長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
昨日は楽しかったわー。別に自分の身体が嫌いだとか言う気はないけれど、ああいう背の高くてスタイルもいい女の子っていうのに憧れがないわけじゃない。そんな女の子にあれやこれやと自分の作った服を着せ替えるのは職人冥利に尽きるというものだ。
それにしてもあの鎧って……
「こ、こんにちは」
「あらいらっしゃいワレちゃん」
おっとお客さんだわ。
「あらリンもいるのね一体何の用?」
「ツケを払いに来たのと……あー……なんだ。服選びに俺の意見が欲しいと言われた」
「ふーんへーほー」
にやにやと視線を向けると逸らしよる。
まあ確かに昨日は帰っちゃったからね。女子二人でも楽しかったけどリンをからかいながらワレちゃんを着飾るのも楽しそう。
「アリアさん、これ着てみたい」
「え? これ? うーん……うん、いいんじゃないかしら」
どうせ私たちしかいないしね。
「あれ? リン、うなじが赤いけど虫刺されか何か?」
「ぅえ? あ、うん……? そうか?」
やれやれお熱いことで。
「そういえばアリア、あのエプロンドレスお前の差し金か?」
「いやいや確かに渡したけどあれは……」
「あにき、見て見て、うさぎさん」
試着室のカーテンから出てきたのはバニーガール姿のワレちゃんだった。網タイツでおおわれた脚はすらっと長く、胸も飛び出そうな迫力である。
「……うーん……まあ何ていうかね。あの子ってかわいい感じの衣装が好きみたいでね」
色々衣装を見せた中でミニスカートなんかを選ぶのだ。
ただあの子が着るとエロスが抑えきれないというか。まあそれでも本人が着たいというならそれでいいと思う。私は尊重する。
「……そうなのか」
「あにき……やっぱり……似合わない?」
「ほらほらどうなのよリン」
それをどうにかしていいのは、やっぱりほら、好きな人の好みだったりするんじゃないのかしら。
「……リン?」
何着目かの着替えでリンがいつの間にか寝入っているのに気づいて、ワレちゃんと私はコイツの寝顔を肴に談笑することにした。
「寝顔……かわいい……」
ワレちゃんはリンに膝枕をしてご満悦だ。
「まあコイツもコイツで疲れが溜まってたのかもね」
多分相も変わらずバカなところは変わんないからね。
「コイツさ、地元じゃガキ大将ってやつだったのよ。それは多分今も変わんないけど。意地ばっかり張ってさ。強がりばかり覚えて弱みは見せようとしないのよ。そのくせ舎弟が困ってたら一番に駆け付けてさ。『俺のものは俺のもの。お前のものも俺のもの』とかそんな感じ」
「……うん……」
ワレちゃんも、こいつに何かしら救われた人間なんだろう。
「まあバカだけどさ。バカだから……コイツの傍で、力になってあげて」
ワレちゃんについて、コイツなりに保護者気取って責任取ろうとして。抱え込んで。そういうバカなのだ。だから傍で支えてあげて欲しいって……ああもう私もバカかっての。
「……アリアさんは、ワレの知らないあにき、いっぱい知ってるん、ですね……」
まあそれはどうしようもないけどね。コイツが恋愛対象として全く考えたことがないかと言えばまあ嘘だ。
ただまあ私たちはこういう関係に落ち着いた。それだけの話。だからまあ、ワレちゃんがまだ知らないコイツの話でもしよう。
「そうね。まずはリンが黒魔導士を目指してた時の話をしましょうか」
取り出したのは魔法が込められた水晶。映像を記録として残すためのもので、当時のリンの姿が虚空に映し出される。
リンに消せと念入りに言われて実際ほとんど消したけど隠し持ってたのよねこれが。
「うわ、かわいい。チェーン? とか眼帯とか。頼めば、着てくれるかな?」
「ぷ、くくく……そうね」
まあ絶対着ないだろうけど。
こうして二人で思い出話に花を咲かせるのだった。