長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
四年ほど前。ワレがあにきと出会う前、依頼主とあにきは出会っていた。それだけでも、耳にした時どうしようもないざわめきを覚えた。
『おうお嬢様方。状況はさすがにわかるよな。ほら、逃げんぞ』
『は、放しなさい! この下郎! わたくしたちを一体誰だと……あなた……血が……』
『はいはいこんなもんかすり傷なんだよ唾つけとけば治る。まあこれ以上お前たちをかばおうとするならわからんけどな』
「ええ。ええ。確かにあの時ほど自らの未熟さを痛感したことはありません。あの時の経験があったからこそ今のわたくしたちがあると言っても過言ではありませんわ」
ワレが知らないあにきの話……。
「……ああでもやっぱりあの男ってばデリカシーが無さすぎですわ、ああもう思い出したら腹が立ってきました!」
「あはは、おちつきなよーエリー」
「そうだよー。リンさんはね、とっても親切だった……から?」
三人の共通の話題。いや、違う。あにきとの、四人の思い出。
「……なるほど。あなたたちはあにきのことを好いているのだな」
「なっ! 違いますけど!? 誰があんなちんちくりんを好きになりますか!」
否定の言葉が出て、嬉しくなる自分がイヤになる。
そんなはずないのに。
「……聞いてもいいだろうか」
「ええ。どうぞ」
「何故、今回の依頼をあにきではなく、ワレを伴って受けたのだ」
「あの時の失敗をそのままにしては、前に進めない。そう思ったからです」
それなら、何故あにきにそばにいて欲しい、そう願わなかったのだろう。
「まだ会えません。また会う時は、あの人を見返すくらいに成長してから。今はただ、過去の清算をしただけです」
「ぁ……」
乾いた声が漏れた。何でこんな当たり前の理屈に思い至らなかったのだろう。この子たちは、何て気高く、力強い覚悟なのだろう。
「……ワレを伴ったのは」
「見極めたかったのです。あの人とのわたくしたちにある、距離を」
「では、会っていくのか?」
「ご冗談を。あーあ、未だあの人の背中は遠い、ですか……あの人の隣に立つには、あなたのように強くならなければ、ですね」
そんなことは、ないよ。
ワレは、ずっと弱くて……あなたたちは、強い。好きになったのも、あなたたちの方がずっと先だったのに。
今だって、そうだ。ワレは、あにきのことが好きで……。あにきは、ワレのものだ、って。
それを主張することも出来ないままでいる。自分を覆い隠す鎧を纏って、誤魔化してる。
「今日は、ありがとうございました」
すっと、差し出された手を、どくどくとうるさく鳴る心臓を誤魔化しながら、取る。
「……いい子たちだった」
ワレなんかより、あにきに相応しい子たちだった。
ワレは、自分があにきに相応しいかどうかなんて考えたこともなかった。少なくとも本気では。心の奥底では。
ただ、あにきに甘えていただけだ。
「……あにき……」
それでも、今は甘えていたい。まだ、大丈夫なはずだ。
今はただ、あにきに、愛してもらいたい。愛してもらっているという実感が欲しい。それがただ、あにきに甘やかされているだけだとしても。わがままな欲求だと、ただの甘えと分かっていても、それしか考えられなかった。
まだ、許してくれるよね?