長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
ワレの実家からの一連の騒動。その過程で俺はワレにプロポーズをして、結婚指輪を贈り、そして失った。
大事なのは形ではないとはいえ、さすがにワレはそれなりに堪えているようだった。
「え? そんなのノーカンよノーカン」
そしてそんな俺たちを見て、アリアは呆れたように言い放ったのである。
「大体、おかしいと思わないの? 結婚指輪なんだからペアリングじゃないとダメじゃないの。元々あの指輪ってリンみたいなおバカが無茶しないようにっていう願いを込めてのものだし」
「……それはそうだけどな」
「そもそもロマンチックさの欠片もないったらないわ。一世一代のプロポーズなんだからもうちょっと雰囲気作りから頑張りなさいってのよ」
「あ、アリアさん、ワレは別に……」
「本当に? 正直に言っていいのよ。例えば二人きりの月が浮かぶ湖畔だとか、夕焼けの海岸だとか、高級なホテルの夜景を見ながらだとか」
アリアって割と少女趣味だよな。まあそうでもなければ仕立て屋なんぞやらんだろうが。
とはいえ、アリアの言葉に同意するわけでもないがワレもアリアの言葉を受けてぼーっと考え事をしている。
「ちょうどいい機会だから里帰りでもしたら? あそこなら色々とちょうどいいんじゃないの。アンタも今回みたいなことに備えて力つけとくのも悪くないでしょ」
小人族というのは元来、妖精族などと呼ばれている。俺とアリアからすればさすがに妖精などと呼ばれるのは勘弁してもらいたいのでそう自称することなどないが。
まあそれはともかくとして。小人族の里というのはそれなりに人の手が届いていないというか自然豊かというか風光明媚な場所でもある。田舎と言ってしまえばそうなんだが。
「温泉だってあるしね」
「温泉……?」
ワレが不思議そうに反応する。ああそういえば前に行ったときは温泉に入れない身の上だったからスルーしてたな。
「それに結婚するならリンのご両親に挨拶とかしといたほうがいいんじゃあないの~」
「あ、あ、ああ、挨拶か。うん、そう、だよね。大切だよね」
ワレが赤面しているのを横目に少し考える。
なるほど。悪くないかな、と思う。思うが……。
「何かお前俺たちのこと追い出そうとしてないか?」
「気のせいよ気のせい」
まあ確証はないんだが。どこか引っかかるものを感じつつ、俺たちはとりあえず準備のためにアリアの店を出ることにした。
「さーて、こっちも準備しないとね。作るのは初めてだけど……ま、何とかなるでしょ」
※※※
「そうですか。お二人はしばらくここを離れる、と」
「ああ。だから道中でついでに受けられる依頼なら対処する」
次にやってきたのはギルドである。とりあえず地図を広げて旅で通る道筋を大まかに説明しながら確認する。まあ一応小人族の里の詳細な場所は伏せるが。
「おおワレさん。こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「おうリン。あんまりワレさんを泣かせないようにしろよ」
ワレは鎧を脱いで素顔を見せるようになった。粉をかけてくる野郎どもも出てくるものと思っていたが思いの外いなかった。というか俺との仲をからかってきやがる。
「まあ何だ。今さらオレらの入る隙間もありゃしねえだろうがよ」
「そうそう。お前を狙ってた女も涙を呑んで諦めてるんだぜ。オレたちが祝福してやらないでどうするよ」
「何を言っているんだか。俺がモテてた覚えなんぞないぞ」
「……そんなことは、ないと思う、な……」
ワレが自分を主張するようにぎゅっと俺の腕を組んでくる。ヒューっと野郎どもの野太く黄色い歓声が響く。
杞憂だとは思うけどな。まあでも、俺にはもうワレがいるから諦めてもらうしかないし、知らないままにしておいた方がいいのだろう。
「あらアリアさん……え? ご相談が? なるほどなるほど……それはそれは……」