マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル ロイヤルスィート「ルビー・プリズン」前
専用エレベーターが最上階に到着し、静かに扉が開いた。
長い廊下の先に、重厚なダブルドアがただ一つ。
案内役のミラージュはここで立ち止まり、背筋を伸ばし、静かに告げた。
「カナメさん……ここから先は単独行動です。私は外で待機します」
カナメは深紅のショールを肩から外し、サングラスを外してミラージュに手渡した。
深紅のドレス姿が完全に露わになる。
胸元は乳房の半分以上を晒し、深い谷間が息づくたびに淫らに波打つ。
スリットは腰骨を越え、太ももの付け根まで大胆に割れ、Tバックの細い金の紐が尻の割れ目に食い込んでいる。
多くの男たちの無遠慮な性欲に晒されたことで女体が否応なく反応し、薄いシルクサテン越しに尖った乳首がさらに男の視線を誘うようにぴんと突き出し、赤いルビーの宝玉が濡れた布を押さえ、蜜に光る淫靡な輝きを放っていた。
カナメは静かに頷き、意を決してダブルドアの前へと進み出た。
その瞬間、ミラージュが、わずかに声を震わせて告げた。
「カナメさん、ロビーでの騒ぎは情報封鎖を行います。貴女の正体が、外部に漏れることは絶対にありません」
カナメは振り返り、小さく微笑んだ。
「ありがとう、ミラージュ……」
ミラージュは、一度だけ目を伏せ、深く息を吸った。
そして、軍人としての姿勢を正し、凛とした声で、敬礼した。
「カナメさん、ご武運を!」
その瞳には、涙が光っていた。
カナメは静かに頷き、一人、扉に手を掛ける。
(……ここから先は、もう本当に一人。誰も助けてくれない。私は、やり遂げてみせるっ)
決意と共にゆっくりとノブを回し、甘い香りと共に室内へ踏み入った。
室内は赤を基調とした豪奢な空間だった。
2000平米を超える広さ。
もう一つのリビングとも言える広さのベッドルームに進む。
巨大なエンペラーサイズベッド。
そして中央に座っていたのは、オリッシュ・ハメルマン。
182cmの肥満。
アラド艦長とほぼ同年代のはずなのに、加齢臭が匂ってきそうなオヤジ。
Tシャツとジャージの部屋着。
童貞特有の、ねばっこく熱い視線が、カナメの全身を舐め回すように捉えた。
「……カ、カナメ・バッカニア……?」
彼は立ち上がった瞬間、声が裏返り、膝が震え、スマホを床に落とした。
絨毯の上に転がった画面からはワルキューレのライブ音源が微かに漏れ聞こえていたが、それ以上に、目の前に立つ本物のカナメから漂う甘く濃厚な香水の薫香が、彼の現実と非現実の境界を容赦なく融解させていく。
カナメは嫋やかな微笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいた。
胸がゆったりと波打ち、スリットから覗く白い太腿が艶やかに光る。
香水の甘く濃厚な匂いが室内に広がり、オリッシュの鼻をくすぐり、股間を疼かせた。
(この男が私の初めてを奪う人。キモデブで、童貞で、私のファンだなんて。でも、これが任務。世界のためよっ)
内心を押し隠して微笑むカナメ。
「オリッシュさん、はじめまして」
その瞬間、オリッシュは完全に動揺と歓喜を隠せなくなった。
顔が真っ赤になり、目が潤み、両手が小刻みに震え、股間がズボン越しに膨らみ始めた。
「う、嘘だろ……本当にカナメ・バッカニアが……俺の好み、完璧に再現したドレスで……俺の部屋に来てくれた……?」
カナメは静かに、しかしはっきりと告げた。
「オリッシュさん。あなたがなぜここに閉じ込められているのか、私にはその理由を明かせないわ」
オリッシュの表情が一瞬、不安に曇る。
「え……じゃあ、俺はいつまでこんな部屋に閉じ込められて……?」
カナメは優しく、でも確実に言葉を続けた。
「あなたには、ここにいてほしいの。ずっと、このまま」
その言葉はカナメにとって、自分もずっとここに留まり、己の体を捧げ続けることを意味する。
オリッシュの目が揺れる。
「でも俺……どうすりゃ……」
カナメは微笑み、一歩近づき、彼の目を見つめながら静かに告げた。
「安心して。その代わり……私が、毎日、あなたを慰安するわ」
遂に核心を告げるカナメ。
しかし、その内心はまさに面従腹背。
(嘘……私はこの体を誰にも許したことなんてない。でも、言えないわ。歴戦の娼婦だと思わせなきゃ。そうじゃなきゃ、任務が……世界が……)
カナメは、研修ビデオで教わった「余裕のある大人の女」の表情を、必死に保つ。
腰を軽くくねらせ、胸を自然に突き出し、視線を絡めるようにオリッシュを見つめた。
オリッシュはそんなカナメの「張子の虎」ぶりなど知る由もなく、不安が歓喜へと吹き飛んだ。
「……マジかよ……カナメが……毎日、俺のチンポしゃぶって……中に出させてくれるって……?」
下品な言葉が飛び出し、興奮で顔がゆがむ。
カナメは静かに頷いた。
「ええ。だから、ここに、いてね」
オリッシュは涙を浮かべ、震える声で叫んだ。
「いる! 絶対いるって!! カナメが毎日来てくれて、俺のザーメン全部飲んでくれたり中に出させてくれたりするなら……俺、死んでもここから出ねえよ!! 一生ここにいる! 約束する!!」
あまりの歓喜に、その場に膝をつき、床に額を擦りつけるようにして感謝の言葉を連ねた。
ケイオスの思惑通り、オリッシュは、ロイヤルスィートルームに留まり続けることを、心から了承した。
歓喜に咽び泣き、絨毯に額を擦り付けるオリッシュの足元。
そこには、先ほど落とされたスマホの画面が、淡い光を放ち続けていた。
液晶画面の中で、スポットライトを全身に浴び、マイクを両手で握りしめて誇らしげにソロパートを歌い上げる「戦術音楽ユニット・ワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニア」。
スピーカーから漏れ聞こえる、澄み切った自らの歌声。
カナメは音もなく腰を落とし、スリットから白い美脚を覗かせながら、そのスマホを白く細い指先でそっと拾い上げた。
画面の中の自分を見つめる。
誰よりも歌を愛し、歌の力で人々を、銀河を救えると信じて戦い抜いてきた、誇り高き過去の自分。
カナメは迷うことなく、画面の停止ボタンに指を触れた。
プツリ、と歌声が途切れ、画面が暗転する。
静まり返った豪奢な寝室に、自分の熱い吐息と甘い香水の香りだけが残された。
(……歌で世界を救うのは、これで終わり)
暗闇に沈んだ画面に映る、深紅のドレスに身を包んだ妖艶な己の姿を瞳に焼き付け、カナメは胸の奥で強く、強く気合いを入れ直した。
(今ここからは――この身体で世界を救うのよ、カナメ)
哀愁を完全に断ち切り、自らを「国家の最高機密を担う生贄」へと作り変えるスイッチが、今、完全に切り替わった。
(見ていて、フレイア、メッサー君――私は、絶対にやり遂げてみせるからっ)
カナメの唇に、覚悟に満ちた極上の微笑みが戻った。
(続く)
カナメの衣装
オシャレマクロス10の赤ドレス