※この作品はR-18です。

長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話   作:山崎世界

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成長と本音

「リンさん、ワレさん。少々お二人にお話があります」

 

「何だ一体改まって」

 

 

 

 ギルドを訪れると開口一番に受付嬢から話を切り出された。

 

 

 

「ワレさんをご指名で依頼が入っておりまして……」

 

「ふーん」

 

 

 

 その辺りは別に珍しいことでもなかった。

 

 俺たち二人でどちらが評判になるかと言えばそれは圧倒的にワレの方だ。屈強な戦士について回っている腰巾着の小人族というのがごく一般的な評価だ。

 

 とはいえ、依頼を受けるときは結局二人で、それに対して金払いが悪かったり文句を言ってくる依頼主もいなかったのだが……。

 

 

 

「今回の依頼主様は個人的にリンさんにNGを出されていまして……」

 

「……はぁ?」

 

 

 

 だからまあ、今回ばかりは少々困惑した。

 

 

 

「今回の依頼主は魔法都市の方々でして、私たち冒険者組合としましても良好な付き合いを維持していきたい次第でして……」

 

「依頼内容は?」

 

「アーマーボアの討滅ですね」

 

 

 

 また妙な依頼だ。アーマーボアは物理的な耐性を持った大猪の魔物で、戦士職だとまともに刃が通らず対処に困る部類だ。代わりに魔法に対する防御がかなり脆いのでむしろ手助けと言うなら俺の方が適任だが……依頼内容を聞いてピンときたことがあった。

 

 

 

「……フィリス魔法女学院か?」

 

「……それにつきましては私どもの口からは……」

 

 

 

 以前、ワレと出会う前の話だが同じ内容の依頼を受けたことがある。そうか……あのクソガキどもか。

 

 

 

「……あにき。一体何をした?」

 

「別に。こっちとしては生意気なガキどものケツ持ちをしてやったつもりなんだがな」

 

 

 

 つまり今回の依頼は未熟な学生たちによる魔物退治の実習、その護衛兼監督役だ。基本的には出しゃばらず、学生の手に余ると判断した場合のみ手を貸す。強さ以外のものが求められる実のところかなりめんどくさい依頼だ。

 

 

 

『あなたが今回の監督役ですの? ぷっ、こんな小さい子供が? 生憎ですけれどあなたの出番はなくってよ』

 

 

 

 当人たちなのかあるいは当人たちから評判を聞いた後輩たちなのか、俺をNGにした理由はまあ大体分かったが。ワレを指名した理由の方が分からなくなった。まさかとは思うがあの時の逆恨みの仕返しでもしようとしてるのか?

 

 俺はともかくワレには色々と手に余りそうな案件でもある。断ろうか、と口を開いた矢先、

 

 

 

「わかった。受けよう」

 

「ありがとうございます」

 

「なっ……」

 

 

 

 ワレは依頼を引き受けていた。

 

 

 

「……おい、ワレ」

 

「平気だ。内容は理解したし、問題はないと判断した。それとも……あにきはワレを信用していないのか?」

 

「ぐぬっ……」

 

 

 

※※※

 

 

 

「それでワレちゃんが心配になってこうして後をつけてるとかさー全くアンタってばさ」

 

「うるせえ何でついてきてんだアリア。呼んでねえぞ」

 

 

 

 物陰から隠れて様子を窺うと、いつのまにか背後にアリアがいた。

 

「こっちとしてもワレちゃんが気になるもの」

 

「よくそれで人のことどうこう言えたな」

 

「私はいいのよ。アンタとワレちゃんとは違うんだから」

 

 

 

 理不尽なようでいてそういわれると反論がしづらかった。結局のところどこまで行ってもアリアは部外者だし、だから勝手に心配して、勝手についてくるのも自由だ。

 

 一方俺はどうだろう。信じて送り出すことも出来ない兄貴分である。

 

 合流したのは魔法学院の制服を着た三人組。見ると、顔は多少大人びてはいたが見覚えはあった。

 

 

 

「今日はよろしくお願いいたしますね。ワレさん」

 

 

 

 ぺこり、と頭を下げ、礼儀正しい振舞いだった。一目見てわかった。内心はどうあれ、多分目の前に立っているのが俺でも同じように頭を下げ、礼儀正しく振舞ったのだろう。それだけの淑女としての成長が伺えた。

 

 

 

「……ところでアンタ、いったい何したの?」

 

「……アーマーボアは魔法使いなら楽勝なんだ。魔法攻撃を喰らわしてやれば学生くらいの魔力と精度でも多くて三撃くらいで何とかなる。まあそれは慣れれば、の話だけどな」

 

 

 

 猛スピードで襲い掛かってくる大猪に向かって、正確に魔法を唱えて、なおかつ当てるというのは技術だけでは足りない。何より度胸が要るのだ。まあ慣れればたとえ吹っ飛ばされても防御魔法でダメージを軽減しつつ体勢を整えて反撃も出来るくらいだが。

 

 

 

「……正直、使い物にならなくてな。結局逃げるために無理矢理引っ張って帰った。プライド高いお嬢様としてはさぞ屈辱的だっただろうさ」

 

 

 

 ションベンまで漏らしてたのは名誉のために割愛する。

 

 

 

「……へー、そう。まあそんなことだとは思ったけどね」

 

「なんでそんなジト目で見られなきゃならんのだ。言いたいことがあるなら言えよ」

 

 

 

 さて、視線を戻すと魔法学院のお嬢様方は想像に反してワレを下がらせ、眼前のアーマーボアに全くひるまずに立ち向かっていた。

 

 

 

「ほう」

 

 

 

 思わず唸る。それなりに短くない経験者の俺からしても、お嬢様方の魔法の使い方は中々に様になっていた。正確に。速く。何より堂々と。一匹倒したからと言って油断せず、視野も狭まっていない。

 

 すっかり一人前、それ以上と言える技量を身に着けている。

 

 

 

「……後ろが!」

 

 

 

 しかし、それでも紛れはある。一際大きく、恐らく知能も高いだろう個体が、後ろから迫っているのが見えて、思わず助太刀しようと立ち上がった。

 

 

 

 だが、その必要もなかった。

 

 

 

「……」

 

 

 

 ワレが、剣の腹でアーマーボアの全身の突撃を受け止めた。アーマーボアはひたすら足を動かすがそこから一歩も進めず、そして一閃、ワレが剣を翻すと、そのまま首を落とされた。

 

 

 

「……あら、どうしたのリン」

 

「別に余計なおせっかいだったみたいだからな。帰るさ」

 

 

 

 ワレは十分によくやった。それだけじゃなく、過去に面倒を見たお嬢様方も確かな成長を遂げていた。祝福すべきことだろう。事実、晴れやかな気分はある。

 

 

 

 だというのに、どこかもやもやが残って。

 

 

 

「……こういう大人にはなりたくなかったんだがな」

 

 

 

 ワレは、もう俺がいなくても最低限生きていける。もしそうなって、俺の元から離れるといっても、それは仕方ないと思ってた。

 

 俺の元から離れた方が幸せになる。ワレがそういう考えに至った時、『離れたくない』とか『ずっとそばにいろ』とか『愛してる』とかそういう本音を残してしまったら、自分の幸せなんて捨ててしまうかもしれない。ワレの人生の足手まといになるのだけは死んでもゴメンだった。

 

 そう考えていたのに、やっぱりそう簡単に割り切れはしなくて、やはり俺はどこかまだ精神的に未熟なんだろう。

 

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