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先生は、とても立派な人だった。
初めてシャーレのお手伝いのときなんて、私はニンニクラーメンを平らげてから足を運んだ。先生は最初、ニンニクの強烈な臭いに顔をしかめそうになったけれど、それを耐えて、私と一緒に仕事をした。あのときは先生がどんな人物であるのかが分からずに面と向かってしまったこともあって、少し、恥ずかしい思い出になっている。その次に、ニンニクまみれになってシャーレにきたときには、流石に身体のことを案じたのか、事前に買ってきたリンゴをたくさんご馳走してくれた。市松模様、矢尻模様、加えてウサギの形、色々な形のそれは質素なお皿には似つかわしくない位、華やかだった。
「随分とお上手ですね、先生。いただくのが惜しくなってしまいそうです☆」
「ハハハ……、でも、リンゴにとっては食べてもらうのが幸せかもね」
「あ、え、えぇ。そうですね、惜しいですがお言葉に甘えて」
ラーメンでベットリと塗りたくられた口が、頬張ったリンゴによってどんどん綺麗になっていく。食べれば食べる程、喉越しもスッキリする。普段から食べているリンゴなのに、「先生が剝いてくれた」という事実だけでいつもより美味しく思える。今、隣にいる先生と一緒に食事をすればこの感動をもっと増すに違いないのかな。
「ごちそうさまでした~☆……このリンゴの切り方、どなたから教わりましたか?」
独身にしては慣れた手つきで切っていた。家族がいるのかもしれない。
「それはね……、妻から教わったんだ。今はいないけどね」
「いない、ですか?……無理はなさら」
「大丈夫だよ。過ぎたことだし」
「で、ですけど……」
「思えば、生徒の皆に過去を話したことも無かったな。折角だし、昔話でもしようかな。丁度、仕事も終わったことだし」
「……ありがとうございます、先生」
「まぁ、妻の遼花は医者を目指していてね、子どもが食べる病院食をもっと美味しく作るにはどうするかとか、より見栄えのよい盛り付けは何かとか、暇なときには試行錯誤していたよ。ときには机に倒れて泥のように眠ってしまうことなんてしょっちゅうあったなぁ」
……病院食。確かに、噂で聞く限りは患者の健康を守るためにも味が薄めで質素なものが多いらしい。先生の奥さんは現場に立つ医者の一人としてその問題の解決に自分なりの答えを出そうとしていた。きっと、その人の作る料理も美味しいのかな。
「それで、遼花の料理を近くで見ている内に、包丁や調味料、食器、布巾の扱い方、味付けやアレンジも気づいたら真似してしまうようになっていたんだ。遼花がいなくなってしまってからも、息子が大きくなってからも、ついついそうしてしまうんだ。やっぱ、若さが段々となくなってきていることを実感するよ」
「御冗談を仰らないでください。先生はまだまだお若いですよ」
「……ったく、俺はアラフォーだぞ。この前なんてアスナたちから「メイド服着てみないか」と誘われたときはその場から逃げようかと思ったよ」
「ですけど、実際にやってみないと分かりませんよ、そういうことは。さてと、ずっと閉めっぱなしだったので、少し、換気してもよろしいですか?」
「いいよ」
……ん?「息子が大きくなってから」?……なるほど。
「先生、息子さんがいらっしゃるんですか?」
「あぁ、いるよ。今日は校外学習で自宅にはいないけれど」
「あんなに素敵なリンゴを切ってくださる先生と一緒だなんて、とても羨ましいです」
「どうだか……。いつも仕事で孤食を強いてしまっているからなぁ。それがどうも気がかりだよ。それと……、いや、やめよう」
「どうされました?先日からうわ、……何でもないです」
先生は先程までよく話す口を堅く閉ざした。先日から噂になっている、シャーレの不祥事について、先生にも思うところがあったのだろうか。あぁ、部屋の空気が重苦しい。とても耐えられないので、私は部屋の窓を少し乱暴に開けた。外の乾いた空気によって、すぐに部屋が満たされる。
「あぁ、涼しいですね。季節も変わり目、ですかね」
「そうだろうね。ただ、ゆっくりとそれを感じられないかもな」
「何か、用事でもございますか?」
「あぁ、今度、トリニティ自治区で長く出張する用事ができてね。何でも、重要な式典だから気も抜いてられないよ」
「気負いならさなくて大丈夫です♡お悩みがありましたら、いつでも私たち美食研究会でご案内いたします!」
「それはありがたいな。今度は息子と一緒に伺おうかな」
あぁ、何て素敵な笑顔なんだろう。ずっと、その笑顔も、料理の腕前も、優しさも感じられる場所にいたい。
そう、思っていた、のに。
エデン条約の騒動から数週間が経ち、先生とお食事のお誘いを楽しみにしていたその前日。脈絡もなく、その連絡はやってきた。
――すまない。急な用事ができてしまったんだ。D.U.自治区のラーメン巡りはまた今度にしない?お店はいつでも行けるから。
いつも通り、自宅から帰ってきたとき、モモトークにこの文面が出てきた。先生は余程のことがない限り、約束を反故するなんてしない。あれだけ多くの自治区の生徒と関わることが多い人なのに、スケジュール立てに隙がないのはすごい。その先生が反故するなんて、最初は信じられなかった。
昔、背伸びして読み進めた小説で、恋敵に恐れた主人公が食事の喉が通らない様子を「鉛を呑み込むような」と例えていた気がする。その日の私の夕食はまさにそうだった。回鍋肉はただ熱いだけの食材のなれの果て、ご飯は温いだけの食べ物、漬物は塩気が少なく感じられた。不味い、というわけではない。口の中でしっかり噛めるし、呑み込むことだってできる。ただ、幸せな気分にはなれない。料理の形をした食材が胃袋にのしのしと重なる度に苦しくなってくる。こんなときに限って、子どものように大声で泣くことも、肚の中をすべてぶちまけることもできない、自分の身体の頑丈さが憎たらしくなる。
その日は、お腹はすぐに別腹へ変わったけれど、とてもそんな気分ではなかった。
数日後、私はデリヘルを指名した。口座のお金はそんなに貯まっているわけではない。ただ、頼まずにはいられなかった。
その日はあまり本指名を受けない、塩対応の中肉中背のキャストだった。顔立ちも平凡でとても印象には残らない。加えて、女尊男卑をこじらせた、いわゆる地雷キャストである。彼とのプレイをしたとき、先生のあの文面が忘れられず、あまりイくことができなかった。しかも、自分のザーメンをやたら飲ませようとしてくる。私は「ごっくん」が好きだと書いたプロフィール欄で知った気分になっているのだろう。彼は盛る畜生のように、私の身体を愛撫しては自分に奉仕するように迫ってきた。
当然、彼のザーメンはサラサラしている上に、とても不味い。喉越しもあっさりとしていて、美味しくもない風味が身体へと流れてしまう。言うまでもないが、私の好きな、こってりとしていて、粘ついて、苦みと甘みを一緒に感じられるザーメンとは程遠い。こうしている間にも、先生は仕事をこなしている。その事実を想像するだけで憎たらしくも、悔しくもなった。
先生との約束を反故にされた私の毎日は、味覚を失ったようだった。景色を見ることはできる。吹いてくる風や大地を踏みしめる感触だって感じられる。遠くの銃声や人々の声も聴こえる。硝煙や火薬、香水の香りだって感じられる。ただし、味わいはない。自分の身体へ深く響くような感覚は、いつしか消えてしまった。
味わいたい。幸せも、大切な時間も、あらゆる楽しいことも。
だからかもしれない。私は学校も、美食研究会も無理矢理休んで、シャーレのあるD.U.自治区へ一人で出かけた。お財布にはたくさんのお金とクレジットカード、衣服は最低限の下着だけ。いつものシルクの下着は、とても持ち歩く気分にはなれなかった。目的はない。ただ、何もかもを忘れて、やり場のない自分の身体を慰めたかった。いや、慰めても大したことにはならないだろうけど。
D.U.自治区自治区には多くのお店がある。大手チェーンのお店、ハルナやフウカさんが喜びそうな個人営業のお店。とても美味しそうだ。でも、今の私がそれらの料理を食べても大して美味しく食べられないかもしれない。あの回鍋肉のように、加工された食材のなれの果てを食べるなんてごめんだ。それでも、お腹は生きることを求めて必死に鳴いている。
これからどうしようかと悩んでいたときだ。
「ア、 アカリ?あんた、今日は学校じゃないの……?」
聴きなれた声が後ろから聴こえる。給食部のフウカさんだ。
「……おやおや、こんなところでお会いできるとは。これも何かの縁ですかね?」
後ろを振り向いた。そこには、ラフな格好のフウカさん、身体が目立つ白いシャツと青いスカートのジュリさん、そして、真ん中にいる、アザのある顔の男の子。
「あ、あの、アカリさん?今日はどうしてここにいらっしゃるのですか?」
「どうして、ですか?……フフフ、美食が私を呼んでいた、からですかね」
「素直に学校を休んだといえばいいじゃない、ったく……」
先程から気になっている、男の子にも声を掛けてみようかしら。
「こんにちは。私はそちらのお姉さんのお友達、鰐渕アカリです。よろしくお願いしますね」
「赤染玲央、です。よ、よろしく、お願いします……」
その男の子の顔立ちは近くで見ると、どことなく、先生に似ていた。特に、迷いのない、それでいて優しさのある眼差しが先生を思い出させる。
「久しぶりの外食、と行きたいところだけどお店が全く見つからないのよね。自炊に頼りすぎるのも考えものなのかも」
「でしたら、私もお手伝いしましょうか?この辺りのお店はよく知ってますから」
「丁度、11時に入った頃ですね。玲央君は何が食べたいですか?」
「え、えと……、そうだね。ラーメンが食べたいな」
上がっていた口角が下を向いた。まだ暑さの衰えも知らない天気にも関わらず、背筋が凝り固まったような気分になる。
「どうしたの?」
「いえ、な、何でもありませんよ。さぁ、美味しい美食の旅へ、しゅっぱ~~つ♡」
少しばかり虚勢を張って、私は3人を導いた。冷や汗と脂汗が服の中を伝う。
小さいながらも、この近辺では歴史のあるお店に決めた。お店の前の古びた看板には「らぁめん 陳寿」とかすれた文字が刻まれている。このお店は以前、美食研究会の皆で食べに行ったことがある。そのときは看板メニューの「赤壁担々最上激辛大盛マシマシ」を、普段は評価の厳しいハルナがこれでもかと絶賛していたのを覚えている。今の私にとっては、食べてほしい人はこの場にいないのが残念だ。
「お金のことは心配しないでくださいね。私が全部お支払いしますから」
現金のみの対応だったので、財布からお札を取り出す。私は「赤壁担々最上激辛大盛マシマシ」、フウカさんは「甘寧海鮮ラーメン」、ジュリさんは「趙雲醤油ラーメン」、そして玲央君は「張梁豚骨ラーメン」を注文した。
幸い、お昼のピークには早いこともあって料理はすぐに来た。最初こそ、フウカさんとジュリさんは外食ということもあって警戒してはいたけれど、美味しそうに盛られたラーメンを見るや否や、あっさりと見惚れていた。
「あら?フウカさんも外食の良さに気づきました?」
「あ、い、いや、その……。まぁ、偶には悪くないわね」
そうして軽口を叩いている中、玲央君は私に小皿を差し出してきた。私の担々麵に興味があるのかしら。
「あら、あらあら?玲央君も、私の担々麵を食べたいですか?」
「……うん。アカリ姉さんがすごく美味しそうに食べているから、気になったの」
「な、何をしてるの⁈玲央君、それはすごく辛いのよ!流石に食べるのはまだ」
「私は構いませんよ。その代わり、玲央君のラーメンも少しもらいますね♡」
「せ、先輩。ここは無理をしない範囲で玲央君に食べさせるのがいいのではないでしょうか……?」
「……仕方ないわね。玲央君、無茶はしないようにね」
「うん、分かった」
「ありがとう、ございます。それじゃあ、この量をいただきますね」
……嬉しかった。先生の面影を感じさせる一人息子の玲央君と違う料理を互いにあげられた。先生とはできなかったことが、玲央君のおかげで叶えることができた。とても小さくて、些細なことかもしれないけれども、今の私にとって幸せだった。
「やっと見つけたぞ、鰐渕アカリィ!」
入口の方向から、大きな声が聴こえた。見ると、この地域では珍しくないスケバンたちがいた。この顔触れ、振る舞い、使う武器……、どこかで見覚えがあるような。
「とぼけても無駄だ。ウチらのシマの飯屋を破壊してくれたそうじゃないの、えぇ?落とし前つけてもらおうか?」
完食したばかりのこちらのことも考えずに、ズケズケと因縁づけては迫ってくる。他人が食事を終えて幸せな心持ちになっているというのに、これはかなり頭に来る。
「……フウカさん。ジュリさんと玲央君、店員さんを別の場所へ避難させてください。ここは私が相手します……!」
「わ、分かったわ。皆さん、こちらです!」
フウカさんが避難の指示を出してその場を離れたのを見てから、私は銃を構えた。
「……実は私、無礼な皆さんにすこーしだけ、怒ってますよ♡」
銃弾の雨をスケバンたちにまき散らす。
後方の装填をする敵には榴弾を与える。
近づいてきた敵を吹き飛ばしては武器を鹵獲して弾切れになるまで使い倒す。
使えなくなった武器はまた近づいてきた敵の銃に引っかけて隙を作る。
……この繰り返しをする内に、その場に立っているスケバンたちは誰一人としていなくなった。ほとんどがお店の外へ上手く導いたこともあって、店内に被害もない。そうなったら、次はフウカさんたちと合流しなくては。
フウカさんたちの元へ着いたとき、想定していなかった事態が起きていた。……別動隊と思われるスケバンたちによって、フウカさんたちが抑えられていた。
「一足遅かったな!降伏するなら武器を渡しな!」
「このガキ、知ってるぜ!あのシャーレの先生ってヤツのガキだろ?マジでチビだなぁ」
グリップを握る手に力がこもった。ここで武器を差し出したら彼女たちは私を助けるだろうか?いや、そんなことはない。武器を捨てたそのときに「あんなの守ると思ったのかぁ!」と狙撃するに違いない。ここは従うふりをして、隙を見せたときにつついてしまおう。
「な、何をするの?僕、何も悪いことはしてないのに?」
「悪いこと、ねぇ。私たち、噂でしか聞いたことがないけどさ、アンタ、お姉さんに抱かれたことがあるらしいな。何なら、あたしらがヤリチンの英才教育をしてやろうか?あひゃひゃひゃ!」
――玲央君が誰かに抱かれた?
嘘だ、そんなの、ありえない。先生は、玲央君が犯されてもなお放っておいたというの……?信じられない、けれどもそう思わずにはいられなかった。
周りがどうなるかは気にすることなんてできない。私は榴弾をさらに一発放った。空中へ飛び出したそれは、昼間の日差しに輝いたと思うと悍ましい音と爆炎が迫ってきた。
……辺り一帯にはドス黒い煙、下でチロチロと燃える炎、彷徨うように舞い上がる火の粉。立っている人は誰もいない。
あらあら、意識がある人がここにいる。気絶するフウカさんの下にいる玲央君だ。彼は自分の身に何が起きたのか分からず、フウカさんの腋の下でうずくまっている。
「……さぁて、これで邪魔者はいなくなりましたね。お姉さんと一緒に来てくれますか?」
小さな少年は顔の右側をひどく歪ませた。
「何、なの……?何がどうなってるの?ねぇ、フウカお姉ちゃんたちは悪いことをしてないのにどうしてこんなことをするの?」
「何で、ですか……?少し、お話したいことがあるからです。そ、れ、も、私自身にとってとても大切なことですし。玲央君には拒否権なんてありませんよ」
「やだ、やめてよ!連れてかないで!」
私は倒れているフウカさんから玲央君を力ずくで引き剥がした。丁度、嫌がる家畜を屠殺場へ連れて行くように。
「嫌がっても無駄ですよ……♡」
爆発のあったその場所から私たちは離れていった。足元の短い影も2つだけだった。
[newpage]
「さぁてと、これでもう、逃げられませんよ。こうして、お手手も足も掴みましたからね」
「ねぇ、やめてよ。お願いだってば。何を、するの……?」
私は今、近くの廃墟にいる。この廃墟についてはあまり知らないが、設備そのものは古くはないことから、住民がいなくなってそんなに経っていないようだ。まだ艶のあるその床に、玲央君を押し倒している。どうしても尋ねたいことを「しっかりと」答えられたら……、そのときはそのときで考えよう。
「何をするも何も……、お聞きしたいことがあるといいましたよ。玲央君はそれに答えてくれればいいだけです☆」
「……え?」
「そうですね……、さっき、スケバ、いや、あの怖いお姉さんたちが言っていた、「お姉さんに抱かれた」とはどういうことですか?」
「ア、 アヤネお姉ちゃんの、こと……?」
「アヤネ、ですか……。その子はどんな女の子でしたか?」
「え、えと、全部が怖かった僕にも優しく接してくれて、それで……」
「それで?もしかして、……そのアヤネさんに抱かれたんですね?」
「だ、抱く?」
「ご存じじゃないんですね。抱く、というのはエッチすることですよ」
「……そっか。アヤネお姉ちゃん、辛かったんだね……」
「辛い?何のことですか?」
いつの間にか、指に力が入っていた。彼を抱いたアヤネという少女が許せない。
「お姉ちゃんは、男の子が好きだって言ってたんだ。でも皆はそれを悪いことって決めつけてばかり。……分かんない。やっぱり、分かんないよ。僕は元気になれたのに、ずっと一緒にいたいだけなのに、どうしてアヤネお姉ちゃんは追いつめられたのかな?」
何だ、結局は自分のことが甘いだけの少女か。この所、私は先生に失望させられているというのに、彼女は自分のことしか考えていない。先生がしでかしたことはとても大人として、父親として許せないはずの行いだ。それなのに、それなのに……。玲央君の顔を見ることすら忌々しく思えてしまう。決して、先生本人ではない。でも、でも、先生への欲と憤りが、もう、止められない。
「何ででしょうかね……?きっと、アヤネさんは自分勝手だったからですよ。自分勝手の悪い子はいつだってお仕置きがやってきますから。……それに、そのアヤネさんを守ろうとする玲央君だって、悪い子でもあるんですよ?」
「待って、ねぇ、待ってよ。何を言ってるのか」
「説明はし、ま、せん♡自分勝手なことをしてると、お仕置きされますよ。このように!」
私は玲央君の服を無理矢理脱がせた。シャツ、靴、靴下、ズボン。身体を守る服はパンツだけ。ジュンコさんにも負けそうな背丈の身体は、小麦色の肌、穢れを知らない真っ白な肌に占められている。それを見れば見る程、自分の湧き上がる気持ちが抑えられなくなってくる。
――アヤネが愛したこの身体を滅茶苦茶にしたい、と。
「うふふ♪パンツだけの、可愛い姿になっちゃいましたね。ありのままの姿、とても大好きですよ、食べちゃいたい位に♡」
「は、恥ずかしい……。そ、その、エッチするときは無理や」
耳障りな言葉を話そうとした玲央君の口に、私は歯と舌をねじ込んだ。歯が当たる感触、小さいながらも健気な舌が絡み合う感触が伝わってくる。
「ッパァ……。野暮ったい文句は、禁止ですよ。皆が皆、そういう綺麗事を守るとは限りませんからね。それじゃあ、玲央君の可愛いスリムボディ、……いただきます♡」
傷一つもない玲央君の身体を、私は舌と歯で蹂躙した。
ぜい肉のない、スッキリした首筋。
玉のような汗が噴き出る胸板。
背中から浮き出る肩甲骨。
臓物で激しく動くお腹。
赤らめた細いお尻。
唾液で濡れた舌で舐め回し、鈍そうなところで歯を立てると、動物のように身体がビクンと動く。彼の中では、アヤネと私の2人がひしめき合っているのだろう。そう思うと、尚更、先生の分も彼を蹂躙したくなってくる。
私も身体が火照ってきたみたいだ。制服もシャツも、スカートもタイツも、靴も靴下も、全て脱ぎ捨てた。家族やデリヘルのキャスト以外には見せなかった身体に、玲央君は釘付けだった。
「もう、やめて……。こんなのあんまりだよ」
「あらぁ?そんなことを言ってるのに、ここ、元気になってますよ?まだ、お仕置きが足りないみたいですねぇ……」
順調だ。アヤネが近くにいたら、是非とも見せたい景色が目の前にある。自分が身勝手な人間であったことを思い知らせてやりたい。ここは無人の廃屋。何をしても咎める相手はいない。もちろん、私を止める人物も。
遮る服もなく、露わになったおっぱいで彼を圧し潰してみた。男の子にはない、私たち女だけの身体。それで本来は力では勝るはずの異性の自由を奪うと、先程までの抵抗も一切しなくなる。抵抗も虚しいと気づくからか、生きたいと願う本能がそうさせるのか、代わりに汗ばんで酸っぱくなったおっぱいに甘えてくる。玲央君も例外ではなかった。私よりも小さな口で頭と近い大きさのおっぱいを懸命に舐め回している。こんなにも小さいのに雄としての性が芽生えているのだ。このまま彼の身体に私そのものを刻みつけてしまいたい。
「ウフフ……、おっぱいに甘える姿、動物さんのようで素敵でしたよ♡」
「は、放して。もぉ、身体が、耐えら」
「ダメです☆これから玲央君の美味しいザーメンをいただくまではやめませんよ」
フウカさんと一緒にいた以上、それなりに健康的な生活を送っているはずだ。フェラやドッキングを成功させるためにも、下拵えをしなくては。
「はーい、見てください。ここが、女の子の大切な、おまんこでーす♡」
汗ばんだ身体を動かし、秘部を玲央君に見せた。玲央君の男の子たる場所は疲弊した様子を見せていない。
「え、えと……、ここを舐めればいいの?」
「ご明察です♡そんなに恥ずかしがらないでくださいね。アヤネさんにしてくれたように、私のもお口でチュッチュしてくれますか?」
「うん、分かった」
四つん這いになった彼は、言われた通りにクンニを始めた。日頃から利用しているデリヘルのキャストは的確に口淫してくるが、玲央君は小さな舌でひだをかき回し、敏感なひなさきも丸っこい歯に当ててくる。しかもそれらをがむしゃらにやることもあって、味変をするような新鮮さがある。それにつれて、私の蜜壺は少しずつ、着実に玲央君を迎え入れる準備が進みつつあった。
「ンフゥ……、気持ちよかったですよ。最後に、その元気なおちんちん、私と合体させましょうか☆さぁ……、……?」
仰向けにした玲央君を見ると、私の燃え滾る心が急に冷えてしまった。いや、冷えたというより、何と言えばいいのだろう……?えと、いや、何だ、何なんだ、何なの……?手が止まってしまい、頭がズンと重くなる。次第に、鼻先もツンと痛い感触が伝わってくる。
「どうしたの……?何で、泣いているの?」
頬に手を当てる。濡れていた。しかも、鼻も何かが詰まっていて息がしづらい。あぁ、私は泣いているみたいだ。でも、何でだろう……?分からない。どうして?
「……何か、嫌なことでもあった?」
「その目で見ないでください。私は、その目を見ると、先生を思い出してしまって、それで……。もう、どうすればいいんですかね……、先生には先生の時間があるというのに、私は、私は……」
……あぁ、そうか。私が許せなかったのは先生だけだった。なのに、なのに、関係のない玲央君を無理矢理巻き込ませてしまったんだ。考えもせずに動いてしまう自分への嫌悪が増してくる。アヤネへの復讐どころではなかった。玲央君への愛を貫いた彼女と違い、私は先生の幻影を彼へ勝手に重ねてしまったんだ。
涕で潤んでぼやけた視界で、何かが動いた。
赤みを帯びた肌が動いている。背中に腕の感触が伝わってくる。……玲央君が抱きしめてくれているみたいだ。
「泣かないで、アカリお姉ちゃん。お父さんのことを嫌いにならないで。お姉ちゃんたちのためにも、僕のためにもお仕事を頑張っているんだって。だから、その、……僕もエッチするから、一緒にシよ?」
……やっぱり、息子であっても先生とは違うな。先生には打ち明けられない想いも憎悪も、彼は受け止めてくれる。私は彼の小さな身体に甘え尽くすことにした。
「それじゃあ……、お互いのお股を舐めあいませんか……?」
「え?さ、さっきも舐めたのに……?」
「不思議なのも無理ありませんよね……。ですけど、今の私が知ってる限りの、「一緒にやるエッチ」はこれしか思い浮かばなくて。……ごめんなさい」
謝っても許されないことをした。きっと、嫌われただろうな、乱暴なお姉さんとして。
「アヤネお姉ちゃんも辛かったとか、苦しかったとか言ってたんだ。……一緒に悪い子になろうよ」
尽きたと思っていた涙はさらに出てきた。今はできる限り、彼のいうことをしっかりと守ってあげよう。
私は傷だらけの身体を優しく横にした。逆向きに身体を置くと、彼のがそそり立っているのが見える。口でそっとキスをしてから、口の中へと含んだ。先端の鈴口の下側を舌の腹でさすってあげると、硬かったそれが一層ビクンと動く。今まで私はセックスをするときは自分本位でしてきたこともあって、正直、この口淫で彼が満足しているのかどうかは全く分からない。ただ、食材にはそれぞれ適した調理法があるように、きっと男の子の身体も適した愛撫やエッチがあるはずだ。そう思いながら、味が段々と変化していく玲央君の男の子を堪能した。
突然、口内で慣れた味わいの液体が広がると同時に、蜜壺が急に緩んだ。玲央君も自分の口を離したみたい。彼の口はハムスターのように何かを含んでいた。
私の様子を見た玲央君は、私に手招きをした。起き上がると、既に掌を前に出していた。恐る恐る指を絡ませると、彼は私の口の中に舌を入れてきた。いや、正確には私の蜜壺の蜜を私の口へと分けてくれたようだ。私も同じように、ザーメンが絡んだ舌を彼の口の中へと押し込んだ。私たちの口の中では、自分たちの体液が絡み合う。そのときの水音や唾液の漏れる音、喉元で止まる喘ぎ。今いる廃墟には私たちの邪魔をする者はいない。2人だけの時間を、私たちは共に過ごした。
――こうして、私は誰かと一緒にする「セックス」を終えた。
「アカリさん。今回は大目に見てあげますけど、次、あのようなことをしたらヴァルキューレに連行するぞ、……とフウカ先輩は仰ってますから、本当に気をつけてくださいね」
次の日、私と玲央君はフウカさん、ジュリさんの2人に叱られた。私は先生からお食事の誘いを断られて辛かったことなど、事実を伝えた。途中から、フウカさんは途中で電話の対応でその場にはおらず、彼女からの言葉を預かったジュリさんからの勧告に変わった。不思議なことに、廃墟でレイプしたことは一切咎められず、街中で戦闘の意思もない敵に榴弾を撃ったことを咎められた。玲央君の振る舞いを見ると、恐らくあの2人も……。いや、訊くのも野暮だろうな。
「あら?フウカ先輩?……え。本当ですか⁈」
それにしても、電話の相手は誰だったのだろう?
「アカリ、あんた、やっぱり学園を無断欠席してたそうね……。ハルナたちからも連絡が来てたわよ。まぁ、その……、アイツら、身勝手なことばっか言ってくるから「少しはアカリのことも休ませなさいよ!」とか言っちゃったわよ。全く、他人のことも考えずにズケズケと……。あ、学園の方には「シャーレで心身をリフレッシュさせたい」って伝えておいたわ。流石にシャーレで休みたいと伝えれば追及はしてこないでしょ?」
「……ありがとうございます、フウカさん」
気づくと声が出てしまった。私は知らない間に無理ばかりをしていたに違いない。偶には、何も縛るものもない場所に身を置くのも悪くはない気がする。
「な、何よ……⁈いつもの底知れぬアンタらしくないわね。まぁ、昨日はラーメンを食べたから、今日は稲荷寿司でも作ろうかしら」
……皮肉なものだ。身勝手な自分を戒めろと神様から忠告されるように、誰かと一緒に作る料理を作ることになるとは。今、この場には先生はいない。でも、先生ばかりでなくても、一緒に料理を作って、食べてくれる人はいる。
その相手は、私に素敵な笑顔を見せて言った。
「よかったね、アカリお姉ちゃん。一緒にお寿司、作ろうね!」
「えぇ、もちろんです♡い~~~~っぱい、作っちゃいましょうかね☆」
「アハハ……、いつものアカリさんに戻ったみたいで何よりです」
「具材、ご飯、酢、油揚げも限度があるから、気をつけて作りなさいよ、全く……」
やっぱり、エッチも料理も、一緒に作る方がより楽しいな。
投稿している作品は、どちらがいいですか。
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今のままシリーズだけで。
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作品個別で再投稿してほしい。
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個別だけにしてほしい。