長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
「ワレ、何かしたいことはないか?」
朝食の最中、もう少しこう自然な流れで切り出せやしないかと考えたのだが単刀直入で行くことにした。
「どうしたの? 急に」
案の定ワレも怪訝な顔をしていた。
「まあ何だ、そういう日があってもいいだろう。可愛い弟分……いや妹分のわがままを聞く日があるくらいは」
昨日の夜のことが頭から離れない。俺が色事を教えてしまったのが悪いのだがこのまま頭が性欲塗れになってもよくない。
だから他の方法で欲求を満たす方向でいた方がいいと思う次第だ。
「……じゃ、じゃあ……デー……」
「うん?」
「お出かけ! お出かけしたいなって!」
※※※
そうして外で待っていろと言われて数十分。
「お、お待たせ……」
現れたワレは当然いつもの鎧姿ではない。
白のブラウスに黒のロングスカート。深窓の令嬢を彷彿とさせる上品さと美しさ。
もしも鎧姿のワレを知っている人間がいても目の前の姿から連想はしないだろう。
「へ、変じゃない? アリアさんがいいよって言ってくれたのそのままで……その……ワレにはちょっと……わからなくて……」
「大丈夫だ似合ってるって」
ふと胸元に目をやる。いや突き出しているおっぱいを見ているわけではなく。
「……チェーンつけてもらったの。アリアさんに」
俺が贈ったチャームを大事そうにギュッと握りしめる。
「あー……別にそんな大切にするようなもんじゃないぞ。てか基本使い捨てだしな」
装備品としてはともかく、装飾品として女に贈るようなもんじゃないし。
「むー……」
「……睨むなよ」
恥ずかしいんだぜ色々とさ……今度、本気で作ったやつを贈ってやるから。
「ほら、行こうぜ」
差し出した手をワレはぽかんと見つめる。
「……いいの?」
「何を気にしてんだか。まあ別に並んで歩く必要もないけどな」
ワレはゆっくりと手を取って、そして握った。
まあ多少不格好なのは仕方ない。それでも手を繋いで、歩くのだ。
※※※
まずワレは「甘いものが食べたい」と言うので馴染みのパンケーキが美味いカフェを訪れていた。
ワレはいつにもまして視線を感じるようで落ち着かない様子である。さて俺たちの関係はどう見えているのか。そもそもどういう関係なのかは自分たちでも決着がついていない。
「わぁ……!」
気を取り直して、注文の品が届くとワレも顔を綻ばせ夢中になっていた。生クリームたっぷりのイチゴソースのパンケーキ。一口食べると頬に手を当て、うっとりしながらさらに手を伸ばす。
さて、俺の方はシンプルなパンケーキ。厚めに焼いた生地にバター。その上からハチミツ。それだけ。この誤魔化しようのないシンプルさを直球で出す店は信用できる。
「……じー……」
ワレはこちらを、正確にはパンケーキに狙いを定めている。
「ほい、あーん」
「あ、あーん……」
差し出したフォークに食いつく。
「あにきも、食べる……?」
「いや、俺はいいや……ん? クリームがほっぺについてるぞ全く慌てんなってさ」
そのまま指ですくってぺろりと舐めた。生クリームもイケるななんて考えてる場合ではなく。
自分でも驚くくらいに自然にやってしまった。
その後はお互いに何となく無言でしかし気まずくもない時間を過ごす。
「次はどうする? どっか行きたいとこでもあるか?」
「それじゃあ……」