※この作品はR-18です。

おねショタアーカイブ   作:交野平六

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 久しぶりの投稿となります。今までは卒業論文の校正で作品を投稿で来ていませんでした。
 今回はpixivでもリクエストのあったカズサのおねショタです。楽しんでいただければ光栄です。感想、ご意見、いつでもコメント欄にてお待ちしています。

pixivのURL《 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26749563 》


ギルティ・キティ

 今日は久しぶりに、スイーツ部の皆とチャットをつなげた。両親によって親戚の家に送られた私にとって、数少ない、他人とのつながりを感じられる貴重な時間だ。従妹は部活動で帰りが遅く、叔父も叔母も用事があって誰にも邪魔されない。唯一心配なことは、スマホの充電が持つかどうかである。そのことはあろうかと、モバイルバッテリーも満タンにし、延長コードも準備した。これで怖いものはない。

 時刻は20:00。約束の時間とばかりに、スマホが鳴る。画面を開く。予想通りだ。テーブルに移り、スマホやビスケットを近くに置く。画面に映る「通話を開始」に指を当てる。画面が四分割され、すぐにいつものスイーツ部の顔が映った。

 ヨシミはお風呂上がりか、髪を下ろして部屋着になっている。

 ナツは息が上がっていて、首元に汗が見える。

 アイリはチョコミントのヘアバンドをつけて、白のTシャツ。

 先日のことを思い返せば、こうして話ができることが奇跡に近くて少し目頭が熱くなる。キヴォトスを騒がせるエデン条約の騒動で私たちのいるトリニティ自治区は荒れてしまった。放課後スイーツ部にもその余波がやってきていた。私たちが行こうとしたキャンピングカーがどかされた上に、その撤去を強いた過激派によってアイリがケガをしてしまった。まぁ、私はヨシミ、ナツとその過激派と派手に喧嘩をし、後で両親にガミガミ怒られて親戚のいるこのD.U.自治区に送られてしまったわけだ。ただ、私を叱った後の両親の顔はどこかやるせなさを感じた。私の暴れた理由が友達を守るためであったことを察したのだろうか。私があーだこうーだと言っていても、本心は分かるわけではないが。

「……で、ナツ、何でそんなに汗で濡れているの?」

 早速ヨシミが切り出した。確かに、ナツは普段から表情を崩すようなことなんてしない。何かしらの運動なのだろうか?

「あぁ、これのことかい。実は、母に日頃の細やかな甘い時間を責められてね。無理矢理、闇夜の無間地獄に駆り出されてしまったのさ。全く、これでは明日の朝も起きられそうにないよ」

「な、なるほどね。夜マラソンをしていた、ってことね。大丈夫だった?」

「大丈夫さ。終わったら飴ちゃんがあると思えば怖くない」

 アイリはナツの言い回しをすぐに理解したようだ。ナツは今日、夜マラソンとして走っていて、丁度それから帰ってきたみたいだ。昼間は例の過激派が闊歩しているから、まだ安全な夜にしたのだろう。話してすぐに頬張った飴で膨らんだ頬がおかしさを誘う。ヨシミは突っ伏して笑っている。

「はぁ、はぁ、あぁもぉ、腹痛い。んで、カズサ、そっちはどう?無事?」

「まぁ、その、お出かけから帰ってきたときに玲央君と会ったのよ。それで、なぜか、和楽姫の相談に乗ることになって……」

 3人は目を見開いた。

「な、何だって……、あの、和楽姫に会ったのかい。カズサ、これから不幸が訪れるかもしれないから気をつけて」

「わ、和楽姫と会った⁈ねぇ、サイン、もらったのよね?何人分⁈」

「アハハ、2人とも落ち着いて。和楽姫さんのどんな相談に乗ったの?」

 私ははっきり言おうか、少し考えた。

「……うん、「月のモノ」についてで」

「ワーオ……。カズサ、変なこと吹き込んでいないわよね?」

「ヨシミの言う通りだよ。デリケートな話題だから心配になるよ」

「でも、私たちにとっても避けられない問題だよね。買いに行くことも恥ずかしいし、調べることもちょっと恥ずかしいし、うん、和楽姫さんにとってきっとカズサちゃんは恩人になっているかもしれないね」

 私自身の体験してきた苦労や経験が誰かの支えになって嬉しい。片手に持つビスケットがいつの間にか空の袋に変わってしまっていた。

 ……こんな話をしている最中でも、胸の中のぼんやりとした思いが今、私の頭の中を漂っていた。どうしても思い出してしまう、あの日の過ちを。

「ちょっとさ、話を変えてもいいかな?生理用品についての話をすると、ついつい頭に浮かんでしまうことがあるの」

 3人はお菓子を食べる手を止めた。

「急に話を変えるなんて、何のこと?もしかして、今いる所の穴場スイーツ⁈」

「落ち着くんだヨシミ。キャスパリーグの呼び名に相応しい真剣さのある顔だ。そんな些細な話とは思えない」

 ナツ……。こういうときに限って察しがいいのが憎らしい。幾分か、心の準備ができたような気がする。

「オホン……。これは、皆にはまだ話していなかったな、昔の苦い思い出」

 3人は首を傾げた。

 私には、その手の「性」に関わる話になると思い出してしまう、どうしても嫌な思い出がある。この3人なら話してもいいだろう。

 私は重くなった口を開けた。

 

 折角の顔合わせだっていうのに、急に自分語りをしてごめん。いや、「自分語り」というには他人には聴かせられないような話かも。まぁ、嫌だと思ったらその場で止めてしまっても構わないわ。だって、これは昔の私がしでかした過ちなんだから。

 私が小学生だったとき、いつもクラスの端にいる女の子が同級生にいたの。毎日絵を描いては図書室で本を読む、そんな物静かで、どこか周りから浮いていた子だった。うん、彼女の描く絵はとても上手で、「ペロロ描いてよ!」とお願いをするとその場で上手い絵を描いて同級生の注目を集めていて、羨ましかった。私なんてお粗末な絵しか描けないから尚更、ね……。

 そんな彼女が周囲から奇異の目で見られる時間があったのよ。

 それが保健体育、それも思春期の二次成長期。

 男子は悪ノリのまま、女子は恥ずかしがりながら皆が教室で受けていた中でその彼女は教室にいなかったのよ。先生は彼女の席を見るやすぐに何かを察したような顔をして授業を始めた上に、授業が終わった後、彼女はしれっと教室に戻り、周囲を慎重に見渡しながら自席に戻ったのを覚えているわ。男女のそういうことにそれなりに興味があった当時の私からすれば、彼女の行動が奇妙に思えたのよ。実際、男子たちの下ネタのノリに付き合う女子たちもクラスにはいたし、そこでノリに付き合わなかった女子たちは移動教室やお昼休みにクラスの片隅でヒソヒソと話していた。保健体育の授業のあったその日から、彼女は教室にいない休み時間が多くなり、周囲の目を気にして動くことが多くなった。それにつれて関わろうとする人物もいなくなり、彼女は孤立していった。クラスの皆も薄々、彼女が怪しいと気づいて話しかけなくなった。それどころか根も葉もない噂話をし始めた。

――実は知り合いとヤッているんじゃない?

――いやいや、女のくせに女が好きなんじゃね?

――うわぁ、それは気持ち悪いわ。ワケわかんねーし。

――あんなに好き勝手言われて何も言わないのはそうなんじゃ……。

 私はとても耐えられなかった。彼女がいじめられていることに、ではないの。散々な言われようであっても何も言い返さずに独りのままでいることに怒りが収まらなかったわ。

 その噂が立ち始めたある日、彼女を近所の公園で見たのよ。丁度、入道雲が目立つような空の日だったって覚えている。その公演では水飲み場があったの。そこで彼女は男の子と2人だけだった。私は家の庭で育ったアゲハを放して帰ろうとしたときだったから、あの彼女が男の子と何をするのか気になったの。私は公衆トイレの壁に隠れて、2人が何をするのか探ろうとしたの。もしかしたら、2人は少女漫画のように、誰もいない公園で告白をして、そこでエッチをするんじゃないか、なんてしょうもない妄想をしていたわよ。

 ――結果は予想外どころか、想像の上を大きく越えたわけ。

 水飲み場の蛇口を捻る音が鳴ったと思うと、2人の笑う声が聴こえてきたの。私は壁の端からそっと覗くと、蛇口に手を当てた水浸しの男の子、そして水を浴びて普段は滅多に見せない満面の笑みを見せる彼女。「満面の笑み」という言葉に似あう笑顔を募集したら最優秀賞を受賞できそうだったのね……。でも、どこか照れくさそうで、それでいて、幸せそうだった。

 好きな男の子に告白しても降られてばかりだった私にとって、この世で最も憎たらしかった。妬ましかった。そして、滅茶苦茶にしてしまいたかった。男の子が好きでもないのに幸せそうな彼女、男の子が好きなのに中々恋が叶わない私。思えば、あんなに酷いことを考えてしまったのは、正気でいられなくなるような夏の暑さのせいかもね、ハハハ……。

 それを見てからしばらくして、ある日、とうとう私は言ってしまった、あの言葉を。それも本人の前で。

――何なのよアンタ。あれだけ酷い言われようなのに何もしないなんてバカみたい。大体、スケベなことに興味がないなんてヘンったらありゃないわ、気持ち悪い。私、見たのよ。アンタが水を浴びてヘラヘラ笑っているの。アンタ、水が恋人だっての?本当に気色悪いわよ。

 その日はいつも通りの平和な教室だったんだ、私がそれを言うまでは。

突然、背中に何かがぶつかり、目の前に天井や照明が見えた。最初は何が起きたのか分からなかったわ。左に首を回すと黒板や椅子の脚、右に回すといつものロッカー。そこでようやく、私は彼女に突き飛ばされたと気づいた。私はすぐに別室に連れていかれて担任に叱られた。

どうやら、世界には彼女のように、人間以外の「モノ」でエッチな気持ちになる人がいるらしい。彼女のような人間は、その共感しがたい趣味で苦しい思いを常にしているからこそ、「普通」に当てはまる配慮をしなくてはならない、とのことだって。

――訳が分からないわよ。何で少数の人たちのために「普通」の私たちがわざわ     ざ道を広げなくちゃならないのよ⁈やるのは勝手だとしても、他人を巻き込まないでよ!

なんて当時の私は考えていた。今、思い返すとバカだよね……。自分の「普通」が世界の当たり前だと信じていたもの。もう、本当に自分が嫌になってくるわよ……。

その後、彼女は別の小学校に転校した。行方?誰も知らないわよ。

そして、私の悪い評判も勝手に生まれて、そして……、いや、もうやめよう。こんなみっともない自分語り、やっぱり、聴いていて楽しくないわよね?

 

 3人は静かであった。

 ヨシミはそっぽを向く。

 ナツは何も言わずに画面を見つめる。

 アイリは気まずそうに視線を逸らす。

「幻滅するよね。私がこんな失礼なことをしてしまった人間だって」

 ナツはすぐに返した。

「無理もないさ、カズサ。小学生であるならそう思ってしまうのも無理はない。これからやらなければいい話だよ。飴ちゃんでも舐めてリフレッシュしなよ」

「あ、ありがとう……」

 正直、今でも忘れられない嫌な思い出だ。ナツがああいう風に助言するのも一理ある。それでも、気をつけようとすると彼女の顔が浮かんでしまう。

――自分と相容れないものへの痛烈な怒りを向けたあの顔を。

 その日はお互いの近況報告を軽く済ませた後、通話を切った。時刻は8時43分。普段は倍近くの時間に亘ってチャット通話をするので、こんなに早く終わることなんてほぼありえない。皆ももっと話したいことがあったに違いないのに、私の身勝手な自分語りで終わらせてしまったみたいで気まずい。私だけの部屋では、エアコンの音が虚しく響いていた。

 

 ある日から、私はイライラするときにすることがある。スマホでとある怪文書を検索してそれを小声で読み上げることだ。その怪文書はネットでは「アビドス怪文書」と呼ばれていて、密かにコピペや朗読動画が作られる程の知名度だ。なぜ「アビドス怪文書」と言われているのか、って?それは今年起きたアビドス自地区での大スキャンダルを起こした女子生徒と共通点がどうも多いから、とのことらしい。

 肝心の内容はというと、「私」と名乗る女子生徒がとある少年と仲を深め、不純異性交遊に至り、通っていた学校から失踪する、そんなお話である。オカルトやダークウェブに詳しい配信者はどこから情報を拾ってくるのか、アビドス自地区で起きた大スキャンダルとの共通点をあれよあれよと見つけては自分たちでそれらしい結論を述べてはしたり顔である。無論、ネット上ではアビドス高等学校に対する痛烈な誹謗中傷、怪文書の女子生徒に対する同情の声や少年がどんな人物なのか調査を望む声と様々だ。

――あの日の少女と似ている、と思ってしまう。

 たとえ社会通念上ではよろしくないと断言される趣味を持っていながら、例の女子生徒は自身の破滅を承知の上で心からの願いを叶えた。対して私は普通の趣味、それも異性だけへの性欲を持っていながら恋人ができない。他所の人なら「じゃあ女同士でヤればいいじゃん」と思うかもしれないが、キヴォトスではその手の趣味を持つ生徒は愛憎の激しさで短命に終わってしまうことがほとんどだ。加えて、手軽にできることから性病の危険度だって異性同士より格段に高い。

自分から言うのも難だが、私はノンケだ。普段の振る舞いから察知されているのか、自然とそういう趣味の子は寄りつかない。つまり、私は15歳でありながら処女のまま。アイリは近隣の男子校の生徒と付き合っているし、多分、初体験は済ませているだろう。それなのに、怪文書の少女は処女を捨てたばかりか、自分の趣味を叶えてしまっている。

羨ましい。羨ましい。羨ましい。羨ましい。羨ましい。羨ましい。羨ましい。

 

「ただいまー、カズサちゃん。あら?ミツハは帰って来てない?」

 叔母の声だ。

「まだだよー。今度の定演の練習が長引いているんじゃない?」

「やれやれ……。今日の夜は雨が降るらしいし、心配ね。折り畳み傘、持っていたかしら?」

「持っていたよ。ミツハの傘は新品だから大丈夫でしょ」

「そうだったわ。さてと、洗面所、しばらく使うわね」

どうやら、仕事が終わって丁度着いたところのようだ。父さんの姉ということもあってか、叔母さんは父さんと似た仕草をする。子どもの安全を知ったときに片目をつぶる。それを姪の私の前でもすることは、余程私のことを気に入っているようだ。

 洗面所で手を洗い終えた叔母が戻ってきた。片手にはスーパーの広告。明日の買い物の計画を立てるつもりだろう。私がここにいると集中しにくいかもしれない。

「叔母さん、それじゃ、部屋に戻るね」

「はーい、カズサちゃん、また明日」

 

 来客用の部屋、それが今の私の部屋だ。私服、簡単な造りの椅子、無造作に伸びている延長コード。そしてヨレヨレのベッド。このベッドがあまり使わないにも関わらずこうも乱れているのか、というと、その……。

 まぁ、このベッドの上でやり切れない自分を慰めているからだ。

 あの少女のように「全てを捨てることも厭わずに心から想っている殿方とセックスしたい」との想いは、スイーツ部の皆に見せることなんてもっての外だ。同級生からは「発情期だから男子に媚びを売っているんでしょ?」とか、「援交やるにしても態度がね……」とか、根も葉もない、心もないことを裏で言われてきたために、たまらなく悔しかった。

 私はかつて、シャーレの先生をからかうつもりで恋人らしい振る舞いをしたことがある。あのときの私は失恋が続くわ、ノンケではないとの偏見を押しつけられるわ、やり場のない怒りを抑えられるものを欲していた。誰もが憧れるシャーレの先生なら私の苦しみを察してそれをしてくれるかもしれない、と本当にバカみたいな妄想を胸にやってみた。結果、先生の反応は想定したものではなかった。

――カズサ、あまりそういうことは他人にみだりにしないこと、気をつけなさい。

 そのときの先生は毅然としていたものの、どこか悲しそうに見えた。先生はキヴォトスの外では公立学校の教員をしていたそうで、そのときの心構えで苦しかったのだろう。ともあれ、その日の夜、私は股がヒリヒリ痛む位、ベッドでシた。

 ……最低だ、私。

 いつもシた後は気怠さと生臭さが部屋に満ちる。右手を高くかざすと、嫌な臭いを放つ愛液が電気の光を浴びて輝いている。恋人がいたら、こんな汚くて臭い愛液でも愛してくれる人がいるのだろうか。それすら叶わない自分の身の上を心から憎んだ。

 ……ヤりたい、全部をさらけ出せるエッチを、心から好きな男の人と。

 あのときの幸せそうな彼女のように、心から満たされるエッチがしたい。

 ふと、私の頭をあの男の子がよぎった。

左側に目立つアザのある顔。

天真爛漫さといじらしい優しさを持つ性格。

 私の心に悪魔が生まれた。

 ――玲央君。

 先生に振り向いてもらえなかった私のことを、素直な玲央君なら救ってくれるかもしれない。そう思った。

 愚かな私を煽るかのように、雨足がより激しくなった。

 

 朝食を食べ終えた私は、ベッドの上でスマホを開いた。無論、モモトークである。

 先日、玲央君の家にお邪魔したときに彼のアカウントと相互フォローになった。今日は土曜日なので、学校はお休み。あまりにも状況ができすぎている。

 真剣なことに誘うときは電話の方がいい。通話ボタンを押す。

「もしも~し、玲央君。元気かな?カズサよ」

「あ、ひさしぶり、カズサお姉ちゃん」

「もぉ、「カズサお姉ちゃん」じゃなくて「カズサ」でいいわよ」

「えへへ、ごめん。だって、そう言わないとセリカお姉ちゃんにガミガミ言われるんだ」

「まぁ、他人には他人のルールがあるものね。ちょっと、買い物に付き合ってほしいんだ、いいかな?」

「買い物?何を買うの?」

「はーい、セリカよ。急に玲央君とお出かけなんて、どうしたの?」

 想定外だ。勘の鋭そうな黒見セリカ。彼女を騙すには、何か……。

「まぁ、その、家族から業スーで山のような買い物を頼まれて……」

 しくじった!必然性のない言い訳をッ!

「……へえ。わざわざ玲央君を誘うなんて、不思議ね。何かよからぬこと、企んでいるでしょ」

 上等だ!こちらは放課後スイーツ部で鍛えたリサーチ力で勝負だ!

「そんなことないって!付き合ってあげたら、マカロン詰め合わせセットを買ってあげるから」

 D.U.自治区で有名なスイーツショップは、全て把握済み。

「マカロン⁈ま、まぁ、そこまでお礼をしてくれるなら、一緒に行かせてもいいけど……」

 心の内でガッツポーズをした。

「まぁ、安心しなって。何かあったら私が死守するからさ」

 これは嘘ではない。紛れもない事実だ。

「それじゃ、玲央君には9時にエンジェル24で集合と伝えてね」

「はいはい、何かあったら承知しないからね」

 止めようとすると電話が切れた。黒見セリカからすれば私はあまり信用されていないみたいだ。付き合いもそんなにないし、無理もないか。

 雨上がりで重苦しい部屋を変えるように、私は袋から服を出した。

 

 玲央君の通うフリースクールは、部活動がないこともあって土日は車も子どもの声がしない。私が幼い頃は同級生の男子たちが遊具で遊んでは休憩するための小屋でゲームをしていた。それが今では珍しい景色になってしまった。あのとき遊んでいた子たちはとっくに年相応の人間になったのだろうな。だのに、私はいつまでもキャスパリーグと呼ばれたことからも、そして、皆がエッチに興味があると決めつけていたことからも、目をそらしている。……って、誰もいない学校を見て何を考えているの⁈いやいや、あのアビドス怪文書を見てからやっぱり、私、おかしくなっているのかも。それとも、雨上がりの湿気のせいなのかな……。

「カズサお姉ちゃん?」

 聴きなれた声で名前を呼ばれた。あ、玲央君か。

 玲央君は青のTシャツ、黒の膝丈までのズボン、エコバッグにサンダル。雨上がりということもあってか、肌はうっすらと汗ばんでいる。かくいう私も項や背中も湿気で汗ばんでいる。できることならここで服を脱いでしまおうかと考えた程だ。それを胸に秘めて、私は玲央君に近づく。

「やっほー、久しぶりだね。元気だった?」

「うん。チセお姉ちゃんも元気になったみたい。あ、もちろん、僕も」

「もぉ~~、そういうところが可愛いな、このこのッ」

 汗ばんだ頬を両の掌でモチモチと触る。とても気持ちよさそうだ。

「わわわ、くすぐったいよ」

「それじゃ、ちょっとお買い物を手伝ってくれるかな?」

「うん!手伝う!」

 遠くの道路にできた水溜まりが、とても眩しかった。そんな道路を私たちは歩く。

 

 玲央君との買い物を無事に終え、私は今、玲央君と公園のベンチに座っている。その傍らには目的のお店で買ったマカロン詰め合わせセットがある。

「早めに並んだから、すぐに買えたね」

「うん、自分のお財布で買い物をするなんて初めて」

「え……?自分で買い物をしたこと、ないの?」

「買い物はネット通販でお父さんが買ってくれるんだ。だから、さっきはちょっと怖かった」

 慣れないことが怖い、か……。

「そのさ、そうして分からないことと向かい合うでしょ。誰だってそれは怖くなるわよ。でも、未だに納得できないことがあるのよね……」

「納得できないこと?」

 もう、ここで玲央君に言ってしまおう。

 流れる汗がいつにも増して多くなる。

「ま、まぁ、その……、玲央君ってさ、エッチしたいって気持ち、ある?」

「……うん。好きな女の子となら」

「そりゃそうよね。私だって素敵な男の子とエッチしたいし。でもね、世の中には皆が皆、そうだとは限らないの。同じ性別の人が好きだとか、燃える火や動く水が好きだとか、ね……」

「そんなこと、あるの?」

「後で知ったんだけど、世の中には、水でエッチな気持ちになる人がいるみたい」

「ふーん……、そういう人もいるんだね」

「昔、私はそういう人がいると知らずに好き勝手して傷つけちゃったことがあるんだ。恥ずかしいな、だって、自分の当たり前でしか「普通」を見ていない年だったからね。あのときの子、今はどうしているんだろうなぁ」

 他人に話すとこうも恥ずかしさが込み上げてくる。先生に似た聡明さがちょっとある玲央君でも知らないみたいだ。まぁ、水で性欲が湧きあがるなんて、当事者でもない限り、想像すら叶わないよね。

「自分の当たり前で「普通」を見る、か……。アヤネお姉ちゃん、大丈夫かな?」

 え?ま、まさか、玲央君もそっち側の人間だった?

 流れる汗がさっきよりも脂っぽさが増して、とても気持ち悪い。

「アヤネお姉ちゃんってどんな子だったの?」

「アヤネお姉ちゃんはね、僕みたいな男の子のことが好きなんだって。自分から言っていたの」

 キヴォトスではショタコンの少女なんて珍しいことじゃない。え、いや、まさか……、ね。

「つ、つまりさ、玲央君はエッチしたってこと?」

「うん。アヤネお姉ちゃん、すごく嬉しそうだった。だって、僕のことが心から好きだったらしくて……」

 小学生で初体験を済ませる子は従妹から噂でよく聞くが、まさか、玲央君もだったとは……。ふーん、プレイボーイじゃん。

「そのお姉ちゃんのこと、もっと聴かせて」

「お姉ちゃんはね、「男の子が好き」って言ったんだ。自分のことを「普通」じゃないと言っていたし、きっと、お姉ちゃんも苦しかったのかな……」

 どうも見覚えのある心理、と思ったらあれだ。アビドス怪文書の「私」だ。配信者たちのいう考察の、精度の高さが怖くなる。

「……「男の子が好き」、ね。何かさ、そのお姉ちゃんから貰ったものってある?」

「見て見て。このクローバーのストラップをくれたんだ」

 べたつく汗も外の暑さも忘れていた。私の目の前にいるアザの少年は、私が羨望を向ける少女を知っている。しかも、怪文書に出てくるストラップも一致する。もっと気になる。

「アヤネお姉ちゃんとエッチした後、そのお姉ちゃんとは逢っている?」

「……遠い所に行っちゃったとセリカお姉ちゃんもお父さんも言うんだ。ねぇ、きっと、逢えるよね?僕がいい子になれば逢えるのかな?」

 玲央君は涙ぐんだ声で話した。ポケットからティッシュを出し、彼に渡すと、自分で鼻をかんだ。見るからに辛そうだ。

「いい子、ねぇ……。私はそのいい子からも程遠いわ。玲央君は、今でもいい子だよ。好きな子にとっては君がエッチしてくれたことが何よりも幸せかもね。ほら、泣かない。ティッシュならいくらでもあるし」

 目の周りが真っ赤になっている。今の彼にアビドス怪文書のことを教えるのはとてもまずいだろう。彼にあれを教えたら、どんなに混乱することか……。

 私はポケットからティッシュを出し、玲央君に差し出す。彼はティッシュを取り出して鼻をかむ。刺すような暑さの中、こんなにも鼻をかむなんておかしな光景だ。彼の横には使われたティッシュが積まれている。見ていると、エッチなマンガで男の子が自慰をするときに使うティッシュを思い出してしまう。あぁ、もう耐えられない。本心を言ってしまおう。

「実はさ、私、その、さっき話したアヤネちゃんのことが何だか、羨ましくなってきたんだ……。だってさ、たった一度だけでも自分に素直になってエッチができるなんて人生でも滅多なことじゃない。むしろ、叶わない人の方がもっと多いからね。そう考えると、玲央君はさ、アヤネちゃんのことを救済したと言えるのよ」

「僕が、アヤネお姉ちゃんを「キューサイ」した……?どういうこと?」

 我ながら酷いようで一理ある物言いだ。あの日、私を突き飛ばしたあの子が羨ましくってしょうがなかった。玲央君にとって、自分を肯定してくれる相手が必要なはずだ。

「救済ってのはね、誰かを救うってこと。人の数だけあるエッチの中で、寂しい思いをしていたアヤネちゃんに君は手を差し伸べたの。そうね……、彼女にとって君といる時間は幸せだったのかもね……」

 玲央君の潤んだ目の形が変わる。目尻に横皺ができた。

「本当に?じゃあ、僕が元気でいればアヤネお姉ちゃんといつか逢える、てコト?」

「まぁ、いつかね。君が大きくなれば逢えるかもね」

 ここまで来てしまったからには、もう引くこともできない。ヤりたい、玲央君と。

「じゃあさ、アヤネちゃんにしてくれたエッチで私を抱いてくれる?」

「……エ?そ、そんなに気軽にやるものじゃないって言われていて」

 あぁ、じれったい。

「いいから!私にエッチをしてくれたら、一緒にアイスを食べよ。私だって、玲央君になら処女を捧げられそうだから……」

 アハハ……、私は何を言っているんだろう。最早、夏の暑さが言い訳にならない程の醜い姿を見せているに違いない。周りのセミは私たちを催促するように自分の声を響かせる。

 私は玲央君の手を取り、目の前にある公衆トイレに向かって歩いた。

 

 公衆トイレの個室。

 今の私たちにとっては、小さくて汚い連れ込み宿だった。隅っこは黒ずんでいて、主のいない蜘蛛の巣には羽虫の死骸が絡まっている。そんな個室のトイレの便座に玲央君を座らせる。年頃の子にしてはえらく小さい彼を見ると、守ってあげたくなる気持ちと淫獣にしてやりたい気持ちが混ざり合う。

「じゃ、アヤネちゃんには最初、どんなことをしたのかな?」

 彼は耳たぶまで真っ赤にして言った。

「え、えっと、お口をくっつけるキス、を、した、いや、しました……」

「なるほどね。じゃ、私にもしてよ、それ」

 玲央君の目線に顔を合わせて、私は唇を重ねた。何だ、大したことじゃない。そう思ったそのとき、唇の間に鋭い肉が入ってきた。あ、これがベロキスか。私も負けないように舌を左側へ動かし、玲央君の口に入れた。口の中に入れた舌から、歯が当たる。私が舌を入れてからは、先手を打った彼の舌は人形のように動かなくなっている。気づくと、玲央君の頭に右手を、左手でわき腹をつかんでいた。舌を入れあう程に、互いの息の臭い、鼻息の熱さ、口へと伝う顔の汗の味が口の中でミックスされる。あぁヤバい。キスってこんなにゾクゾクするものなんだ……。

 私が舌を引き抜くと、2人だけの唾液の糸が互いの口をつないでいた。あぁ、アビドス怪文書があれだけ人気を集めていた理由も実際にやってみて分かる気がする。セックスやペッティングの気持ちよさ、生々しさ、そして楽しさを描いているからこそ、誰もが惹かれるのだ。玲央君も恍惚とした表情を見せ、顎から汗を滴らせていた。

 私の目を引いたのはそこではない。彼の身体、それも股間だ。ズボンを突き破ろうとするかのように、玲央君のおちんちんが立っていた。こうなった以上は、最後まで私が責任を取らないと。

「やっぱりさ、ベロチューできて嬉しかった?玲央君。私もすっごく楽しかったなぁ……。そ、れ、と、この部屋、暑くなっちゃったから服を脱いじゃおっか」

 果物の皮を脱ぐように私は彼の服を脱がせた。最初は上半身。Tシャツを脱がせるとそこには体毛のない肌色の裸体があった。成熟した男性の身体とは違い、玲央君の身体はまっさらだ。身体には体毛もない。暗い色の乳首、洗濯板のようなあばら骨、程よく痩せたお腹。奥空アヤネもきっと、この身体を美味しく頂いたのかな。

「さてと、上半身が裸になっちゃったね。ところで、どんなこと、したの?」

「その……、男の子なのにおっぱいを吸っていた、んだ……。女の人のように大きくもないのに、アヤネお姉ちゃん、すごく興奮していた……」

 やれやれ、玲央君はまだ乙女心を分かっていないな……。

「いい、玲央君?男の子にもおっぱいがあるのはね、相手をする女の子がチュッチュするために神様が作ってくれたのよ。私、興奮していたアヤネちゃんの気持ちが分かるなぁ。んじゃ、始めるわよ」

 迷うことなく、私は玲央君のおっぱいにキスした。彼の身体が機械仕掛けのおもちゃのように反応する。今の私はまるで玲央君から生まれた赤ちゃんになったような気分だ。男の子である以上、母乳は飲めないがとても幸せだ。

 段々と、顔が赤らんできて、理性が消えていそうな顔になってきた。私の秘部も少しだが濡れてきたみたいだ。彼を脱がせた私も脱ぐのが礼儀だろうな。

 

「フフフ……。見て見て、玲央君。まず、Tシャツ。続いて、ブラジャー。……はーい、これで私もおっぱい丸出しだぁ。お揃いね」

 上半身裸になると、肌が汗ばんでいることを実感する。そんなに私のおっぱいは大きいわけでもないし、いやらしいわけでもない。玲央君はというと、美術品を見るような目で私のおっぱいを見ている。

「……え?ちょ、ちょっと……、私のおっぱい、そんなに釘付けになる?そのさ、アヤネちゃんの方がもっと綺麗な気がするけど……」

 玲央君は顔を背けながら喋る。

「女の人のおっぱい、僕にはないからつい、綺麗に見えて……」

 こ、このムッツリめッ!

 即座に彼の腕をつかんで掌を私のおっぱいへ導いた。そして、彼の手の上から自分の手を重ねて、何度も揉ませた。とても優しく、どこか煽情的な手つきだ。

「わぁ……。柔らかい。ずっとモミモミしていたい……」

「あ、ありがとう。誰かに触らせるなんて、君が初めてで……。顔、この谷間に埋めてみる?」

 玲央君は頭を縦に振る。両腕を玲央君の頭の後ろに回し、谷間に埋めさせる。彼は谷間で深く深呼吸して、私のおっぱいの柔らかさに夢中だ。何だか、彼の母親になったような気分だ。

 

 私たちは今、上半身裸である。次にすることは決まっていた。

 玲央君はおちんちんに骨が入っているかのように膨らみ、私はマンコが湿ってきてクリが張るような気分になった。次は自分の服を相手に脱がせてみよう。

「次にさ、私のズボン、脱がせてみよっか。私もお股がすごく苦しくって……」

 玲央君は緊張しながらも頷いた。

 彼は私のズボンをつかむ。私は前のチャックのボタン、ジッパーを外した。

「女の子の大切なところ、気になる?」

「……うん。他の女の子はどうなっているのか知りたい」

「よく言えました~~。それじゃ、ハイッ」

 勢いよくズボンを脱がせた。あ、処理を忘れた。

 私のマンコを中心に、ズボンの内側を見せた。玲央君は釘付け。

「幻滅したよね、こんなお股。モテる子はフサフサの陰毛を剃っているから、私のでそんなにエッチしたいとか思わないでしょ、ハハハ……」

 玲央君はそんなこともお構いなしに顔を近づけた。

「そんなことないよ。アヤネお姉ちゃんにしたように、僕だってここにキスすることもできるよ」

「ハァ……、いいわよ、さ、おいで」

 股間から痺れるような気持ちよさが全身を巡ってくる。どうやら、玲央君が私の性器に口をつけたみたいだ。上手くシようと不器用になっている彼の舌が、膣やクリ、果てはヒダを舐め回す。

 声にならない声が私の喉から出てくる。普段の自慰では味わえない気持ちよさで、たまらなく気持ちいい。やがて、玲央君は咳払いをして、苦いものを食べたかのような渋い顔になった。

「どうしたの?もっとシてよ」

「ごめんなさい、そ、その、おしっこみたいなのがドロドロと出てきて、それが苦くて……」

 右手で膣を撫で、そこの臭いを嗅いで舐める。苦い。好き嫌いが分かれるのも無理はないみたいだ。無茶をさせたのかな。

少しばかり、私だけが楽しみすぎたみたいだ。そろそろ、私が玲央君を気持ちよくさせてあげないと。

 

 私は苦しそうな顔の玲央君を抱きしめた。遮る衣服がないからか、鼻息や柔らかい頬の肉がおっぱいに直接伝わってくる。今までクンニをしたとき、本当にイったことを知らなかったんだろうな。

「嫌な思いをさせてごめん。苦かったよね……」

「だ、大丈夫。皆が僕の精子を飲みたがらない気持ち、分かった気がする、うん……」

 部屋の熱さで火照った私たちは、一旦、冷静になった。自分だけが気持ちよくなろうとした私の身勝手さが嫌になる。

「この前の和楽姫のこともだけど、こういう小さいことに気づける玲央君は素敵だよ。さ、ズボンを脱ごっか」

 玲央君を便座から立たせ、私は彼のズボンに手をかけた。野菜の皮を剝くように下ろした彼の股は、既に甘ったるい匂いを放っている。そそり立つおちんちんは皮から少し顔を覗かせ、外からの陽の光を浴びてヌラヌラと輝く。付け根の玉袋は色があまりついていない。身体の他の部分は同じ年の頃の私と変わらないものの、別の生物のようなおちんちんが嫌でも雄なんだと意識させられる。

「おぉ……。す、すご。我慢汁の臭いがキツイね」

「我慢汁?な、何のこと?」

「これはね、おちんちんが射精する前に無意識に出る特別な液よ。これが出るってことは、「僕はエッチの準備ができてます」と言っているのと同じ」

「そ、そうなの?」

 まるでエロマンガみたいなシチュエーションじゃん。溜まった我慢汁で圧倒されるなんて想像さえしていなかった……。

「じゃ、舐めるね」

 私は顎を少し広げてから玲央君のおちんちんを口に含んだ。口の中のおちんちんは血管が巡っているのか、舌や上顎に脈拍を感じる。裏筋を優しく包む度に、彼は甘い喘ぎを上げる。

 彼の中ではフェラチオの気持ちよさ、先程実感した苦いザーメンを飲ませてしまうことへの罪悪感で苦しんでいるに違いない。私の横顔に手を当てているのは、イきそうになったときにすぐに離そうと準備しているのかな。

――残念だけど、それは私の本心に反している。

 私はフェラチオをしながら、その両手に指を絡ませた。彼の喘ぎも段々と大きくなってきた。いよいよだ、出るみたいだ。

「へおふん?へほお?おふひひへんふらひて」

「え、わ、分かった。アッ、ウッ、イクッ」

 ソースが出るように、私の口内がザーメンで満たされた。すぐに近くのトイレットペーパーを引っ張って手にまとめ、そこに口に含んだものをすべて吐き出す。

程よく濁った白さ、水に絵の具を混ぜたような色合い、そして、およそ人間の身体から出たとは思えない磯臭さ。

――これが私の人生で初めて口に含んだザーメン、か。

 玲央君は喋る。

「わ、わぁ……。ご、ごめんなさい、ごめんなさい、あわわ……」

「いや、悲しい顔をしないでよ。私は嫌だと思っていないからね。むしろ、感謝したいのは私よ。最後まで楽しも♡」

 これで私たちは靴と靴下を除いて、ほとんど裸だ。やるべきこともほとんど終えた。もうここまで来たとしたら、と思ったが、ふと気になったことがあった。

「ところで、玲央君はさ、コンドームを使ったことってある?」

「コンドーム?使ったことはないけど……」

 私はバッグから個包装の袋を取り出す。念のため、爪を切っておいて正解だ。

「これがコンドーム……」

「そ。これを使ってエッチをすることが、これからの玲央君に必要なのよ。セックスをすると子どもができてしまうかもしれないから、このコンドームで避妊をするの」

「子どもができる……。だったら育てればいいじゃん!」

「はぁ……。今の私たちじゃそれはできないの。子どもを育てるって、責任が大きいのよ」

 段々と玲央君が困惑の色を見せる。

「そんな……。でも、これを使ってもイけるのかな?」

「はいはい。論より証拠。やってみよっか」

 私は袋を開け、中から取り出した。そして、そそり立つ玲央君のおちんちんに沿わせるように被せた。コンドームはピンク色ということもあってか、大人のおもちゃのように見える。

 私は指で膣をいじる。そして、便座の上に座った。最初のときとポジションが変わった。今度は私が玲央君を包み込む番だ。

「おーいで、玲央君」

 目の前にいる裸の少年は私に抱きつく。股には硬くなったおちんちんが当たる。

「いよいよ最後だよ。コンドームを着けてのセックス、やってみよっか」

 玲央君が挿入に苦戦している様子を見ていると、突然、身体に強烈な衝撃が走った。それも、身体に異物がねじ込まれるような。

「は、入った……」

「いいじゃん!そのままさ、「アヤネお姉ちゃん」にしたように私と気持ちよくなろうよ」

 玲央君は欲望のなすままに必死になって腰も、身体も、全身でピストン運動を始めた。打ち付けられるとき、入口に当たるとき、そして行き来するときの擦りつけられる気持ちよさ。私のことを気持ちよくしようと必死になっている思いが伝わってくる。

意外にも、コンドームをつけてのエッチは楽しい。ゴム製のコンドームをつけることで、癖になりそうな感触になる。生ですることも気持ちよいのかもしれないが、コンドームも悪くないな。

「もっともっと振って!全部、私が受け止めるからァッ!」

「出るよ、出るよ、イクゥッ!」

 私たちは野生の動物のように盛り合った。

 

「それで、どうだった?さっきのコンドームセックス」

「き、気持ち良かった……。その、最初は痛かったけど、段々、癖になって、気づいたら射精していたんだ。案外、怖くなかった」

「でしょ。私もセックスは初めてだったけど、初めてが玲央君でよかった」

「ありがとう、カズサお姉ちゃん……」

 セックスを終えた私たちは先程のベンチに戻り、近くのコンビニでソーダ味の棒アイスを買って2人で食べた。玲央君の人生初のコンドームセックスで無事にイけたみたいで、飲みかけのスポドリを飲ませるまではグッタリとしていた。まぁ、私も初めてのセックスだったために、自慰だけでは味わえない悦びを共有できて嬉しかった。

 玲央君はというと、アイスにむしゃぶりついている。まるで、さっきのセックスで失った体力や精力を養おうとしているみたいだ。何より、彼がコンドームセックスでもイけたようで安心した。これで彼もエッチの決めつけをすることもないだろうな。かつての私のような失敗をすることもないと、信じられる。

 時間を確認しようと、腕時計を見る。時刻は11時50分。お昼ご飯に丁度良い時間だ。この暑い時間帯になると、業スーでも冷たい食べ物が欲しくなってくる。幸い、マカロン詰め合わせセットは保冷バッグで厳重に冷やしていることもあってまだまだ暑さに耐えられそうだ。

 私は隣にいる子どもに声をかけた。

「そろそろお昼の時間だね。一緒にお昼ご飯、食べてみない?」

 アザのある顔で私を優しく見つめて、玲央君は答える。

「うん!一緒に行こう!」

 あぁ、先生に似ているなぁ、そういうさりげない笑顔が。

 私たちはベンチから立ち、公園を出た。公園のセミの声がファンファーレのように鳴り響く。加えて、雨上がりのジメジメもすっかりなくなった。

 私たちは手を繋ぎ、お店に向かって道路へと歩き出した。

 




 今作は『正欲』を意識した場面を加えました。想像もできないような性癖が理解されない哀しさの描写に関して、この手のエロを考える上でこの作品には頭が上がりません……。是非とも、皆さんにも読んでほしい作品です。

投稿している作品は、どちらがいいですか。

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  • 作品個別で再投稿してほしい。
  • 個別だけにしてほしい。
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