マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル ロイヤルスィート「ルビー・プリズン」
「俺と結婚してくれ、カナメ!」
オリッシュの声がソファの上で響いた瞬間、カナメの頭は一瞬、真っ白になった。
(……え?)
不特定多数へのABV開示を打診したのに、返ってきた言葉がプロポーズだった。
意味が、すぐには理解できなかった。
カナメはただ、だらだらと汗を流しながらこちらを見つめ続けるオリッシュの、必死で緊迫した表情をぼんやりと見つめていた。
オリッシュの座るソファの後ろに控えていたクレアが、目を輝かせて小さくガッツポーズをしている。
その姿が目に入り、ようやく自分がプロポーズされてるのだと気付くカナメ。
カナメの脳裏に電撃が走る。
(……結婚……? 私と……?)
ようやく現実が胸に落ちた。
その刹那、メッサー君の最後の言葉が、胸の奥で鮮やかに蘇った。
『歌ってくれ……カナメさん』
同じ「くれ」という、切実で真っ直ぐな響き。
運命が、静かに微笑んでいる気がした。
カナメの頰が、ゆっくりと桜色に染まっていく。
瞳の奥に、幸せそうな光が灯った。
心の奥底で甘い疼きが広がっていく。
(オリッシュさんの妻に……なれるの……?)
『結婚を前提に』とか、今思えばまだるっこしい予防線を張ってこないオリッシュのストレートさにも、好感を抱いてときめいてしまうカナメ。
カナメの唇が自然と柔らかく微笑んだ。
幸せに満ちた、穏やかで、どこか妖艶な微笑みだった。
「はい」
カナメは静かに、けれどはっきりと言った。
「私なんかで良ければ……喜んで、お受けします」
立ち上がり、ソファの前で優雅に三つ指をついて土下座するカナメ。
短めのミニスカートがわずかにめくれ上がり、タイトなベージュストッキングに包まれた滑らかな脚のラインが露わになる。
重力制御ブラでロケット型に整った豊かな胸がユニフォームの布地を優しく押し上げ、Eカップ超えの乳房の曲線が強調される。
「ふつつか者ですが……末長く、よろしくお願いします♡」
その声は甘く、震えていた。
オリッシュは目を見開いた。
「え……ええ!? う、嘘じゃないよなカナメ!? カ、カナメは……本当に俺の奥さんになって……くれるの……?」
声が上ずり、汗だくの顔が真っ赤になる。
カナメは顔を上げ、幸せそうに微笑んだまま頷いた。
「ええ、当然だわ。私の身も心も.......とっくの昔に全て貴方に捧げてしまってるんですもの」
オリッシュはソファから立ち上がり、震える手でカナメを抱き起こした。
二人はそのまま見つめ合い、唇を重ねた。
熱く、湿った、長いキス。
カナメの胸が、幸せで震えていた。
オリッシュの太い腕に包まれながら、心の中でそっと呟いた。
(これで……永遠に、オリッシュさんのチンポにご奉仕できるのね……)
その瞳は幸せに満ち、妖しく輝いていた。
オリッシュの側で控えていたクレアは、その光景に再びガッツポーズする。
(昨夜の囁きが功を奏したわね……カナメが正妻になって子作りが解禁になれば、次は私の番だわっ♡)
ヴァイオレットな瞳が勝利の喜びに満ちている。
カナメの幸せそうなオーラが部屋全体を優しく包み込んだ。
二人の唇が離れたとき、オリッシュはまだ信じられない様子でカナメを抱きしめ続けていた。
カナメは彼の胸に顔を埋め、静かに微笑んだ。
この瞬間、カナメの心は完全に、オリッシュのチンポに妻として仕える未来で満たされていた。
プロポーズを受け入れてくれたカナメを抱きしめながら、オリッシュはこれまでにない全能感に包まれていた。
かつての自分は、モニターの向こう側にいる彼女を見つめるだけの、自他共に認めるキモデブな一ファンに過ぎなかった。
それが今、銀河の歌姫を「妻」と呼べる立場にまで成り上がったのだ。
「カナメ……。君が望むなら、ABVでも何でも協力するよ。俺たちが愛し合う姿で世界が救えるなんて、最高じゃないか!」
オリッシュは鼻息も荒く、快諾した。
カナメの艶姿を独占したい欲よりも、カナメと「夫婦」として公認されることへの優越感が勝った瞬間だった。
この日の予定は全てキャンセル。
婚約者となった二人は、スィート内でラブラブな密着デートを楽しむこととなった。
小一時間ほどソファで寄り添い、甘い吐息を漏らしながらイチャつく二人。
その少し離れた場所で見守るフレンチメイド姿のクレア。
カナメがオリッシュの太い腕に胸を押し付け、幸せそうに微笑む姿を眺めながら、クレアの胸中には複雑な羨望が渦巻く。
(いいわね、カナメ……。でも、ただイチャついているだけじゃ時間がもったいないわ)
クレアは指先で唇をなぞりながら、どうすれば二人の「子作り意欲」を最高潮まで高め、自分の番を早めるか、その計算に没頭する。
(ご主人様をその気にさせるには、もっと具体的な『責任』と『独占欲』を視覚化してあげないと……。そうだわ!)
名案を思いついたクレアのすみれ色の瞳が、妖しく輝いた。
「ご主人様、カナメ。せっかくの婚約初日ですもの。午前中の奉仕は趣向を変えて……『結婚式のリハーサルプレイ』はいかがかしら?」
「け、結婚式のリハーサル……っ!?」
オリッシュがドギマギするのを横目に、カナメは潤んだ瞳で彼を見つめ、そっとその手を握りしめた。
「素敵ね、クレア。オリッシュさん、私……貴方の前で、永遠の愛を誓う練習をしておきたいわ♡」
舞台はロイヤルスィート内にある最新のプレイルーム。
牧師姿に着替えたクレアが端末を操作すると、部屋の壁一面に厳かな大聖堂のホログラムが投影され、パイプオルガンの重厚な音色が響き渡った。
祭壇へ続くバージンロードの両脇には、ホログラムの参列者たちがひしめき合い、柔らかな光に包まれて祝福の眼差しを向けているかのように見える。
急遽用意されたお仕着せのタキシードに身を包んだオリッシュが、プレイルーム奥の聖書台の前で緊張の面持ちで待機する。
キモデブな体型にはタキシードがいかにも窮屈そうで、ボタンが弾け飛ばんばかりに腹を突き出し、落ち着きなくネクタイをいじっている。
その時、プレイルームの入り口が静かに左右へと開いた。
逆光の中に現れたカナメの姿に、オリッシュは息をすることさえ忘れ、完全に言葉を失った。
扉の先に立っていたのは、ワルキューレのライブ衣装「ブリッツ・ブラウト」をウェディングドレスとして纏ったカナメだった。
純白のビスチェから溢れんばかりの豊かな胸元にはオレンジの装飾が輝き、フィッシュテール状に大きく広がった三段フリルのスカートが、彼女のすらりとした長い脚を可憐に引き立てている。
背中を大胆に露出させた純白の衣装は、ヴェールとオレンジの薔薇の髪飾りを添えただけで、この世のものとは思えないほど美しい「花嫁」の姿へと昇華されていた。
燕尾服を凛々しく着こなしたミラージュが、カナメの白く細い腕に自分の腕を添え、一歩ずつゆっくりとオリッシュの待つ祭壇へとエスコートしていく。
ミラージュの顔は赤らみ、その手はわずかに震えていた。
撮影監督として、そして新婦の介添人として、彼女はこの「異常な幸福」の記録を義務付けられていた。
ミラージュの胸中には、軍人としての規律だけでは整理しきれない想いが渦巻いている。
遺跡エムシー・ハラメで自らの命を救ってくれたオリッシュ。
彼がこれほどまでに愛するカナメと結ばれ、幸せの絶頂にいること自体は、恩人としてやぶさかではなかった。
また、これまでの監視任務で、ミラージュは嫌というほど見せつけられている。
カナメを心底満足させ、その魂までをも震わせることができるのは、バージンロードの先で鼻息を荒くして待つオリッシュの、あの神々しいまでに巨大な肉棒だけなのだと。
しかし、隣を歩くカナメの、蕩けるような恍惚とした横顔を盗み見るたび、ミラージュの胸の奥がチリチリと痛む。
(これは私の果たすべき任務なのはわかっているわ……。カナメさんの門出を介添えし、その一挙手一投足を、逃さず記録に残す。けれど、この行進の先に待っているのは、神聖で幸せな家庭などでは決してない。全銀河の男たちの性的欲求を満たすための、終わりなき淫らな舞台だわ。その最初の一歩を、私の手で導かなければならないなんて……)
ミラージュがその葛藤に苦しむ中、ついにバージンロードを歩みきったカナメが、聖書台の前に立つオリッシュの目の前で足を止めた。
ホログラムの参列者たちは、相変わらず静かに、しかし熱い視線で二人を見つめている。
カナメはヴェールの下から上目遣いにオリッシュを見つめ、頰を染めて嫋やかに囁いた。
「オリッシュさん……似合ってるかしら?」
オリッシュは呆然と立ち尽くし、ただ頷くことしかできなかった。
牧師役に扮したクレアが、聖書に見立てたタブレットを手に、祭壇の横で艶然と微笑み、厳かに口を開いた。
「新郎オリッシュ・ハメルマンさん。貴方はこれからオーオク社のオーナーとして、カナメ・バッカニアの身も心も三穴も開発し尽くし、一流のABV女優に育てあげ、撮影のときには一番側に寄り添って睦み合い、気持ち良くなったときには共にベッドの上で果て、彼女がボテ腹になっても永遠に可愛がり続けることを誓いますか?」
「誓います! 全力で誓います!」
オリッシュの絶頂に近い返諾が響き渡る。
続いてクレアは、幸せそうに微笑むカナメへと視線を移した。
「新婦カナメ・バッカニア。貴女はこれからオーオク社所属のABV女優として、オーナーであるオリッシュのチンポに身も心も捧げ、一流のABV女優となるよう切磋琢磨し、オリッシュが疲れているときには優しく癒し、オリッシュが吐精するときには全て己の肌と粘膜で受け止め、オリッシュに尽くし続けることを誓いますか?」
カナメは潤んだ瞳で真っ直ぐにオリッシュを見つめ、決意を込めて答えた。
「はい……。誓います。オリッシュさんと共に『生命の歓喜』を、全銀河に響かせてみせるわ♡」
側に控えていたミラージュは、二人の間で交わされたあまりに背徳的な「誓い」の光景に、めまいを覚える。
(……これで、もうカナメさんは後戻りできない)
人類を救済するという大義名分のもと、最も愛する男に徹底的に蹂躙され、その姿を晒すことを至上の喜びとする異常な倫理。
それを『生命の歓喜』と呼んで微笑むカナメの姿を直視できず、ミラージュは思わずカメラのファインダー越しに、冷徹な「記録者」へと逃避した。
この結婚式のリハーサルプレイの裏で、レディMによる超速の手配が次々と進められていた。
半月後の5月19日、このホテルの大広間でのカナメの婚約記者会見の開催がスケジューリングされる。
それは同時に、全人類をヴァールから救う「ワクチンABV」の全銀河展開を大々的に公表する、歴史的なセレモニーでもあった。
レディMの手配により、ブリージンガル球状星団の主要マスコミ各社、さらには銀河中の有力メディアに向け、「人類救済の福音」を謳った招待状が次々と発送されていく。
そして6月1日には、同ホテル内チャペルでのジューンブライドと、たくさんのセレブを招いての超豪華披露宴の開催までもが決定。
外堀どころか内堀まで完璧に埋め尽くされていることに、オリッシュはまだ気づかない。
ただ、目の前で微笑み、ブリッツ・ブラウトの短いスカートの裾からガーターベルトに包まれた白い太ももを覗かせる「自分の妻」の、甘く妖しいサキュバス波に、肉棒を熱く脈打たせるばかりであった。
カナメはそっとオリッシュの手に自分の指を絡め、今まで一度も見せたことのない、一人の女としての情熱的な眼差しを向けた。
「さあ、“あなた”。……誓いのキスの、練習をしましょう?」
初めて夫として「あなた」と呼ばれたその響きに、オリッシュの心臓は爆辞せんばかりに跳ね上がった。
カナメの甘い誘いが、チャペルのホログラムの中に溶けていった。
(続く)