※この作品はR-18です。

マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー   作:夜叉五郎

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2068年5月19日(土)
惑星レハーム アルテミシア・グランドホテル レセプションホール


2068年5月19日
ch.159「カナメ記者会見:婚約発表フェイズ」


西暦2068年5月19日。

 

惑星レハームの青空を埋め尽くしたのは、鳥の群れではなく、銀河中の報道各社が飛ばした中継ヘリと報道ドローンの群れだった。

 

アルテミシア・グランドホテル周辺は、かつてない熱気に包まれている。

 

ブリージンガル球状星団の平穏を取り戻すのに尽力したワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニア。

 

そのカナメ・バッカニアに関する重大発表・記者会見が開かれるともなれば、戦後の復興に沸く星団中の人々の関心を一手に集めるのは当然であった。

 

ホテルのメインゲート前には、中に入れなかった野次馬や熱狂的なファンが幾重にも人垣を作り、巨大なレセプションホールへと続く廊下は、機材を抱えた記者たちの怒号に近いやり取りで溢れかえっている。

 

「これ以上の入場は制限させていただきます! 招待パスをお持ちでない方は、別館のサテライト会場でのモニター中継をご利用ください!」

 

ケイオス・レハーム支部のスタッフが必死に叫ぶが、木端マスコミの記者たちは特ダネを逃すまいと、なおも正面入り口に殺到していた。

 

ホール内は、SNN(スクランブル・ニュース・ネットワーク)をはじめとする大手メディアのカメラが林立し、数千人の記者が発する熱気と期待、そして幾ばくかの猜疑心が混ざり合い、爆発寸前の圧力を生み出している。

 

定刻。

 

会場の照明がわずかに落ち、ステージ脇の重厚なカーテンが左右に開かれた。

 

その瞬間、数千のフラッシュが一斉に焚かれ、ホール内は一瞬にして真昼のような白い光に包まれた。

 

まずステージに現れたのは、薄い水色のスカートスーツに身を包んだクレア・パドルだった。

 

三年の沈黙を破り、最近になって突如としてメディアを大いに騒がせている元ワルキューレメンバー、クレア・パドル。

 

彼女が公の場に姿を現したことにマスコミは騒然となり、激しくフラッシュが瞬く。

 

次いで薄いイエローのスカートスーツを凛然と着こなしたカナメ・バッカニアが姿を現した。

 

約二ヶ月振りのメディアへの露出となり、今回の会見の主役の登場に場のボルテージは一気に昂まる。

 

カナメ・バッカニア23歳とクレア・パドル20歳。

 

この二人が並んで公の場に現れたというだけで衝撃的なニュースになる。

 

168cmのカナメと、それをわずかに上回る172cmのクレアのスラリと伸びた長い脚を運ぶ二人の姿は、まさに銀河の至宝と呼ぶにふさわしい。

 

だが、詰めかけた記者たちの視線を釘付けにしたのは、白いYシャツの布越しでも隠しきれない、その圧倒的な双丘の存在感だった。

 

二人は正装であるシャツの下に、最新の重力制御ブラのみを着用していた。

 

カナメが誇るFカップ近い乳房と、クレアによるFカップ・プラスの重厚な乳塊。

 

それらは重力制御の恩恵を受け、不自然なほどに高く、そして攻撃的なまでに鋭い弧を描いて突き出されている。

 

壇上の所定の位置まで移動するわずかな間、二人の歩調に合わせて、その豊穣な肉塊が最高級の形状を保ったまま、しなやかに、かつ重量感たっぷりに甘いフェロモンを振り撒きながら揺れ動く。

 

ワルキューレ時代よりもさらに磨き上げられた、いわゆる「痩身巨乳」の完成されたシルエットは、清楚なはずのスーツに抗いがたい艶やかさと、暴力的なまでのエロティシズムを与えていた。

 

数え切れないほどのシャッター音が波のように押し寄せ、会場の空気は一瞬にして、匂い立つような年頃の若い女の色香に支配された。

 

カナメは落ち着いた足取りでステージ正面の主賓卓へと向かい、椅子を引いて静かに腰を下ろした。

 

一方、クレアはその隣にある司会卓へと立ち、マイクの感度を確かめるように軽く微笑む。

 

かつての仲間であり、今は同じ「ワクチンABV嬢」としての使命を共有する二人の歌姫。

 

その静かな、しかし圧倒的な立ち姿に、騒然としていた記者席は一瞬にして静まり返った。

 


 

静まり返ったホールに、クレア・パドルの透明感のある声が響き渡った。

 

司会卓に立つ彼女は、172cmの長身を支える薄い水色のスーツを、その豊かな胸元で今にも弾け飛ばさんばかりに押し広げている。

 

「本日はお忙しい中、銀河各地よりお集まりいただき、誠にありがとうございます。オーオク社広報のクレア・パドルです。皆様、私自身の活動再開への温かいお言葉もありがとうございます。ですが、本日の主役は、隣におります彼女です」

 

クレアが隣のカナメを促すと、カナメは意を決してマイクを引き寄せた。

 

イエローのスーツが、彼女の緊張と決意を包み込んでいる。

 

「……ワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニアです。本日、皆様に大切なご報告があります」

 

一瞬、会場が息を呑んだ。

 

「――私、カナメ・バッカニアは、お付き合いをさせて頂いておりますオリッシュ・ハメルマンさんと婚約いたしましたことをご報告させていただきます」

 

その瞬間、ホールは爆ぜた。

 

数千のフラッシュが視界を白く塗り潰し、怒号のようなシャッター音が轟く。

 

SNSでは「オリッシュ・ハメルマン?誰だそれはっ?」「KBモデルの時のあの社長か!」「マジであの『謎の変態社長』が相手なのかよ!」と、4月のCM投下時に浮上していた名前が「現実の婚約者」として確定したことで、サーバーが悲鳴を上げるほどの爆発的な反応が巻き起こった。

 

記者席からも「やはりオーオク社のオリッシュか!」「実在したのか!」「どんな男なんだ!」と確認を求める声が次々と上がる。

 

クレアが冷静にマイクを握り、公式な立場から補足を加えた。

 

「改めてご紹介させていただきます。カナメさんのお相手のオリッシュ・ハメルマンは、現在、私どもオーオク社の代表取締役社長を務めております」

 

その宣言により、ネット上の憶測だった「オリッシュ=オーオク社長」が公式に裏付けられた。

 

同時に敏腕記者たちは自身の端末を見て顔を強張らせた。

 

どれほど検索をかけても、オリッシュ・ハメルマンという男の経歴はオーオク社設立以前が「空白」なのだ。

 

ケイオス諜報部による徹底的な隠蔽工作により、彼の過去は銀河のネットワークから完全に消去されている。

 

「……経歴が出てこない。レディMの関係者か?」

 

「隠蔽工作を隠す気が無いってこと自体が警告だな。触れるな危険ってやつだ」

 

記者たちが得体の知れない圧迫感に飲まれそうになる中、前列の記者が声を張り上げた。

 

「カナメさん! 指輪を見せてください! 婚約の証を!」

 

カナメは頬をわずかに赤らめ、戸惑いながらも左手をゆっくりと掲げた。

 

薬指でシンプルながらも、気品ある確かな輝きを放つプラチナのリング。

 

「……特定班、出ました! 『スターリィ・ライン』のアクシア・ステラです!」

 

後方の記者が声を上げる。

 

若い女性に絶大な支持を受けるハイエンド・ブランドでありながら、成金的な誇示とは無縁の洗練されたデザイン。

 

ギリシャ語で「価値あるもの」を意味する「AXIA」と、ラテン語の「星」を意味する「Stella」合わせた、「永遠の価値を持つ星」というコレクション名を冠する気品ある一粒石の指輪だ。

 

「なるほど……。あえてグレードを抑えたのは、華美なものを好まないカナメの趣味を、相手が何よりも尊重した結果だろうな」

 

「彼女の持ち歌『AXIA』の曲名が入った指輪を贈るなんて、にくい演出だな。物語性に富んでて記事にもしやすい」

 

記者たちは、その指輪一つから「オリッシュ」という男が、単なる富豪ではなく、カナメ・バッカニアという女性の精神性を深く理解し、心から慈しんでいることを認めざるを得なかった。

 

だが、その「納得」の直後、会場にいたゴシップ記者たちの脳裏に、戦慄にも似た凄まじい閃きが走った。

 

(待てよ……オーオク社の社長が、カナメの婚約者……?)

 

(……ということは、先月発売されたあの『KBモデル』は……。実しやかに囁かれていた『カナメ・バッカニア本人の肉体を模した』という噂は……!)

 

その疑念が共有されるのに、時間はかからなかった。

 

記者たちの視線が、壇上のカナメの清楚なスーツ姿から、その下にあるはずの「肉体」へと、卑猥なまでの好奇心を持って一斉に突き刺さる。

 

もし噂が真実なら、オリッシュという男は自分の婚約者の秘部を型取りし、銀河中に売り捌いていることになる。

 

そのあまりにもスキャンダラスで倒錯した「愛の形」への興奮が、プロの記者たちの理性を焼き、会場の温度を数度跳ね上げた。

 

誰が最初にその「禁断の質問」を投げつけるのか。

 

もはや誰も、型通りの馴れ初めなど聞いてはいない。

 

彼らが求めているのは、銀河の歌姫の「尊厳」を剥ぎ取るような、生々しい真実だけだった。

 

「それでは、これより質疑応答に移らせていただきます」

 

クレアが凛とした声で告げると、ホール中の記者が、飢えた獣のごとく一斉に手を挙げた。

 


 

「それでは、これより質疑応答に移らせていただきます」

 

クレアが記者を指名した瞬間、会場の空気は「お祝いモード」から「取材現場」へと一変した。

挙がった手の大半は、芸能記者ではなく経済部や社会部の記者たちだった。

 

Q:「お二人の出会いのきっかけは?」

A:「ワルキューレとしての仕事関係です」

 

「やはりそうか」「仕事以外の出会いなど不可能だろうしな」と、ワルキューレとしての彼女の過酷なスケジュールを知る記者たちは深く納得する。

 

Q:「オーオク社のオリッシュ社長とは、どのような方ですか?」

A:「可愛らしくて尊敬できる人です。そして私を何より大切にしてくれます」

 

34歳の新進気鋭の社長を「可愛らしい」と評したカナメの回答に、会場からは温かな笑いが漏れた。

だが、目敏い記者たちはその言葉の裏に、年下の妻を立てつつも掌の上で転がすような、オリッシュという男の底知れない懐の深さを読み取っていた。

 

Q:「初めて会った時の印象はどうでしたか?」

A:「私の熱烈なファンとのことで、正直戸惑いが強かったです」

 

この瞬間、会場はざわつき、SNSは阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

『推しを公言して近づいて、そのまま食ったのかよ!』『全カナメファンの敵だ!』『裏切り者のオリッシュ許すまじ!』

だが、即座に美雲やマキナのファンが「リーダーの幸せを邪魔するな」と応戦し、フレイアファンまでもが『風に召されるよりはマシだろ』と参戦。

その重すぎる一言に、吠えていたカナメファンたちも沈黙せざるを得なかった。

 

Q:「プロポーズはどのような状況で?」

A:「彼とのとある交渉の席で、ストレートに伝えられました」

 

「交渉の場で求婚か」とどよめきが走る。

「相当なやり手だな」「それくらい強引じゃないとカナメほどの佳い女は堕とせないか」と、オリッシュの潔い男気に、嫉妬を超えた称賛の声が漏れ始める。

 

Q:「結婚を決めた理由は?」

A:「彼が私を強く求めてくれたからです。私もずっと彼を支えていきたいと、自然に思えたからです」

 

うっとりと惚気るカナメの表情に、会場の男たちは毒気を抜かれた。

「オーオク社の株価も爆騰中だし、どっちが玉の輿かわからんな」「末長くお幸せに……」と、諦め半分の祝福が広がる。

 

Q:「挙式はいつですか?」

A:「来たる六月一日に、ここアルテミシア・グランドホテルで予定しています」

 

「二週間後!?」「早すぎるだろ!」と驚きの声が上がるが、「カナメさんと結婚できるなら俺でも速攻で挙げるわ」「財力があれば余裕か」と、納得の波が押し寄せる。

 

ここまでは多少カナメの反応に気にかかるところがあるものの、惚気の範疇と受け止められていた。

しかし、次第に質問の矛先はオーオク社との不透明な関係へと、急激に鋭さを増していく。

 

Q:「オーオク社は今回の結婚を機に、ワルキューレのマネジメント権、あるいはその莫大な利権を独占するつもりですか? 公私混同ではないのですか!」

A:「そのような意図はありません。彼は私の活動を尊重してくれています」

 

「尊重」という言葉と「無期限休養」という矛盾に、会場は即座にざわついた。

ワルキューレとしての活動継続を許さない、実質的な「歌姫の独占命令」ではないのかという疑念が、記者たちの間に急速に広がっていく。

 

Q:「無期限休養とのことですが、発表が急すぎます。すでに懐妊されているのではないですか!?」

A:「いえ、妊娠はまだです」

 

きっぱりとした否定にSNSではカナメのファンを中心に安堵の声が広がる。

薄いイエローのタイトなスカート越しにもわかる彼女の細いままの腰回りは、その回答の信憑性を何よりも雄弁に物語っていた。

だが、ハイエナのような記者たちはなおも執拗に食い下がり続けた。

 

Q:「では休養の本当の理由は、オーオク社の経営に参画するためではないですか? 歌姫を引退させ、自社のプロパガンダに利用するつもりでは!」

A:「経営ではなく、違うかたちでオーオク社の活動に関わっていくことになります」

 

その回答に、会場の空気が凍りついた。「経営ではない別の活動」というあまりに含みのある言い回し。記者たちの脳裏には、即座にオーオク社が展開するアダルト事業がよぎった。

 

Q:「違うかたち……? それは先月発売された『KBモデル』と関係があるのですか! あれがカナメさんの肉体をモデルにしたという噂、事実なのでしょう! 休養して、あのような品を自ら宣伝し、肉体を提供し続けるつもりですか!?」

 

そのあまりに直球で、かつ扇情的な問いが投げかけられた瞬間、壇上のカナメは動じるどころか、隣のクレアと短く視線を交わした。

 

それは、この下世話な質問こそが「次のフェイズ」へ進むための合図であると、事前に打ち合わせていたからだ。

 

カナメはマイクを引き寄せると、凛とした声で言い放った。

 

「そのご質問への回答を含め、これよりオーオク社から皆様へ、重要な発表をさせていただきます」

 

質問を遮られて記者たちから怒号が上がる。

 

「静粛に!!」

 

マイクを通したクレアの鋭い一喝が、記者たちを黙らせる。

 

彼女は冷徹な視線で会場を射抜き、言葉を継いだ。

 

「本日の会見は、単なる婚約報告の場ではありません。これより、我がオーオク社の設立理由、全人類にとっての喫緊の課題であるヴァールシンドロームへの抜本的な対策についての、極めて重大な発表を行います」

 

その宣言と同時に、会見場の照明が一段落ち、背後の巨大スクリーンにオーオク社のロゴマークが浮かび上がった。

 

スキャンダルを追っていた下劣な空気は一瞬で霧散する。

 

会場には「銀河の未来」を根底から覆すような、肌を刺すほど冷ややかな緊張感が満ちていった。

 

(続く)

 

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