長年相棒だった全身鎧の戦士が実は甘えたがりの高身長女子だった話 作:山崎世界
アリアの作る服というのはデザイン面ではもちろんだが性能面でも右に出る者はいない。少なくとも俺が作るものよりも大分信頼ができるものだ。
今日はその性能のテストをしたいと言うので協力することにした。
「右上、左、真後ろ……の、ちょっと左、か……」
目を閉じて、都度移動するワレのいる方向を指摘する。
「おぉ、これはいいな。索敵範囲がかなり広がるし邪魔にもならん」
ちょっとした物音で、どこの方向にどの程度の距離でいるのか把握できる。装備としてもかなり軽い。
「ふふん、でしょう?」
「まあ問題なのは犬の着け耳ってことだけどな。どうする? 屈強な男がこれ着けてるのを想像してみるのは」
「まあここにはそんなのいないけどね~」
うるせえなほっとけやついでに言うと頭を撫でるんじゃない。何がイヤってあんまりいやじゃないことだ。多分この着け耳の影響だ。じっと集中すると精神に影響及ぼしてるのが分かる。
「ほらワレちゃんも撫でてみたいんでしょ? おいでおいで」
「人を借りてきた犬みたいに扱うんじゃねえよ」
「噛みつかないの、ほらワレちゃん、怖くないわよ。怖くない」
撫でてくるワレ。おのれアリアめ……。
「で、そっちはどうなんだ?」
俺は棚に置かれたもう一つの方の犬耳を指さす。
「うん? あーうーん、実はねーそっちの方が性能は凄いはずなんだけど副作用が強そうだから気を付けてね」
副作用?
「まあよく分からんがとっとと……」
「あ、危ないならワレがやる……!」
済ますか……と言い終わる前にワレが手に取って装着される。
「……」
「……ワレ?」
装着した後、黙るワレ。副作用、イヤな予感がする、とアリアの方を見た。
「わおおおん!!!」
瞬間、俺は押し倒され、顔をべろべろと舐められた。
聴覚、嗅覚の鋭敏化。身体能力の強化。そして思考の単純化。言語能力の低下。
分かりやすく言うと犬化である。いやなに作ってくれてんだお前。
「性能自体はリンも認めてたでしょ。それに、リンが着けるなら大したことにはならないと思ってたからね」
それはそうだ。俺の身体能力が多少上がったところでたかが知れてるからな。
「わふん、わふん……」
で、どうするんだ。思いっきり押し倒されて身動きが出来ないんだが。犬耳を外せば何とかなるのかこれ。
「くぅん、わぉん」
「クソ、手が。素直に、頭を、撫でさせれば……!」
何だ? 頭を撫でさせようとすると避けるぞ。どうなってんだ。というかさっきからさぁ。遠慮なく女体を当ててきてるからさぁ。
そうこうしていると、ガシャン、という金属音と共に圧力が消えた。
『ぐっ、いいから。おとなしく! なさい、な!』
見ると、ひとりでに装備される鎧。腕、足。そして胴体。
「そういえばあの鎧って精霊が宿ってるって話だったわね」
そうか。やろうと思えばああやってワレの意思に反してひとりでに動かすことも出来るのか。
「助かったぜ」
『ぐ! いいから、早くなさってくださいません? こっちも、長く持ちませんわよ!』
それも限界はあるみたいだが。
「……そうだな」
とりあえず何とかなったからふと冷静になった頭で考える。
「このまま連れ帰って様子を見るさ。メリットデメリットとか報告を上げる」
「いいの? 私としては助かるけど……」
まあこっちも引き受けた仕事なわけだからな。さすがにワレの命が危うくなったりしたら話は別だが。
「と言うわけで頼むぜ鎧の精霊さん」
『ああもう! 仕方ありませんわね! やってやりますわよ!』