初めて書いたアヤネのおねショタ小説から続くこのシリーズで作品を書くと、初心に返ったような気分になります。一方で、あのときと現在での描写の違いに差があって、かなり繊細になって書いた気がしますね……。
さて、今作は先生を始めてから度々助けられてきたヒビキが主役です。当初は晄輪大祭の応援団コスとも結びつけようと思っていましたが、時間が経つ内に、現在考えているこのシリーズの終着点、それとメモロビの方が良いと思ってオチを書きました。ちょっと気取ったことを書いたなぁ、と反省しています。
pixivでのURL。
《 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28759748 》
身体の違和感はいつだって、突然だ。
晄輪大祭に向けて、私たちは先生と準備を進めていた。応援用のドローンの整備、大会の演出で使用されるプロジェクションマッピングの微調整、それに、応援団としての振り付けの練習をしていたときにそれは起きた。
私はトラック・クラッシャーのモーターや電子回路を直していた。いつもなら手癖で改造をしたくなってしまうけれど、今日はそれができなくてもどかしい。何せ、先生がいるからだ。過去にBluetooth機能つきのICコンロ、防音機能付きのシャワールームを作ってあげた際に渋い顔をされてしまった。そういうこともあってか、私が何かする度に先生は目を光らせている。気まずいったらこの上ない。
しかも、ご子息である玲央君も一緒だ。玲央君がどんな性格の子なのかは分からないけれど、私がしたことを学校で広めてしまう可能性もある。それでウタハ先輩やコトリに迷惑をかけてしまうかもしれないと思うと、怖くて仕方がない。
「すごいなぁ、ヒビキお姉ちゃん!こんなに大きな機械を修理できるなんて。僕もできるようになりたいなぁ……」
いつものサイダーを飲んでいたとき、玲央君が話しかけてきた。何でも、好きな女の子が乗り物や機械の操作がとても上手いらしい。それで彼も憧れて勉強を進めているとのことだ。小学生の内に夢を持つのは確かにいいことだけれど、あまり早すぎるのも難がある。ちょっとした挫折であっさりと諦めてしまわないことを願うばかりだ。
「玲央君。マイスターはもちろん、色んなお仕事をするってことは地道な努力と成長が必要なんだよ。もし、機械とか工学とかで気になったことがあったらいつでも相談してね」
「うん。でも、相談するとしたら、やっぱり、……ヒビキお姉ちゃんがいいな」
え?私?口下手な私でいいの?
「あ、そのね……。ウタハお姉ちゃんは話しかけにくいし、コトリちゃんはいっぱいしゃべって怖いし……。話せるのがヒビキお姉ちゃんだけなんだ」
「……私に頼るのはいいけれど、私でも担当外な分野はあるよ。ウタハ先輩にも怖がらずに声をかけられるようにしようね。コトリは……、いつか、ね」
「そっか……。分かった、ありがとうね」
玲央君は曇りのない笑顔を見せる。でも、顔の左側のアザがよく目立ってしまっている。アザの一つ二つで差別されるわけではない。でも、外の世界では見た目による差別が長く横行しているそうだ。私の身体にも、犬のような尻尾と耳がある。小学生のときは「イヌ公」と陰口を言われたのを思い出す。彼にはずっと笑顔でいてほしい。
「玲央!そろそろ宿舎に帰る時間だぞ!」
「分かった!今行くね!」
あ、先生の声。
「ヒビキ、作業は順調かな?」
アラフォーには見えない若々しさのある顔立ち、聴くと心が落ち着くちょっと低い声。傍にいると辛いことも忘れられそうだ。
「うん、順調。このままはんだごてでくっつければ……」
「それならよかった。あ、ウタハたちが今日のピザを受け取ったそうだぞ。食べようか」
「先生はいいの?」
「あぁ、玲央を独りぼっちにさせられないしな。申し訳ない」
「大丈夫だよ。先生は玲央君のお父さんだしね」
「いつも父親らしいことをしてやれないからな……」
「私は平気だよ。両親がいないのは一人暮らしで慣れっこだし。……?」
腕を伸ばしたとき、胸元に何か違和感。……それがすべての始まりだった。
手元をほんの一瞬疎かにしてしまい、重要な回線を壊してしまった。トラック・クラッシャーは金属やプラズマの嫌な音を立て始める。
「ヒビキ、危ない!」
先生の声がしたと思うと、私の目の前に先生が出てきた。大きな音のした背中はジンジンと痛みが広がる。何やら大きな音がしたと思うと、土埃や騒音、銃器の音が部屋に響いた。
どれくらい経ったんだろう。
「ヒビキ、怪我はな、……!」
先生は何かに驚いたような顔をしたかと思うと、自分のシャツを脱いで私に被せた。しかも、背中からではなく、胸やお腹が隠れるように。ちょっと前に感じていた違和感はまだ胸に残って、……何だか甘ったるい匂いがする。自分の身体でこんな匂いを嗅いだことはない。
「ヒビキ~~~~!大丈夫ですか~~!」
「先生、玲央君を見失ってしまった!追跡ドローンを起動させてみたけれど、まだ見つかっていないみたいだ。大変申し訳ない」
先輩たちもそこにやってきた。ウタハ先輩はこういう緊急事態でも玲央君を心配している。立派だなぁ、私は自分で精一杯だったのに。
「そうか……、このまま見つからなかったらヴァルキューレに相談しよう。そ、それと……」
先生は先輩たちに耳打ちした。2人は話を終えると、かなり困惑した顔になって私を見た。そして、私の近くに来た先輩は隣にしゃがんだ。
「ヒビキ、胸に違和感はあるかい?」
「違和感、か。……今もある」
「その違和感についてだが、胸がジトジトしている、とかないかい?」
「ジトジトか分かんないけれど、何だかち、えと、端っこが痒いな……」
ムズムズする……。く、苦しい。服の胸元を開けて確認しないと。
そこを見たとき、先生の動きに納得がいった。……だからあのとき、先生が胸元を隠すようにしたのか。そして、こんな自分の身体をたまらなく憎く思えてきた。
何せ、エッチしてもいないのに乳首から白い液体がジュクジュクと出てきていたのだから。しかも、出そうと思ってもいないのに勝手に垂れてくる。止めたいのに、止めたいのに止まってくれない……。
「診察した所、ホルモンバランスの乱れによって出てしまっていますね」
婦人科の看護師さんはそう説明してくれた。今、私は先輩たちと近所の病院にて診察している。先生はというと、私に病院を手配し、今後の生活スタイルのモデルも作ってくれた。ホルモンバランスの乱れ……。思えば心当たりそのものは大いにある。普段からデリバリーの外食が多めの食事、ここ数週間にも渡る睡眠不足、エナジードリンクや無水カフェインなどの摂取。機械を扱うマイスターが、自分の身体の管理を怠るなんて恥ずかしい話だ。クロノスに知られたらとびきりのネタとして報道されてしまうなぁ……。
「……キ、……ビキ、ヒビキ!」
誰かの声がした。
「って、ウタハ先輩?どうしたの?」
「今回の件なんだが、やはり、私たちの日頃の行いにも責任がある。体質が改善するまでの間、部活は休んで静かに過ごしてほしいな」
……そうだよね。部活は大切だけれど、身体を壊したら元も子もない。休まないといけないときはしっかりそうしないと。
「……あ、そういえば、玲央君は?」
「安心してくださいヒビキ!今、玲央君は先生のお知り合いでもある他学園の生徒と一緒に過ごしています!その人物はなんと、レッドウィンターの」
「コトリ」
「ハッ!……し、失礼しました」
たまたま出会ったと思われる生徒が守っているのかな。それならよかった。
入口から外に出たとき、すぐ上にある空は曇りのない晴れだった。けれど、西の空にはほんのちょっとばかりペンキで塗ったように真っ黒な雲が広がっている。
朝、起きる。
朝食はお肉も野菜もヨーグルトもバランスよく。
お腹が空いたら近所を軽くジョギング。
お昼ご飯はタンパク質多めに。
おやつはせんべいやカルパスなどの硬いお菓子。
余暇ができれば積読していた本たちをダラダラ読む。
夕ご飯は早めに、そして少な目に。
歯磨きは食後20分経ってから隅々まで磨く。
お風呂は湯船に浸かってゆっくりと。
出た後は動画を見ながらストレッチと音楽鑑賞。
そして就寝前にはデジタルデトックス。
寝る時間は早めに。
……この生活を始めてみると、体調が不思議とよくなってきた。朝はすぐに起きられるし、身体もより動かしやすい。夜も心地よく寝られる。不摂生を抑えるだけで身体がここまでよくなるとは思わなかった。
けれど、おっぱいからは相変わらず母乳がジュクジュク沁み出てくる。おかげで中学生のときにちょっときつくなった下着まで出す羽目になった。洗濯物でもピンチにはブラだけがズラッと並んでいる。隣家や近所の人が見たらどう思うのやら。下着泥棒からすれば「どうぞ、気の済むまで奪ってください」と見せているように思われてしまうな。外出するときは部屋干しにすれば大丈夫でしょ、多分。
その生活を何日か続けてみたある日、ネットで噂になっている例の怪文書を全文読んでみた。……アビドス怪文書。数か月前に起きたアビドス自治区のスキャンダル事件とほぼ近い時期に掲示板へ投稿された奇妙な文章である。禁忌の趣味を背負った少女が無垢な少年から好意を向けられていると知って「初めて」を捧げて行方をくらます、そんな内容だったかも。子ども向けの少女漫画にありそうな過激なお話だ。エッチをするときの描写がやたらと生々しい上に、少女にまんまと釣られる男の子がどこか不気味だった。不気味というか、その、自分のしたことを異常とも何とも思わない考えが苦手だ。下手したら悪いお姉さんに騙されて大切なものを奪われてしまいかねない。
昔からキヴォトスでは「そういう趣味」を持つ生徒が多く、パテル分派による男児への性虐待、山海経の京劇団による「芸の修練」と称した性接待とロアじみたお話ができてしまうくらいだ。まぁ、集団でなくても小規模の集団または個人で子どもを男の子を襲う少女はいてもおかしくないはず。このミレニアムサイエンススクールでもそういう生徒がいるかもしれないと思うと、背筋がちょっとばかり凍えた。
でも……、私は処女だ。エッチについては文字通りの未経験、生徒のために働くデリヘルは大体がユウカ先輩やヒマリ先輩といった上級生が利用している。私のような1年生でデリヘルを利用するなんて身の程が知れていると後ろ指さされてもおかしくない。生憎、私の銀行アプリの口座もそんな余裕はない。エッチしたい……。どんな景色が見えるんだろう。どんな気持ちよさが伝わってくるんだろう。想像するだけで股がムズムズと痒くなってくる。今のおっぱいは揉めないので、服越しに机の角で角オナしてみた。尖った角がクリトリスに当たると確かに気持ちがいい。怪文書の女の子はきっと、こういうオナニーだけじゃなくて中に入れて精子を受け止めることだってしたはずだ。羨ましいなぁ。私のような陰気のある子なんて、男の子の関心を惹くことなんてできない。
……いや、あるか。私はまた湿ったブラを見た。ちょっと前に見た掲示板で「授乳プレイ」とかいうものを見たことがある。実際は「それっぽい雰囲気を味わう」プレイなんだそうだ。でも、今の私なら「本物」ができる。きっと、誘惑すればちゃんとしたものができるはず。
やっぱり、ものは考え様だ。マイスターで培ってきた発想の転換がここで大いに役立つとは思いもしなかった。
ジワリ。
まただ。
ほんの少しばかり、おっぱいがむず痒くなった。
身体の方は快適になったものの、母乳は相変わらず出ている。吸水に優れたナプキンでその場をしのぐけれど、ブラと重ならず、歪な形を作ってしまう。だからといって、替えのブラを毎回変えるのも大変だ。荷物がかさばる。だから私は定期的にナプキンの上でおっぱいを搾り、そのときに出せるだけの母乳を処理している。
……何でだろう、ちょっとばかり男の人の苦労が分かる気がする。男の人はオナニーをする際に出るザーメンをティッシュやトイレットペーパーで拭き取って袋にしまうそうだ。ただ、しまったとしても、問題はその後であるとのこと。いわゆる「イカ臭い」とか形容される悍ましい臭い、時間が経つにつれて変色やカビが目立つティッシュ、そして「性」そのものである以上、他人には見せられないそうだ。私もおっぱいから母乳を出すようになってその苦しみややり場のない不満が身に沁みて分かるようになった。母乳は女の子の「性」そのものだ。喜ぶ人もいるかもしれないが、皆が皆そうとは言い切れないはず。悩みは中々尽きない。
私はお休みをいただいている。でも、ただ休んではいられない。こうしている間にも、科学技術は目覚ましい進歩や開発を実現している。生活にも余裕が出てきたし、少しは最新情勢を調べないとな。
そうして私は、久し振りにミレニアムサイエンススクールへ足を運んだ。
「C国による半導体開発独占、各国から非難の嵐」
「エデン条約の騒動による物価の乱れ、未だ収まりを知らず」
私たちキヴォトスで起きる出来事は世界に大きく影響を与えているみたいだ。そうして新聞を図書室へ返そうとしたときだ。道中にメイド服を着た生徒たちを見た。
「急で済まない!この辺りで男の子を見かけなかったか?」
メイド服の生徒は肌が黒く、頬や額に汗を流している。メイド服……。まさかC&C⁈
「急も何も、……見かけてないよ」
「そうか。ご協力、感謝する」
生徒は急ぐようにその場を去った。C&Cが出てくるとは余程の事態なのかもしれない。ちょっと後をつけてみよう。
彼女の走った後を慎重に進む。やがて、その先にトイレがあった。その周囲にはユウカ先輩もいた。隣には同じようにメイド服に身を包んだ人もいる。片手にはハンドガンを持ち、眼鏡の奥に見える目は全く笑っていない。何かに対応しているからか、陰から見ている私に気づいていない。
そうして時間がちょっと経ち、銃声、怒鳴り声が聴こえた。それも、聞き覚えのある声がする。男の子、かな。……男の子⁈ま、まさか……。
私の勘は当たった。
トイレの入口から半裸で股の周りが赤くなった玲央君が出てきた。顔のアザですぐに気づけた。その後には、ツインテールの少女が出てきた。少女も半裸であったけれど、歩いた後ろに私は目を奪われた。
白い液体が小さくも廊下の明かりに照らされて輝いていた。
半裸の男の子と女の子の2人。
それだけで私はすぐに察した。あのツインテールの少女がたまらなく羨ましかった。私がまだできていないことをあっさりと叶えてしまったんだ。当然のことだけれど、玲央君はもちろん、あの場にいる人たちは私に見向きもしていない。このときの私は、ナプキンとおっぱいの痒さを気にする余裕はなかった。いや、おっぱいがいつもよりもむず痒かったからなのかもしれない。
その次の日。
私は眠りから目を覚ました。重たい瞼を開けようとした。……どうしてだろう?何か、臭う。それも、自分の身体から。
……しまった。
ナプキンの交換を忘れてしまっていた!
資料が濡れていないことを確認し、急いで図書室を出た。頭の中ではすぐにトイレを探すことを何よりも優先させた。周りからの視線なんて気にしていられない。とにかく、身体に溜まってしまったこれをどうにかして収めないと。
走る。
走る走る。
走る走る走る!
汗が口の中や目に沁みて痛い。肺が破裂しそうになる。足の筋肉が壊れそうで苦しい。でも我慢だ。何とかして耐えないと。耐えないと、もっとみっともない姿を皆の前で晒してしまう。急げ急げ急げ、私!
やっとトイレが見つかった。急いで向かわないと。扉の前に行こうとしたとき、突然、背中から大きな音がして、強い痛みがやってきた。前の方からも大きな音がした。
「イタタ……、だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ。ヒビキお姉ちゃん」
……聞き間違えるはずがない。その声。男の子らしさと少年らしさの混じった、先生の面影を感じる声。
「れ、玲央君……⁈」
「どうしたの?身体、何か辛いことでもあったの?」
あぁ、とうとう玲央君にバレてしまった。ここは誤魔化そうにも誤魔化せないかも。
「え、えと、お話は、その、……こ、こっちでしよっか!」
私は彼の手をつかんで、多目的トイレへ入った。
「そんなに焦っちゃっうなんて、何かあったの?」
何も知らない玲央君は私に声を掛けた。大方、私のらしくない姿に怖がっているのかな。
「そ、その……、玲央君はさ、「男の子らしい」もので苦労したことって、ある?」
左奥にあるトイレのトイレットペーパーホルダーを見ながら話した。これからすることを考えると、とても玲央君の顔を見ることができない。
「「男の子らしい」もの?」
「あぁ、わかんないか。単刀直入に言うね。……一人エッチで出ちゃった白いおしっこ、どうしてる?」
あぁ、言っちゃった。恥ずかしい。
「どうしてるって……、ティッシュで拭いてるよ。でも、一人エッチはあまりやらないかな。たまにお姉ちゃんたちからエッチしてって言われるし」
「エッチして、それって本当に?」
「うん」
嘘……。お姉ちゃん「たち」か。私が想像していたよりも玲央君はそういうことをしているのか。じゃあ、私の頼み事もきっと……。
「ねぇ、玲央君。私、ネットで知ってるよ。白いおしっこを飲めば男の人が嬉しくなるって。実はね、女の子にも飲んでもらうと喜びたくなるものがあるの」
「え?な、何?おまんこの愛、液とか?」
「ち、違うよ。見た方が早いかな」
服を脱ぎ、私は上半身裸になった。丁度玲央君の頭がおっぱいと並んでいる。
「……実は私、赤ちゃんができてないのにお乳が出るようになったの。だから、……玲央君にはこれから私の赤ちゃんになってほしいんだ。ちょっとだけでいいから、やってくれる?」
「ヒ、ヒビキお姉ちゃん⁈……どうしよう、ネルお姉ちゃんとエイミお姉ちゃんとの約束が……」
ネル先輩?どこかで知り合ったのかな。あのネル先輩のことだ。きっと、玲央君と何かしらの約束をしたのかもしれない。さしずめ、「女の子と勝手にエッチしない」とか。でも、私にとっては自分の欲求に答えてくれることを優先してほしかった。
「だ、大丈夫。私、おまんこでエッチするとかはしないから!ただ、おっぱいから出るお乳を吸ってくれればそれでいいの」
目の前の男の子はすぐに返事をしなかった。しばらくして、こう答えた。
「……分かった。お姉ちゃんのこと、手伝ってあげる」
玲央君は最初に左のおっぱいにかぶりついた。乳首からは舌の感覚がよく伝わってくる。こんなに小さな身体ながらも私のお乳を静かに、優しく吸ってくれている。とても可愛い。
「アッ、んッ、そ、ソコッ、……乳首だけじゃなくて、谷間もさすって」
「ほほ?ほほおあうえあいいーほ?」
小さな手でグルグル回し始めた。乳首は吸われる、谷間は優しくさすってくれている。行動は赤ちゃんそのものなのに、不思議と優しさを感じられる。
「玲央君。お乳の味はどう?」
おっぱいからの母乳は味が変わるらしい。最初はとても飲みやすい風味だけれど、段々と脂っこい味になって飽きてしまうそうだ。今の私のお乳はどんな味なんだろう。
「うんとね、……お父さんが買ってきてくれる牛乳とは違うな」
「違う⁈つまり、それって」
「でも、味はさっぱりとしてて飲めるよ。それに、……」
――美味しいな。
その声はどこか怯えているようにも聴こえた。ネル先輩と何かしらの約束をしたのかな。その約束というのがエッチに関することなのかもしれない。
しばらくすると、玲央君の喉から呑み込む音がしてくる。「ごっくん」、男の人が自分のザーメンを女の人に飲んでもらう行為の魅力がちょっと分かる。自分の身体から出てくる醜いものが相手の身体の一部になっていく。そして相手はそれを拒まずに受け入れてくれる。今、この個室のトイレは誰もいない。私たちの立てる音だけが部屋全体によく響く。
「ごめんね、ちょっと訊いてもいいかな」
「何?」
「玲央君はさ、ネル先輩とどんなお約束をしたの?」
どんな答えを返すんだろう。
「その……、皆が皆、アヤネお姉ちゃんと同じじゃないからちゃんとしたお付き合いを学ぼうね、って」
気づくと、私は尻餅をついていた。腕にも、背筋にも力が入らない。私は、な、何てことをしちゃったんだ……。「普通」を学ぼうとする玲央君に悪いことを教えていたんだ。いっそ今から逃げようか?
「……ねぇ、玲央君。私と一緒に逃げようと言われたら、そうする?」
「……む、難しいかも。そんなことをしてもアヤネお姉ちゃんは喜ばない気がして」
「どうして、そう思うの?」
「だって、アヤネお姉ちゃんに会えなくなっちゃってから、僕は寂しかった。それで思ったんだ、辛くても、嫌なことに出会っても、逃げちゃったらいけないって。自分が逃げたら誰かを辛い思いにさせてしまうから。だから、僕は色んなことを背負っていこうって決めたんだ。お姉ちゃんたちから信じて貰えてるお父さんみたいに。……ちょっと恥ずかしいな」
私よりも、大人だ。
玲央君に対するやらしい想いはもうない。あまりにも立派すぎて、とても目を合わせられない。まだ背丈は小さいけれど、面立ちといい、ちょっとばかり先生を思い出すものがあるから尚更悩ましくなる。そんな私をことも気にせず、右のおっぱいはまたむず痒くなる。
「あ、そ、その……。こっちも吸っていいかな?」
「あ、う、うん。お願い」
彼はさっきと同じように、私のおっぱいに口をつけて母乳を優しく吸って呑み込んだ。私とする悪いことも、ネル先輩との大切なことも、これからたくさん背負っていくのか……。誰かのための力になるマイスターを目指す私も、改めて顧みないとな。
幸い、私と玲央君の秘密の時間は誰にもバレなかった。後で知ったことだけど、先生は特異現象捜査部との会議で白熱していて、宿舎に帰るどころではなかったらしい。実際、玲央君のスマホにも「会議で遅くなりそう。申し訳ないけど、先に帰ってて。スミレには話してある」とのこと。まぁ、トレーニングのことを除けばあの人は子どもを任せられる、かもしれない。
「ねぇ、玲央君。夜の街を見るのは初めてかな」
「ウン!これ全部、建物の灯りなの?」
私たちは今、二人だけで屋上から夜景を見ている。夜景を見ていると自分のやってきたことが誰かの役に立っているのかもしれない、なんてちょっと気恥ずかしいことを考えてしまう。
「そうだよ。街は色んなものを背負っているんだ。楽しいことも、怖いことも、喜びたくなることも、嫌なことも。まるで大人みたいだなって思うときがあるの。内面に誰にも言えない秘密や罪を背負い込んで、輝くものを表に出して毎日を過ごす……。……私、ちょっとばかり、らしくないことを言っちゃったかな」
「そんなことないよ。思えば僕はずっと逃げていたのかもしれない。色んなお姉ちゃんたちと出会って色々とあって……。ただ背負ってくだけではダメなんだ。「普通」を知って、そして、……なんでもない」
玲央君はちょっとばかり涙ぐんでいる。多分、あの子のことを言おうとしてやめたのかな。何か飲み物でも買ってあげなきゃ。
「はい、麦茶。カフェインはないから夜でも安心して飲めるよ」
「ありがとう、ヒビキお姉ちゃん」
ここ数日の生活の中で、私は麦茶やミネラルウォーター、果物、豆腐の美味しさを強く実感した。それもあってか、玲央君にあげる飲み物もいつの間にか麦茶を選んでいた。それでも、玲央君は嬉しそうに、ゆっくりと飲んでいる。
「美味しい……」
きっと、先生に同じことをしたら同じ反応を見せてくれたのかな。可愛い……。
「お二人共、楽しそうですね。夜更かしは疲れた筋肉に悪いですよ……」
あれ?誰か、近くにいる?
「……?お姉ちゃん、誰?」
後ろを振り向くと、さっきまではいなかったはずの軽装の女の人がいる。でも、この似る人のいない唯一無二の声、それに筋肉……。
最早、夜景どころではなくなった。
「宿舎に来ないと思ったらここにいらっしゃったのですね。さぁ、一緒に帰って快眠ストレッチをたくさんしましょう!よりよい健康ライフのために!」
私たちはなすがままにその人に引っ張られた。彼女は私たちの気持ちなど知ることなくドンドン歩いていく。トレーニング部の悪名の怖さに納得してしまう。
……もう、もう!
すごくいい雰囲気だったのに!
投稿している作品は、どちらがいいですか。
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作品個別で再投稿してほしい。
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個別だけにしてほしい。