任務の概要を聞いて星槳体の元へと向かう道中。
傑がふと疑問を投げ掛けてくる。
「星槳体が同化を拒んだらどうする?」
「そんときゃ同化はなしだな」
俺の返答を聞いて傑は意外そうな顔をした。
「良いのかい?天元様と戦うことになるかもしれないよ?」
「なら返り討ちにすれば良い。俺達ならできるだろ?」
それは確信である。
一人では不可能なことも二人なら可能であるという絶対的な信頼関係からくる自信。
俺達は二人で最強だ。
「それに必ずしも敵対するって訳でもないだろ」
「それもそうだね。天元様の進化が穏やかに終わる可能性もある」
天元様の発言は絶対ではない。
だからこそ進化後にも自我が残っている可能性はあるのだ。
そして進化というからには自我がある方が普通だ、というのが俺の見解だ。
まぁ先ずは星槳体の意見を聞くところからになるが。
結局は選択は本人に委ねられる。
星槳体が同化を受け入れるのならそれで良いのだから。
「にしても何で盤星教は天元様の星槳体を狙ってんの?」
「崇拝してるのは純粋な天元様だ。不純物が混ざるのが許せないのさ」
「もう同化したことあんだから良くねぇ?意味分かんねえ奴等だな」
「気にすることはない。盤星教は非術師の集団だ。警戒すべきはやはりQ!」
「そっちの方こそ分かり易くて警戒する必要ないと思うけど」
俺の言葉に傑が疑問符を浮かべる。
それに対して俺の考えを話し始める。
「呪詛師集団は呪術を使った派手な行動を起こすだろうと予測される。テロリストだしな。逆に非術師で構成された盤星教はどんな手を使ってくるか分からない。金を使って呪詛師を雇うか、銃を仕入れて乱射してくる可能性もある」
「非術師だから一般人に扮して来る可能性もあると。確かにそう考えると盤星教の方が厄介だな」
一通り説明すれば盤星教の危険性について思い至った傑が悩ましげに思案する。
未知程恐ろしいことはない。
俺達はまだ非術師の悪意というのを知らない。
故に対策も立て難い。
要警戒なのはQも盤星教も同じだと認識を改めたところで目的のホテルに到着する。
それと同時にホテルの上階で爆発が起こる。
そこは位置的に知らされていた星槳体の宿泊部屋だ。
「先を越されたか。傑は下の奴を頼む」
「了解」
そう言って役割分担を行い、俺は蒼を発動して距離を縮小し、瞬時にホテルから落下する星槳体の少女の元まで移動する。
落ち行く少女を抱き留める。
意識はないが脈はあり、目立った外傷は頬の傷だけ。
それを見て安堵に息を吐き、次いで少女を抱えたまま爆破された部屋へと移動する。
そこには白い軍服を着た男が立っており、此方を油断なく睥睨している。
「軍服でテロって…その歳で厨二病かよ」
「…その制服、高専の術師だな?ガキを渡せ。殺すぞ」
「渡さねえよ。雑魚」
そう軽く煽りながら油断なく俺は戦闘態勢に入った。
◇
「じゃあゲームをしようか」
「ゲ、ゲーム…?」
ボコボコにしたコークンとかいうQの戦闘員に土下座させながら俺は宣言した。
コークンは困惑しながら鸚鵡返しした。
「そ、ゲーム。ルールは簡単。俺が今からお前の金玉を何回か蹴り上げるから全部声を出さずに耐え切ったら勝ち、耐えれなかったら負け。もし勝ったら大人しく高専に引き渡す」
「負けたら…?」
「お前は俺に殺すと宣言した。だからお前も命を賭けるべきだと思わねえ?」
コークンは息を呑んだ。
俺が本気で殺す気だと理解したんだろう。
救出した星槳体とその世話係はソファに寝かせている。
寝ている二人を悲鳴で起こさないように配慮した結果のゲーム内容だ。
「じゃ開始ね」
「ッ…!!!」
俺は開始を告げて早速玉を蹴り上げた。
そのまま連続で休みなく蹴っていく。
最初は頑張って耐えようとしていたコークンだが、徐々に顔色が変わる。
そして遂に悲痛な声を上げた。
「おおおあぁぁ!!!」
「五月蝿いなぁ。二人が起きるだろ。まあ兎に角これでお前の死は確定な」
「…ク、クソガキが!!ここには最高戦力のバイエルさんも来ているんだぞ!!お前なんか─」
「それってこいつのこと?」
俺はガラケーに送られて来た写真をコークンに見せる。
そこにはボコボコにされて顔が分からなくなっている白い軍服のロン毛とピースして自撮りする傑が写っていた。
「この人ですね」
「じゃ終わりだな。さいなら」
「待て待て待て!!!そもそも無理ゲーだろ!?回数決まってなかったし!」
「ゲーム始める前に指摘しとけよ。そうしたらこれがお前の処刑ゲームだって分かったのに」
「なっ…!?」
コークンは顔に絶望を浮かべた。
最早己に逃げ道はないと悟ったらしい。
俺は容赦なくコークンの頭を蒼でグシャリと潰した。
血と脳漿と肉塊が混じり合った液体が床にぶち撒けられる。
死体の処理は高専に任せれば良いだろう。
後は二人が目覚めた時に驚かさないように部屋を移動するか。
軽く二人のことを俵抱きにして部屋を移動する。
その時にエレベーターを上がって来た傑と合流する。
「そっちはどうだった?」
「問題なく処理した」
処理、という言葉に含まれた意味を察して傑は顔を暗くした。
「悟、無闇に殺すものじゃない。情報を引き出す必要もある」
「ちゃんと聞き出した上で殺したよ。そんな誰彼構わず命を気にしてると疲れるぞ」
傑は優し過ぎる。
それはいつか傑を殺す毒になる。
故にこれは純粋に親友を思ってのアドバイスである。
傑は顔を伏せる。
それに何も言わず俺は歩き出した。
適当な部屋を蹴破って入り、二人を寝かせる。
そして反転アウトプットで二人を治療する。
先に目を覚ましたのは世話係の黒井美里さんの方だった。
ガバリと起き上がり、第一声に「理子様!」と発した辺り相当大事に思っているんだろう。
「あ、あの…この状況は一体…?」
「襲撃犯は僕達で打倒して、貴方達を救出しました。反転術式で治療したので怪我は問題ないかと」
「それは…ありがとうごさいました」
黒井さんは頭を下げて感謝を口にした。
俺達はそれを素直に受け取る。
そうして幾つか質疑応答をして襲撃の詳細を調べていると星槳体の天内理子が目を覚ます。
天内は暫くぼんやりと周囲を眺めて黒井さんを目に留めてハッとした。
「黒井!!」
「理子様!!ご無事で良かったです!!」
抱き合う二人を見て俺達は微笑ましげに笑みを浮かべた。
これは任務の行末が見えた気がする。
天内は黒井さんから離れると俺達を見てサッと警戒態勢に入った。
それに黒井さんが苦笑して口を開いた。
「安心して下さい。彼等は味方です」
「本当か?胡散臭い顔の奴と真っ黒グラサンじゃぞ!?」
「割とズバッと行くね。同化で感傷的になってんじゃないかと思ったのに、意外に元気だな」
「フン!如何にも下賎な者の考えじゃ!いいか。天元様は妾で、妾は天元様なのじゃ!!貴様のように─」
そこからは長かったので割愛する。
要するに同化は死ぬ訳じゃないから気にしないという慰めだ。
そうでもしなければ自分の運命を呪ってしまうのだろう。
何ともやるせない話だ。
俺は気を紛らわせる為に軽口を叩く。
「しかし、あの喋り方だと友達もいないじゃろ」
「快く送り出せるのじゃ」
「学校じゃ普通に喋ってるもん!!……学校!!」
顔を真っ赤にして怒った天内は学校という単語を口にして何かに気付く。
「黒井!!今何時じゃ!?」
「まだ昼前…ですがやはり学校は─」
「五月蝿い!!行くったら行くのじゃ!!」
まさかとは思うが襲撃を受けておいてノコノコと学校になんか行くつもりだろうか。
俺は頭痛を堪えるように質問した。
「まさか学校に行くのか?巻き込むだけだろ?」
「行くのじゃ!!これだけは譲らんぞ!!」
天内は引き下がるつもりはないようだ。
どうしたものか。
高専内に置いておく方が安心なんだがな。
傑と目を合わせて逡巡する。
「…一先ず学校には行かせる。だがその所為で関係者に被害が及ぶようだったら高専に連れて行く。それなら良いな?」
「分かった!それで良い!」
天内はハッキリと言い切った。
なら仕方がない。
一旦学校に向かうとしよう。
そうして俺達は天内の通う廉直女学院に向かったのだった。
・オリ主
ゲームが好き。
躊躇いなく人を殺せる倫理観の持ち主。
・傑
命の線引きに悩んでいる。