マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
ブリージンガル球状星団 各所
惑星レハームのアルテミシア・グランドホテル、ロイヤルスィート「ルビー・プリズン」。
ダイニングの壁一面を占める大スクリーンに映し出されている会見の様子。
オリッシュ・ハメルマンは深くソファに沈み込み、ゆったりと脚を組んだ姿勢でそれを受け止めていた。
三時に始まった会見も佳境に入っている。
ダイエットにより贅肉を削ぎ落とした肉体と、カナメ、そしてクレアという極上の個体を完全に支配下に置いた経験が、彼に不敵な静寂を与えていた。
「へぇ……。なるほど、話がえらく壮大になってきたなぁ」
オリッシュは高級クリスタルグラスに注がれた黄金色の液体を軽く揺らし、低く、落ち着いた声で独りごちた。
画面の中では、クレアが「ワクチンABV」の核心について語っている。
「俺がカナメに施した、サキュバス波を出すための『メソッド』か。……そういうことだったのか」
彼には技術的な発明をした覚えなどない。
だが、確かな「実感」があった。
自分と交わった後の彼女たちが、文字通り「サキュバス」のように淫らな変貌を遂げ、抗いがたい生体波を放ち始めるあの熱量を。
「そうか。あの淫紋も、その証拠だったんだな」
オリッシュは静かに、納得したように頷いた。
処女だったカナメ、そしてクレア。
彼女たちの口、膣、尻の三つの穴のバージンを暴力的な熱量で暴き、その処女を犯し尽くしたあの日以来。
オリッシュが昂ぶるたびに、彼女たちの下腹部に淡いピンク色の「淫紋」が浮かび上がるようになっていた。
「あの淫紋は、俺のメソッドが定着したサイン……。つまり俺はあの遺跡の事故のせいで、抱いた女をサキュバスに変えてしまう『力』を得たわけだ。すべて納得だわ」
自分が宇宙再構築システムとリンクしてしまっていることなど、疑いもしない。
ただ、己の絶倫ぶりと女たちを支配する快楽の正体を「事故による超常的な役得」として、冷徹に解釈した。
続けて発表された運用体系に、オリッシュは口角をわずかに上げた。
「……ふふ、おかしいな。一回500クレジットも払って、幻影のカナメに縋り付くなんて。みんな、本当に可哀想だ」
オリッシュの瞳に宿るのは、卑屈な興奮ではなく、圧倒的な強者の優越感だ。
「みんなが必死に拝んでいるその『KBモデル』のオリジナルに、俺は今夜も中出し出来る。それも、感度制限なんてないフルスペックの生身で……」
画面の中では、最愛の婚約者であるカナメ・バッカニアが、自らの膣を模した『KBモデル』を高く掲げ、全世界のオスどもを挑発するように微笑んでいる。
その姿が映し出された瞬間、オリッシュの目に肉食獣のようなぎらついた光が宿った。
「ッ……! カナメ、なんて格好を……! 全銀河に向けて『私の膣を味わえ』と宣戦告白するなんて……なんて、最高に淫らな女なんだ!」
そのデバイスの中身が、カナメの「本物」を模したものであるという事実が、オリッシュの理性を焼き切る。
「くぅーっ、最高だよカナメ! そんなお前が今夜俺の腕の中で、俺の種を欲しがって鳴くんだと思うと……ああ、堪らない!!」
オリッシュは、ガウンの内側で岩のように硬く、凶暴な脈動を繰り返す自身の質量を、征服者の手つきで上から力強く、ねっとりと押さえつけた。
自分一人で果てるなどという、安っぽい自慰でこの熱量を逃がすつもりはない。
この猛烈な勃起の圧力と疼きを、あえて解放せずに限界まで溜め込み、帰宅したカナメに直接叩き込むための「弾薬」として蓄えておくのだ。
「……早く帰ってきてよ、カナメ。会見が終わったらすぐにだ。その『新婚人妻モード』のリアルを、俺のこのチンポでたっぷりと味合わせてくれよ」
オリッシュが自らの「暴発」を強靭な意志で抑え込んでいるため、カナメへの快感のフィードバックは遮断されている。
だが、その代わりに「今すぐ食い尽くしたい」という飢えた捕食者の意思だけが、淫紋を通じて彼女の胎内へ、暴力的なまでの重圧となって伝わっていた。
惑星ラグナのケイオス・ラグナ支部、マクロス・エリシオン艦橋。
アラド・メルダースにとって、この一ヶ月は己のプライドを懸けた「戦い」だった。
彼は「オペレーション・スィート・プリズナー」の全容を知らされた数少ない一人だ。
カナメの慰安任務レポートにもアクセスし、彼女がどれほど過酷な状況でオリッシュ・ハメルマンという男に身を捧げているか、その生々しい記録を血を吐くような思いで読み耽ってきた。
(あと少しだ……遺跡の調査が進み、システムの機能さえ停止すれば、カナメさんの任務は終わる。その時こそ、俺は彼女を迎えに行く)
アラドはそう信じて疑わなかった。
だが、オペレーション・スィートプリズナーでの彼の役割は、ただのABVのテスターだ。
実は遺跡の調査はとっくに凍結されていたことや、ワクチンABVソフトによるヴァールシンドロームの根治プランなどの重要な情報は、レディMによって一切伏せられていた。
さらに周囲の隊員たちも、彼がカナメにプロポーズして玉砕した噂を聞いていたため、腫れ物に触るように彼女の話題を避けていた。
そして、艦長席のメインモニターに映し出された記者会見が、彼の世界を根底から粉砕する。
「……婚約? オリッシュと、カナメさんが……?」
画面の中、薄いイエローのスカートスーツに身を包んだカナメが、オリッシュへの愛を語り、ダイヤの指輪を慈しむように見つめている。
アラドの思考は停止した。
自分だけだと思っていた。
カナメが自分をテスターに推薦したのは、信頼する自分にだけその苦渋を共有し、支えてほしかったからではないのか。
それが、この男と結婚するなど、あってはならないことだった。
しかし、絶望はそれだけでは終わらない。
続いて発表されたのは、ABVシステムの全銀河への市販化と、カナメ自身の「ABV嬢」としてのデビュー宣言である。
彼にとってABVとは、あくまで「カナメの負担を減らし、早期にオリッシュへの慰安任務を終わらせるための補助デバイス」の試作品に過ぎなかった。
自分だけがテスターとして、彼女の負担を分かち合っているとさえ自惚れていたのだ。
それが今、あろうことか全人類の男性に向けた「共有の娼婦」としてソフト化されるという。
「ワクチンABV……ソフトとして公開……だと? 全人類の男に、あんたのすべてを売り渡すっていうのか……っ!」
さらに追い打ちをかけるように、カナメは会場の熱を煽るように、そしてこの中継を見ているであろうアラドに引導を渡すかのような、残酷な「真実」を口にした。
『ここで、少しだけ秘密をお話ししましょう。先ほどクレアが説明した感度レベル「並」ですが……。実際は記録時の快感を5割まで抑えた「接待仕様」に過ぎません』
「……っ……!?」
アラドは、艦長席の肘掛けを砕かんばかりに握りしめた。
『皆様が期待されている「並」の刺激ですら、現実の半分。レベル「中」でようやく七割です。そして、市販版では制限されているレベル「大」……これこそが、私との逢瀬の気持ちよさを九割まで再現する、文字通りの「禁断の領域」です。そこには、私のパートナーだけが独占できる、私という「サキュバス」の本性が待っていますから』
(五割……? 俺が、一ヶ月もかけて死ぬ思いでようやくクリアしたあの快感が……彼女にとっては、たった半分の、接待用の刺激だったっていうのか……?)
脳裏をよぎるのは、昨夜彼女にかけた電話だ。
「並をクリアした、貴女を満足させられる」と胸を張った自分。
彼女はその時、アラドを「五割の快感ですら満足に扱えない早漏の男」として、憐れみすらなく聞き流していたのだ。
昨夜の彼女のどこか戸惑ったような声の正体を悟り、アラドは戦慄した。
「サキュバス……。全人類の男の精を吸い尽くす淫らな怪物だと、自らそう名乗るのか、カナメさん……!」
艦長席のシートに深く沈み込み、茫然自失のまま動くことができないアラド。
任務時間が終了するのを待ってふらふらと自室に戻ったアラドは、震える手で個人端末を握りしめた。
(せめて、一言だけでもいい。あの会見は演技だと言ってくれ。カナメさん......)
だが、呼び出し音すら鳴らない。
『……おかけになった電話番号は、お客様のご希望によりお繋ぎできません』
「……っ、あ……あああああッ!!」
アラドは叫び声を上げ、端末を壁に投げつけた。
通信拒否。
それが、一ヶ月間「五割の虚像」に縋り付いてきた男に対する、かつての愛した女からの最終通告だった。
デスクの脇には、カナメに振られたあの夜に届いて以来、嫌な予感がして一度も手をつけていなかった最新式電動オナホール「KBモデル」が入ったアタッシュケースが転がっている。
(……ふざけんな。やってやるよ! こいつを使って、その『本性』とやらを暴いてやる。……この俺が、たかが一人の女の快感に……負けてたまるか!)
アラドは手負いの獣のような目つきで、アタッシュケースからそのデバイスを掴み取った。
黒地に黄色のラインが施された本体は驚くほど軽く、まるでカナメのライブ衣装「ライデン・シャフト」をそのままオナホールへ落とし込んだような配色だ。
荒々しく衣服を脱ぎ捨て、七本のリングと共にKBモデルを自身に装着する。
その瞬間、先端から侵入した肉棒を包み込んだのは、驚くほど生々しい「内壁」の質感だった。
人肌のぬくもりを完璧に再現した暖かさと、粘膜のような吸い付く柔らかさ。
それは、毎晩ABVを通じて脳に直接送り込まれてきた、あのカナメの膣内の感触そのものだった。
「……あ、……っ」
デバイスを装着しただけで、アラドの肉体は残酷なまでに反応した。
一ヶ月間、仮想空間で狂うほど貪り合ってきた「彼女の奥」の再現。
その圧倒的な実在感を前に、アラドのペニスは挿入もしていない段階から猛烈な勢いで勃起。
先端からこぼれた先走りの汁がKBモデルの内壁を汚していった。
「……クソっ! 嵌めただけでこれか……!しっかりするんだ、俺……っ!」
アラドは自身の不甲斐なさを呪い、荒い呼吸を整えようと歯を食いしばった。
これは戦いだ。
彼女が隠していた「本性」を暴き、男としての尊厳を取り戻すための、退路を断った最終決戦なのだ。
こんなところで無様に果てるわけにはいかない。
荒々しく汗を拭い、アラドは現実を遮断するようにサイバーゴーグルを被った。
血走った眼で、網膜上に浮かび上がる設定画面の『大』を睨みつける。
「……ッ!? なんだよ、これは!」
虚空に浮かぶ『大』のボタンを選択しても現れるのは、開発者の悪意を感じさせるポップアップだった。
『大:撮影時のリアルな感覚をほぼお楽しみいただけます(開発者向けテスト用)。 ※市販版では過剰刺激による健康被害を防ぐため、大は制限されています。 中で充分お楽しみいただけます。』
「『中で充分』だと!? おちょくってるのか!」
アラドは屈辱に震えながら、現在選択可能な最高難易度——レベル『中(七割)』を選択した。
「こんなんで負けるはずはない……。俺は、マクロス・エリュシオン艦長のアラド・メルダースだ……ッ!」
自分を叱咤するように荒々しく汗を拭い、現実を遮断するように『高級娼婦カナメ・バッカニア』を選択する。
視界が暗転し、一瞬でラグナの自室から、レハームのロイヤルスィート「ルビー・プリズン」のベッドの上へと引きずり込まれる。
赤い天井のシャンデリア、背中に触れるシーツの高級な柔らかさ。
そして目の前には、三つ指を立てて挨拶を終えたばかりの、深紅のオフショルダードレスに身を包んだカナメがいた。
(……来るッ!)
この一ヶ月、狂ったように繰り返してきた「並(五割)」での記憶が、アラドの身体を反射的に身構えさせる。
カナメがゆっくりと上体を起こし、オリッシュ——アラド——の首に細い腕を回してきた。
赤いシルクのロンググローブが首筋を滑る。
だが、その温もりさえも「並」の時とは比較にならないほど生々しく、心臓を直接掴まれたような圧迫感となってアラドを襲った。
カナメの顔が近づき、唇が重なる。
「……っ!? ……ぁ、は……ッ!」
重なった瞬間、アラドは脳髄を白熱する電撃が貫いたような衝撃に、喉の奥で悲鳴を上げた。
これまで何回、何十回と味わい、暗記するほど繰り返してきたはずの、幻影のカナメとのプレイ始めのキス。
だが、リミッターが七割まで解除されたその唇は凶器じみた柔らかさと、命の灯火のような甘い熱を持ってアラドの全意識を略奪した。
(違う……全然、違う……ッ!)
「並」の時には感じられなかった、微かな唇の粘膜の細やかな動き、伝わってくる脈動、そして赤いリップの下にある本物の肉の圧倒的な実在感。
熟れた果実のように押し付けられる弾力が、七割の出力によって「幻影」の域を完全に超え、アラドの唇を優しく、しかし抗いようのない力で包み込む。
フルーティーで甘く、微かに塩味のするカナメの唾液の味さえも、より濃密に、より生々しくアラドの口腔を支配した。
(嘘だろ……。俺は一ヶ月間、一体何をクリアした気になってたんだ……!)
この「中(七割)」の刺激の前では、彼が死ぬ思いで耐え抜いてきた「並(五割)」のプレイなど、ただの書き割りのような書き写しに過ぎなかった。
慣れ親しんだはずのカナメの手管。
それが、出力が上がっただけで、まるで人生で初めて「本当のキス」を経験したかのような、暴力的なまでの鮮烈さとなってアラドを骨抜きにする。
この一ヶ月、必死に積み上げてきた訓練も、誇りも、自惚れも、すべてがこの生々しい一回のキスの前に無意味なガラクタとなって崩れ去った。
理性が甘く溶け、アラドの意識が彼女の舌の動きだけに溺れそうになった、その時。
カナメの豊満な乳房がドレス越しに胸板へ押し付けられ、彼女の指が、勃起しきった肉棒をグローブ越しに、しかし「並」とは違う確かな質量を持って掴んだ。
「が……っ、あ、あああぁッ!?」
手コキの段階で、KBモデルがカナメの指の動きと完璧に連動し、アラドの肉棒を抉るように絞り上げる。
「並(五割)」とは比較にならない、「中(七割)」の暴力的な熱量が貫いた。
アラドの男としての尊厳は、たった二割の上乗せ——「本物の断片」を前に一瞬で溶け去った。
実際のところアラドの適正な感度レベルは「小(三割)」であり、体感にして許容量の二倍以上の快感に曝されたわけで、当然と言えば当然であった。
「カナメさん、カナメさぁんッ!!」
絶頂の瞬間、KBモデルの自動吸引機能が作動し、アラドの精液は先端のコンドームへと強制的に吸い取られていく。
愛した女の「中レベル」の刺激にさえ、アラド・メルダースは呆気なく、無様に決壊した。
精液を吐き出し、静まり返った自室で、彼は自分の誇りが完全に撃墜されたことを、ただ絶望と共に噛み締めていた。
(続く)