長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
「これでよし……と。どうだ? キツくないか?」
「ん……大丈夫だと思う」
風呂から出た俺たちはアオイが用意していた浴衣という衣装に着替える。ワレは初めてだから俺が着方をレクチャーしながら。
「まあ別に適当でもいいんだ。寛ぐための部屋着だしな。ただ、割と脱げやすいからあんまり派手に動いたりしない方がいい」
「あにきは結構様になってるね」
「ん? そうかね」
ちなみにワレの鎧はこの旅館内にある秘湯に浸からせてある。本来なら厳禁な組み合わせのはずだが、アオイの一族が魔法を用いながら改良に改良を重ね、錆や汚れを取り除き金属の輝きや切れ味を取り戻す湯質だとかまあそういう湯殿があるのだ。たまに包丁なんかが入れられているのを見る。
『はー♡ 極楽ですわー♡』
と本人(?)も言っていたから大丈夫だろう。
そして俺たちは旅館に用意された部屋に移動する。
「まんじゅう食うか? 美味いぞ」
備え付けのテーブルに置かれていた菓子をパクついて見せ、ワレにも薦める。
「あむ……っ! ほんとだ美味しい……」
「まあ気に入ったんなら土産に何個か買っていくか。これ作ろうと思ったら大分手間かかるんだよな」
甘く似た豆と言えば簡単に思えるがまあこれが色々と力もいるし中々に大変だ。
「どうもお食事をお持ちしました」
しばらく寛いで日も沈んできたところで、アオイが料理を抱えて部屋を訪れた。
「わぁ……」
ワレが感嘆を上げる。
料理は東洋の料理らしく、山の幸を中心とした見た目も鮮やかな一品料理が複数の小鉢に飾られている。
それも確かに感動するものだが、ワレが見ているのはアオイである。アオイは浴衣とはまた違うきらびやかな刺繡をほどこした着物を着こんでいる。
「きれい……」
「ふふ、ありがとうワレさん」
うっすらと唇に紅をさし、所作はどこか柔らかで、初見では女にしか見えないだろう。女将という役回りらしく温泉旅館には必要不可欠な存在らしい。
「あらどうかしましたかしらリン」
こうしてアオイが女装してまで務めているのはアオイに嫁がいないからというのも確かだが…………多分趣味なんだよなコイツの。
恐らくだが、それなりに人間がこの地に訪れるようなことがあれば、色々な意味で勘違いした男たちがリピーターになるんだろうなぁとか。そういう埒もない想像が浮かぶのである。
「せっかくだから一緒に食うか?」
「あらあらダメだよリン。リンたちはあくまでお客さんだからね。そういう線引きは大事なんだ……それに……」
アオイはちらっとワレの方を見る。
「お熱いお二人の邪魔はしたくありませんから」
ワレはかぁ……と赤面する。
「それではお二人とも、ごゆっくり」
そしてアオイはぺこりと綺麗なお辞儀をして、すたすたと去っていくのであった。
※※※
そして夕食を終えて。
「そういえばこの部屋ってベッドないけどどうやって寝るの?」
「ん? ああ……ここの棚に収納されてる布団を床に敷いて寝るんだ。ちょっと手伝ってくれ」
本来ならそれもアオイの仕事だったりはするがまあ別にそれくらいはいいか。あいつも色々大変だろうしな。
「……」
「それじゃ、寝るか」
「……うん……」
何となく口数が少なくなって。それぞれ別の……けど触れようと思えばいくらでも触れる距離で、床に就く。
ふと思い出すのは、始まりの日。ワレの呪いを解いて、初めてその鎧の下の姿を知った日のことだった。
(……あの時も……こうやってちょっと贅沢な外泊をして……)
でも、途中から記憶がないんだよな。
何だろうか。妙に胸がざわざわするというか。思い出さない方がいいんじゃないかと心のどこかで警鐘が鳴るのである。
「……くぅー……」
ちょっとモヤモヤしているうちに隣で寝息を立てていたワレの頬を少し撫で、俺も段々と意識を手放すのだった。
※※※
『あにき……』
『あん?』
『お、おいわい、なら……。わ、ワレのおねがい、きいて、くれる……?』
『……何だ?』
『わ、ワレを……抱いて、欲しい』
「…………あー…………」
夜中に目を覚ます。そして思わず唸る。
夢の内容、身に覚えのなかったはずだがこうして思い出してみればその時に抱いた感情までもつぶさに思い出して悶絶している。
そうか……ワレの方から誘ってたのか。酒の勢いで襲ったんじゃないかと思ってたが。
それでもって……縋りつくように抱いて。不安で頭がいっぱいで。俺のものにしてやるとか。この時はそんなことばかり考えていて……ああ、何だうん。一目惚れじゃないか。
愛というのは人を弱くはしないもんだと思っていたが、ダメだな。あの時の俺はどうにも情けなさすぎる。道理で思い出したくないと心のどこかで蓋をしてたはずだ。
「……くぅ……」
隣で寝ているワレの顔を見る。無防備な寝顔をさらすのは俺だけだろうか。いかん、何か弱ってるな俺。
「……ん……」
起こさないように頬に触れて、口づけを交わす。別に、起きていたって拒絶するわけはないだろうに。
「…………ふへへ、あにき……」
寝言で俺のことを呼んでるだけでこんなに胸が高鳴ってる。
仰向けになったワレの着崩れた浴衣から胸の谷間が覗いている。
「はぁ……はぁ……」
息荒く、浴衣を思い切り開いて、ワレのおっぱいがぶるんと飛び出す。そしてそのまま俺は肉棒を取り出して馬乗りになり、ワレの谷間に差し込んだ。
「……」
ずちゅ。ぬちゅ。夜の闇の中。肉が擦れる音だけが響く。
わかっている。こんなものはただの自慰だということは。そのくせワレが自分のものだというマーキングがしたいなんていう身勝手な欲望が湧いている。
「んちゅ、んぁ……」
肉棒で頬を叩き、我慢汁が糸を引く。
ぞくぞくとした興奮のまま、胸の谷間で扱く手を速め、そのまま一気に駆け上がる。
ビュル! ドクドク……。ワレの胸を精液で汚して、見下ろし、笑みを浮かべた自分に嫌悪した。
「ん、んぅ……?」
うっすらとワレが目を開ける。
「ぁ、ワレ、これ、は……」
ワレは、うつらうつらと目を擦る。
「んー……?」
寝ぼけたまま、ワレは俺を思いきり抱き締めた。
「んー……」
そのまま、また静かに寝息を立てる。
「らいじょうぶ……だよ……」
耳元で聞こえた優しい声に、ささくれ立っていた心が落ち着いていった。ああもう現金なものだ。