※この作品はR-18です。

マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー   作:夜叉五郎

158 / 218
2068年5月18日(金) 夜
惑星レハーム アルテミシア・グランドホテル カナメ専用スィートルーム


ch.158「並の意味、早漏着拒」

ポールダンスでの濃密なプレイタイムを終え、エネルギーを消費したオリッシュに夕飯をサーブした後。

 

夜伽役をクレアに任せたカナメは、上層のロイヤルスィートから自身のスィートルームへと戻ってきていた。

 

熱いシャワーを浴び、夕方の情事の汗と奥深くに注がれた生命の歓喜を洗い流した彼女は、薄いシルクのガウンを一枚羽織っただけの姿で、ゆったりとしたソファに身を沈めていた。

 

今日のリハーサルの結果を受けて調整の入った、明日の会見の式次第に目を通していく。

 

時刻が二十二時を回った頃になると、上層のロイヤルスィートの寝室で撮影されてるクレアの初の『ワクチンABV』がクライマックスに突入する。

 

(んっ……。オリッシュさん、クレアの奥深くで……すごく、激しく……っ)

 

直接その場にいなくとも、下腹部に刻まれた淫紋が二人の激しい交感をドクドクと伝えてくる。

 

夕方のポールダンスで彼を興奮させすぎたかと心配していたが、完全に杞憂だった。

 

淫紋が伝える暴力的なまでの快感のうねりは、彼の底知れぬ絶倫ぶりを如実に物語っている。

 

シンクロして軽い絶頂に襲われるカナメ。

 

「ふぅ……」

 

しばらく震えた後、疼く淫紋の熱を頼もしく楽しみながら、グラスのウィスキーを一口含み、ホッと一息をつく。

 

芳醇な香りが火照った身体に染み渡っていく――その時だった。

 

サイドテーブルに置いた個人端末が、控えめな着信音を鳴らした。

 

映像なし、音声のみの通信。

 

こんな夜の時間帯に誰だろうと画面を見たカナメは、ハッと息をのんだ。

 

『アラド・メルダース』

 

画面に光るその文字列を見た途端、カナメの心臓が小さく跳ねた。

 

プロポーズを正式に断って以来、彼とは一度も会話を交わしていない。

 

その後のラグナとの定例通信でも、美雲から『自分にはまだ貴女の前に立つ資格がない』というアラドの言伝を聞かされただけだった。

 

(アラド艦長……。どうして、今になって……)

 

明日に世紀の婚約発表を控え、カナメの頭の中から完全に抜け落ちてしまっていた存在。

 

かつて背中を預け、堅い信頼を寄せていたはずの男性である。

 

しかし今のカナメの心と身体は、すでにオリッシュのチンポという絶対的な存在に塗り潰されている。

 

三つの穴すべてを捧げて『使徒化』した今となっては、彼への情愛は完全にセピア色へと風化していた。

 

ただ、カナメは知らなかった。

 

自分が贖罪としてアラドをABVのテスターに推挙したことで、アラドが今や自分への依存を極限まで深め、毎夜のように幻影のカナメに精液を搾り取られる廃人同然の地獄に堕ちていることを。

 

「……はい。カナメです」

 

カナメは震える手で通話ボタンを押し、ゆっくりと端末を耳元へと持っていった。

 

端末を握りしめる彼女の左手。

 

その薬指には、今朝誇りとともに磨き直したばかりの、大粒のダイヤが輝く銀色の婚約指輪アクシア・ステラが、部屋の照明を反射してこれみよがしに光を放っている。

 

下腹部の淫紋をオリッシュとクレアの情事の熱で激しく疼かせながら、カナメは努めて冷静な、かつてのリーダーとしての硬い声を作った。

 

婚約指輪の誓いを知らぬ男と、その男を無自覚に依存の地獄へ突き落とした女。

 

沈黙の先から聞こえてくるはずの、かつて憎からず想ってた人の声を、カナメは緊張の中で待った。

 


 

「カナメさん、聞こえますか?お久しぶりです……ようやく、送って頂いたABVソフトの『並』レベルを、先ほどクリアできました」

 

受話器の向こうから聞こえてきたのは、かつての戦友であり、自分に求婚した男の、晴れやかでどこか誇らしげな声だった。

 

端末を耳に当てたまま、カナメの思考が一瞬フリーズする。

 

「……えっ?」

 

最初、カナメはアラドが何を言っているのか理解できなかった。

 

彼をABVのテスターに推薦してから、既に一ヶ月以上が経過している。

 

軍人として、そしてエースパイロットとして強靭な精神力を誇るはずのアラドが、たかが市販レベルの「並」に一ヶ月以上も費やしていたというのか。

 

(まさか……今まで、延々と私のABVを“並”レベルでプレイし続けていたというの……?)

 

カナメの背中に、冷たい戦慄が走る。

 

アラドに提供されたのは、映像倫理基準に沿ってモザイクが施され、刺激をマイルドに調整した『ノーマルモード』だ。

 

「貴女があんなにも魅力的だから……並レベルでも、全部プレイするのに少し時間がかかってしまいました。不甲斐なくて申し訳ない」

 

アラドの声は誠実さに満ちていた。

 

だが、カナメの脳裏には、オリッシュが面白がって設定したあの商品版の「罠」が浮かんでいた。

 

ノーマルモードの『並』は、一般男性がオリッシュと同じタイミングで達してしまわないよう、実際の感覚を5割もナーフ(弱体化)した設定だ。

 

アラドは、この5割に間引かれた虚像の快感こそが「本物」だと信じ込み、一ヶ月も翻弄され続けていたのだ。

 

「並レベル……ですか」

 

それしか返せなかった。

 

その時、下腹部の淫紋がひときわ鮮烈に明滅する。

 

上層の寝室で、オリッシュとクレアが再び激しくまぐわい始めたのだ。

 

サキュバス波を通じた淫紋の共振が、カナメの身体を内側から突き上げる。

 

(んっ……! オリッシュさん、また……っ)

 

椅子に座ったまま、カナメはガウンの上から下腹部を強く押さえた。

 

淫紋の共振による快感の伝播は、撮影時の実刺激の約半分。

 

カナメはこの「5割の共振」を、別の女が自分の代わりに愛するチンポを気持ちよくしてくれている証として、感謝と共に受け止めている。

 

奇しくもそれは、今アラドが必死に攻略し終えたABVの『並』モードと同等の刺激レベルだった。

 

「今の俺なら、貴女を満足させられます。貴女のレハームでの任務が終わるまで、貴女の帰りを俺は待ち続けます」

 

受話器越しの決意に、カナメは眩暈を覚えた。

 

アラドは「5割に加工された虚像」の相手を一ヶ月かけてようやく勤め上げ、たった「5割」の刺激に耐えられるようになったと喜び勇んで、この電話を掛けてきたらしい。

 

生身の自分はオリッシュのチンポの「10割」の生命の歓喜に毎日甘く翻弄され、もっと、もっとと彼を求めて鳴いていたというのに。

 

「ア、アラド艦長……ん、んんっ……! す、すみません、ちょっと今はっ……あんっ!」

 

淫紋から伝わる快感の波に耐えきれず、カナメは椅子の上で身をよじり、喘ぎ声を堪えようとする。

 

その息遣いの変化だけでアラドは何かを察したのか、電話の向こうでギリッと歯噛みした。

 

「……今日はそれだけを伝えたかった。お忙しいようですので、これで失礼します。......カナメさん、待ってます」

 

硬質な声音を残し、通信は一方的に切れた。

 

アラドは、カナメのそばにオリッシュが居ると勘違いしたのだ。

 

直後、上層から伝わってくる熱量が沸点に達した。

 

オリッシュが、クレアの子宮の底へと濁流のような生命の輝きを注ぎ込む。

 

その瞬間、共振するカナメの淫紋もまた爆発的な歓喜を脳髄へ送り届けた。

 

「ああっ……! オリッシュさん……っ、んんぅぅぅっ!!」

 

カナメは椅子に深く沈み込みながら、端末を握り締めて大きく身悶えした。

 

愛する彼が放つ圧倒的な快感。

 

「並」の5割をクリアして喜んでいる男のことなど、もはや意識の端から完全に消え去っていた。

 

カナメは白く濁っていく意識の中で、ただひたすらに、主たるオリッシュのチンポからもたらされる快楽の余韻に浸り続けた。

 


 

オリッシュとクレアの情事がもたらした共振の嵐が去り、カナメはソファに深く沈み込んだまま、しばらくその余韻に浸っていた。

 

はだけたガウンの隙間から覗く肌は、熱に浮かされたような赤みが差し、乱れた吐息が静まり返った室内に淡く消えていく。

 

(……アラド艦長……)

 

ふと、先ほど一方的に切れた通信の残滓が脳裏をかすめた。

 

「並レベルをクリアした」という、彼のあの誇らしげな、しかし現実から乖離した声。

 

かつてのデルタ小隊の精神的支柱であり、今は一艦の主である彼が、なぜあそこまで「5割の虚像」に手こずっていたのか。

 

ぼーっとした意識の片隅で、カナメは一ヶ月以上前の記憶を手繰り寄せた。

 

アラド艦長をABVのテスターに推薦した直後、レディMから一通の通知が届いていたはずだ。

 

『テスター:アラド・メルダースの視聴体験履歴、及び生体データ参照リンク』

 

当時は「自分が見るべきデータではない」と、どこか潔癖な拒絶感と同情、そして何より彼が自分の幻影を組み伏せる様を見る恐ろしさから、そのメッセージをフォルダの奥底へ追いやり、いつの間にか忘却していた。

 

だが、今の通話で生じた「決定的な違和感」が、カナメの指先を動かした。

 

(あのアラド艦長が……並レベルで、一ヶ月も?)

 

どうしても信じられなかった。

 

超一流のパイロットである彼の動体視力や反射神経、そして過酷な戦場を生き抜いてきた精神力をもってすれば、5割にナーフされた程度の刺激など、瞬時に適応してのけるはずではないのか。

 

カナメは震える指先で、保存されたメッセージのリンクをタップした。

 

端末の画面上に、無機質なマトリクス状のデータが展開される。

 

それは、初めてオリッシュと撮影したABVコンテンツ『高級娼婦カナメ・バッカニア』の、あまりにも詳細な視聴体験履歴(ログ)だった。

 

全10ステージで構成された、かつての自分の「牝」としての記録。

 

そこには、日ごとの再生回数、選択された感度レベル、そして「射精タイミング」までが、秒単位のログとしてデイリーで細かく表示されていた。

 

「……っ!」

 

スクロールを続けるカナメの瞳に、戦慄が走る。

 

そこに表示されたアラド・メルダースのデータは、思慮深いカナメをもってしても、彼という一人の男性に対して決定的な「幻滅」を抱かせるに十分すぎるほどの内容であった。

 

かつての尊敬すべき上官としての面影も、高潔な軍人としての矜持も。

 

そのログには、そんなものは微塵も残されていなかった。

 


 

「並レベルよりも、小レベルのクリア回数の方が断然多いわ……。中レベルに至っては、一度も試してないなんて……」

 

画面をスクロールするカナメの指先の速さがどんどん冷淡になっていく。

 

アラドがテスターに任命された四月九日から今日までの三十九日間。

 

そこに刻まれていたのは、アラドという一人の男の「性」の限界値だった。

 

週平均の射精回数は約十四回。

 

オリッシュの怪物じみた絶倫ぶりに比べればあまりに見劣りするが、平均的な男性として見れば「頑張っていた」部類には入るだろう。

 

だが、問題はその中身だ。

 

全十ステージのクリア履歴は、感度を大幅に抑えた『小』レベルの記録が幾重にも積み重なっていた。

 

アラドは低刺激のモードを何度も繰り返し、カナメの動きやバリアの圧感を必死に覚え込んで……ようやく『並』を綱渡りで一回だけクリアする、という泥臭い反復を繰り返していた。

 

そこには、普段彼が纏っている艦長としての漢らしさや、エースパイロットとしての余裕など微塵もなかった。

 

「……特に、乳房による刺激に弱いのね」

 

カナメは眉を顰めた。

 

アラドの射精タイミングは、カナメが豊かな乳房で彼を包み込み、愛撫するシーンに異常なほど集中していた。

 

オリッシュに抱かれ、その執拗な乳房愛撫を受け、彼のチンポをビンビンに興奮させることは、カナメにとって至高の悦びであり、誇りですらある。

 

なのに、なぜアラド艦長が同じ部位に執着しているデータを見ると、これほどまでに吐き気がするのだろうか。

 

わずか三割程度の刺激で、無様に果て続けるかつての上官。

 

そのログを冷ややかに見つめながら、カナメの唇から容赦のない一言が漏れた。

 

「……こういう殿方を“早漏”と呼ぶのかしら」

 

データを眺めていくうちに、カナメの中でアラドという男への特別感は、急速に萎んでいった。

 

(……もし、あの時プロポーズを受けて、彼と結ばれていたとしても)

 

この純然たるデータが示す通り、彼とでは到底、満ち足りた性生活など望み得なかった。

 

三割の刺激に翻弄される男。

 

一方で自分は、最後の一線だったアナルをも自ら解放し、オリッシュのチンポに全ての穴を捧げたことで、「サキュバス」へと新生を遂げている。

 

もはや、自分と彼とでは住む世界が違いすぎる。

 

(本当によかった……。プロポーズを断って、オリッシュさんと結ばれて。私は間違っていなかったわ)

 

カナメは、この慰安任務が自分に割り当てられたことに、心の底から感謝した。

 

きっと自分は、オリッシュさんのチンポに見つけてもらうために、彼のチンポという唯一無二の生命の歓喜に仕えるために、アイドルを目指してワルキューレになったのだ――。

 

喉を焼くウィスキーの熱さを楽しみながら、カナメは今の己の境遇こそが「運命(さだめ)」なのだと深く確信する。

 

「ちょっと着信にはびっくりしちゃったけど、清々しい気持ちで明日の会見に臨めるわ」

 

カナメは空になったグラスを置いて独りごちる。

 

そして、ソファから立ち上がりつつ、手に取った端末でささっとアラドの番号を着信拒否にして、一つ大きく背伸びをしながらベッドに向かうカナメであった。

 

(続く)

 

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