コンクリートの壁は冷たく、分厚い鉄の扉は外界との隔絶を象徴していた。そこは、呪術界の最上層部ですらその存在を知らない、人里離れた山中に設けられた秘密の訓練施設、その地下深く。
重苦しい静寂が空間を支配し、空気そのものが呪力によって凝固しているかのように感じられる。五条悟が張った「帳」は完璧だった。外部からの呪力探知は一切遮断され、部屋の地下に施された強力な結界は、常に微細な振動を放ちながら、内部の呪力を強制的に抑え込んでいる。
ここは、外界から切り離された「無下限の檻」。
その檻の中で、呪術高専東京校の2年生、ユキは息を詰めて立っていた。
彼女は五条悟が認めるほどの並外れた才能を持つ呪術師だ。特級に匹敵する呪力を持ちながらも、その精神構造はガラス細工のように脆い。特に「愛する人からの裏切りや、期待を裏切ること」への根源的な恐怖が、彼女の呪力の暴走を招く。先日の重要任務では、そのパニックが引き金となり、彼女は制御不能な呪力爆発を起こし、甚大な被害を出してしまった。
表向き、五条は上層部にこう報告した。「特級相当の呪力暴走を起こした教え子の『治療』を行う。場所は秘匿する」と。
「ユキ、ぼんやりしない。これは治療だ」
五条の声は、いつもと同じ軽薄さを装っていたが、どこか深い底冷えを感じさせた。彼はユキの身体を、頭の先からつま先まで、品定めするように見つめている。その眼には、教師としての冷静さと、何か別の、抗いがたい欲望の光が混ざり合っていた。
「センセイ……、本当に、この格好じゃないとダメなんですか」
ユキはか細い声で尋ねた。彼女が今、身に纏っているのは、訓練着と呼ぶにはあまりにも心許ない、肌をほとんど晒した薄い布切れ。地下の冷気が、露わになった肌に粟を生じさせる。呪力を抑制するための結界が、身体の緊張を最大限に高めていた。
五条は、結界を施した壁に軽く手を触れ、静かに言った。
「ダメだね。君は自分の『脆さ』を呪力の暴走という形で外部にぶちまける。呪力を制御する回路が、精神の不安定さに引っ張られすぎて、ショートしている状態だ」
彼は、ユキの顎を指先で軽く持ち上げ、視線を合わせる。六眼の奥底が、ユキの魂を覗き込んでいるようだった。
「だから、その回路を再構築する必要がある。肉体の緊張を極限まで高め、精神を剥き出しにする。その状態で、意図的に呪力回路を開放し、新たな刺激で上書きするんだ。そのための、この環境、この格好。いいかい、ユキ。これは先生の『特別指導』だよ」
五条の言葉は、まるで論理的な数式のように聞こえた。しかし、その声には、彼女の脆さを知り尽くした者だけが持つ、ねっとりとした支配欲が滲んでいる。
「訓練の目的は、『精神と肉体の緊張を極限まで高め、それを意図的に解放する』こと。そして、その解放のトリガーを、君自身ではなく、この僕に移すことだ」
彼は微笑んだ。それは、最強の呪術師として、すべてを掌握する絶対的な捕食者の笑みだった。
ユキは恐怖した。この部屋から逃げられないことも、先生の言葉が詭弁で塗り固められた真実であることも、理解していた。自分は今、恐怖を克服する訓練ではなく、新たな、より強固な依存という名の「愛」を刷り込まれようとしているのだ。
五条は、ユキの呪力経路を読み取るように、一歩踏み込んだ。
「さあ、始めようか、ユキ。君の制御回路に、僕の呪力を流し込むよ。これは、君の『脆さ』を、僕の『絶対』で塗り潰す作業だ」
五条の手が、ユキの薄い服越しにその肌に触れる。呪力の流れが、体内の結界による緊張をさらに高め、ユキの全身に、抗いがたい戦慄が走った。
これは指導ではない。この瞬間から、理性の破壊が始まったのだ。
「呪力のコントロールとは結局のところ感情の制御に帰結する」
五条の低い声が地下室に響く。照明は最小限で彼の白い髪が微かに浮かび上がっている。
「特に君のようなタイプは恐怖や羞恥といった原始的感情こそが呪力暴走の起点になっている。それらを管理するために——」
五条がユキの裸体を見つめた。冷たい目には分析的な輝きがあった。
「人体における最も原始的な緊張と解放のサイクルを利用するわけさ」
ユキの喉が震えた。「……何をするつもり?」
「怖がらなくていい」五条はユキの頬に触れた。彼の指先が触れただけで電流が走るような感触がした。「これは科学的な手続きだよ」
「でも……私たち教師と生徒なのに……」ユキの声は消え入りそうになる。
「問題ない」五条は笑った。普段通りの軽薄な口調だが目の奥には狂気が潜んでいた。
「ここで起きることは誰も知らない。僕たちだけの秘密さ」
五条の掌がユキの胸元に置かれた。触れただけで火花が散るような衝撃が走る。
「感じる?」彼が問いかけた。「君の呪力が僕の存在に反応してる。拒否しようとするほど逆に敏感になっていく」
確かにユキの心臓は激しく鼓動していた。嫌悪感と同時に背筋を這う未知の感覚が生まれつつある。
「これって本当に訓練なの?」彼女は必死に問いただした。
「もちろん」五条は彼女の腰に腕を回しながら答えた。
「肉体の生理的限界を超えて初めて呪力回路の新しい道筋が拓ける。言ってみれば——」
彼の唇が近づいた。「呪力の肉体改造みたいなものさ」
唇が触れ合う寸前でユキは震えた。抵抗しなければならないと思うのに身体が動かない。五条の圧倒的な威圧感と地下室の密室感が彼女の思考を麻痺させていた。
「行くよ?」五条が最終通告のように告げる。
ユキは何も答えなかった。それが彼女の返事だと受け取ったのか五条はユキの秘部に自身のペニスをあてがい、ゆっくりと体重をかけてきた。二人の影が重なると同時に部屋全体が青白い光に包まれた。ユキの体内で今まで感じたことのない種類の熱が広がっていく。
「あっ……!」
予想外の快感に思わず声が漏れる。五条の指が彼女の身体を滑るたびに呪力経絡が活性化していくのが分かる。
「どうだ?」五条が囁いた。「呪力が全身に巡ってるのが感じるだろ?」
「分からない……けど熱くて……苦しい……!」ユキは喘ぎながら答える。
「それでいい」五条は満足げに頷いた。「この苦痛こそが君の弱点なんだ。今後同じ苦痛を感じても耐えられるように脳に記憶させる必要がある」
彼は動きを速めながら説明を続けた。「呪力経絡は神経系と直結している。つまり……」
ジュプンゥー〜ジュプンゥー〜ヌプヌプズボッズボッ!
「うあぁっ!」鋭い痛みと共に今まで感じたことのない充足感が訪れる。
「あっあっああんああんずっと…こうされてたら…わたし…壊れちゃう…♡」
「あああっ……!!うぁ……ダメ、出るっ……!!奥で……くぅっ……!!」
ドピュルルビュルルッドクドクドブッビクビクビュルルルー〜〜ッ!!
ユキの視界が真っ白になり意識が遠のきかける中で五条の呪力が自分の中に流れ込んでくるのが分かった。
「しっかり見ろ」五条が命じた。「これが本当の呪力共有だ」
二人の結合部から放たれる閃光は次第に柔らかな緑色に変わっていった。五条は最後の一滴まで注ぎ込むとゆっくりとユキから離れていった。
「感じた?」五条が尋ねる。「体の芯から温まるようなあの感覚」
ユキは荒い呼吸のまま小さく頷いた。恐怖もあった。怒りもあった。それでも体内を駆け巡る奇妙な幸福感は否定できないものだった。
「これで第一段階完了だね」五条は立ち上がりながら言う。「今日はここまでにしておくか」
ユキは床に横たわりながら涙ぐんだ視界で天井を見上げていた。身体中の倦怠感と頭に残るぼんやりとした余韻。それは単なる肉欲の産物ではなかった。
五条はそんな彼女を見下ろして言う。
「明日からは本格的な調整に入る。もっと深く、もっと強く——」
その言葉を聞きながらユキは思う。この訓練は一体いつ終わるんだろう?