神様の弟子になったら初恋の女の子と添い遂げる事が出来た件。 作:アロンの杖
アニスは可愛らしい女の子だったが別に、“誰にでも無条件で優しい”と言う訳では決して無かった。
勿論、自分からわざわざ他人に対して悪事や嫌がらせを働くような事はしなかったモノの、アロンと出会った当初の彼女はどちらかと言えば気の強さばかりが目立つ、ちょっと近付き難い存在として男女問わず畏怖されていたのである。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「いま帰ったわ?ハロルド。お父さんとお母さんはどこ?」
そんな彼女をなお一層、皆から遠ざけていたのがアニスの出自であったが彼女はここ、“ウィルグリップ村”の名士で豪商だった“ウェリントン家”の、三人いる令嬢達の次女だったのだ。
そんなウェリントン家はたった1代で財を為した富豪であり現当主の“ロデオ・ウェリントン”は穏和だが商才のある、中々にやり手の男だった、彼ら夫妻には子供がおらず、また何度か“夫婦の営み”を試みても上手く行かなかった事から途方にくれていたのであるが、そんな折。
“山奥の村”に行商に出掛けた帰りに途中の山道で行き倒れになっていた、1人の不思議な修道女から頼まれて当時まだ乳飲み子だったアニス達3姉妹を引き取る事にしたのだが、それからと言うモノ彼ら夫妻の商売や人生は全て好転し、遂には村の名士の1人に名を連ねるまでに至ったのである。
もっとも。
その事実をアニス達はまだ知らなかった、ロデオは妻のミシュアと相談して彼女達が成人するまではこの事を秘し、あくまで自分達の子として育てる事にしていたのだが、そんなアニスが4歳と少しになった時。
彼女は当時通っていた村の幼児教育施設“あすなろ園”で運命の出会いを果たした、母親である“ニッツァ・ヤサカ”に連れられたアロンが編入して来たのである。
ところが。
「・・・・・?」
「・・・・・っっっ!!!!!」
彼を一目見た瞬間だった、周囲の景色も雑踏も、何もかもがアニスの目の前から消え失せて行き、変わってそこに浮かんで来たのは一組の成人男女のカップルが結婚式を挙げている場面だったのだ。
それを見た途端、アニスは直感的に全てを悟った、“ああ、あれは大きくなった私達だ”と、“大きくなったら私はこの子と結婚するんだ”と。
それはほんの一瞬にも満たない、まさに“刹那の合間”での出来事だったがアニスは特に拒絶する事もせずにすんなりとその運命を受け入れたのである。
何故かは解らなかったが“この子となら嫌じゃない”、そして“そうなんだ、この子が私の・・・”、それだけが彼女が感じた全てであり、それはとても確かで暖かな気持ちと共にストンと少女の小さな胸の中に落とし込まれて行ったのだ。