ご注意ください。
目を閉じ、眠りにつく度、吐き気を催すような悪夢を見る。
幼い頃から苦楽を共にし、日々高め合い、背中を預けあっていた幼馴染が、次第に態度を変えていく夢だ。
それはとてもリアルで、明確で、何よりも鮮明な夢として刻まれていく。
始まりは、とある男が自分たちの管轄に配属になった頃だ。朱音に馴れ馴れしく接し、しかし九郎には敵対的な彼に不信感を覚えた。
「はぁ……あのねぇ、九郎。彼は派遣とはいえ隊長なのよ? 出世頭間違いなしなんだから、仲良くして損は無いでしょ」
しかし、それを伝えても朱音には一切響かなかった。
普段の彼女は、出世やら何やらに拘る人間では無い。それは、長い時間を過ごしてきたからよく分かっていたが、その時はどうにも様子がおかしかったのだ。
それからと言うもの、ことあるごとに朱音は男の任務に同伴するようになった。
「んっ、ね~えぇ、隊長♡ アタシぃ、新しい水着買ったんだけどぉ♡ 今度一緒に、ナイトプールでも……って、何見てんのよ九朗。アンタに見せる気とか更々ないから、あっち行っててくれる?」
いつぞやのことか、夜通しの任務を終えて報告に行けば、朱音は隊長へと擦り寄り、甘い声で媚びていた。その恰好は、戦闘装束であるレオタードにジャケットとショートパンツを纏ったものでは無かった。
それこそ、一昔前の商売女のような、ミッチリ♡とした肢体を浮き出たせるエナメル生地のボディコンのような格好だ。
太腿や背中も露出し、九郎には冷たい視線を向けてあしらってきたのだ。
「あっ、九郎。後でアタシと隊長の部屋に来てくれる?理由とかいいでしょ。雑用係のアンタは言うこと聞いてればいいのよ」
ある日のことだ。朱音は不機嫌なことを隠さず、九郎を呼び付けてきた。既に前のような凛々しさや、強気ながらも優しい空気は消えてなくなり、単純に態度の悪い女性になってしまっていた。
学校生活でも敬遠され、隊長と共にいることが常となり、任務も全て九郎がこなしていたのだ。
「じゅず、んれぁ……♡ あっ、やっと来たじゃない♡ ほら隊長、言ったでしょ……じゅるっ、じゅずぅ……♡ 九郎は、アタシの言いなりだって♡ んれぁ……っはぁ、おちんぽステキぃ……♡」
呼び出された先で見せつけられたのは、ガニ股蹲踞という格好で、テカついた下着を見せつけた朱音の姿だった。
しかも、その見知った美貌は隊長の股座へと埋まり、勃起した肉棒へしゃぶりついている。
さすがの九郎も、疲弊より先に驚愕、そして怒りが勝った。声を荒らげ、魔鍵を使ってまで刃を構える。
「ねぇ、あんた何やってんの?隊長に向かってその態度……許されるわけないでしょ」
しかし、返ってきたのは朱音から放たれた無情な弾丸だった。
頬を掠めたのは九郎が直前に避けたからで、本来なら脳天を撃ち抜いてもおかしくなかった。
この時、朱音は本気で九郎を射殺しようとしたのだ。
なぜ、どうして、と言葉を紡ごうとするより、九郎は朱音の痴態を見せつけられていく。
「んぃっ……あっ、はぁ♡ ほら、見えるでしょ……♡ 隊長は、アンタと違ってぇ……っ♡ 強くて、たくましい、おちんぽなんだからぁ……♡ 陰気で、根暗な九郎よりもぉ……♡ イケメンおちんぽに靡くの、当たり前でしょ♡」
チロチロ♡と舌を蠢かせ、隊長にキスをねだりながら膝へ乗り、愛液で湿ったショーツに肉棒が添えられた。
クチュクチュ♡と音が響き、クロッチをずらして膣口を見せてくる。
そこは既に黒ずみ、使い古された後のようだった。何度も、無遠慮に、乱雑にされた、使い捨ての娼婦のように扱われたようだった。
「だからさぁ……そこで見てなさいよ♡ アタシみたいなぁ……雄様に媚びるしかない、雑魚すぎるクソ雌がぁ♡ おちんぽハメて、潮ふきアクメをキメるとこ……ろぉ♡」
背面座位、というのだと知ったのは少し後だ。隊長に肉棒を突き立てられ、ドップンッ♡と乳肉を弾ませた朱音は、情けない声を上げながら愛液を噴きだした。
そのまま肉厚で、鍛えられていたはずのだらしない太腿を掴まれると、激しいピストンがパンパンッ♡と乾いた音を響かせていった。
「ふっ、んひっ……♡ はっ、あぁんっ♡ おちんぽ、おちんぽぉ……っ♡ ひぅっ、ふぅ……ふぅ……っ♡ もう、任務なんかよりぃ……隊長のおちんぽの方が、大切なのぉ♡」
朱音が腰をくねらせ、ユサユサ♡と乳肉を揺らしながら肉棒を咥えこむ。甘く媚びた喘ぎ声を零し、ドチュンッ♡と子宮口まで突かれる彼女には、立ち尽くす九朗のことなど視界から消えていた。
気が付けば展開していた魔鍵は消え失せ、それと共に制止しようとする気概すら九朗から失せていた。
もう、自分が憧れていた朱音はここにはいないのだと、消えてなくなってしまったのだと理解したからだ。
絶望と喪失感が心中を支配し、ただ消沈したままでその場を離れた。転属願を出し、どこか遠くへと離れてしまいたかった。
それから数か月後、朱音は任務中に命を落とし、隊長が別の女性と結婚したという報せが、九朗に更なる痛みを刻みつけるのだが、少なくとも当時は逃げることしか考えられなかったのだ。
**********
目を覚ました九郎が真っ先に向かったのは、一人暮らしをしているアパートのトイレだった。しかし目的は用を足すのではない。
胃の奥から迫り上がってくるナニカを、便器の中へと吐き出すためだ。
原因は分かっている。ふとした時、僅かでも気を緩めた時に見る悪夢のせいだ。
「落ち着け……大丈夫……今度こそ、大丈夫だから……」
大切な人が奪われ、慰みものにされ、命を落とす悪夢は、どこまでもリアルで、まるで記憶の追体験のようだった。
いや、実際にそうだったのだろう。
九郎は、あの悪夢が、実際に起こってしまったことなのだと、本能的に直感している。
ギチリと奥歯を噛み締め、自分への不甲斐なさと苛立ちを抑え込みながら冷静さを取り戻した。
「っと……あぁ、くそ……やっぱりか」
口元を拭い、吐瀉物をトイレに流しながら立ち上がると、下半身の奥。
下腹部から股座にかけて、重く、脈動する熱を感じ取った。舌打ちをしながら戸棚から薬を取り、指定の個数を摂取する。これで少しは落ち着くはずだが、悪夢の不快感と共にくる下半身からの苛立ちは、目覚めとしては最悪と言ってよかった。
「ふぅ……ふぅ……っし、なんとか……なんとか、だな……」
落ち着きを取り戻した九郎は、外出着に着替えながら眠気を飛ばそうと目を擦る。
昨夜はあの後、朱音と共に日の出近くまで巡回を続けた。
この区域は魔妖の発生率はそこまで高くないが、担当魔鍵師は九郎と朱音、そしてもう一人しかいない。その上、大学生としての生活もあるのだから、ブラック企業そのものと言えるだろう。
すこしの休憩を終え目を覚ますと、適当な荷物を持って部屋を出る。通学はバイクと決めているが、今日は止めておこうかと思考すると、駐車場に見知った人影があった。
「お、やっと出てきたわね。この寝坊助」
「朱音……」
名を呼ばれた彼女、朱音は昨夜のボディスーツを基調とした、身体のラインを浮き出たせる戦闘服は着ていない。大き目な黒のワンピースにジャケットという、春先に相応しいラフなファッションをしていた。赤みのあるショートヘアを軽く纏め、首にはシンプルなチョーカーを着けている。
幼馴染という贔屓目を抜きにしても、芸能界に出れば上位へ躍り出るであろう可憐さは九朗を見惚れさせるが、悪夢を思い出し胃の奥を痛ませた。
「朝からどうしたのさ。卵とかは産んでないけど」
「鶏と思ってきてるわけじゃないわよ。相変わらず変なこと言うわね……」
悪夢に苛まれたことを誤魔化すようにふざけるていると、溜息を吐く朱音がバイクに寄りかかっていることに九朗は気が付いた。
しかもその手にはヘルメットまで用意されており、当然ながらバイクは九朗のモノにほからなかった。そして何より、九朗がバイクに乗ろうとすると、あたりまえのように後ろへ乗ってくるのだ。
「タンデム、嫌いじゃなかったっけ?」
「それはアンタが一年経ってないのにしようとしたからよ。もうそれも終わったし。満員電車とかバス使うくらいなら、こっちの方がマシ」
都合よく使われている気もしたが、使っているバイクは大型で全く問題もない。むしろ、これから任務やら何やらでタンデムする機会も増えるだろうと考えれば、いい練習になる。
エンジンをかけると、振動で僅かに残っていた眠気も消える。そして、それと同時に朱音が九郎の腰へ手を回し、ギュムリ♥と背中へ柔らかく、弾力のあるモノをおしつけてきた。
「くぉっ……とぉ?」
「んっ……何変な声出してんのよ。ほらっさっさとイく!」
ヘルメットやエンジン音に遮られないよう、朱音が語気を強くしてくる。
しかし、そのせいでより密着度が高くなり、背中により強く、ギュムゥ……ッ♥と押し付けられた肉果実の感触が強くなった。
下半身の熱が重くなるのを感じたが、ヘルメットを被り抑え込む。苛立ちや不快感と合わさったソレが、背中の感触でマシになるような気がするが、きっとそれも気の所為なのだろう。
**********
開城大学。都心から少し離れた私立の大学は、在籍する学生数は多く、学部も多岐にわたり、どんな人間がいるのかをすべて把握するものはいないと言っても過言ではない。
それ故に、九朗がバイクでキャンパスに訪れても、注目されることは全くない。しかし、それは彼が一人の場合だ。今は後ろに、凛々しくも可憐な美女を乗せているのだから、どうしてもある程度の注目は集めてしまう。
「流石に目立つな、相変わらず」
「好きで目立ってるわけじゃないわよ。こんなの」
神楽坂朱音と言えば、この大学においてはその美貌と人柄の良さから、知名度と人気を博している女子大生だ。サークルや委員会にも所属せず、唯一お近づきになる手立てと言えばゼミになるのだが、そこには九朗と朱音の二人しかいない不人気ゼミとなっている。
というのも、審査が非常に厳しく、簡単には入れないという裏事情があるのだが。
ソレはソレとして、彼女へと集まる視線は羨望と恋慕、そしてスラリと伸び、程よく鍛えられた脚線美への情欲と様々な感情が籠っている。それこそ、隣にいる九朗など無視してしまうほどにだ。
「で、今日は何か言うことないの?」
ふと、隣を歩いていたはずの朱音が立ち止まり、ワンピースの裾を払った。
仏頂面に加え、端的過ぎる質問の仕方は、下手をすれば相手の怒りを買う。しかし朱音ほどの美女がすれば、それすらも様になるのだから不思議な話だ。
では、言うこととは何なのか。少し考え、朱音を上から下まで眺めた九朗は、一つ思い当ることがあった。
「チョーカー、似合ってるよ」
「……まっ、遅れたけど正解したから許したげるわ」
口元に不敵な笑みを浮かべながらと歩を再開する。朱音が嬉しそうなことに、九朗は普段からの試験が成功したことに一安心する。数年前から行っているこれは、九朗が他人への気配りを忘れないためのものだ。
日々の違いや、気に入った点のコメントをするという端的なモノだが、少なくとも
並んで入っていくのは、広い大学内でも特に寂れた研究棟だ。人の気配は殆ど無く、他研究棟と比べて賑わいも華やかさも皆無だった。老朽化が進み、大き目の地震でも起これば倒壊しそうな建物に近づきたいと思う人間は少ないだろう。
しかし、朱音も九朗も間違えてるわけではない。むしろ、大学に通う理由など、ここにしか存在していないのだ。
「先生に会ったのって何年振りだっけ……五年ぶりとか?」
「そんなわけないでしょ。三日とかそんなよ。あの人、基本的にここにいるんだから」
床の軋む音と二人の話声が静かすぎる研究棟に響く。朱音の指摘は言われるまでも無かったが、妙に今は静寂が心地悪く、下半身の熱と相まってふざけたことを口にしてしまったのだ。
さっさと話しを終わらせたいと思う程度には、昨夜から九朗の身体は嫌な熱をため込んでしまっている。
「先生、神楽坂です。神崎も一緒です……先生?」
朱音がノックしたのは『神城ゼミ』と札のかけられた研究室だ。扉の時点で既に古びており、返事がないことが余計に不気味さを醸し出している。
沈黙が一秒、二秒と続いたのち、バラバラとものが落ちる音と、足音の日達が聞こえてきた。それも悪態のような呻き声もセットでだ。
「だいじょぶそうね。どうせ寝てたか研究かでしょ」
「言い方よ……まぁ、たぶんそうだろうけど」
朱音と共に苦笑いを零す。
今すぐ扉を開けて入っても良かったが、何とかしてこちらに来ようよしているのが分かる。ならば待ってみようか、と目で伝え合っていると、勢いよく扉が引かれ、人影が顔を出した。
それは、一人の美女の姿だった。
研究棟に差し込む日光に照らされたブラウンの髪は、手入れがされていなくとも艶を帯びている。
眼鏡をかけた大きな瞳は翡翠色に光に加え、知的さと色気を纏わせ、二人の訪問者を見つめていた。
「いやぁ、すまないすまない。すこし研究に熱が入ってな……入って良いぞ、若者二人」
口元に不敵な笑みを浮かべ、整った形の口に煙草をくわえると、その胸元でドップンッ♥と熟した肉の果実が弾んだ。羽織った白衣の下には白い肌が晒され、染み一つない耽美さと艶やかさ、そして健康的で淫猥な肉付が見せつけられている。
では、なぜそんなところまで見ることが出来たのか。
答えは簡単だ。
「服を着てください! 千空先生!」
「ん? ああ、そう言えば昨晩はシャワーを浴びて資料を見てそのまま……」
「いいから! 九朗はちょっと待ってなさい!」
「おいおい神楽坂、いまさら」
「いいから!」
九朗の返事を待つことも無く、ひたすら研究室の主、
正直なところ、助かったと言わざるを得ない。二人が何やら騒いでいるのを聞きながら、窓辺まで下がって前屈みになる。
これ以上は本当に不味いかもしれない。
そう思いながら、ひたすらに歯を食いしばり、息を整えるしかできなかった。
リメイク前からかなりキャラ変した千空先生です