マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル カナメ専用スィート
ブリーフィングが佳境に入ったその瞬間、四人の端末に同時に通知音が響いた。
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From: Lady.M
Subject: O.S.P. Phase 3 - Immediate Execution Order
本文:
【指令1 - ABV使用拡大】
検体がカナメ・バッカニアの存在を強く意識するほどサキュバス波の効能は増大するため、アイシャ・ブランシェット博士は、2068年5月1日に録感したリバーシブルバニーABVを複数検体に使用し、セイズノール排出効果を測定せよ。
尚、現状アラド・メルダースにのみ使用を許可している状態のため、カナメ・バッカニアは事前にABVの不特定多数の検体への使用許可をオリッシュ・ハメルマンから取得せよ。
【指令2 - カナメABV商品化】
指令1の計測結果を確認後、カナメ・バッカニアはあらゆる世代の男の性癖に対応可能なように、様々なタイプのカナメABVの撮影および全銀河販売の許可をオリッシュから取得せよ。
ミラージュ・ファリーナ・ジーナスはその撮影監督としてシナリオ作成及び演技プランを立案せよ。
【指令3 - クレアABV商品化】
カナメ単独ではワクチンABVとしてのバリエーションが不足するため、クレア・パドルは広報業務と並行してオリッシュと性交を繰り返しサキュバス波を増強に努めよ。
その後クレアもABV撮影を行い、販売許可をオリッシュから取得してカナメとともにABV女優としてデビューせよ。
ミラージュ・ファリーナ・ジーナスはクレアABVの撮影監督としてシナリオ作成及び演技プランを立案せよ。
End of Order.
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四人は顔を見合わせ、沈黙が一瞬だけ部屋を支配した。
映像通信のアイシャが最初に口を開いた。
『確かに淫紋付与後に撮影したABVならサキュバス波も発生するわね。カナメとのセックスを擬似体験させるとなれば、その効能は否応なく高まるはずよ。サキュバス波を広める上で、ABV以上に的確なツールはないわ』
ミラージュは唇を固く結び、目元に悲しみの影を浮かべた。
カナメとクレアが全銀河に晒されるABV女優としてデビューしなければならない指令に、心が痛む。
しかし、それがヴァール根治のために必要なことなれば、ただ黙って耐えるしかなかった。
当のクレアは逆に瞳を輝かせ、興奮を隠せなかった。
ABV女優デビューという大義名分があれば、オリッシュとの性交回数が大幅に増え、子作りアピールの機会が爆発的に増える。
「これでご主人様に、もっと強く子供が欲しいとおねだりしやすくなるわね……!」
カナメは少しだけ頬を染めつつ、心の中で呟いた。
(恥ずかしいけど、全て……あの人のチンポ次第。それで気持ち良く射精してくれるなら……全銀河に向けてのABV女優デビューも、受け入れてみせるわ)
指令メールが届いた直後、四人の端末に新たな添付ファイルが次々と降ってきた。
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From: Lady.M
Subject: Vaccine ABV Grand Plan - Confidential
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レディMが送ってきたのは、ワクチンABVを軸としたヴァール根治のグランドプラン資料だった。
カナメはスクロールしながら息を飲む。
資料には、ABVを全銀河に展開した場合の詳細なセイズノール排出予測曲線、10年後感染者ゼロ達成シミュレーション、オーオク社の初年度売上は、ブリージンガル球状星団内に限っても200兆クレジットを上回るという超破格の予想までが克明に記されていた。
さらに、まずは球状星団内の主要マスコミ各社をアルテミシア・グランドホテルに招集しての大規模記者会見、アイシャ・ブランシェット博士名義での複数論文の同時学会提出スケジュール、ワクチンABVの特許出願優先審査申請までが具体的に記載されている。
アダルトマーケットに与える破壊的インパクトについても、従来のオナホール市場やアダルトコンテンツ産業が一夜にして90%以上のシェアを失い、オーオク社が銀河全体の性産業を事実上掌握する可能性が、冷徹な数字とともに並べられていた。
クレアは隣で目を輝かせ、太ももを軽く擦り合わせながら小さく息を漏らす。
ミラージュは真剣な表情で読み進め、アイシャは画面越しに満足げに頷いた。
しかし、どのページにも共通して書かれていたのは一つの条件。
『全てのABV関連活動は、慰安対象オリッシュ・ハメルマンの許可を必須とする』
カナメは資料から顔を上げ、静かに言った。
「結局……何をするにも、オリッシュさんの許可が必要なのね」
ミラージュが口を開き、直球の意見を述べる。
「全人類が渇望するヴァール根治のため、と正面から頼み込むしかないのではありませんか」
アイシャは悪戯っぽく笑いながら手を振った。
「収益は全てオーオク社のものになる点を強調すべきよ。銀河一の富豪になれるわ。男の夢を刺激するのも効果的じゃない?」
クレアは太ももを軽く擦り合わせ、甘い声で言った。
「カナメがおねだりするだけで、意外とすんなり許可を出してくれるかもしれないわよ♡」
カナメは穏やかに微笑み、静かに答えた。
「まずは、本人の意向を聞いてみましょう」
(出来ればヴァールは根治したい……でも、オリッシュさんのチンポの気持ちいい射精が、何よりも優先されるべきだわ)
その真剣で強い願いは、胸の奥深くに秘めたままだった。
四人は顔を見合わせ、短い沈黙の後、朝食後のタイミングでカナメが直接申し入れることが決まった。
そのため、クレアが初めてメイド姿でオリッシュの朝立ち処理、歯磨き、髭剃り、朝食のサーブを担当することになった。
その間、カナメは資料を深く読み込み、オーオク社の売上予測やABV展開スケジュールを整理して、オリッシュへの説得資料を準備する段取りだ。
クレアはすでに瞳を潤ませ、興奮を抑えきれずに小さく息を漏らす。
「ご主人様の朝立ち……初めて私が全部お世話できるのね……♡」
カナメはクレアが気合いを入れた様子を見て、優しく肩に手を置き、嫋やかな声で囁いた。
「クレア……朝の奉仕は大事だけど、あまり熱中しすぎないでね」
もしセックスまでしてしまったら、その快感がカナメにも伝わって準備どころではなくなってしまう。
それゆえの牽制であった。
クレアは少し残念そうに唇を尖らせたが、すぐににこりと笑った。
「わかったわ、カナメ。ご主人様の朝立ち処理は丁寧に……でも、味見くらいはさせてもらうわよ♡」
オリッシュがクレアのサーブで朝食を終えたタイミングで、ロイヤルスィートのダイニングにカナメが入室する。
ワルキューレ・ユニフォームのカナメ。
赤茶色の髪をきれいに整え、青と白を基調としたジャケットに赤いアクセントが映える上着。
胸元を強調する白いシャツ、短めのミニスカートにブラウンのベルト。
タイトなストッキングとブーツでまとめた姿は、普段の朝のビクトリアンメイドとはまったく違う凛とした美しさだった。
ダイニングのソファに座るオリッシュもまた、久しぶりにきちんとしたシャツ姿でカナメを迎え入れる。
その側には、エロいフレンチメイド姿のクレアが控え、黒いストッキングに白いエプロン、胸元が大きく開いたメイド服でオリッシュの隣に立っている。
カナメはオリッシュの前に立ち、軽く頭を下げた。
「オリッシュさん、おはようございます。今日は大事なお話があるので、きちんとした服装でお伺いしました」
オリッシュは少し緊張した様子で、カナメの正装姿を見つめた。
「カナメ……おはよう。クレアからなんか重大な話があるって聞いてる。ちょっと怖いけど、始めてくれ」
カナメは深く息を吸い、オリッシュの正面、ローテーブルの向かいのソファに静かに腰を下ろした。
情報端末もレディMの資料も一切開かずに、オリッシュの目を真っ直ぐに見つめた。
自分の言葉だけで、誠実に伝えようとする強い意志がその瞳に宿っていた。
「オリッシュさん……」
カナメは少し間を置いてから、静かではっきりとした声で続けた。
「貴方とセックスするようになってから、私の喘ぎ声に、特殊な生体フォールド波が宿るようになったの」
「その生体フォールド波には、サキュバス波って名前が付けられました」
「検査の結果、サキュバス波についてわかったことが五点あるわ」
カナメは自分の胸の前に己の右手をそっと上げた。
その右手で人差し指を立てる。
「まず一つ目。サキュバス波には男性のリビドーを強く刺激し、射精に至らせる効果があります」
次いで中指を立てる。
「二つ目。サキュバス波によって放たれた精液と共に、ヴァール化の原因となるセイズノールも体外に排出される」
次いで薬指を立てる。
「三つ目。サキュバス波を浴びる際に私のことを強く意識すればするほど、セイズノールの排出量は高まっていく」
次いで小指を立てる。
「四つ目。歌のフォールド波とは違って、サキュバス波は録音しても減衰しにくい性質を持ちます。データや映像でも効果があるわ」
最後に親指を立てて、五本の指をすべて広げた。
「五つ目。でも、同じパターンのサキュバス波で何度も射精し続けると、徐々に効果が薄れてしまう」
カナメはオリッシュの視線を一瞬も逸らさず、真摯に言葉を続けた。
「この五点から……ケイオスはこの世界からヴァールを無くすために、私とあなたが一緒に撮ったABVを、ワクチンABVとして定期的に売り出したいと考えてます」
カナメはそこで五指を開いたままの右手をゆっくりと下ろし、お腹の上で左手の拳に重ねる。
「そのためにはオリッシュさん。貴方の許可が必要です。どうかしら?」
カナメはオリッシュの反応を静かに待った。
オリッシュはカナメの言葉を聞き終え、呆然とカナメの下腹部に視線を落とした。
三等兵の自分でも、世界からヴァールが根絶されるという事の重さは理解できた。
しかし、その代償がカナメの全銀河デビュー——新アダルトジャンルとなるABV女優として、ブリージンガル球状星団だけで何十億人、全銀河全体では何千億という男たちの前に晒されることだと知って、頭が真っ白になった。
(カナメが……自分でこの話を持ってきた……?)
オリッシュはカナメがケイオスの計画に賛同し、積極的に望んでいるのだと勘違いする。
賛同していなければ、わざわざこんな話をしてくるはずがない。
つまり、カナメはABV女優デビューを受け入れている——そう思い込んでしまった。
幻影とはいえ、自分の女が何千億もの男に抱かれる光景が脳裏に浮かび、胸が締め付けられる。
独占欲を満たせなくなるのは、オリッシュにとって耐え難い苦痛だった。
(俺が……責任を取らなかったから……カナメはこうして抗議してるのか……)
今思えばクレアを抱くように仕向けたのも、カナメなりの無言の抗議だったのかもしれない。
そのとき、昨晩のクレアの甘い囁きが、オリッシュの頭の中を鮮やかに蘇った。
『気づいてないの? ご主人様。カナメ、ご主人様からのプロポーズ、ずっと待ってるのよ……♡』
オリッシュはゆっくりと顔を上げ、カナメの真剣な瞳を見つめた。
今更、カナメの決意は変わらないだろう。
だったら、せめて責任を取ろうとする姿勢だけでもきちんと見せなければならない。
オリッシュは震える声で、しかしはっきりと告げた。
「俺と結婚してくれ、カナメ!」
(続く)