完結してから何年経ってんだって話ですが、螢一とベルダンディーの最終回のその後です。
二人でバイク旅をしながら好きなだけイチャイチャしてたんではなかろうか。
それ以外あるだろうか?
いや、ない!
末永くお幸せに〜。
小気味よいエンジン音に混ざって、潮騒の音が響く。
夕暮れ時の海岸線。
俺とベルダンディーのサイドカー以外には、車もバイクも走っていなかった。
「見えたよ」
俺はスピードを緩めて声を張り上げた。
「はい、螢一さん」
ベルダンディーが笑顔を向ける。
それだけで、長いツーリングで蓄積し始めていた疲労もどこかへ消えていく。
小高い岬の上に張り出した展望台と、その奥にある老舗旅館。
そこが、俺たちの新婚旅行初日のゴール地点だった。
「お疲れ様です、螢一さん」
駐車場にサイドカーを停め、旅館の入口へ向かう途中で、ベルダンディーは俺の腕に両手を絡めた。
ドキッ!
と、胸が高鳴る。
「平気だよ、これくらい。バイクの運転は楽しいから」
ましてや、ベルダンディーと二人きりでの長期旅行なのだ。楽しくないわけがない。
「長旅お疲れ様でしたねぇ」
フロントに入ると、受付カウンターから人の良さそうな中居さんが出迎えてくれた。
ラウンジは広々としていて、ソファーで談笑している他の旅行客がちらほら見受けられた。数年前に改築したとガイドマップに書いてあったっけ。
「今日はよろしくお願いします」
ベルダンディーが恭しく頭を下げて、中居さんはあらあらと口に手を当てた。
「これはこれは、ご丁寧に」
「とても風情のある旅館ですね。駐車場から見える海の景色も素敵でした」
「それしかないところで申し訳ないですけども」
「そんなことはありません。ゆっくりさせていただきます」
ベルダンディーと中居さんが談笑している横で、俺は受付の帳簿にペンを走らせていた。
情けないことに、少し手が震えている。
自分で書いておいて、森里螢一の隣の名前に思わず口元がほころびそうになる。
森里ベルダンディー。
よろこびの奥から、緊張が迫り上がってくる。
あぁ、くそ。
こんな気持ちになるのは、全部ウルドのせいに違いなかった。
◯
「なぁに? 螢一、あんたまだ支度できてないの?」
旅行の準備に勤しんでいた俺の背後からウルドがひょっこりと顔を見せたのは、出発前日の夜のことだった。
「! な!?」
振り返った俺が慌ててカバンの奥に右手を押しつけたのを、ウルドは見逃さなかった。
「見えてたわよ」
「う……な、なにが?」
「すっとぼけてんじゃないわよ。カバンの奥に突っ込んだソレ、お姉さんに見せてごらんなさい」
こういう時、下手に粘るとウルドが調合した妙な薬を使ってきて話がこじれることを過去の経験から知っているので、俺は観念してカバンの中で握り締めていたソレを手渡した。
「もしやと思って来てみれば……あんたたち、もう夫婦なんだから、こんなの必要ないじゃない」
ウルドは「明るい家族計画」をクシャッと握り潰すと、部屋の隅のゴミ箱にポイッと放り込んだ。
腕組みをするウルドの前で、俺はといえば顔を赤くしたまま黙りこくっていた。
何も答えない俺に、ウルドが小首を傾げる。
「え? うそでしょ……」
俺がグルグルと視線を泳がせたので、ウルドの口元が引きつり始めた。
「まさか……まだ一回もベルダンディーに手ぇ出してないわけ!?」
「わ……悪いかよ」
「あんたたち、なんのために夫婦になったのよ?」
「別にエッチなことするために結婚するわけじゃないだろ」
「だって……ベルダンディーよ? 女神なのよ? 長い間抑圧されてたんだから、胸触ったりチュッチュうふふしたりしたいと思わないわけ?」
「俺だって、む、胸なら、何回か触ったことあるし、裸だって見たことあるぞ! ハグならけっこうしてるんだけど……」
口を数回パクパクさせた後、ウルドは深ぁ〜いため息をついた。
「いや、呆れるの通り越して感服したわ。まぁ、螢一がそういう性格がじゃなかったら、そもそもベルダンディーが好きになってるわけないもんね」
ウルドの言わんとすることもわかる。
《真の契約》を結んだ俺とベルダンディーは異種間審問をクリアし、夫婦として結ばれることを許された。要するに、つまり、そのぉ、なんというか……エッチなことをしてもいい関係になったのである。
婚姻の儀も無事に終了し、大学の校庭でみんなに披露宴までやってもらった。
だけど、俺はまだベルダンディーに手を出していなかった。
時々二人で手をつないでデートをする。
家に入る前、そっと目を閉じるベルダンディーにキスをする。
それだけで、俺は毎日しあわせだったのだ。
「ほんとにもう、しょうがないわね」
ウルドはおもむろに自分の胸の谷間へ手を入れると、そこから一冊の本を取り出した。
「こんなこともあろうかと、用意しておいてよかったわ」
困惑する俺を見下ろしながら、ウルドは楽しそうにうふふと笑った。
◯
大浴場でお風呂を済ませた後、ベルダンディーより先に部屋へ戻った俺は、ウルドからもらったその本をパラパラとめくっていた。
『ウルド姉さんのイチャイチャ子宝パラダイス計画』——それがその本のタイトルだった。
「なに考えてるんだ、ウルドのやつ……」
頭が痛くなってきて、気づくと俺は眉根を寄せていた。
その本には、初めてのお泊まりで気をつけないといけないことはもちろん、ベッドインしてから部屋の電気を消すタイミングや下着の脱がし方、その先の諸々細かいところまで実務的なことがみっちり記載されていた。
いや、まぁ……正直に言うと、昨日もらってから十回以上は読み返している。
だけど、読めば読むほど、俺の自信はなくなっていったのである。
「世の中の恋人たちは、本当にこんなことを日夜繰り返しているんだろうか……」
女神であるベルダンディーは、俺よりも長い時間を生きている。だから、彼女にすでに男女の経験があっても不思議ではない。
別にそれはいいんだけど、問題は初心者の俺がうまくできなくて、ベルダンディーにがっかりされないかということだ。
顔を上げて、部屋の中を見渡す。
和洋折衷のゆったりとした客室で、ふたつ並んだベッドの奥には畳の和室があり、そこで一服や食事ができるようになっていた。
シングルベッドがふたつ——というところに、俺の意気地のなさが現れていた。本当は、ダブルベッドや完全和室で一緒の布団で寝る部屋だって、予約しようと思えばできたのだ。
「呆れられたりしたらどうしよう……」
「何に呆れるんですか?」
「うわぁッ!?」
戸口からベルダンディーの声が聞こえて、俺は凄まじいスピードでウルドの本を旅行カバンの下に突っ込んだ。
バ……バレてないよな?
「い、いいお湯だった?」
「はい、とっても。疲れが吹き飛んじゃいました」
ベルダンディーの浴衣姿に、俺はほぅとため息をついた。
同じ花菱柄の群青色の浴衣のはずなのに、ベルダンディーが身につけているだけで神々しさが増す。軽く結い上げた首元から覗く細いうなじの色っぽさに、ドキリとした。
瞬間、彼女の裸体を想像した自分に、俺は心底嫌気がさした。
「少し、見てもいいですか?」
俺の隣に腰をおろしたベルダンディーが、旅行カバンの中を覗き込んだ。
一瞬、ウルドの本のことかとヒヤリとしたが、そうじゃなかった。
「あぁ」
ベルダンディーの視線の先を追って、俺はカバンの中からその包みを取り出した。
二人で奥の和室へ移動し、分厚い梱包材を丁寧に開く。
「素敵ですね」
それは陶器製のマグカップだった。薄い青とピンクでデザインを揃えた、可愛らしいボール型のマグカップ。道の駅に立ち寄った時に、旅の思い出にと二人で選んだのである。
俺がローテーブルにふたつのマグカップを並べると、ベルダンディーは俺の肩にそっと頭を預けて目を細めた。
「そういえばベルダンディーとお揃いのものって、意外に持ってないもんな」
「女神は食事を必要としませんから」
「いいんだよ、そんなの。あんまり気にしたことなかったし」
「恵さんに教えていただいたんです。紅茶を螢一さんと二人で飲めるように、お揃いのカップを買ってみてはどうかと」
ベルダンディーの頬にほんのりと赤みがさす。
「愛する人と同じものを所有するというのは、こんなにもうれしいものなのですね」
にっこりとほほえむベルダンディーに、俺の心臓はドクドクと早鐘を打った。
——くそぅ……キスしたい。
「あ……見てください、螢一さん」
窓の外を、ベルダンディーは指差した。
水平線の向こう側に沈んだ太陽が、青紫に空を染め上げている。瑠璃色、という言葉がぴったりだった。
「わぁ……」
二人で窓際に寄る。
ベルダンディーは両手を顔の前に合わせたまま、美しいマジックアワーを眺め続けていた。
「きれいですねぇ」
彼女の、こういう顔が見たかった。
——来てよかったな。
ベルダンディーのうれしそうな横顔に目を奪われていたら、視線に気づいた彼女が振り返った。
「螢一さん……」
「ベルダンディー……」
少し見つめ合った後、ベルダンディーはほほえんで目を閉じた。
彼女の腰を抱き寄せる。そのくせ、バクバクと跳ねる心臓の音を聴かれるのが怖くて、俺は互いの体が接触しない位置で彼女の顔に唇だけを近づけた。
その時。
「失礼いたします」
ノックの後に戸口から響いた中居さんの声に、俺は陸上選手もびっくりのスピードでベルダンディーの傍から飛び退いた。
「夕食の準備をさせていただきたいんですけど、よろしいですか?」
「ははいッ! もちろんですッ!」
和室中央の座卓に用意された会席料理は豪華だった。
刺身や焼き物など、近隣の海で獲れた魚料理がとにかく絶品で、俺は料理が運ばれてくるや次々に平らげてしまった。長距離ドライブで少し疲れが溜まっていたのかもしれない。
ベルダンディーは、そんな俺の様子を対面の席から子供をあやすような顔で見ていた。本来は食事を必要としない彼女が、俺にあわせて食事を嗜んでくれているのがうれしかった。
「旦那さん、ものすごい食べっぷりですねぇ」
いつもは飲まないビールや日本酒まで飲んだ。
調子に乗って飲みすぎたかもしれないと思ったけど、後の祭りだった。温泉に浸かって血行が良くなっていたこともあり、白ご飯とお漬物を出された時にはそこそこ酔っ払ってしまっていた。
「こちらで最後ですか?」
デザートのメロンが運ばれてきたところで、ベルダンディーが中居さんに確認した。
「えぇ。お食事が終わりましたら、器はそのまま置いておいてください。後で片付けに参りますので」
「ありがとうございます」
中居さんを丁寧に見送るベルダンディーに、俺は小首を傾げた。
「どうしたの?」
「あ、いえ」
戸口のふすまを閉めた後、ベルダンディーはいそいそと俺の隣に腰を下ろした。
お風呂上がりの時よりも、さらに体を密着させてくる。
「え……えぇ⁉︎」
「だめ、ですか?」
首を思いきりブンブンと横に振る。
「最近、できていませんでしたから」
ベルダンディーはお膳の上のメロンをフォークで切り分けると、片手を添えて俺の口まで運んだ。
「螢一さん、あーん」
もぐもぐもぐ。
うまい。
ベルダンディーにこれをしてもらうと、どうしてこんなにおいしくなるんだろう。
「ふふ、私の分もありますからね」
笑顔を見せるベルダンディーの襟合わせから胸の谷間が覗いて、俺は思わず目線を逸らした。
彼女はブラジャーをつけていなかった。
——ベルダンディーはこの後のこと、どう考えてるんだろ……。
夫婦なんだから、旅行先で体を重ねるのは何も不自然なことじゃない。
だけど、女神であるベルダンディーにそういう行為をするのは、酷く穢らわしいことのように俺には思えた。
「螢一さん?」
「あ……ごめん。飲みすぎたのかな……あれ? ん?」
冗談で言ったつもりだったのに、目の前の光景がグルグルし始める。
「螢一さん、お水を飲んでください」
「ありがと、ベルダンディー」
俺の右手はベルダンディーが差し出してくれたグラスの横を素通りした。それがよくなかった。
バランスを崩した俺の体は前のめりになり、ベルダンディーの胸の谷間に思いきり顔を埋めてしまったのである。
「あ……」
圧倒的な柔らかさと湯上がりの甘い香りが顔中を包み込む。
「! ご、ごめんッ!」
俺は壁にぶつかったバネのような勢いで体を後ろに逸らした。それもよくなかった。
「螢一さん⁉︎」
弾けるように後方へ跳ねた俺の後頭部が、後ろにあった柱に派手に激突したのである。
「ぎゃふ……!」
「螢一さんッ!」
しまった。もう、最悪だ。
ヒキガエルのような悲鳴を残して、俺の視界はブラックアウトした。
歌が聞こえる。
子守唄だろうか、ベルダンディーのやさしい声が上から降り注いでいる。
無様に気絶したことを思い出し、俺はハッと目を覚ました。
「起きられましたか?」
声の方を見上げると、大きな双丘の向こう側にベルダンディーの笑顔が見えた。
どうやら、膝枕をしてもらっているらしい。周りを見ると、すでにお膳と料理は片付けられていた。
「頭、痛くありませんか?」
言いながら、ベルダンディーは手にしていた何かを自分の背中に隠した。
おや? と思う。
嘘がつけないベルダンディーが隠し事なんて、なんだろう?
「うん、大丈夫」
「本当に?」
「ホントに。酔っ払っちゃってごめん。おかげで楽になったよ」
ベルダンディーの顔から不安の色が和らいだ。
「何か読んでたの、ベルダンディー?」
「明日のドライブ」
パン! と、ベルダンディーは両手を叩いた。
「……は、どういうルートで行きましょうか?」
「え? あぁ、そうだなぁ。今日はずっと海岸線沿いだったから、明日はドライブウェイで山の上まで行ってみようか。このあたりなら、展望台からも海が見えて最高かも」
「素敵です」
「そうだ。ガイドマップ、一緒に見ない?」
俺が上体を起こすと、ベルダンディーはさっき背中に隠した何かを俺に見せないよう、器用に体をずらして俺の隣まで移動した。
あ、怪しい……。
彼女は普段隠し事をしたりしないから、余計気になる。
しばらく二人で肩を並べながら、ツーリングマップを見た。バイクやドライブコースの話はとめどなく、俺はそれだけでまたしあわせな気分になった。
——エッチするかどうかなんて、どうでもいいじゃないか。
「そういえば、夏合宿で俺と千尋さんが勝負したことがあったっけ」
「心配した私がバイクで駆けつけたんでしたね」
「そうそう。ワンピースで颯爽と現れるから、びっくりしたなぁ」
「事故にあっていないか、気が気じゃなかったんです。でも、その後螢一さんと並んでツーリングできましたから、私は楽しかったですよ」
「はは、違いないや」
その時。
二人で笑い合った拍子に、ベルダンディーのお尻のあたりからソレが俺の方へ転がり出た。
「あっ! だめ……」
「え……?」
その表紙を目にした瞬間、俺は氷のようにピキーンと音を立てて固まった。
『ウルド姉さんのイチャイチャ子宝パラダイス計画』
昨日から何十回も見ているそのタイトルの下には、小人化したウルドのイラストが添えられていた。
「み、見ちゃだめですっ!」
ベルダンディーはその本を慌ててもう一度背中に隠した。
俺は自分の旅行カバンの下に視線を走らせたが、そこには俺が風呂上がりにしまい込んだ同じタイトルの本が隠されたままになっていた。
「えっと……ベルダンディー?」
「う、ウルドが! 読んでおいた方がいいからって……」
顔を真っ赤にしたベルダンディーが、本で顔の下半分を隠した。
その仕草がたまらなくかわいらしい。
「私、経験、ないから……。でも、ずっと螢一さんのこと、騙してたし……。せめて、少しでもうまくやって、よろこんで……ほし、くて……」
あぁ。
もう、だめだ。
「ベルダンディー」
「え……?」
たまらなくなって、俺はベルダンディーを抱き寄せた。
彼女の返事も待たずに、唇を奪う。
「ん……螢一さん」
長い。
長いくちづけの間に、ベルダンディーは俺の背中へ回した両手に「キュッ」と力を込めた。
ようやく顔を離した後も、俺たちはしばらく見つめ合っていた。
「俺……! あの! ベ、ベベルダンディー!?」
「は、はい!」
上擦った声のまま、俺は続けた。
「だ、抱きたい! ベルダンディーのこと……抱いても、いいですか?」
「はい……もちろんです」
クスッと笑顔を交換し、もう一度短いキスを交わしてから。
俺はベルダンディーをお姫様抱っこで抱き上げると、ベッドの上に組み敷いた。
チュ……チュ……と音が響く。
室内の明かりを消して、窓から差し込んだ淡い月明かりが、ベルダンディーの潤んだ瞳を浮かび上がらせていた。
「螢一さん……」
それは何度目のキスの後だっただろう。
俺は角度をつけて、ベルダンディーの唇の中へ舌を割り込ませた。
「ん……」
嫌ではないだろうか。
幻滅されてはいないだろうか。
そんな気持ちは、ベルダンディーもまた舌先で俺を迎え入れてくれたことでかき消された。
「ん……ベルダンディー」
「ふ……ぁ……螢一さん」
互いの口内を行き来しながら、唇と舌が絡み合う。
息が続かない。ようやく顔を離した後も、俺たちは息を切らしたまま見つめ合った。
「脱がす、よ……?」
「はい……お願いします」
俺は上体を起こして、まず自分の浴衣を脱ぎ捨てた。
トランクス一丁でベルダンディーに覆い被さるのは、なんだかこの上なく恥ずかしかった。
「はぁ……はぁ……」
息が荒くなるのを、俺は懸命に堪えた。
ベルダンディーの鎖骨のあたりから指を滑らせ、華奢な肩を露出させる。
「螢一さん……」
ベルダンディーが目を伏せる。
——ん……く……。
俺は震える手で、彼女の浴衣の前を開いた。
ぷるん。
と、音がした気がした。
ベルダンディーの豊かな乳房が露出する。桜色のふたつの頂きは、俺がこれまで見たどんな情景よりも神秘的で、美しかった。
瞬間、俺の下半身が「ドクン」と跳ねた。
「触って、ください……」
「う、うん……」
力を入れないよう注意しながら、俺は両手で同時にベルダンディーの胸を揉みしだいた。
「あ……」
慎重に、円を描くように動かす。
マシュマロよりもまだ、やわらかい。
——あるのか、こんなものが……。
「螢一さん……」
ベルダンディーの声に触発されて、俺は右手の指先で乳首をそっとつまみあげた。
「……っ」
ベルダンディーの体にわずかに力が入る。
親指と人差し指で静かにこねる。それだけで、彼女の乳首はツンと上を向いた。
「は……んん……」
「痛く、ない?」
「はい……なんだか、変な感じです」
「あの……い、いやだったら、やめるから」
ベルダンディーは堪えるように首を横に振った。
「もっと、してください。螢一さんに、たくさん触ってもらいたい」
そんなことを言われたら……。
右手の動きはそのままに、俺はもう一方の頂きへ舌を這わせた。
これが、ベルダンディーの、乳首。
「は……ん……」
裾野をちろちろと舐め上げた後、全体を呑み込むように吸いつき、しゃぶり上げる。
ベルダンディーの体を俺の好きなようにしている。
この上なく卑猥な行為に、俺の下半身は痛いくらいに前へ張り出していた。
「はぁ……はぁ……ベルダンディー」
夢中で乳房を弄ぶ俺の頭を、ベルダンディーがやさしく両手で包み込む。
「ん……ぁ、あ……」
情欲が溢れて、頭がくらくらした。
乱れた息で顔を上げると、せつなく俺を見つめるベルダンディーと目が合った。
小さく頷いてから、俺は彼女のショーツの端に手をかけた。
ベルダンディーがわずかに腰を浮かせる。
彼女の下着を脱がした後、俺は意を決して彼女の下腹部へと右手を伸ばした。
そこは、未知の領域だった。
何度も熟読したはずなのに、ウルドからもらった本の内容がまるで頭に浮かんでこない。
——た、たしか……このへんに……。
女性にとって一番敏感な場所。
ない知恵を振り絞って、俺はその場所へ中指を這わせた。
「い、痛かったら、言ってね?」
何度もそんなことを口にする自分が情けない。
「あ……」
触れた瞬間、俺とベルダンディーは同時にわなないた。
ベルダンディーのそこは、すでに大量の愛液をたたえていた。濡れそぼった中に小さく頼りない突起を見つけて、それをゆっくりと指の腹でなでる。
「そこ……あ……螢一さん……!」
ベルダンディーが俺の首に両手を回して、しがみついてくる。こするたびに、ベルダンディーの吐息がせつなく跳ねる。
「痛い?」
ベルダンディーはふるふると首を横に振った。
「き……」
愛撫を続けながら、俺は彼女の耳元でささやいた。
「気持ちいい、の?」
潤んだ瞳で頷いた後、ベルダンディーは深い角度で俺の唇を奪った。
「ん……ベルダンディー」
「螢一さん……」
大胆にうごめく彼女の舌が、俺の理性をかき乱す。
彼女のキスが離れたのと、俺がクリトリスから指を離したのはほとんど同時だった。
「え……?」
息を切らしたベルダンディーが両目を見開いた。俺が彼女の両手をすり抜け、顔を下腹部へ移動させたからだ。
これが正しいのかどうかはわからなかった。ただ、彼女が初めてなら、いきなり指を入れるのは痛がらせてしまうと思っただけだ。
「だ、だめです、螢一さん! そんなこと……!」
彼女が言い切る前に、俺は彼女の秘部に吸いついた。
「あ!」
むせ返るような女性のにおいを呑み込みながら、下から上へ舌を往復させる。
ピチャ、ピチャという卑猥な音にあわせて、ベルダンディーの愛液はとめどなく溢れた。
「だめ、です……螢一さ……ん……」
そう言いながら、俺の頭に添えられたベルダンディーの両手にはまるで力が入っていなかった。
ベルダンディーのよがる姿がもっと見たい。
俺は舌を尖らせると、それを彼女のより深い場所へと挿し込んだ。
「! 螢一さん⁉︎ あ、や! あぁ!」
舌先でベルダンディーの中をソフトにかき回しながら、愛液をもらさず呑み下す。
「ん! あ、ぁ! 螢一さん!」
限界まで舌を彼女の中に伸ばした直後、ベルダンディーは震えるように大きくのけ反った。
彼女の愛液は、神聖な泉のようだった。俺の口の端からこぼれた愛液が、頬から顎を伝って敷布団に小さな染みを作った。
「はぁ……はぁ……」
放心しているベルダンディーを見た時、俺は初めてやりすぎたことに気がついた。
「ご、ごめん、ベルダンディー!」
慌てて体を彼女の顔の位置まで戻して、抱きすくめる。
泣き出しそうな表情で見つめられ、俺は罪悪感にすくみ上がった。
「ホントに、ごめん」
「違います。違うんです」
小鳥のようなキスを繰り返した後、ベルダンディーは言った。
「もう、ほしい……。螢一さんと、ひとつになりたい」
——落ち着け。落ち着けよ。
ドクン、ドクンと、心臓の音が耳の横で聞こえる。
ベルダンディーとひとつになる。
あまりの緊張で胸が苦しい。
トランクスを脱ぐ。
好きな女性に下腹部を見られる羞恥心よりも、切迫感の方が遥かに上回ってしまう。
うまくやらなきゃ。
二人の大切な思い出になるように。
「螢一さん……」
「うん」
ベルダンディーの潤んだ瞳に促され、俺は彼女の両脚の間に体を滑り込ませた。
「あ……」
そこで、俺はようやく自分の異変に気がついた。
「そんな……まさか……」
「螢一さん……?」
「ちょ、ちょっと待ってね」
血の気が引いていく。
さっきまであんなに元気だったのに。
「あれ……あれ……」
「螢一さん」
「ごめん、ベルダンディー。すぐに、なんとかするから……!」
「螢一さんっ!」
体を起こしたベルダンディーに抱き寄せられて、俺は両目を見開いた。
「大丈夫ですよ、螢一さん」
「でも……」
「だって……ほら」
ベルダンディーは、俺を胸の谷間に埋めた。
やわらかな双丘の向こうから、彼女の鼓動が聴こえる。それは、俺の心臓の音よりもさらに速かった。
——ベルダンディーも、緊張してるんだ。
「螢一さん……横になってください」
「え?」
言われた通り、ベッドの上で仰向けになる。
だけど、ベルダンディーが俺の下半身の方へ移動するのを見て、俺はすぐに上体を起こした。
「! ベ、ベルダンディー!?」
「足を、開いてください」
「う、ぇ! ……えぇっ!?」
ベルダンディーの華奢な指先が俺自身に触れた。
たったそれだけで、俺はあっという間に硬さを取り戻してしまった。
「まぁ……」と、ベルダンディーの頬がピンクに染まる。
{IMG254643}
恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
「も、もう、大丈夫だから!」
ベルダンディーは俺を一瞥してから、俺自身に顔を近づけた。
「だ、ダメだ、ベルダンディー! 女神の君にこんなこと、させられない」
「ウルド姉さんの本には、こうすると螢一さんに喜んでもらえると書いてありました」
「そりゃ、うれしくないわけないけど……」
「嬉しいことも辛いことも、分かち合うのが夫婦というものですから」
ゴクリ、と喉が鳴る。
ベルダンディーの舌先が俺の先端に触れた瞬間、俺は小さく腰を震えさせた。
裏筋にチロチロと刺激が走って、腰が勝手に浮かび上がってしまう。
「い、痛いですか?」
俺はブンブンと首を横に振った。
「違うんだ。その……気持ち、いい、から」
ベルダンディーはほっとした表情で、俺への愛撫を再開した。
亀頭の裏筋から先端を、愛でるように舐め上げていく。
——うわ……。
裸のベルダンディーに、こんなことをさせている。
興奮と羞恥と罪悪感がないまぜになり、亀頭の中心から透明な愛液がぷっくりと溢れた。
「あ……」
その愉悦の証を見つけたベルダンディーは、小さくほほえんだ。
「ご、ごめんっ。見ないで」
「うれしい……螢一さん」
ベルダンディーは、うっとりとした表情でその愛液ごと俺自身を口の中へ迎え入れた。
「あっ……ベルダンディー」
「ん……螢一さん」
未知の快楽が俺自身を包み込む。
ベルダンディーは俺の反応を確かめながら、ゆっくりと口を前後させた。
{IMG231680}
「ん……」
ベルダンディーの愛らしい唇に俺が呑み込まれる度、例えようのない甘い刺激が下腹部に広がっていく。
——うわ……うわ……っ!
ベルダンディーの、ふぇ……フェラチオ。
「ん……ん……」
「ベ……ベルダンディー」
懸命に奉仕してくれるベルダンディーの奥に、豊かな乳房が垂れ下がっているのが見える。
あまりに甘美なその光景に、呼吸が苦しくなる。
我慢できなくなった俺は、右手を伸ばしてベルダンディーの左の乳首に触れた。
親指と人差し指で、ソフトにコリコリと摘み上げる。
「んっ……ふ、ぁ……んん……っ」
刺激が複雑になって、俺は身悶えした。
「はぁ……はぁ……すごく……気持ちいい、ベルダンディー」
堪えた愛液が先端から滲み、それをベルダンディーが舐め上げているのが感覚でわかった。
息が乱れる。
ベルダンディーに愛でてもらっている下腹部に、意識と欲望が集中していく。
{IMG231681}
「螢一さん……ん……っ」
ベルダンディーがストロークを大胆にした。
これは、だ、ダメだ。
頭で必死に自制しても、俺自身は彼女の口内に欲望の全てを放出しようと準備を始めていた。
「ん……んっ……」
「ま、待って、ベルダンディー!」
後一歩というところで、俺はベルダンディーを抱きすくめた。
かなり強引だったかもしれない。おそらく口で受け止めるつもりだったベルダンディーは、俺の背中におずおずと両手を回した。
「螢一さん?」
「は、初めては!」
俺は彼女の瞳を覗き込みながら言った。
「ベルダンディーの中がいい。ベルダンディーの中に出したい」
言ってから、顔面蒼白になった。
女神相手に、なんて下品なことを口走っているんだろう、俺は。
でも、ベルダンディーはやわらかな笑顔を俺に返してくれた。
「はい。私も、螢一さんが欲しいです」
二人して顔を赤くしながら、ほほえみ合う。
チュッチュッと音を立てながらキスをして、俺は改めて彼女をベッドの上に組み敷いた。
慎重に、自分自身をベルダンディーの下腹部にあてがう。
「こ……ここ?」
「そこは、あの……お尻、です」
「わっ。ごめん」
「ん……そ、こ……です」
「挿れる、よ?」
小さく頷いてから、ベルダンディーは恥ずかしそうに目を伏せた。
そうして、彼女が開いてくれた両脚の中心へ。
ゆっくり。
ゆっくりと——。
俺は自分自身を挿入した。
「は……ん……っ!」
ク、チュ……と生々しい音を響かせながら、先端がベルダンディーの中へ埋没していく。
小さな抵抗感の後、何かが破れたような感覚があった。
「い……!」
「ご、ごめん……!」
狼狽える俺をいさめるように、ベルダンディーはしがみついた。
「大丈夫……大丈夫ですから」
「ベルダンディー」
目尻に涙を浮かべながら、彼女は俺を離すまいとした。
「キス……欲しいです」
「あぁ」
二人でめちゃくちゃに唇を重ねる。
舌と唾液を絡めながら。
俺は一気に彼女を貫いた。
「ふ……ん、んんっ……!」
ベルダンディーの右手がきつく俺の襟足を掴む。
息が続かなくなってようやく唇を離した時、俺とベルダンディーの恥部はぴったりと重なり合っていた。
{IMG231682}
彼女の最奥に、自分を感じる。
「はぁ……はぁ……」
酷いことをしている。
大切な人に、痛い思いをさせてしまった。
「泣かないで、螢一さん」
互いに見つめ合ったまま、ベルダンディーは俺の目尻に手を伸ばした。
「私、うれしいんです。やっと螢一さんと、身も心もひとつになれたから」
そう言ってほほえむベルダンディーの瞳にも涙が溢れた。
どうしても、今伝えたい言葉があった。
「愛してる」
瞬間。
ベルダンディーの中心が「ドクン」と跳ねた気がした。
「ずっと、そばにいてほしい」
なんだかいつも、同じことを伝えている気がする。
「はい。ずっと一緒です。螢一さんのそばに、ずっと一緒にいさせてください」
今度はゆっくり、じっくりと、くちづけを交わす。
じゃれ合うように角度をつける。俺が上唇をソフトにかむと、ベルダンディーは下唇にやわらかくキスをした。
「ふふ……なんだかくすぐったいです」
「こういうキスも、好きかも」
「私も、大好き。とろんとしちゃいます」
大切な人と、確かにつながっている。
こんな幸福があるのか。
「動いていいですよ?」
「いいんだ。ベルダンディーとひとつになれただけで、俺は満足だから」
本心だった。
俺自身は彼女を硬く貫いたままだったが、男としての欲望よりも、彼女を労わりたいという気持ちの方が遥かに優っていた。
「違うんです」
「?」
「私が、その……」
ベルダンディーは頬をピンクに染めながら俺を見上げた。
「螢一さんがよろこんでいるところを、もっと見たいと思っているんです」
今度は、俺の鼓動が「ドクン」と跳ねる番だった。
「ベルダンディー」
「きて、螢一さん」
彼女がこくんと頷いて、俺はゆっくりと腰を前後に動かした。
「あっ……」
凄まじい快感が下腹部から全身に広がって、俺は情けない声をもらした。
「あ……んっ……螢一さん」
ギリギリまで引き抜き、また挿し込む。
繰り返す度、徐々にベルダンディーの恥部に愛液が溢れ始めた。
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「痛くない?」
「あっ……少し、違和感はあるけど……ん、んっ……私の中、に……ぁ……螢一さんを、感じます」
膝に両手を添えて、やわらかく腰を律動させる。
「はっ……あ……あんっ」
俺の動きにあわせて、ベルダンディーの喘ぎ声がせつなく響く。豊かな胸が揺れている。
我慢できなかった。腰の動きはそのままに、俺は彼女の乳房を揉みしだした。
「あっ! 螢一さん」
抱き寄せられて、熱く舌を絡める。
それでも、俺はベルダンディーの中を往復し続けた。
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「……いい」
吐息を交換しながら、ベルダンディーは恥ずかしそうに目を伏せた。
「気持ちいいです、螢一さん」
「うれしい……ベルダンディー」
溶ける。
溶けてしまう。
「はぁ……はぁ……」
「あっ……あぁっ……!」
必死だった。
全身でお互いを感じながら——感じていたから——その瞬間が近いことも、俺たちは同時に理解していた。
「も、もう……ベルダンディー!」
「私も、螢一さん!」
「はっ! はぁっ!」
「あ! あっ! あッ!」
俺の全てが、先端のただ一点に集中する。
ベルダンディーがかきむしるように俺にしがみついた。
瞬間——。
俺とベルダンディーは同時に達した。
「く……ッ!」
「あっ……螢一さん……」
ビュ……ビュル……と、卑猥な音が聞こえた気がした。
二人小さく震えながら、お互いをきつく抱きしめ合う。
「は……ぅ……」
俺の全部が、ベルダンディーの中心を満たしていく。
「好き……」
なおも放出を繰り返す俺の髪を、ベルダンディーはやさしくまさぐった。
「大好き、螢一さん」
「俺も……大好きだよ、ベルダンディー」
どれくらい、そうしていただろう。
見つめ合い、やさしくキスを交換できるようになってから、それでも俺たちは抱き合ったままベッドで横になっていた。
俺の腕枕の中に、ベルダンディーがいる。
「螢一さん」
「ベルダンディー」
時々、思い出したように名前を呼び合う以外は何も言わず、ベルダンディーは俺の胸にうれしそうに顔を埋め、俺は彼女の頭をなで続けていた。
しあわせとは、こういう時間のことを言うのだと思う。
「やっと、螢一さんとひとつになれました。ずっと待たせてしまったから」
「いいんだよ、そんなこと。俺さ、ベルダンディーと一緒にいて、笑い合って、出かけて、時々遠くまで行って……そういうので、全然しあわせだから」
「螢一さん……」
あ……と、ベルダンディーが小さく声を上げた。俺の下半身が、また元気を取り戻していたからだ。
「ごめん。言ったそばからこんなんで……」
「いいえ、うれしいです」
ベルダンディーは俺のうなじにキスをして目を細めた。
もっと、してほしいです——。
彼女の口が、大胆にその言葉を紡いだ。
「ん……ちゅ……ん……」
わずかな月明かりが照らす室内に、淫らな音が響く。
ベッドの脇で直立する俺の前に、ベルダンディーが跪いている。彼女はうっとりした表情でそそり立つ俺の先端を口に含み、舐め上げながら前後させていた。
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「ん……んん……」
「あ……ベルダンディー……」
俺の反応を見ながら、ベルダンディーが丁寧に俺自身を育てていく。
時折口を離して、舌先を亀頭に這わせる。俺がピクンと反応を返すと、彼女はまた唇の中へ俺自身を招き入れた。
「う……あ……そ、それ、好きかも」
「こう、ですか?」
ベルダンディーの短いストロークに、下腹部の欲望が加速していく。
俺の意志とは無関係に、俺の先端はベルダンディーの愛撫を求め、楽しんでいた。
「はぁ……あ、ぅっ……」
「ん……む……螢一さん」
「だ、ダメだ……出る……出ちゃうよ、ベルダンディー」
俺は懇願するようにベルダンディーの頬をなでた。
彼女はそれを笑顔で受け止めたが、口の動きはさらに速く、複雑になっていった。
ベルダンディーからお願いされたのだ。
——螢一さんが望むことを、私にさせてください。
もう一度口でしてほしいと頼んだのは、俺の方だった。
「ん……出して、螢一さん」
「もう、い、イク……出すよ?」
「はい……んん……いっぱい、出してください」
限界だった。
勝手に腰が前に出る。
「べ、ベルダンディー……!」
「んん……っ!」
甘美な愉悦は白く弾けて、俺は欲望の全てをベルダンディーの口内に注ぎ込んだ。
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「あ……あぁ……」
「ん……」
二度、三度……射精を繰り返す。
ベルダンディーはそれをじっと目を閉じて受け止めた後、コクリと飲み下してしまった。
「はぁ……はぁ……ベルダンディー」
「いっぱい出ましたね……うれしいです」
ベルダンディーがあやすように先端にキスをして、俺は小さく身震いした。
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愛おしくてたまらなかった。
抱き寄せ、彼女をベッドの上に押し倒す。
だけど、ベルダンディーは先に俺の唇を奪うと、俺に下になるよう促した。
「ベルダンディー、今度は俺が……」
「ダメですよ。今は私が、螢一さんにしてあげる番なんですから」
両手を後ろについて、上体を起こしたままにする。その俺の下腹部に、ベルダンディーはまたがった。
二度も達したにもかかわらず、未だ屹立したままの俺自身を、彼女は自分の恥部へと導いた。
「あ……螢一さんの……お、ち……ん……」
言いかけて、ベルダンディーが恥ずかしそうに口ごもる。
その仕草が、さらに俺自身を硬くたぎらせた。
俺の先端は愛液を滴らせるベルダンディーの秘部にキスをした後、彼女の中へゆっくりと埋没していった。
「深い……螢一さん」
彼女の中心は根元まで俺を咥え込んだ。
あたたかい。
あまりの安堵感に、俺は母親に甘える赤ん坊のように彼女の胸に顔を埋めた。
「少しだけ、こうしていていい?」
「はい」
「痛くない? 大丈夫?」
ふふ、とベルダンディーがほほえむ。
「もう、大丈夫みたいです。螢一さんはやさしいですね」
お互いの肩や背中に指を滑らせながら、俺たちはしばらく深いキスを楽しんだ。
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「あ……」
ベルダンディーの頬がピクンとゆるんだ。彼女の中で、待ちきれなくなった俺が小さく跳ねたからだ。
「動きますね?」
「……うん」
俺の肩に両手を添えて、ベルダンディーは腰を上下させた。
「あ……あん……っ」
ベッドに後ろから倒れ込むと、ベルダンディーの恥部が上下に俺をしごき上げているのが見えた。その動きにあわせて、彼女の乳房が俺の目の前でたおやかに揺れている。溢れた彼女の愛液が潤滑油となって、俺自身にねっとりと絡みついてくる。
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「はっ……あっ……あぁ!」
下からベルダンディーのふたつの膨らみを揉み上げ、指先で桜色の頂きも味わう。マシュマロのような弾力が両手に吸いついてくる。
「あっ! あんっ!」
前屈みになった彼女の乳首に舌を這わせて、しゃぶりつく。
たまらなかった。
「ん……!?」
俺はそのままベルダンディーを抱き寄せると、彼女の背中とお尻に手を回して、下から秘所を突き上げた。
「だ、ダメです、螢一さん! 私がしますから……ん! んん!」
唇を奪い、俺はなおも腰をうねらせた。
ベルダンディーが俺の口内に舌を差し込み、かき回す。
「ふ……あ! あぁッ!」
吐息に唾液が系を引いた。
直後。
ベルダンディーは達した。
「あ……ぁ……」
もっていかれそうになるのをなんとか耐える。
彼女の中から溢れた大量の愛液は、恥部からシーツまで流れて落ちた。
「はぁ……はぁ……螢一さん……」
「もっと、ベルダンディー……」
一度離れてから、ベルダンディーの後ろに回り込む。
俺の意図を察したベルダンディーは、恥じらいながら四つん這いになってお尻を突き上げた。
「あぁ……!」
奥まで挿し込んだ瞬間、ベルダンディーの上半身が大きく跳ねた。
「は……は……!」
対面とは異なる快楽が、俺の腰を淫らに突き動かす。
「あッ! あんッ! あぁッ!」
ふと顔を上げると、部屋の隅に備えつけられた姿見に二人の痴態が映っているのが見えた。
獣のように腰を振る俺を、ベルダンディーが恍惚とした表情で受け入れている。
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あまりにも官能的なその光景に、俺の先端はさらに硬度を増した。
「すごい、ベルダンディー」
彼女の背中に密着して、後ろから乳首とクリトリスを愛撫する。
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「あッ! 恥ずかしい……!」
甘えたようなその口調と仕草が俺をどれほどかき乱すか、ベルダンディーはわかっていない。
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限界が近づいている。
もっと、彼女をよろこばせたい。
「顔、見たい」
彼女の耳たぶに舌を這わせながら、俺は言った。
「私も……螢一さん」
二人で少しだけ側位を楽しんだ後、つながったままベルダンディーをベッドの上に組み敷いた。
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おねだりをするように舌を出したベルダンディーのそれを、俺も舌先で迎え入れる。
「ん……ふ、ぁ……」
「ふ、ぅ……ん……」
深く突き上げながら、何度も、何度も、何度も、キスを繰り返す。やさしく抱き合ったまま、舌を絡ませる。
その間も、俺とベルダンディーの中心はパチュパチュといやらしい逢瀬を繰り返していた。
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「螢一さん……」
とろけそうな表情で、ベルダンディーは俺の頬に両手を添えた。
「イク……」
せつない吐息が、言葉を紡いだ。
「イッちゃいます……」
「いいよ。また、一緒にイこう」
あ、ん……と、ベルダンディーが小さくよがった瞬間、俺の中でわずかに残っていた理性の欠片は完全に吹き飛んだ。
「あ……!」
彼女の腰に両手を添えると、俺は野獣のように欲望の先端を突き入れた。
「はっ……はぁっ……!」
「あ! ん……! あん!」
激しいピストンに、ベルダンディーはせつない吐息で応えた。
溢れる愛液は、もはやどちらのものなのかさえわからない。
「はぁ……はぁ……!」
「あ! あっ! あッ!」
「ベルダンディー!」
「螢一さん! 螢一さぁん!」
最後の瞬間を駆け上がる。
加速する律動の中で、それでも俺は、喘ぐベルダンディーにやさしくくちづけた。
「あ……」と、大きく両目を開いたベルダンディーの表情が、とろんとかわいらしく崩れた。
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一際激しいひと突きで、彼女の体がそり返る。
直後——。
俺はベルダンディーの中に白い欲望を注ぎ込んだ。
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「ふ……ぅ……!」
「あ……ぁ……」
射精して、射精した。
深く腰を押し当てながら、彼女の奥の奥を俺で満たしていく。
最奥で果てる俺を、ベルダンディーは泉のような愛液で迎え入れた。
「はぁ……はぁ……」
「は……は……」
唇が触れ合う距離で、見つめ合う。
「螢一さん……」
「ベルダンディー……」
なおも硬度を保ったままの俺の先端に、ベルダンディーはゆっくりと舌を這わせた。
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ベルダンディーの口内が俺自身を包み込み、数回往復した直後、俺は当然のように残りの愛欲を放出した。
「ん……」
もう、出ない。
ベルダンディーに差し出せるものは、何も残っていなかった。
「ごめん、辛くなかった?」
相変わらずこんなことを口走ってしまう俺の頭を、ベルダンディーは笑顔で抱きすくめた。
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「うれしかった。いっぱい、愛してくれて」
小鳥のようなキスをして、俺たちはふふっと笑い合った。
{IMG248554}
まどろみの中で目を覚ます。
ゆっくり目を開けると、ベルダンディーの美しい双眸が俺を覗き込んでいて、俺は慌てて体を起こした。
「わわっ、ごめん」
「おはようございます、螢一さん」
「お……おはよう、ベルダンディー」
窓際のカーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。やわらかな日差しがベルダンディーのしなやかな裸体をベッドの上に浮かび上がらせ、俺たちは同時に頬を赤らめた。
そういえば……しちゃったんだった。
でも、俺は彼女の裸から目を逸さなかった。
ふ……夫婦なんだから、恥ずかしがることはないのだ。
「よく眠れましたか?」
「うん、ばっちり」
しばらく抱き合った後、俺たちは顔を洗って手早く着替えた。朝食もこの部屋に用意してくれることになっていたのだが、その時間まであと二十分ほどしかなかったのだ。
「?」
シャツを着たところで、ベルダンディーがいそいそと俺の顔を覗き込んできた。
「ベルダンディー?」
ピタッとくっついたかと思うと、彼女は俺のうなじに顔を埋めて目を細めた。
「なんだか、螢一さんにくっついていたくて」
彼女が何を望んでいるのか、なんとなくわかった。
だって、それは俺も起きた時からしたいと思っていたことだったから。
「ベルダンディー」
彼女の頬に手を添えて、上を向かせる。
「螢一さん」
ベルダンディーが俺の背中に両手を回して、俺はゆっくりと彼女にくちづけた。
{IMG231697}
「あの……」
「? どうしました?」
「いや……」
抱きしめ合ったまま、俺はポリポリと自分の頬をかいた。
「次の宿からは……布団は、ひとつでいいね」
何を言ってるんだろう、俺は。
一瞬、きょとんとした後。
「はい。そうですね」
ベルダンディーは恥じらいながら頷いた。
◯
『あ……そんなに、されたら……声、出ちゃいます』
『でも、ベルダンディーの中……すごい』
『ん……あっ……キスで、塞いでください』
夢にしては妙にリアルな声が聞こえて、俺は目を開けた。
顔が重たい。
寝ぼけ眼で手を伸ばすと、頭にヘルメットのような変な機械が取り付けられていた。
『あっ! あッ! 螢一さん!』
『はぁ! はぁ! ベルダンディー!』
イヤな予感がして、慌てて飛び起きる。
他力本願寺の自分の部屋だった。
いつもと違うのは、目の前にウルドとスクルドが座っていることだ。
ただ、何か様子がおかしい。スクルドは後方のウルドから抱きかかえられるように両手で目と耳を塞がれていた。ウルドはジタバタともがくスクルドを抑え込みながら、俺の頭上を半笑いの表情で見上げている。
「ちょっと、ウルド! なんなのよ! これじゃ何も見えないし聞こえないじゃない!」
「だーめ。こりゃあお子様には刺激が強すぎるわ」
俺は頭の上を振り返って凍りついた。俺の頭についている機械から、モニター映像のようなものが映し出されていたからだ。
『ベルダンディー!』
『螢一さん!』
「な……な……!」
間違いない。
これは、新婚旅行二日目の夜に、旅館の部屋の内湯でベルダンディーと愛し合った時の映像だった。檜の浴室の壁に手をついているベルダンディーが前で、俺が後ろだった。
「なんじゃこりゃあァァァーッ!?」
「いやぁ、ほら、どうせ螢一のことだから、旅行先でも手つないで夕焼けでも見ながらキスしたらそれでおーしまいになってないか心配になっちゃってさ。そういえばスクルドの発明品で記憶を映像化するマシンがあったなぁと思って、螢一につけてみたんだけど……」
『あっ! あッ!』
パンパンと音が響く俺の頭上を見上げながら、ウルドは手を口に当てて「むふふ」と目尻を下げた。
「初夜も濃密だったみたいだし、お姉さん感無量だわ。そうよねぇ、長く想い合ってきたんだから、燃え上がっちゃうわよねぇ」
さ、最悪だ……。
「ウルド! もう怒ったわよ!」
スクルドがウルドの拘束から逃れようと本気で暴れ始めた。
「うわわっ! どうやって停めるんだ、これ!?」
「わかんないけど、頭から外したら映像は消えるんじゃないかしら」
「むきぃー! ウルドぉッ!」
俺は両手で力任せに頭の機械を引っ張った。
吸いついていてやたらと重い。
「ん、ぎぎッ!」
キュポン! と音を立てて機械が俺の頭から外れたのと、スクルドがウルドの手から逃れたのはほとんど同時だった。
映像は……消えている。よかった。
「きゃあぁぁぁーッ!」
にもかかわらず、スクルドは顔を真っ赤にして悲鳴を上げた。
「なあぁぁんで裸なのよッ!?」
スクルドは俺の下半身をビシッと指差した。
しまった、寝起きですっかり忘れていた。
「いや、違うんだ! ごめん!」
両手で下腹部を覆って横を向く。
「エッチ! スケベ! ハレンチぃ!」
「いいじゃない、自分の部屋なんだから」
「お姉さまは? お姉さまはどこ!? 結婚したからって、やっぱりこんなのと一緒の部屋で寝るだなんて言語道断だわ!」
面倒くさそうにしていたウルドが、俺の顔を見て意地の悪い笑みを浮かべた。
まさか……。
「ベルダンディーならそこにいるじゃない」
「どこよ!?」
「ほら」と、ウルドは俺の横の掛け布団をバサッと取り除いた。
「い……」
スクルドの目が点になる。
「? あぁ……おはようございます、螢一さん」
ベルダンディーは敷布団の上で大きく伸びをすると、俺に向かってにっこりと笑顔を向けた。
俺と同じように、彼女は生まれたままの姿で、ショーツすら身につけていなかった。
「あら、ウルドとスクルドも。おはよう」
点になっていたスクルドの目の奥に炎が宿り、その怒りのマグマは平手打ちとなって俺のほっぺたに降り注いだ。
「螢一の……へんたあァァァーいッ!」
……そういうわけで、ベルダンディーが朝食を作ってくれている間、俺は居間で真っ赤に染まった頬に手を当てているのだった。
「まぁまぁ、スクルド。夫婦なんだから、裸で寝ることだってあるわよ」
ウルドがなだめても、スクルドが俺を睨みつける視線が和らぐことはなかった。
「新婚旅行から帰ってきて一ヶ月……まさか毎日お姉さまと裸で寝てるんじゃないでしょうね!?」
「う……」と言葉に詰まって、俺はそっぽを向いた。
毎日どころか、毎晩二回は愛し合っているなどとはまさか言えまい。
「ベルダンディーが嫌がるようなことは、断じてしてないよ」
「そんなの当たり前よ!」
「嫌がるようなことはしてない。ほほぅ……逆にベルダンディーが喜ぶことはしてるわけだ。ちょっとウルドお姉さんに教えてごらんなさい」
欲深そうな顔で、ちゃぶ台の向こうからウルドが身を乗り出してくる。
「アホか。言うわけないだろ」
「言えないくらい激しいことをしてるってわけね」
ダメだ、この感じだと半年くらいはウルドのペースでおもちゃにされてしまいそうだ。
「ウルド姉さん。スクルドも。螢一さんが困ってるじゃないですか」
その時、ベルダンディーが俺の朝食をトレーにのせて居間に入ってきて、ウルドとスクルドは引き下がった。
白ご飯に卵焼き、味噌汁というシンプルな朝食に、俺の腹はぐぅと鳴った。
「めしあがれ」
言いながら、しかしベルダンディーは俺のそばから離れなかった。ハグハグと俺が食べている間も、彼女は手が触れ合いそうな距離で俺の方を見ていた。
新婚旅行から帰ってきてからは、俺たちはずっとこんな感じの距離感だった。それがまたスクルドの眉根を寄せさせる原因になっていた。
「スクルド」
ウルドはスクルドの肩を抱き寄せた。
「今までも、螢一といる時のベルダンディーはいつもしあわせそうだったけどさ。あの子があんなに甘えてるとこ、見たことある?」
「……ない」
ようやく、スクルドの表情が緩んだ。
「ほら、私の部屋でドラマでも観るわよ」
「やだ、バラエティ番組がいい」
ごゆっくり、という言葉を残して、ウルドとスクルドは居間から出て行った。
パタン、と襖が閉まってしばらくしてから、ベルダンディーはいそいそと俺から箸を取り上げた。
恥じらいながら、卵焼きを「あーん」としてくれる。
「おいしいですか?」
「うん。すっごく」
ベルダンディーの頬がほころぶ。
キスとか、エッチとか、そりゃあやっぱりうれしいし、そういうのも大事だと思うけど。
本当は、ベルダンディーがそばにいてくれれば……ベルダンディーの笑顔があれば、俺は他に何もいらないんだ。
「なぁ、ベルダンディー」
「はい?」
「隣町に新しい雑貨屋さんができたらしいんだけどさ、紅茶もたくさん扱ってるって、恵が言ってたから。次の休みに、二人で買いに行こうか?」
「うれしい。いいんですか?」
「うん。デートしよう」
「大好き、螢一さん」
ベルダンディーは俺のうなじに頬を寄せると、うっとりとした表情で目を細めた。
彼女の腰を抱き寄せて、顔を近づける。
吐息と唇が触れ合った——その直後。
「ごめーん、螢一。忘れ物しちゃった!」
スパーン! と、スクルドが居間の引き戸を勢いよく開いた。
「な……なな……」
濃厚なくちづけを交わす俺とベルダンディーに、スクルドの眉は一瞬八の字に曲がった後、すぐに怒髪天を衝く勢いで釣り上がった。
「ちょっと目を離した隙にぃ! お姉さまにナニしてんのよ! このド変態!」
ばんぺいくん! とスクルドが叫んで、俺は立ち上がった。
「キスくらいしてもいいじゃないか!」
「よくない! 私の許可なしでお姉さまとイチャつくの禁止なんだから!」
「そんな無茶な!」
バンペイくんが部屋に飛び込んでくる。案の定、棍棒を振り回して追いかけてきたので、俺は居間中を走り回った。
「あらあら」
「なかなか戻ってこないと思ったら、楽しそうなことになってるじゃない」
ウルドまで戻ってきて、騒動に加わろうとしている。
「待ちなさい、螢一!」
「なんでこうなるんだ!」
「今日も我が家はにぎやかですね、螢一さん」
そう言って、俺の女神さまは今日も笑顔の花を咲かせた。
了