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「ミドリ……?どうしてここに?」
ローターを眺めていたとき、横から聞きなれた声が聴こえた。横に顔を向ける。ごくごく平凡な私服のユウカだ。七分袖のシャツにジーンズのズボン。その顔には少しでも顔を隠すためか、伊達眼鏡を掛けている。
「あ、ユウカ。私は今、ユズちゃんから頼まれた買い物をしてるの」
「他人に買い物を頼む、ねぇ……。よりにもよって、こんな場所へ買い物に行かせるなんてどうかしてるわよ」
「でも、今のユズちゃんは……、ちょっとワケがあって……」
「ワケ?あ、そう言えば、最近は授業の時間以外は教室に顔を合わせていないそうね。……心配だわ」
ユウカの反応も無理はない。その理由は、とても彼女に説明できるものではない。
私がこんな場所で買い物をしているのも、ユズちゃんが誹謗中傷に遭ってしまったからだ。
『テイルズ・サガ・クロニクル』などのRPGで有名になった少し前の私たちは、新規ユーザー開拓、新ジャンルへの挑戦を狙って恋愛ゲームを作っていた。良くも悪くも真っ直ぐなお姉ちゃんがアイディア担当になってもらい、ユズちゃんと私でそれらを踏まえたストーリーを作り、アリスちゃんにゲームのプレイバリューを確認してもらう。そうして、私たちの挑戦作『ドキドキメモリアル』は完成した。日頃からお世話になっているゲーム配信サイトで投稿し、しばらく投稿したある日のことだ。
――こんな恋愛エアプゲームマヂやってらんなくて草
――『テイルズ』はよかったけどこれはね……
――無難すぎて楽しくない。やっぱエロいのが欲しい
ゲームのコメント欄で、プチどころかかなりの炎上が起きていた。お姉ちゃんは小さい頃のように床にゴロゴロ転がって駄々をこねては両手におもちゃの包丁を持って「許せなーーい!!」と叫んでいるが、問題はユズちゃんだ。彼女は日増しに暗い顔を見せ、ロッカーに閉じこもり、そして、授業以外は部室に閉じこもるようになってしまった。アリスちゃんは私たちを元気づけようとしているのか、前よりもクエストに出るようになった。
そんな重苦しい雰囲気になった中で、私はユズちゃんから買い物を頼まれた。ただの買い物ではない。ローター、ディルド、電マ、指サック……。そう、彼女はロッカーの中でのオナニーに夢中だ。理由はいうまでもない。彼氏もいない、デリヘルも利用できる程の余裕もない、彼女にとって「処女」という事実はとても苦しいのだろう。それに、お姉ちゃんやアリスちゃんはそういうことについてはひどく鈍感で、ゲームの出来ばかりに目が向いている。だからユズちゃんは、そういうことについても相談できる私にエッチなおもちゃの買い物を頼んだのだろうな。
「うーーん、大丈夫だよ。辛いことや悲しいことがあったときは、これで元気百倍だよ。そういうユウカは何でオナホールを買ってるの?」
ユウカの買い物かごには人気メーカーの安価なオナホールがRPGの宝箱の金貨のように所狭しと詰まっている。赤色、青色、黒色がよく目立つ。
「何って……。男の人がこういうのを使って一人エッチしてると思うと、ムラムラしてこない?その、本物のまんこじゃないのに必死になって腰を振る姿が、堪らなくイヤらしいというか、虚しいというか、いじりたくなるというか……。とにかく!このオナホは私のオカズなの。他人には他人の、せ、性癖があるでしょ!」
「まぁ、そうだろうね。そんなに買っちゃって大丈夫なの?セミナーみたいに破産ギリギリにならない?」
「うるさいわね……。私はしっかり予算も出費も計算した上で散財しているわ。まぁ、……デリヘルもそうだけど」
「それならさ、ユズちゃんでも利用できそうなお店があったら教えてよ。ユズちゃん、すごく悩んでいるし」
お店では男優と思われる男の人の囁きの声、言葉責めがBGMの如く流れている。ユズちゃんからすると、あのトラウマを想起させるかもしれない。
「利用できるところ、あるかしら……?料金に加えて、ホテル代も、差し入れ代も必要になるわよ。余裕がない場合は残念だけど勧められないわ」
「そう、だよね。ユズちゃん、ごめん」
「あ、ご、ごめんなさい。力になれなくて」
「大丈夫。私もいきなり無茶を言ってしまったような気がして」
「あ、そう言えば、来週の6連休、先生がいらっしゃるそうよ。ヒマリ先輩や私たちとお話したいことがあるから、だって。とりあえず、息子の玲央君はあなたたちの部室を見学したいらしいから、ある程度は部屋を綺麗にしておくことね」
先生がいらっしゃるのか……。数か月前、アリスちゃんを巡る騒動の際に先生は私たちの勝利になるように手伝ってくれた。その先生の息子がやってくるのか。きっと、『テイルズ・サガ・クロニクル』のことも知っているかもしれない。
「それと、ユズの件は彼に感づかれないようにすること!彼の前では、その、えと……、そういうことは禁止だからね!気をつけなさい」
「玲央君は幾つなの?」
「確か、誕生日を迎えた今は11歳だったかしら」
11歳か……。早熟な子なら異性とエッチしててもおかしくはない年だ。ネットニュースでも「不純異性交遊の早熟化」を度々目にするようになった。玲央君もそうかもしれない。
「そんなワケだから、気をつけてよね。あ、中学の友達との本屋巡りしないと。じゃ、また明日」
ユウカはレジで清算を終えて、明るい出口へ出ていった。私の買い物かごはまだまだ空だった。それにしても、ここ数日はユズちゃんのロッカーから異臭が漂っている。彼女を説得させないと掃除もできそうにないみたいだ。仕方ない。彼女にお願いをして掃除をする他にないか。
私は中断された買い物を再開した。
薄暗いロッカーの中、私はスマホの画面を見ていた。今年からネットで話題を集めている「アビドス怪文書」、それが今の私の心の拠り所だ。胸に秘めた禁忌の想いを異性にぶつけて処女を捨てる。今の私の悲願、それがこれでもかと詰め込まれている。欲しい、今すぐにでもこの処女を台無しにしてくれる相手が。
『テイルズ・サガ・クロニクル』で特別賞を得た私たちは一躍ミレニアムの人気者になった。近所の子どもたちからはプログラミング学習などの勉強のお手伝い、中学生からは進学の相談と引っ張りだこだ。実際、そういう子どもの相手はモモイちゃんやアリスちゃんがほとんどしてくれている。口下手な私はというと、子どもたちと触れ合おうとしても呆れられてしまってばかりだ。恵まれていない容姿とか無愛想な性格があればまだ諦めがつく。ただ、私はゲームでどんどん勝ってしまう。子どもたちはそれを目当てに私の元へどんどん寄ってくる。寄ってきた子どもたちは期待の目を向けてはくれても、次第に口下手な私に呆れて離れていく。そうして、愛嬌たっぷりのモモイちゃん、面倒見の良いミドリちゃん、解説の上手いアリスちゃんに向かっていく。そうして、私の周りには内気な子たちばかりが残ってしまい、気まずい雰囲気に包まれてしまって時間が終わる。こんなことが当たり前になったにも関わらず、私は、今までの自分からの「変身」を望んでいる……。
あのコメントに怯えて暮らすようになる前の授業で、アインシュタインの言葉が頭をよぎる。
――おなじ毎日を繰り返し、ちがう人生を期待する。これを「狂気」と呼ぶ。
あぁ、私はその通りかもしれない。ゲームだけではない。自分の処女なんてその気になればデリヘルとかエッチなお仕事の人たちにさっさと頼んで捨ててしまえばそれでいい。噂でしか聞いたことがないが、ユウカ先輩やヒマリ先輩はその手のお店をよく利用しているらしい。今の私の口座でも、多少の無理をすれば大衆店は利用できるはずだ、多分。
ただ、そんなことをしてしまえば「子どもたちに人気のある」ゲーム開発部への風評被害が止まらなくなる。皆に迷惑が掛かる上、私のアンチが暴れることだってあり得る。
……いや、捨ててしまうことなんて、意外と大したことではないのかな。私よりも年下の男の子たちだって、付き合っている女の子たちと一緒に「初めて」を捨ててしまっている。私はというと、屁理屈をこねてはいつまでも「毎日」に縋り付いている。理由なんていらない。どんな相手でも構わない。私自身の処女を滅茶苦茶にしてくれる相手が、欲しい。
連休の前の日、私たちは部室の掃除を始めようとした。相変わらずユズちゃんはロッカーの中に閉じこもっている。この所、嗅いだ覚えのある臭いがじんわりと中から漂ってくる。汗とも腋臭とも月経の血とも違う臭い。消臭剤を使ってもまたどんどん臭いが湧いてしまう。
「ユズちゃん?明日は先生が来るから一緒に掃除しよ?」
「…………」
「ユズちゃん?起きてる?」
鈍い金属音がロッカーから聴こえる。……気絶していたのかな。
「ど、どうしたの?」
「ずっとロッカーの中にいたからとても心配で……。授業の課題にもゲーム部の作業にも参加しないで閉じこもってるし」
「ごめんね。私が、臆病で、みっともなくて……」
「そんなことないよ。日本では独身でもラブコメで大成した漫画家がいるし、ユズちゃんもきっと」
「……きないよ。私にそんなことができるわけないよ!変わろうともせずに、都合のいいことばかり、か、考えてしまう自分が大嫌いなの……」
想像していたよりもユズちゃんは苦しんでいるようだ。少しして、私の中で邪悪な考えが生まれた。片付けに夢中になっているお姉ちゃんでもアリスちゃんでも思いつかない、悍ましいものだ。だが、今のユズちゃんを元気づけるにはこれしかない。
「ユズちゃんさ、……小さい男の子に恋愛相談してみない?」
小さい声で話しかけてみた。ロッカーの金属の板の向こうにいるユズちゃんは戸惑っているのか、息が荒い。
「な、何を言ってるの?いくらなんでも私がそんなことできるわけがな」
「いいからいいから。私の言うことを聴いて」
「……う、うん」
「今度、赤染先生の息子君がミレニアムにやってくるでしょ?先生は重要な会議で忙しいから私たちに息子君を預けようとするはずなの。多分、息子君は人並みに恋愛をしてると思うの。その子にお願いして、恋愛について色々と聴いてみようよ」
「わ、分かった……。頑張って、見る」
……計画通り。先生の息子君から恋愛についてたくさん取材をして、私たちの新作ゲームのネタをいっぱい集めよう。そう提案したことで、ユズちゃんもロッカーの中から出ようと決心するはず。そして、例の新作ゲームのリメイクで部の可能性をさらに広げることだってできる、はずだ。多分。
その連休当日、ユウカから聞かされた通り、私たちの下に1人の男の子が預けられた。あまり背の大きくない私たちよりさらに小さい背丈、どことなく先生を思わせる顔立ち、そして、左目の周りに広がっている大きなアザ。多分、あのときのリオ会長なら「私の知り合いに頼んで治してもらうわ」と言いそうな生々しさだ。でも、不思議なことにそんな顔でも怯える素振りを見せない。きっと、彼の人生を変える大きな出来事があったに違いない。
……と私が思っているそのとき、彼はお姉ちゃんの薦めるゲームをしていた。前にアリスちゃんがコンプリートしたノベルゲームをやっているらしく、横で話しているお姉ちゃんのアドバイスを聞いている。
「あ!スキルコストが貯まったよ、玲央君。さっきのリベンジ、やっちゃえ!」
「これを、こうして……。や、やった!やっとクリアできた!ありがとう、モモイお姉ちゃん」
「すごいなぁ、玲央君。アリスでも苦戦したバトルパートを2回目で攻略するなんて……。やっぱ、将来はゲーマーとかが似合うかもね」
先生が仰るには、玲央君はあまりゲームをせずに本や図鑑をよく読んでいたらしい。読み物が中心となるノベルゲームとは相性がいいかもしれない。
ゲームをしている玲央君を横目で見ていると、彼の手癖が見えてくる。そのゲームをしているとき、ある人物が出てくるとほんの少し指先が止まるのだ。ボブの黒髪、眼鏡、優しい性格の吟遊詩人の乙女。彼女はストーリーでプレイヤーが操作する主人公に力を貸す役割だ。彼女が出てくると、それまで無駄のない動きであった玲央君の指先が鈍くなる。年頃の男の子のことだし、多分、失恋か何かなのだろうな。
「さーーてと、お疲れ様〜〜。楽しかった?次はどんなゲームがやりたいかな?」
「え、えと、……ちょっと休みたいな。それから次にやりたいゲームを考えていい?」
「もったいないなぁ。そんなこと言わずに」
また、お姉ちゃんの悪い癖が出てしまっている。ここは私が止めないと。
「お姉ちゃん。玲央君も随分とゲームをしていたから、少しは休ませたらどう?玲央君は私たちより頑丈じゃないから」
「う……。ご、ごめん……」
「とりあえず、お姉ちゃんはゲームソフトを倉庫に戻しておいて。玲央君のことは私が見るから」
お姉ちゃんは残念そうな顔でゲームソフトを片付けた。お姉ちゃんのゲームに対する熱意も、玲央君に楽しんでほしい気持ちもよく分かる。だからといって、夢中になって体を壊したら本末転倒だ。適度に休ませることもしないと。
「モォ……。ミドリの気持ちも分かるけどさぁ、まった」
倉庫の中から大きな音がした。愚痴をこぼすお姉ちゃんの声がしない。駆けつけてみる。……中古ショップで買ったハードウェアが地面に落ちている。お姉ちゃんはその近くで死にかけのセミのように倒れていた。前から倉庫は整頓しようと心掛けてはいたが、お姉ちゃんはそれに無頓着で詰められるだけ詰めてしまう性分だ。だから言わんこっちゃないのに。
……待てよ。今、この部屋で動けるのは私、玲央君、ロッカーの中のユズちゃんの3人だけ。アリスちゃんは今日もクエストに出ている。ユズちゃんへの約束をここで果たそう。やれるのは、今しかない。
「玲央君、実はね、私たちゲーム開発部は私、お姉ちゃん、ここにはいないアリスちゃん、そして部長のユズちゃんの4人なんだ。ユズちゃんはどこにいるか、探してみない?」
「ユズお姉ちゃん?えと、どこだろう?わかんない」
「……それじゃ、案内してあげるね」
私は玲央君の手を引っ張り、ユズちゃんのいるロッカーへと導いた。
ミドリちゃんの指示通り、私は上着以外の全部を脱いでいる。身体を包む服がないと、涼しさと開放感に似た気分に満ちてきそうになった。ただ、今の私は薄暗がりの埃と汗、自分の下品な液が混ざった生々しい臭いに染まったロッカーにいる。私にこんな格好をさせて、ミドリちゃんは何をするんだろう。
「実はね……、ユズお姉ちゃんはこのロッカーの中にいるんだ」
「え……。ロッカーに?」
「そうなの。だから、お話をするときはノックをしないといけないの。それじゃあ、ユズお姉ちゃんはどんな人か、聴かせてほしいな」
あ。ロッカーの中にいる私がどんな人物なのか、当てさせるつもりか。それにしても、ロッカーから出てきてお話をしたいけれど、あのコメントが頭をよぎるととても怖くなる。それが例え、自分よりも幼い男の子だとしても。
「うーーん……。アヤネお姉ちゃんみたいに、優しくて、素敵な人、かなぁ……?」
「そのアヤネお姉ちゃんはさ、どんな格好だった?」
「眼鏡をかけてて、髪も黒くて、それで……、とにかく、僕の好きな人なんだ。また逢いたいなぁ……」
声変わりが少しずつ進みつつある、爽やかな声。まだまだ男の子の面影があるその声を聴く内に、私の身体も昂ってきた。
「そっか……。さっきのゲームのヒロインみたいだね。その、今でもアヤネお姉ちゃんとはお付き合いしているの?」
「それがね、アヤネお姉ちゃんとは全く逢えてないんだ。怖い顔のお姉さんたちから「悪いことをした人だ」とか言われてばかり。僕のことが好きってだけでどうしても悪いことなのかな……」
き、聞き覚えのあるお話だ。まさか、「アビドス怪文書」のあの男の子は……。
「悪くないよ、玲央君もアヤネお姉ちゃんも。お姉ちゃんはきっと、遠くでお仕事をしているからすぐに逢えないんだよ。だからね、私、玲央君が元気になれるように、特別なクエストを作ってきたんだ」
「え?ク、クエスト?」
な、何をするの、ミドリちゃん?こんなところでクエストをやるなんてどうかしているって。そう思っていると、ファスナーの動く音、ボタンを外す音、そして、更衣室でよく聴く下着を外す音がした。……え?ミドリちゃんもまさか、その口?
「このクエストはちょっと難しくてね、玲央君の協力がどうしても必要なんだ♡……よし、上はすっぽんぽんになったね。こんな傷だらけの身体なら、先に回復してあげないと」
「な、え、ちょ、ちょっとま」
ミドリちゃんはそう喋ったと思うと、エッチな動画で聴きなれた音が聴こえ始めた。
唾液が呑み込まれる音。
ミドリちゃんの激しい吐息。
玲央君の情けない喘ぎ声。
衣服の擦れる音。
そして、汗ばんでいるであろう肌同士が触れ合う、湿った音。
「いい子だね、玲央君。ここでしっかり回復したらクエストも最速でクリアできちゃいそうだよ、頑張れ頑張れ♡」
「アッ、ハ、フゥゥ、ンッ、……身体、痛いのにィ……」
会話の様子を見るに、玲央君の身体には傷があるようだ。その傷でとても苦しそうなのにミドリちゃんの愛撫に負けてしまっていると考えるだけで、私のおまんこはむず痒くなってきた。あのときのミドリちゃんが言ったことは、こういうことのためだったのだろう。あまりの痒さに耐えられず、私はそこを触った。こういうことは綺麗なお手手でするべきかもしれないが、そんなことを気にする余裕なんてなかった。最初は周りの毛、次に太いヒダ、その次に湿地帯のようになった細いヒダ、と指を摩っていく。ロッカーの向こうからの玲央君の喘ぎが聴こえる度に、私の膣やヒダの湿り気もどんどん増す。膣の敏感なところが指のタコに当たったときなんてたまったものじゃない。喘ぎ声や服の擦れる音とそれが重なったときなんて、私自身が彼を襲っているかのように錯覚してしまう。今すぐ、このロッカーから抜け出して、向こう側にいる玲央君に出会いたい、向かいの彼ならこんな私でもエッチの相手をしっかりしてくれるに違いない、そう、身勝手な思いを抱いた。神様がこの世にいるとしたら、そんな私に罰を与えたかったのだろうか。
……今日に限って、ロッカーの鍵は閉め忘れていた。
私の身体の重みに耐えられず、扉は耳障りな金属音を立てて開かれた。視界には眩しい光が差し込んだと思うと、急に暗くなった。少しして、おでこに生温かくて硬い何かが当たっていることに気づいた。しかも、粘り気もあり、汗臭い。酸っぱいというか、唾液の臭いというか……。
「ユズちゃん、元気だった?玲央君、ユズお姉ちゃんに初めましてと言おっか♡」
「こ、こんにちは。ユズ、お姉ちゃん。あ、赤染玲央、です」
「あ、え、えと、花岡、ユズ、です。よろしく、お願い、します……」
「アビドス怪文書」の本人に近そうな少年は、身体中に噛み痕がついていた。
「え、えと、ミドリお姉ちゃん。クエストでは、何をすればいいの?」
おでこに我慢汁がついたままのユズちゃんを少し見てから、私は答えた。
「今日のクエストはね、目の前にいるユズお姉ちゃんと、ゴム無しエッチをすることなんだ。ユズちゃんはね、エッチしていないことについて、すごく苦しんでたんだって。だ、か、ら……、男の子の玲央君にお願いしたんだ。玲央君はさ、さっきのアヤネちゃんみたいに女の子とエッチしたと言ったよね?ユズお姉ちゃんに聴かせてくれるかな?」
最初は、玲央君にエッチなイタズラをしつつ、恋愛経験について尋ねる程度で終わらせるつもりだった。そしたら、ユズちゃんはロッカーの中で「ショタ喰いお姉さん」に覚醒しかけた上に、服を脱がせて裸になった身体に傷があった。同年代の女の子につけられたとしたら、余程独占欲の強い相手なのかもしれない。見知らぬ相手につけられた傷を乗り越えた玲央君に、処女のユズちゃんがどこまで彼の肉体に証を作れるのか、確かめたくなった。
玲央君はというと、先程私の舐めた左耳をキラキラ輝かせながら、ユズちゃんに話した。
「アヤネお姉ちゃんは、……僕とエッチしてくれた最初のお姉ちゃんなんだ。何でも、僕みたいな男の子のことがすごく好きだったんだって。僕のことを怖がらずに面と向かって話してくれたんだ。……いつか逢いたいなぁ」
ユズちゃんの瞳は悲哀と劣情が混ざり合った視線を向けていた。私がここにいなかったら、迷わず、襲いかかったに違いない。
「それから、シミコお姉ちゃん、セリカお姉ちゃん、コタマお姉ちゃん、カズサお姉ちゃん、モモカお姉ちゃん、セイアお姉ちゃん、ハナエお姉ちゃん、アツコお姉ちゃん、フウカお姉ちゃん、ジュリお姉ちゃん、そしてアカリお姉ちゃん……。あ、特にアカリお姉ちゃん!アカリお姉ちゃん、傷ができる位に噛まれてからエッチしようと僕を抑えたとき、何でか泣いてたんだよね。エッチするときって、皆、辛いことがあるのかな……?」
「辛い、ねぇ……。確かに、寂しくて、悲しくて、それで辛いときになると、私もオナニーをするとスッキリすることはあるよ。皆が皆、そうじゃないかもしれないけど、玲央君は先生、いや、お父さんにはできないことをやってくれてるんだよ。これはすごいことだよ、もっと誇っていい」
彼の顔が急に暗くなった。私の言ったことがそんなに嫌だったのかな。
「え、う、うん……。それは、そうかもしれないけど、皆、こういうことを「恥ずかしい」とか言ってくるんだ。だから、それで英雄のようにされても、何だか、納得がいかないや」
「そ、そんなことないよ!玲央君がエッチしてあげたことで、きっと、皆、幸せな気持ちになったのかもしれないんだよ。エッチの相手が玲央君なら、私、最後までやれるかも……」
ユズちゃん、後戻りできなくなっちゃったね。
それにしても、現実は、そう簡単に上手くはいかないようだ。エッチなマンガによくいる、ご都合主義の権化のような、性欲だけのエロガキなんて存在しない。思えば、そういったリアルな人物を据えなかったことがこの前のゲームの評価に繋がったのかな。
「分かった……。やろっか、ユズお姉ちゃん」
玲央君はユズちゃんの掌に指を絡ませたと思うと、迷うことなく、ユズちゃんにキスをした。私たちとは大きな身長差がない。そんな玲央君と舌を絡ませるユズちゃんを見ていると、歳の近い姉弟のようにも見えてくる。
ユズちゃんは汗だくのまま、玲央君は傷だらけのまま、互いに抱きしめ合っている。ユズちゃんの上着は玲央君が握りしめることで皺だらけ。玲央君の背中はユズちゃんの手汗でテカテカと光る。よく、エッチなマンガで見られる、絡み合う男女の肌が艶めかしく輝く描写ってあるんだ……。私も身体の奥がだんだんと熱くなってくる。
しばらくして、長髪の女の子は唯一身につけていた上着を脱いだ。普段ならそれに隠されてよく分からない体型が、汗まみれのまま露わになる。上着の薄暗がりに見えるおっぱいはご飯茶碗程で、傷だらけの男の子はそれに釘づけだ。
「こ、こういうときって、その、おっぱいを吸わせるんだよ、ね?」
「う、うん……」
「あ、おっぱいは出ないけれど、私の汗をお乳と思えば、い、いいかな?」
「わ、分かったよ。吸うね」
あ。小ぶりなおっぱいに不釣り合いな乳首を口に含んだ。ユズちゃんは小さく喘ぎ、玲央君の頭にそっと手を添える。とても神々しい姿だ。『テイルズ・サガ・クロニクル』の世界観なら宗教画になっているかもしれない。おっぱいの次に、彼は陰部に口を重ねた。声を張り上げる度に彼女のあばら骨が膨らんではまた萎む。いつの間にか、私は近くに置いた彼の肌着を自分のまんこに擦りつけていた。思わず、美しいと思ってしまった。
玲央君は私のおまんこを優しく舐めている。口から出すことで硬くなった舌の腹でひだやクリトリスを舐められたときなんて、全身が爆発するかのような気持ちよさに満たされる。お腹から出てくる自分の声は、何だか、自分らしくない。
「あッ、ヒィッ、れ、玲央君、そ、ソコッ、そこだよぉ。もっと、もっろらめてぇ♡」
つい昨日まで耽読していた「アビドス怪文書」の女の子も、こんな気持ちいい体験をしたと思うと、一切の恥じらいもなくなっていた。
「……れ、玲央君。な、舐めてくれてありがと。ハァ、ハァ……。次は、おちんちんを触って、いいかな?」
「い、いいよ」
口の周りがぬらぬら濡れている玲央君は、恥じらいながらも自分のおちんちんを突き出した。性別が定かになっていないような細い身体に似つかわしくない、股の間にそそり立つおちんちん。
「さ、触るね。……わぁ、す、すごい。こんなに硬いんだね。しかも、暖かい。あ、玲央君。痛かったら遠慮せずに言ってね」
「大丈夫。こ、ヒッ、フゥ……、ユズお姉ちゃん、気持ちいいよ」
わ、私の手つきが、気持ちいい……?
とても恐れ多かった。何せ、私はまだ処女だ。それなのに、エッチをたくさん経験している玲央君に褒められた。こんな私でも、ゲーム以外で他人の力になれるんだ……。嬉しさのあまり、私は立派なおちんちんにキスをした。そして、口をそっと開けて、先っぽの丸いところを含んだ。口に入れたおちんちんは、手で触れたよりも暖かかった。あぁ、玲央君の身体は今、子どもを作る準備が進みつつあるんだ。このおちんちんと一緒になれば、私は新しい自分になれるはず、かも。
そうしていると、奥でオナニーしていたミドリちゃんが近づいてきた。
「可愛いね、玲央君。ユズお姉ちゃんとのエッチは楽しい?」
「う、うん。……楽しい」
「それじゃあ、ユズちゃん、上着を全部脱ごっか」
指示通り、上着を脱いだ。ミドリちゃんは何をするのだろう?
「今から、ユズちゃんはそこで天井を向いてて。玲央君は、……お姉ちゃんと重なろっか。さ、始めて」
私たちは指示通りにした。実際、汗だくになっていた私にとって、全部を脱ぐのはありがたかった。けれど、玲央君にも指示を出すなんて、ミドリちゃんは何をしたいのだろう?
「重なったかな?……よし」
突然、ミドリちゃんは私の上着のジッパーをつかみ、私と玲央君を包み込んだ。まるで、私たちはハエトリグサに捕らえられた昆虫の気分だ。視界は一瞬にして暗くなった。
……ん?口で息をしようにも、できない。鼻息がさっきよりもうるさい。それに、身体には彼の身体の重みが伝わってくる。そして、目を開けると、玲央君の顔がうすぼんやりと見える。
――私、玲央君とキスしているんだ……。
「どぉ?ユズちゃん?玲央君との特別なお部屋を作ってみたよ。そこは2人だけの居場所。私は邪魔をしないから好きなだけチューしていいし、ハグしていいし、何なら……」
――ゴムなし生中出し、してみない?
とっくにそうだったかもしれないが、私の理性は崩壊した。足を闇雲に動かして玲央君の足に絡めた。絡める度に彼のおちんちんが股の周りに擦れて気持ちいい。そうこうしていると、さっきよりも強い衝撃が全身を巡ってきた。何だろう、まるで、欠けていたピースを埋めてくれたような、または、本来あるべき姿を手にしたときの安心感のような……。あぁ、ついに私の身体におちんちんが入ってきたんだ。
――ようやく、私は処女を捨てることができたんだ。やった、やった!
私は重なった玲央君の口にチロチロと舌を滑らせた。玲央君も反応するように、舌を絡ませる。さらにそれと呼応するようにおちんちんと一緒に腰全体を私の身体に静かに、そして激しく叩き始めた。この上着は通気性がないので、汗だくの私たちが動く度にお互いの汗が混ざり合い、服に染みつき、新たな生臭さを作り出している。
ここは私たちだけの世界。エッチするって、私たちだけの特別な時間なんだ。それを客観的に語ろうとしたり、妄想ばかりで知った気になったりするなんて以ての外なんだ。楽しい。こんなにもエッチするって、幸せで喜ばしいことなんだ……。
玲央君はしばらくして、とびきり強く突くや否や、私の身体を強く抱きしめた。そして、あれだけ私の膣に生きた証をばらまいたおちんちんを名残惜しそうに引き抜いた。
ジッパーの音と共に、強い光が私の視界にやってきた。
「ユズちゃん、処女卒業お疲れ様。そして、玲央君。……次は私とゴムハメしよっか♡」
……へ?ミドリちゃんはゴムをつけてエッチするの?まぁ、そっか。玲央君は私に生中出しをしちゃったんだ。だからこそ、私の思い出を邪魔しないようにしてくれたのかな。
あ、ありがとう。
ユズちゃんとのエッチで整った玲央君とのエッチは、とても楽しい。
ユズちゃんを興奮させたであろう、乳首での舌テクは優しくも大胆で、耳舐めをしたときなんてさっきよりもイヤらしく反応してくれる。
「おっぱい舐めるの上手くなったかな?ご褒美に、お耳舐めるね。ンッ……」
「ヴァッ、ハヒィィ……、や、やめれぇ、はず、はずかひぃ……」
奥へ絡ませた舌を抜き、囁いた。
「へぇ……。恥ずかしがることなんてないよ?今日でね、玲央君は耳舐め童貞を卒業できたんだよ。まだまだエッチは終わらせないよ♡」
そうして、おまんこ諸共、股を広げようとしたときだ。
「あぁもう、うるさいことばかりや、……って。な、何してるの!やめなよ二人共⁈」
……あぁ、お姉ちゃんか。お姉ちゃんがここで目覚めるのは想定外だ。でも、いつものように言い負かしてあげるね。
「何って、ユズちゃんの処女卒業をお手伝いしてあげただけだよ?」
「……玲央君はさ、先生の息子なんだよ……?ミドリ、ユズ……、自分がどれだけ悪いことをしてるのか、わ、分かってるの⁈」
汗まみれの腕をお姉ちゃんにつかまれた。このまま玲央君を引き離すつもりかな。
「そうかもね……、でも、玲央君は他の女の子たちと既にエッチしてるんだよ?処女で苦しんでたユズちゃんを助けるとなると、玲央君こそ適任じゃない?」
「関係ないよ⁈いくらなんでも、家族としてこんなのゆるせ」
「許せない、よね?でも、ここで私とユズちゃんを告発したとして、お姉ちゃんはどうするの?したらしたでお姉ちゃんはどうして止めなかったのか、妹や友人にそういう兆候がなかったのか、色々訊かれるかもね。現行犯になっちゃった私たちは実刑で済むかもしれないけど、止めただけのお姉ちゃんはそういう非難を乗り越えられるの?私はね、お姉ちゃんを苦しませたくないからさ、……」
――私と一緒に、玲央君とエッチしよ?
腕をつかむ力が緩んだ。流石にお姉ちゃんも納得したのかな。
「……分かったよ、ミドリ。じゃあ、私たちは共犯、だね……」
そうして、私たち2人は玲央君と時間を忘れて身体を貪りあった。
……どれくらいの時間が経ったのだろう。汗をかいてカラカラになった身体を動かすと、横に倒れたミドリちゃん、仰向けになって大の字になって寝ているモモイちゃん、そして、6個もの使用済みのゴムの横でぐったりとしている玲央君がいた。必死になってエッチをし続けた果てに休んでいる彼の顔は、どこか、幸せそうだ。先程のゲームをクリアしたときに見せた笑顔を思い出す。
このエッチで、私は一人の女として「変身」できた上に、恋愛ゲームの極意に近い感覚を得られた気がする。正直、ゴムもなしでエッチしたことで妊娠する可能性もあるかもしれないが、そんなことは些細なことだった。
「……ありがとうね、玲央君」
ぐっすりと寝ている玲央君の唇に、私はそっと唇を重ねた。
投稿している作品は、どちらがいいですか。
-
今のままシリーズだけで。
-
作品個別で再投稿してほしい。
-
個別だけにしてほしい。