNEO海軍の中でも特にゼットの思想に追従し、幹部の立ち位置にいる1人だ。そしてアベルを保護した張本人でもあり、監視も兼ねて付きっきりで行動を共にしていた。
「相変わらずアベルに対しては世話焼きでござるなぁアイン」
そしてもう1人の幹部、忍者の様な格好をした長身の男、ビンズもやってくる。
「拙者もまさかアインの趣味が10も年下の子供とは驚いたでござ「フンッ!」ほぶぅ!?」
揶揄う様なビンズに顔を赤らめたアインの鉄拳が突き刺さり、ゼットとアベルは微かに笑う。
海賊滅亡を目的とする過激組織の中でも穏やかな日常であった。
約一年という期間で、アベルはNEO海軍という組織の中でもトップの実力を手に入れた。
飛び抜けた才能を持っていた訳ではなかったが、不幸な過去の記憶を乗り越えようとする強靭な意志と数多の有名な海兵を育成してきたゼットの手腕が合わさり、アベルの身体能力と覇気の練度はゼットにも劣らないレベルとなった。
そしていよいよ、ゼットの計画である新世界の破壊とそれに伴う全海賊の殲滅が本格的に始まろうとしていたある日。
「どうかしたんですか?」
NEO海軍の本船である『ホワイトタイガー』にて、アベルは電伝虫を手に興奮した様に会話をしている同僚達を見つけ、気になり声をかけた。
「お、アベルか!ウタだよ!」
「歌…?」
「おいおい知らないのか?今、世界で1番注目されていると言われる歌姫だぞ」
「ソウルキングも良いけど、やっぱりウタだよな!」
「ここ数ヶ月は再放送ばっかりだったけど今日ライブ配信をするっていきなり告知があったんだよ!みんな大盛り上がりさ!」
「へェ…」
聞いたことがあるような無いような。強いて言うなら同僚のテンションの上がり具合からどれほど凄いアーティストなのか気になった程度の思いで、アベルは同僚達と共に話題のウタのライブ配信を視聴する事にした。
『みんな!久しぶり!!ウタだよ!』
映像電伝虫から左右の髪色が赤と白に分かれた美少女が映される。
世界の歌姫と呼ばれるのも納得のビジュアルだ。しかしその衣装は少し独特で、体の線が隠れるようなブカブカの服装だった。
『まずはみんな、最近ライブ配信全然できてなくてごめんね!すっごく大切な事があって…そっちを優先してたんだ♡」
映る美少女、ウタが赤らめた表情で言葉を紡ぎ、そのままマイクを手に取る。
『ちょっと事情があってあんまり激しいダンスはできないけど…いきなり新曲からいくよ……曲名は………“ウィーアー!”』
「!!!!」
陽気な耳に残るリズムと聞き心地の良い歌声でウタが歌い出す。
『ワンピース』や『宝の地図』など、海賊嫌いだと言うウタにしては首を傾げるような歌詞に同僚も少し困惑しているが、アベルの脳には全く別の感情と記憶が駆け巡っていた。
「……フッ…フフ……フハハ…!」
「?…アベル、どうかしたか?」
「いや…何も……」
ここで突然だが、人間は忘れた記憶を思い出す事ができる。例え忘れてしまったとしてもデータのように完全に消去されない限りは脳の奥深くに残っているのだ。
そして思い出すためのきっかけ、記憶の引き金とも呼ばれているそれは主に五感による刺激が多い。
代表的なのは味や臭い、場所、景色……そして
もし仮に記憶を操る事ができたなら、あらかじめ紐づけておいた引き金を引く事で特定のタイミングで忘れていた記憶を思い出す事が可能かもしれない。
「計画通り…!」
そんな不可能に近い記憶の想起を成功させ、全てを思い出したアベルは気づかれないように笑みを浮かべ、ウタのライブに夢中になっている隙だらけの間抜けな元同僚に手を伸ばした。
アインはアベルの元へと向かっていた。理由は先ほどウタというアイドル歌手の話で盛り上がっていた部下を見て、アベルがそのアイドルにハマってしまうのではないかという焦燥からだった。
「…私ってば…もうすぐ先生の計画も大詰めだっていうのに…いえ…これはただの注意よ…!…大事な時期なんだからアイドルなんかに現を抜かす暇なんか無いって言うだけ…!…別にアベルに限った話じゃないわ…!!」
言い訳を独り言ちながら、アインは足早に歩を進める。
アインが拾い、共にゼットから師事を受けた同志であるアベルをアインは気に入っていた。その感情はゼットの思想に賛同する好感から、やがて男として気になる恋慕の思いへと変貌し、20代後半にして初めてアインは恋をしたのである。それも10代の少年相手に。
そして目線の先で目的の少年を見つける。しかし、なんだろうか。いつもと雰囲気が少し違うように感じた。アベルは年齢にしてはかなり背の高い少年だったが、記憶にある彼よりも更に背が高くなっている気がする。
「アベル…?」
「あ、どーも先輩。ちょうど良かったこっちから迎えに行こうと思ってたんだよ」
「アベル、貴方なんだか変よ…?…いつもと違…キャッ!?」
アインは突然伸びてきた腕に首を掴まれ、そのまま壁に叩きつけられる。
アインはこんな簡単な不意打ちに対応できないほど弱くはない。元大将であるゼットの副官であり、若くして海軍中将にまで上り詰めた精鋭だが、いかんせん若すぎた。いや、一年間共に過ごした後輩であり、初めての恋慕の感情を抱いていた相手の悪意に気づけというは酷な話だったかもしれない。
「カハッ……ア、アベ…ル…!?」
「クリムゾン…筋肉弛緩ホルモン!」
「アウッッッ!?」
アベルの空いていた左手の五指の先が棘のように鋭くなり、そのままアインの脇腹へと突き刺さる。
ドクンッ…と何かが注入されるような音が鳴り、アインは痙攣した後に動かなくなった。
アベルは手錠でアインの両手両足を拘束し、次のターゲットの元へと歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アインとゼットを除くNEO海軍の船員全ての記憶を操作し終え、近くにある無人島へと船を停めたアベル改め、アゼルこと俺は拘束したアインと共に甲板へと出る。
そこに漸く異変に気づいたのか背後から強大な気配が現れるのを見聞色で感じ取る。
現れたのはもちろんゼットだ。
「ハァ…!…ハァ…!…何が起きている……っ!?…アベル!!何をしている!?アインを放せ!」
俺の肩に担がれ、拘束されたアインを見たゼットが声を荒げるが無視して懐から電伝虫を取り出し連絡をかける。相手はすぐに連絡に応じた。
「よう…こっちはちょうど良いところだぜ…NEO海軍…黒腕のゼファーって言えばもう分かるだろ?」
『ゼハハハ!元大将か…そいつはちょうど良いな…今はお前のビブルカードを追ってるところだ…もうすぐ着くだろう…!』
「オーライ…待ってるぜ」
「アベル…!…何を言っている…!…操られているのか…!?」
「違うんだよね〜。こっちが本当ってこと。ま、俺自身も本当の記憶だと本気で思っていた訳だけどね」
メモメモの能力により自らの記憶を操作しての自己暗示により俺はアベルという海賊に家族を殺されながらも強い正義感を持つ少年を演じていた。俺自身が本物の記憶だと思い込んでいるからたとえ相手がメモメモの能力のように記憶を読み取る力を持っていたとしても悪意は読み取れない。
実際ゼットの見聞色でも俺の嘘は見破れなかった。
「黒ひげ海賊団幹部、"色欲"のアゼル…それが本当の俺だ…短い間だろうけど以後よろしく…先生」
「……全て…嘘だったのか…!…お前の思いも…覚悟も全て…!!」
ゼットが右腕に装着された義手でもある武器、バトルスマッシャーを震えさせる。困惑は落ち着き、怒りと悲しみがゼットの身体を駆け巡るのが能力を使わなくても分かる。
「くくっ…ふふふ…たくさん訓練つけてくれてありがとね先生♡オマケの能力狩りも大量で感謝しかないよ〜」
覇気の練度も上がり、NEO海軍として行動する中で捕縛、或いは殺害してきた悪魔の実の能力者は全て悪魔の実へとリポップさせ身に宿した。
危険な悪魔の実は船に厳重に保管されていたので先ほど全て頂いておいたのだ。
鍵が掛かっていたが、洗脳したビンズが持っていたのでそのまま拝借した。
「じゃ…早速試していこうか…先生…最後の修行をつけてくださいよ」
余裕の台詞を吐くが、内心は緊張で心臓が脈打ち、油断などは一切できない。
ゼットは老いてもめちゃくちゃ強い。悪魔の実の能力も無く、育成力や内政能力もあるのだろうが戦闘で言うなら腕っぷしだけで海軍大将になった男。つまりはガープと同じなのだ。
「せっかくの英雄ゼット最期の訓練…参加するのが俺だけじゃあ勿体無いし、悪いよなァ…みんな…!!」
「っ!!?」
「さぁ…行け!目の前の敵を殺せ…お前らの頭にはもうそれしかねェだろ!?」
俺の背後から100人以上の集団が姿を現す。虚ろな目でゼットの名を戯言の様に溢す彼らはNEO海軍の兵士たちだ。
記憶を操作し、俺の命令を絶対とする操り人形と化したNEO海軍の下っ端兵士達がゼットに突撃していく。
「お前達…!!…悪魔の実か…操られているのか…!?」
剣を乱暴に振り回し、誤射を気にせずピストルを撃ちまくる操り人形達は普通であれば簡単に倒される雑魚でしかないが、それが見知った部下達であるなら心優しい正義のヒーロー様は上手く戦えない。
「モサモサ〜!!アゼル先生の敵め〜覚悟しろ〜!!」
「くっ…ビンズ…お前までも…!?」
ゼットはビンズを筆頭に向かってくる部下達の攻撃を捌き、怪我をさせないように当て身で意識を奪っていく。
ゼットの副官であり、能力者でもあるビンズだけは俺とゼットの立ち位置を入れ替えた記憶を捩じ込み、意識のある状態で向かわせた。こっちの方が効くだろう。
どうでもいい敵を操るだけだからこっちの消耗はゼロだし、仲間思いの相手への時間稼ぎにはもってこいの戦法だ。
そして少し経った後、遠方から見覚えのある懐かしい船と気配が近づいてきた。
船はこちらに真っ直ぐ進んできて、甲板から懐かしい特徴的な笑い声と共に黒い髭の男が俺の隣へと降り立つ。
「ゼハハハハハ!!よォ…アゼル!…久しぶりだな…!」
「一年振りだしな…あれ…随分と覇気が強くなってんな。こっちも死ぬほど修行したんだけど」
「こっちも中々激しい戦争をしてよォ…下っ端共はかなり失ったが…手に入れたのは十分お釣りが返ってくるシロモノだぜ…!!」
一年振りに見たティーチはかなり覇気の練度が上がっている様に見えた。外見も原作2年後に近い姿になっている。
ティーチは大声で笑いながら懐から二つの悪魔の実を取り出した。
シンプルなリンゴの様な空色の悪魔の実と、禍々しい漆黒の悪魔の実だ。
「早く食っちまいたくてウズウズしてたんだ…!…こいつらの次の主人が誰か…教えてやってくれよ…!!」
「オーケー…うお、マジかよ…よく奪えたな」
俺はそれぞれの実に触れて、記憶を操作する。その際にどんな能力が宿っているのかも分かるが、これは驚きだ。
片方は予想の範疇だが、もう片方の悪魔の実はヤバいな。確かに渡した知識があれば元々この能力を持っていた人物が生きていることも分かるし、探し出すこともできるだろうが、かなり危ない橋を渡ったな。
「ほい。完了っと…先にこっちから食えよ」
「ありがとよ……ゥ…カッー…相変わらず不味いぜ…!!」
ティーチが悪魔の実を二つとも豪快に食い、いつもの笑い声をあげながら能力を発動する。ちょうどゼットも部下達全員の無力化を終えたようで巻き込まない為かポイポイと遠くの森へと投げ捨てていた。
ティーチは右手に『グラグラ』の地震、左手に『ヤミヤミ』の闇を纏わせる。ここまでは知っている通りだが、次の能力にはゼットもサングラスの奥で目を見開いた。
「
「ゼハハハハ!!おっと…まだ慣れねェが…こりゃあおもしれェ!」
ティーチが
「ゼハハッ!『フワフワの実』さ!元海軍大将なら見たことあるんじゃあねェか!?」
「
フワフワの実。劇場版で登場し、原作でも過去編で出ていたロジャー時代の大海賊である"金獅子のシキ"の食っていた悪魔の実だ。
自身や触れた無生物を自由自在に浮かせて操ることができる
島や軍艦を幾つも浮かせられるチート能力だ。その描写から浮かす物体の質量に限界は無い様に思える。
俺も欲しい能力の一つではあったが、金獅子のシキとやり合うのは面倒だと考え後回しにしていた能力だ。ティーチには知識を渡す時に好きに使って良いとも言っているし、単独行動も許してもらってたので文句は無い。これは彼が自分の力で手に入れた能力だ。
シキとの戦争は激しいものだっただろう。覇気の練度が上がるのも当然だな。
「早速試してみるか…!…まずはコイツからだ…!」
そしてもう一つの方の悪魔の実の能力。宙に浮かぶティーチの足元から黒い何かが這い出てくる。『ヤミヤミ』の闇ではなくそれはティーチの
「この能力の前の持ち主の技なら知ってるぜェ…なんせ同じ立場にいたこともあるからなァ…!…
ティーチの影が千切れるように分離し、デフォルメされたコウモリの形となりゼットへと突撃していく。
「その能力も見覚えがある…!…いや…そもそも何故、悪魔の実の力を複数使える…!?…アベル…お前が何かしたのか…!?」
「だからそれは偽名。一文字違いで本当はアゼルって言うんだよ…で、俺のおかげってのは正解。ネタは教えてあげないけど…しかし、カゲカゲの実か…これもエグいことできそうな能力だよな〜」
ティーチが手に入れたのはフワフワの実とカゲカゲの実。
カゲカゲの実は七武海であるゲッコー・モリアの能力だ。原作だと頂上戦争後にドフラミンゴに殺されかけて、恐らくアブサロムに救助されて生き延びていたと思うだが…ここでは俺がアブサロムを殺しちまってるけど、どうしたんだろうか。それともあの時既にアブサロム達はモリアを助けた後だったのか…ま、考えても仕方ないしどうでもいいか。
「ぬぅん!!」
ティーチの飛ばした影コウモリはゼットにより虫のように振り払われ、地面にベシャッと叩き落とされてしまうが、影は消えることなく一つに集まり、真っ黒な人の形へと変わる。
そのシルエットはティーチと瓜二つだ。
「ゼハハハハ!!さァやれェ
「鬱陶しい…!付け焼き刃の能力頼りでこのゼットが倒されるかァ!!」
「ゼハハハ!!なら付け焼き刃じゃねェ能力も冥土の土産に見せてやる!見ろ!!これが海賊王になる男の力!!…
ティーチが『ヤミヤミ』の能力で闇を地面へと展開する。カゲカゲの能力で生み出されたティーチの影を殴り飛ばしたゼットは飛び上がる様に避け、空中を蹴り、右腕のバトルスマッシャーを構えた。
「流石に避けるか…ならコイツはどうだ…受け切れるか…!…
「スマッシュバスター!!!」
ティーチの『グラグラ』の能力とゼットの一撃がぶつかり合う。轟音と共に大気が震え、二つの技は相殺される。
普通に地震の力にステゴロで打ち消し合ってるのエグいな。やっぱゼット強いわ。流石です先生♡
「ウィ〜ハッハ!なんだもう始めちまってるじゃねェか!」
「お、久しぶりだな」
ティーチとゼットの戦いを観戦していると懐かしの幹部連中が勢揃いで降りてきた。こいつらもかなりレベルアップしているように見える。
「ニャ〜ハッハ!!ティーチ〜手ェ貸そうか!?」
「いらねェ!言ったろ!新しい能力を試してェのさ!!」
「ホッホッホ…ティーチ船長…いや、今はもう"提督"ですよ…呼び方には気をつけなさい」
「ムルンフッフ…早く私たちの船も欲しいわねェ…」
「トプトプトプ…!…しかし強いなァあのジジイ…流石は元大将かん?」
「…全盛期はどれほどの怪物だったのか…しかし時の流れもまた…巡り合わせだ」
「やっぱり老いって怖いな。この娘がいれば解決するかもだけど」
「ンンッ…!!…ンッ…!!!」
俺は戦闘音で意識を取り戻したアインの頬を舐めながら、彼女の生物非生物問わず12年時間を巻き戻せるという『モドモドの実』について説明する。手足だけではなく、口も塞がれているアインは怒りや悲しみ、恐怖など色々な感情が混ざり合った目で俺を睨んでいる。
「12年の巻き戻し…制限が無いなら実質不老じゃねェか…!」
「ゲホッ…!…エホッ…細胞…テロメア…医学的にはあり得ないが…それらを超越してこその悪魔の実か…!」
「実験すれば良いさ…ま、その前に楽しむけどね」
「ンン…フッ…!!…ンムゥゥ……!」
「お前いつか刺されるぞ。てか刺されろ」
俺はアインの胸や太ももを撫で回すように弄り、幹部達は呆れた目を向けながらも楽しそうに談笑する。アインは胸よりも太ももが魅力的だな…肉付きは勿論だが、特にこの右太ももにある大きな傷跡が美脚とのギャップでいい味を出している。
俺がアインを撫で回す様子を見たゼットは怒りに歯を噛み締めて、バトルスマッシャーを振りかぶる。
「アイン…!…この外道共が…!!」
「ゼハハハッ!外道とは言ってくれる!正しい道なんて自分でも見つけられてねェくせしてよォ!…ま、外道も否定はしねェがな!それが海賊だからなァ!!!」
「海賊…!…海賊…!…貴様らは…いつまでも…この世界の害でしかない…!!…ウエァァッ!!」
ドゴォッ!!!
ゼットが振りかぶったスマッシャーを思い切り地面に叩きつける。轟音と共に地面を割った衝撃はティーチの元まで届き、ゼットはそのまま転がった岩盤を掴みティーチに向けて投げつける。
「うおおっ!?」
ガープの鉄球投げを彷彿とさせる連続投岩の勢いは凄まじく、フワフワの空中浮遊に慣れていないティーチでは避けるので精一杯だ。
「あっ…ゼットがいねェ」
幹部勢が必死に避けるティーチにヤジを飛ばしている中、ゼットの方向を見るとそこには誰もおらず、見聞色で気配を探るとティーチに向かって飛ぶ一際大きい岩の上に人影が見えた。まぁ、別に言わなくて良いか。ティーチが1人で手出し無用って言ったんだし。
「ん…?…どこ行きやがった…!?」
「落ちろ…クズが…スマッシュ…!!」
「ウッ!?」
「ブラスタァァァッッッ!!!」
「グワアァァァッッッ!!!?」
ドガァァッッッ!!!!
あーあ。スマッシャーによる爆撃の様な一撃に叩き落とされたティーチが地面に激突する。地面にはティーチの形に綺麗に穴が空き、そこから煙が立ち登る。
まるで空島から自殺ダイブをしたカイドウみたいだ。
「ありゃ絶対痛いニャ」
「ティーチのヤツは絶対一回はぶっ飛ばされねェと気が済まねェのか?」
多分金獅子のシキと戦ってる時もボコボコにはされたんだろうな。それでもタフさを活かしてしつこく食らいつくのがティーチって感じだ。
「ぬぐ…いてぇ…!」
「スマッシュ…!!」
「ッ…
「バスター!!」
ゼットの追撃をカゲカゲの影法師と位置を入れ替える事によって躱わすティーチ。
サービスでフワフワの実とカゲカゲの実の過去の使い手の記憶を差し込んでやったからそれを参考にしているのだろう。既に能力を使いこなし始めている。まぁ、ティーチは悪魔の実図鑑を熟読していたから要らない世話だったかもしれないか。
「ティーチ!海軍に気づかれても面倒だ!練習はもういいだろう!さっさと殺すぞ!」
俺は新しく手に入れた能力を発動させながらゼットへと殺意を向ける。
このままだと調子に乗ったティーチがボコされそうだし、俺も新しい能力を試したい。
「チッ…仕方ねェか…!」
「なんだ?やっていいのかん?」
幹部勢が各々武器を取ったり臨戦態勢になる中、俺は筋肉弛緩ホルモンを追加でアインに打ち込み、動けなくさせた後、モアモアによる100倍のスピードでゼットへと突撃する。
NEO海軍として殺してきた能力者共の能力の試し撃ちだ。
「ッ…!…アベル…!」
「鎌鼬…烈風!!」
手刀のように伸ばした腕を振るい、能力を発動する。手足を振るうことで鋭い空気の刃であるカマイタチを飛ばす事ができる『カマカマの実』だ。
斬撃を飛ばせる剣士や『嵐脚』のように生身の蹴りで斬撃を生み出せる奴らが多くいるので正直無いよりマシ程度のハズレの雑魚能力だ。
「強いて言うなら連発しやすい程度しか強味がねェな!鎌鼬…旋風!モアモア10倍速!!」
モアモアの速度倍化の対象にもできるので、雑な武器としては使いやすい。
まぁ、ゼットには効いてないけど。
「ぬぅ…おれは…信じていた…!!…お前の怒りを…!…お前の正義を…!…許さんぞ…!!…ここで海の藻屑となれアベルッッッ!!!」
「なるかよバーカ…カチカチ+アツアツ+グツグツ…!!」
カチカチの能力で鋼鉄となった腕は高熱を発するが、さらに能力を重ねて温度を極限まで上昇させる。
『アツアツの実』と『グツグツの実』
両方とも高温を操る能力でアツアツの実に至っては摂氏一万度まで温度が上がるというイかれた火力だ。
NEO海軍の海賊狩りを横取りしようとしたドン・アッチーノとか言う賞金稼ぎが持ってた能力だが、メラメラどころかマグマグより上位に感じる。
油断していたところをゼットがワンパンで潰したが、スマッシャーが大破する甚大な被害をもたらした敵だった。
と、そんなことを思い出している暇は無い。俺は空気を歪ませるほどの高温となった鋼鉄の腕でゼットの強烈なスマッシュに合わせた。
「オオオッッッ!!!」
「オッラァァッッ!!!」
ガギィィィンッッッ!!!!
腕がクソ痛いがゼットの一撃は相殺され、寧ろ俺の方が押している。記憶を元に戻してもゼットとの訓練の記憶はそのままだし、覇気の練度は一年前とは比べ物にならないほど上昇しているのを実感する。
「グッ…ォォ…!!」
「ハァ…!…内部破壊もコツ掴んできたぞ…!!」
武装色の覇気の高位技術、鎧のように纏う技と更に高難度な内部破壊もゼットから教えられてかなり形なってきた。教え方の上手いゼット先生マジ感謝。
「練度は上でも、もう歳だもんなぁ…!…息苦しいんだろ?…ノコノコ…
手のひらをゼットへ向けてまた新しい能力を発動。雪のような丸い薄紫色の無数の小さな塊がゼットへ襲いかかる。
「ぐっ!?…ゲホッ…!…こ、これは…!?」
ゼットは素早く避けるが、微かに掠っただけで動きを鈍らせる。
この能力は『ノコノコの実』の力だ。毒キノコの胞子を身体から生み出し操ることができる。
胞子と言いつつ分身形成や菌糸による捕縛、キノコ型のドリルに変形させたパンチなどかなり多芸なことが可能だ。
「あれ…何か悪いものでも吸っちゃいました?例えば毒キノコの胞子とか…フハハッ…!」
「ッ…うぐっ…!!…ゲホッ!…ゴホォ…ッ…!!……ゥ…!」
先ほど放出したのはノコノコの力によって生み出した毒胞子だ。触れるのは勿論、見えないほど小さな粒子でも吸い込んでしまえば肺の中で毒が巡り、激痛が走る。
ゼットは老兵だ。映画では戦闘中であっても薬を使用しなければならない描写があり、特に心肺器官に衰えがある。呼吸を妨害する毒の粉など1番嫌がるだろう。
「ゼハハハッ!アゼル、オメェも面白ェ能力手に入れてんじゃねェか!」
「まだ他にもあるぜ。でももう見せ場は無さそうだな」
「ぐっ…ゴホ…!…フザけるなァ…!!…海賊風情が…!!!」
ゼットは歯を食い縛り、拳を構える。その戦意を昂らせるのは怒りか、それとも失意か。俺以外の幹部達も降りてきて全員でゼットを囲む。
「元大将って言っても歳取りゃこんなもんか」
「ウィ〜ハッハッハ!おれたちが強すぎるんだろ!」
「バージェス、貴方はほぼ戦ってないでしょう」
「トプトプ…船見に行ってもええかん?…良い酒があったら貰わなきゃだ〜」
「ムルンフッフ…!誰がトドメ刺すかは競争ってことでいいのね?」
「ッッッ……!!…ウオオオオォォォッッッ!!!」
「ンンンンッッッ………!!!!」
俺たちが一斉にゼットに襲いかかり、無数の攻撃に追い詰められるゼットを見たアインの声にならない悲痛な叫びが虚しく響き渡った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アゼル〜久しぶり〜〜!!」
ゼットを殺し、解散となった後、懐かしの船へと戻るといの一番にウタが飛びついてきた。
その格好は今日にライブ配信で見た通りの衣装だった。
「えへへ…この衣装が気になる?ブカブカでちょっと変だったかもね…でも仕方ないじゃん♡このお腹隠さないとさぁ〜♡」
ウタが服を大きく捲り上げ、その地肌を露出させる。下着があるだけの魅惑的な肉体よりも先に彼女の
「じゃ〜ん♡こんなに大きくなっちゃった♡…ふふ、この中に私とアゼルの赤ちゃんがいるんだよ…♡」
「うお…エッロいな…!…痛みとかは大丈夫か?」
「旦那さまとの愛の結晶だと思えば全然平気だよ♡ライブ配信で見せても良かったんだけど…やっぱり生で見てもらいたかったんだ…♡」
ウタは妊娠していたようで大きく膨らんだボテ腹を見てつけてくる。俺はそのままウタの腹を撫でながら彼女の唇を奪った。
「あっ♡あんっ♡…ムチュゥ♡…チュウ…♡…」
「…俺がいない間はどうだった?妊娠してたなら大変だったんじゃないか?」
ウタ以外にも妊娠している女がいるのか気になるが、それを言うとウタは拗ねるだろうから後にしよう。
「ん〜…危ないことは無かったよ。アゼルのくれた船で旅してたけど、マリアンヌのおかげでバレずに観光もできたし、毎日シャーリーが危険な事が起きないか占ってくれてたから。いざとなったらたしぎの能力で透明になって逃げればいいんだしね」
1年間離れて過ごすのは不安だったが余裕で無事に過ごせたようだ。シャーリーの占いがかなり役に立ったようなので後でご褒美をあげないと。
なんてことを考えているとウタは服を脱ぎ捨てて下着姿のまま寄りかかるように抱きついてきて伸ばした手で俺の股間を撫でる。
「ねぇアゼルゥ♡久々なんだからちょっとつまみ食いさせてよ…♡」
ウタがしゃがみ込むとこちらの返事も待たずに俺のズボンに手を掛けてそのままパンツごと下ろし、肉棒を露出させる。
「あはっ♡…みんなごめ〜ん♡こんなの見たら我慢できないや♡」
ウタはボロンと眼前に出された肉棒を白魚のような指で掴むと大口を開けて、亀頭をパクリと咥え込んだ。
生温かい口内が竿の先にへばりつき、ウタは舌を回しながらヂュルヂュルと下品な音を立てて俺のモノを啜り上げる。
「ヂュルルッ…♡!!…ンン…んぼっ♡…はぁぁ♡一年振りのアゼルのチンポ…♡…すっごく美味しい…♡…!…んぼっ♡んぽっ♡…!」
「うわ…エロい顔…朝のライブ配信の時とは大違いだな…!」
見下ろすウタはタコのように唇を窄めて、必死に俺の肉棒をしゃぶっている。10代の少女でありながら爆乳で尻や太もももムッチリ、さらに出産直前かと思えるほどに膨れたボテ腹を曝け出しているウタの口淫奉仕はあまりにもエロすぎた。
「ヂュッポ♡ヂュッポ♡ヂュッポ♡…ンン〜♡レロレロレロ♡♡…!」
「くっ…ウタ…手も動かせ…!」
「ンフッ…♡…いいよ…♡…ほら♡シコシコ♡シコシコ♡…あ〜ん♡…はぷ…♡…ヂュズズッッッ♡♡!プボッ♡!ブポッ♡!!」
「うっ…!…出る……
ドプッ!!ドビュルルルルルルッッッ!!!!
「んぶぅぅぅっ♡♡!!!」
指を輪っかの形にしたウタが俺の竿を高速で扱き、重なる激しいフェラによる快感でそのままウタの口内へと精液をぶちまける。
白目を剥き掛けながらも口で子種を受け止めたウタは搾り出すように指をシュコシュコと動かしながら口一杯の白濁液を飲み干していく。
「ん"…ん"ん〜…♡…!!…うぶ…ゴキュッ♡…ゴクン…♡…ん…ブハッ…はぁ〜〜〜〜♡♡♡!!…大好きな旦那さまの一年振りのザーメン♡美味しい〜〜〜〜♡♡♡♡!」
エロい。歌やダンスなどアーティストとして以外の記憶や興味は全て俺と愛し合い、エロい事をした記憶に塗り替えているからめちゃくちゃ淫乱になっている。最高だ。
「あ"〜〜やばっ♡…このままエッチしたい〜〜♡…でも、みんな待ってるし…」
「後で何度でも抱いてやるって。ほら、みんなも我慢してるんだろ?」
「うん…私もだけど、みんなアゼル以外の男なんて興味ないから暇さえあればずっとオナニーしてたよ」
うわ、想像しただけでエロいなそれ。早く行こう。
「ていうかその娘は?まーた新しい女の子〜?」
ウタが俺の後ろに倒れていた美女、アインを指差す。同志だと思っていた俺に裏切られ、敬愛するゼットの死を目の当たりにしたアインは感情のキャパシティを越えたのか気絶し、今も目覚めていない。
「おっと、忘れるところだった。名前はアイン、今から遊ぶ予定だからみんなも一緒にやろうか」
俺はアインを抱き上げて、懐かしい気配と女の匂いがする船室へと足を進めた。
ボテ腹はエロい。
長くなったのでアインの本番は次話に。
ゼット先生ほんとごめん。結末含めてカッコよくて好きなキャラです。