宇宙戦艦ナガト ―TS戦士たち、その勇気と淫欲の冒険記― 作:えぴっくにごつ
カナタやサクはそれぞれ各分隊において。分隊長、責任者を補佐する次席者だ。
その関係でカナタは、艦載機による航空作戦などが行われる際にはそれに同行、自らも戦闘の現場前線に赴き。
艦の、そしてオウカ艦長やツルギ分隊長たちの「目」となる役割を担い。またナガトと航空隊の連携調整にあたる。
そしてサクも航宙士として。ナガトの航路、運航上の安全確保をその目で確かめ掌握するため、前線に赴くことが求められた。
そんな事情から二人は、これより開始される「航空作戦」に同行して臨もうとしていたのだ。
「――っ」
「よっと」
ナガトは宇宙戦艦譲りのその巨体を生かして、空母などの専用艦艇程ではないが、艦載機を、航空隊を搭載し。
ある程度の航空運用を、それによる作戦を可能とした。
カナタとサクは艦橋を離れて降り、今しがたちょうどその格納区画に到着。隔壁扉を潜り、その内にて航空隊のクルーたちが慌ただしく準備に動く様子光景を目に留めた。
「準備は進んでいるようだな」
急き慌ただしくも、問題などが起こっている様子は見られないその光景から。カナタは準備が順調である事を察して零す。
「――封堂戦術士、遅いんじゃないか?」
「!」
そんな所へ、近くの頭上より声が掛かった。
声の出元は、すぐ近くに固定駐機されている艦載戦闘機の上から。
カナタとサクが視線を上げてそこに見たのは、その艦載戦闘機のコックピットの縁に腰掛けて、こちらを見降ろす一人の美少女だ。
美麗な黒髪のショートカットの元に、気の強そうな可憐な顔立ちが映える美少女。
フライトジャケットを上半身に羽織っているが、しかしその下にはナガトの『女』たちの中でも抜きんでて豊満な身体が。
その気の強そうな鋭い顔立ちとアンバランスな、爆乳や尻肉太腿が。航空隊用の黒寄りのグレーの任務服によって、そのラインを飾られて主張している。
士道 クルス 二等宙尉。
「ナガト航空隊」の中でも、機動制空を主として担う機動飛行班の班長だ。
クルスにあってはまた、男性からの性転換者。
そんなクルスが寄越したのは、同階級とはいえ指揮序列では上となるカナタへの。しかし遠慮の無い言葉。
「クルス、相変わらず手厳しいな。準備はどれほど進んでいる?」
しかしそれが彼女(彼)のキャラクターであり、別に本気で咎めている訳では無い事を。航海が始まってからの短い付き合いで、カナタはすでに理解しており。
クルスの言葉に、カナタは冗談交じりのニヒルな色で返し。併せて航空隊の準備状況を訪ねる。
「もうほとんど全員、各機で準備に着いている。後は出撃命令を待つだけだ」
それにクルスは、腰掛けていた自身の愛機より飛び降りながら。そう準備は大方完了している旨を伝える。
「アンタたちの機体も整備班が仕上げてある、だが自分でのチェックも怠るなよ」
「もちろん」
続けてクルスは紡ぎ伝えながら、背後向こうを指し示し。
カナタたちも答えながら、振り向きそちらを見る。
そこにまた固定され搭載駐機されていたのは、また一機の戦闘機だ。
――「7式2型宙間偵察戦闘機 烈風改」。
宇宙防衛隊の主力艦上戦闘機である、「7式宙間戦闘機 烈風」から派生した戦術偵察戦闘機。
単座であるオリジナルから改造されて複座とされ、電子偵察機器などを追加搭載。
カナタとサクはこれよりこの烈風改に乗り込み、航空作戦に同行。ナガトと航空隊の調整、必要とされれば現場での判断指揮を行うのだ。
なお、クルス始め航空隊、機動飛行班が扱うのがこのオリジナルである烈風だ。
「一応俺たちがお守りとはなってるが――宇宙(そら)はお遊戯会場じゃねぇ、簡単に鳴き着くなよ」
作戦の現場指揮官として赴くカナタたちに、次にはクルスはそう忠告の言葉を飛ばしてくる。
「無論さ――だが、それとして航空隊の皆を頼りにしてるよ」
「はン、歯の浮く事を」
それにもちろんと答え、しかし次にはまたニヒル色でそんな言葉を伝えるカナタ。
それにクルスは隠さぬぶっきらぼうな色で零すが。
同時にカナタとクルスは、それぞれの不敵な表情で、互いの拳を突き合わせた。
「ふふ、『男の子』同士、熱いですな~っ」
そんな、今は見目麗しい「女子」の姿となっているが。心には変わらず「男児」を宿す二人のやりとりを。
サクは微笑ましい様子で見守り、揶揄う言葉を飛ばす。
「ふふん、いいだろっ?」
「揶揄ってくれるなッ――ほら、冗談はこれくらいで機体を見ておけよ」
それにもカナタはニヒルな色で、クルスはまたぶっきらぼうに返し。
合わせてのクルスの言葉を受け。二人もこれより臨む航空作戦のため、自分たちの愛機の準備に入った。
ナガトは、退却したゲティスオンのフリゲート艦を一度敢えて逃がし、泳がせ。
しかし艦より先立って放った追跡機により、その逃れる先は抜かりなく追いかけ。
間もなく、その出元を突き止めた。
追跡機が追いかけた先に見つけたのは、恒星系に属さない自由浮遊惑星。
本来であるならば生物の生存することはできない、過酷な環境であったであろうその惑星には。しかしその表面一部に、不自然なまでに自然生態系が広がるエリアが確認された。
それは、ゲティスオンの仕業に他ならなかった。
おそらくゲティスオンがこの惑星を前線基地とするべく、その技術力をもっての一種のテラフォーミングによって生み出した環境。
そして、そこに敵フリゲート艦が逃げ込む様子が確認されたのだ。
敵拠点の推定存在個所が判明し、これよりが航空隊の出番だ。
「――ファントム1、離発態勢」
発進位置まで移動し、スタンバイ態勢となった烈風改のコックピットで、操縦を担うカナタが通信に伝える声を上げる。
宇宙空間で運用される宙間艦載機は、惑星重力上での空母運用のように、大規模な発着艦施設は必要としない。
そのためナガトは主としては、その船体後部、船底の両舷に設けられた二か所のハッチより。母機から離し降ろされるパラサイトファイターよろしく、艦載機を降下させて離艦発進させる形を取った。
また必要とあらば、後艦橋と第三砲塔の間に設けられる飛行甲板に艦載機を上げ。STOVLにて発艦させることも可能だ。
「――離発」
そしてカナタとサクの乗る烈風改は、発艦許可を告げる信号が点滅した瞬間。機体を吊っていたアームクレーンより離れて降下発進。
一瞬の落下の後に、スタンバイしていたエンジンを吹かして加速。航宙飛行を開始した。
《続いてイーグル1、離発》
《次。イーグル2、離艦発進位置へ》
その要領で、通信上にその動きを伝えながら。
ナガトの艦載機発進口からは、順次艦載機が降下発進していく。
《ファントム1へ、イーグル各機はそちらに追従し隊形を組む》
「了解」
それから発進した各機は、ナガトより少し先に飛び進んだ位置で合流。
カナタとサクの乗る烈風改に、クルスたちの機動飛行班の烈風が順次その後ろに付け。
烈風改1機、烈風3機の内訳で編隊を組む。
これが敵基地を探るための、戦闘索敵偵察のための偵察隊。
まずはこの偵察隊が、危険を承知で惑星に降下して索敵偵察を行い。敵拠点の正確な所在を突き止めるのだ。
「ファントム1よりナガト・コントロール、偵察隊はこれより艦から先行。追跡機チェイサー1と合流から調整の後、惑星に降下進入して敵拠点の索敵行動を開始する」
偵察隊の合流から編成完了を受け。カナタは通信にて、ナガトの航空管制にこれより所定の行動に入る旨を伝える。
《了解、ファントム1。お願いします、そして気を付けて》
「了解」
それに返信にて寄越されたのは、航空管制を担うセイナからの託し、そして願う言葉。
それにカナタは答え。そして偵察隊各機はエンジンを吹かし、敵の潜み待つであろう惑星へと向かった。