この世界はつまらない。
街は狭っ苦しいのに人だけは沢山居て、街を一歩出れば魔物が居る。
そんな奴らを相手に狩りをする馬鹿が居て、その素材で街が発展していく。
貴族たちは偉そうに道を歩いて、平民はそれに媚びるように頭を下げる。
調子に乗れば誰かから呪われて生活が一変してしまうことだってある。
ここはそんなありきたりでつまらない世界だ。
私、私は、ご主人様の身の回りを世話する使用人だ。
ご主人様は商人で、私以外にも使用人が何人もいる大きな家に住んでいる。
だというのにご主人様は私が随分とお気に入りらしい。
今日も難しそうな商談に連れて行かれて、ただ笑顔で突っ立っている。
「レンド様がお連れの使用人は本当に美人さんでございますね、可愛がりたくなってしまいますわ」
商談相手の品の良い御婦人が私を褒めてきた。
こうなるとご主人様は堰を切ったように話し始めて止まらなくなる。
「えぇそうでしょう!この子は本当にいい子なんですよ、今度また新しい衣装を贈ろうと思っていて……」
「でしたらわたくしどもにお任せくださいな、生地から仕立て、縫製まで何でもご相談承りますわよ!」
あぁ、まったく……そんな無駄遣いはしないほうが良いのに。
結局ご主人様は商いに必要な商品の他に、無駄な私に対しての贈り物まで買ってしまった。
「あぁ……いい買い物をしたなぁ……!あれを着た君を見るのが今から楽しみで仕方が無いね」
満面の笑みで私を見つめてくるご主人様の顔を、私は直視できなかった。
目を背けて、頬の赤みがバレないことを願いながら、小さな声で。
「お戯れは程々にお願いします、ご主人様」
そう声を掛けるのが精一杯だった。
その日の夜の事、私はご主人様に呼び出しを受けた。
めかしこんだりなんてしない、いつも通りの使用人の服で赴く。
静かな寝室に私とご主人様の二人だけ。
自然と心臓が早鐘を打つ、顔が今にも火を吐きそうな程に熱い。
「やぁ、今日も来てくれて嬉しいよ、さぁ座って座って」
ソファに腰掛けたご主人様が当然のように隣に座るよう促してくる。
思わずため息を吐いた。
「……失礼致します、ご主人様」
ソファに腰掛けるために一度背を向ける。
お尻にご主人様の粘つくような視線を感じて、背筋を冷たいものが駆け上がった。
「今日も君は褒められていたね、美人さんだなんて言われていたじゃないか」
いつものように私の肩に腕を回して、ご主人様は機嫌良さそうに語る。
すっぽりと腕一本に収まってしまいそうな小さな私の身体を、ごつごつとしている重たいご主人様の腕が私をそっと抱き寄せた。
「大丈夫だよ、僕は今でも君の格好良かった頃を覚えているからね、忘れるわけがないだろう?」
ご主人様は抱き寄せた私の頭に軽い口づけを何度もする。
アルコールの匂いが鼻を衝く、好きだった匂いのはずなのに過敏に反応してしまう。
思わずご主人様を押しのけようとするけれど、私の力ではご主人様の腕すら動かすことができない。
「な、なぁ、やっぱり俺……」
思わず昔の言葉遣いに戻ってしまった私の口は、ご主人様の手で塞がれた。
「駄目だよ、君はもうあの頃の君に戻れなくなっちゃったんだから、ほら見てみなよ、僕の腕ですら君は押しのけられない……だから、駄目だよ」
笑う口元と睨み付ける目がまるで別の生き物のように感じられてしまうようなご主人様の表情に。恐怖とは別の感情が湧き上がる。
向こうの方が強い、私は抵抗できない、そんな感情を意識すると下腹部が熱を帯びてゆく。
口を塞ぐ手が離れた時の呼吸には、ただの呼吸ではない酷く興奮した熱気が込められていた。
「あんなに格好良い男だった君が、こんな可愛らしい女の子になっちゃうなんて……呪いって怖いものだよね」
けらけらと笑いながらそう話すご主人様。
目を逸らしていた現実を突然ご主人様から突き付けられて、私の顔は焼けた鉄のように赤く染まっていく。
そう、私は男性だった。
魔物を狩り、遺跡を暴いて糊口をしのぐようなろくでなしだった私は、相棒だったご主人様と一緒に各地を転々としていた。
「あぁごめんよ、そんなに赤くならないで……怒らせてしまったなら謝るからさ」
ご主人様が態度を変えて、神妙な面持ちになる。
分かっている、ご主人様は申し訳ないなんて思っていない。
だというのに私はこの愛らしいご主人様を許してしまうのだ。
「いいえご主人様、私は怒ってなんていませんよ……少し恥ずかしかっただけですから」
そう伝えるとご主人様は子供のようにあどけない笑顔を見せる。
私はそれを愛らしいなんて感じてしまうのだ。
私の愚かさがつくづく嫌になる。
私が女に変わった時、私を組み敷いて無理やり純潔を奪うようなご主人様なのに。
私はこの人を愛してしまっている。
「んっ……」
私を抱きしめる腕の力が強くなる。
逃げられない。
ご主人様の手が私の胸に伸びてくる。
「ありがとう……やっぱり僕は君のことが大好きだよ……」
頬へのキス。
いやだ、許さない。
私は顔の向きを変えて、キスの対象を唇へと無理やり変える。
「んむ……はぷ……」
私の口の中を責め立てるような暴力的なキス。
むせ返るようなアルコールの匂いが体の中を通って鼻腔まで届いて、匂いだけで酔ってしまいそうになる。
唾液が泡になって爆ぜる音が、静かな寝室に響いた。
「んぅ……!」
キスを続けたまま、手持ち無沙汰になったご主人様が私の胸を弄ぶ。
小さく薄い私の乳房が形を変えるほど強く握られて、思わず目を閉じた。
ぐにぐにと形が変わるのを面白がっているかのように、ご主人様は何度もしつこく私の胸を揉みしだく。
「あふ……んゃぁ……」
唇を離して呼吸を整えたいのに、ご主人様は私が逃げる事を許してくれない。
乳房を玩具にしていたご主人様は先端の固く腫れあがった乳頭に興味を移したようだ。
執拗に乳首の周りを指で撫で擦り、こちらを焦らしてくる。
ご主人様の爪が乳頭に軽く触れるたびに私の腰が意に反して跳ね上がる。
「はい、おしまい」
突然ご主人様がすべての愛撫を止めて手を離す。
やだ。なんで。もっとして。ご主人様。好き。好き。好き。お願いします。
膨れ上がった欲望が、行き場を無くして私の中で暴れ狂うような感覚だ。
こちらを見つめるご主人様の目を見て、意図に気付く。
「もう君も疲れちゃったでしょう?それとも、もっとして欲しかったりするのかな?」
あぁ、ご主人様は今とても楽しそうな笑顔をしている。
私を苛めて遊びたいんだと理解できた。
下腹部の熱がより熱くなる。
口角が上がってしまいそうになるのを抑えて、冷静を装う。
「……はいご主人様、私はもっと弄んでいただきたいです」
従順に、丁寧に、私はご主人様に隷属する。
私は仕方なくご主人様の戯れに付き合っている。
だから仕方ないのだ。
太ももを伝いタイツを汚すこの液体は、分泌されてしまうのだから仕方ない。
「へぇ?君はもっとして欲しいんだ?うん……どうしようかな……」
ご主人様は顎に手を当てて、考えるふりをして焦らしてくる。
ごめんなさい。焦らさないで。お願いします。
そんな言葉がずっと頭の中に響く。
太ももを擦り合わせて微弱な刺激を自分に与えるけれど、より体を疼かせるだけだった。
「して欲しいんだろう?だったら、ちゃんとお願いしないと……例えばもっと私を興奮させたりとかね」
ご主人様はソファに座り直して、手で私に前に立つよう促している。
なるほど、ご主人様は私を辱めたいんだ。
促されるまま私はご主人様の前に立つ。
顔は熱く、はたから見れば酷いくらいに赤面しているのだろう。
足はガタガタと震えて言う事を聞いてくれない。
喉が急に乾いたような気がして、口の中の唾液を飲み込む。
「あぁ僕の前に立って恥ずかしそうに佇む君は確かに可愛らしいよ、それで?僕にどうしてほしいのかな?」
あぁ、ご主人様。
そんないじわるな笑顔で私を見ないでください。
その視線だけで私の背筋を快楽が駆け抜けていくのです。
震える手でスカートを握り締めてゆっくりとたくし上げると、ご主人様の視線が私の股間に集中するのを感じた。
下腹部が更に熱を帯びて、太ももを熱い液体が垂れていく。
下着が露わになって、風が股の間をすり抜けていくのを感じる。
「ご、ご主人様……どうかお慈悲を……も、もう私は我慢できないのです」
震える唇を何とか動かして言葉を紡ぐ。
呼吸すら喉を焼く炎のように熱く感じる。
「随分と嬉しそうにおねだりするようになったんだね」
くすくすと笑いながら投げかけられたご主人様の言葉に、私は反射的に頬を触る。
口角が上がっている。
私は今、辱められて弄ばれて笑っている。
あぁ、私はなんて浅ましいのだろう。
「は、はい!私は、ご主人様に下着を見せて喜んでいる浅ましい女です……!」
自らを卑下して、愚かで淫猥な自分を曝け出す。
酷く心地の良い解放感に、いともたやすく私は快楽の絶頂に達した。
ご主人様の笑みが一層深くなるのが見える。
この浅ましい姿を喜んでいただけていることが、何よりも嬉しく感じてしまう。
「ふぅん、下着を見せるだけで喜んでるんだ……じゃあもしも下着を脱いで全部曝け出したらどうなっちゃうのかな?」
ご主人様の提案が荒野に降り注ぐ雨のように頭の中に染み渡る。
私はもはや笑みを隠そうともせず、タイツに手をかける。
脱ぐ動作にすら焦れてしまうほど急いでいるのに、水気を帯びたタイツは肌に張り付いて脱ぎ辛い。
何とか脱いだタイツはぺちゃりとカーペットに当たって、染みを作る。
犬のように何度も浅い呼吸を繰り返して、下着を下ろす。
二度目の絶頂で足が別の生き物のように勝手に跳ねる。
やめろ。動くな。脱げない。ご主人様に見てもらいたいのに。
「ふぅーっ♡うぅーっ♡」
獣のような呼吸音が自分の物だと気付きもせずに、私は下着を脱いでスカートを捲り上げる。
握り締められた下着から液体が絞られて、びちゃびちゃと床に跳ねた。
発情した雌の匂いが鼻腔を満たす。
程なく三度目の絶頂を迎えて、私は立つことすらできなくなった。
「ご主人様、ご主人様ぁ♡」
甘えるような媚びるような声が、私の喉から漏れ出す。
ご主人様の顔は満面の笑みだ。
ご主人様を喜ばせることができた喜びで心が満たされていく。
「はーい良く出来ました、それじゃあまずは……」
ご機嫌な声でご主人様が話しながら近づいてくる。
ベルトを緩めて、ズボンを下ろす。
下着の下でご主人様の性器が大きく屹立しているのが見て取れる。
私の視線はご主人様の股間に縫い付けられてしまった。
「ご奉仕ちゃんとできるよね?」
その言葉に私は首が千切れてしまいそうなほどに大きく頷いた。