マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
ch.208「新生の首都、至高の妃の涙」
前日に衛星軌道上から放たれたマクロス・オーオクの主砲――その抗えぬ恍惚の閃光がもたらした効果は、地表の情勢を完全に一変させていた。
一滴の血も流れることなく、ただ絶対的な愛欲の波動によって全雄の闘争本能が根こそぎ武力化され、強制的な賢者タイムへと突入させられた五大国。
だが、この電撃的な無力化は、単なる一過性の攻撃ではなかった。
マクロス・オーオクの圧倒的な一撃は、新統合政府によるディバイド再進駐のための、冷徹に計算された尖兵としての役割を果たしたに過ぎなかったのである。
時を同じくして、大気圏外にはレディMによる新統合政府への迅速な根回しにより、政府の正式な承認を得た星間企業複合体ケイオスの軍事部門の戦力が、それぞれの星系から順次到着し、この宙域へと次々とフォールドしてきた。
ケイオスはこれまで、民間軍事プロバイダーとして統合軍から多大な任務を委託され、銀河辺境におけるヴァールシンドロームの鎮圧と予防に尽力してきた組織である。
しかし、彼らはこれから普及するであろうワクチンABVソフトの効果により、ヴァールシンドロームの脅威が劇的に下火になると予測していた。
そのため、余剰となる強大な軍事戦力を、混沌を極めるディバイド星系の安寧を確立するために振り分けることを決定したのである。
このディバイド再進駐作戦には新統合政府の圧倒的な大艦隊が投入されており、その中の一隻として、カナメたちがワルキューレとして活動していた頃の母艦、マクロス・エリシュオンもラグナを出撃して参加していた。
当然ながら、そのブリッジに立つ艦長は、かつてカナメの強奪を謀った罪で銀河の最果てへの追放刑に処されたアラド・メルダースではない。
更迭された前艦長に代わり、新統合政府から新たに任命された新艦長の下、これがエリシュオンにとっての初作戦であった。
マクロス・エリシュオンらを含む再進駐軍の本隊は、中枢の首脳陣が完全に機能停止に陥っていた五大国――ザーディッシュ、ブルトコッホ、ケネスリード、マジェス、ツァルスクレブトの各拠点を瞬く間に占領し、組織的な武装解除を極めて迅速に、かつ平和的に実施していった。
地表で各勢力の武装解除が進められるのを待つ間、マクロス・オーオクは衛星軌道上で静かに待機を続ける。
しかし、艦内では不測の事態に備え、いつでも二の矢を放てるよう、再度サキュバス砲が撃てる状態にするための濃厚な弾込め行為が執り行われていた。
オリッシュ自身はこれがただのハネムーンであると思い込んだままであったが、最深奥の社長室では、彼がカナメたちハメキューレの面々と再び深く睦み合い、その肉体を激しく貪り合っていた。
オリッシュの強烈な愛撫と突き込みによって、彼女たちの下腹部に刻まれた淫紋が鮮烈なピンク色に脈動する。
そこから溢れ出る濃密なサキュバス波は、ゴッデスサイズの巨大なベッドの下に配置されたフォールドアンプを介して増幅され、サキュバス砲の弾倉へとダイレクトに送り込まれていった。
弾倉に配置された五つの巨大なフォールドクォーツが、ハメキューレの甘い喘ぎ声と同調するように、怪しい恍惚の光を蓄えながら臨界へと満たされていく。
この時、メインブリッジでもサキュバス砲のチャージへの協力が行われていた。
冷徹に戦況を監視する監督官のミラージュを除く、艦長のアーシェリー以下、オーオクの女性スタッフ全員が、下着代わりに履いた特殊なデバイスを起動させる。
社長室から伝播するオリッシュの絶対的な愛の波動をそのデバイスでリアルタイムにエミュレートし、自らの秘処を熱く蠕動させ、火照る肉体から溢れる情欲のエネルギーをサキュバス砲へのチャージへと注ぎ込んでいったのである。
—
すべての占領と安全確保が完了したという報告が、サキュバス波の弾込めを完了したオーオクのメインブリッジへと届いた。
「地表の五大セクター、すべて占領完了。武装解除の成功を確認しました」
ミラージュの冷静な報告を受け、満を持してクォーター級マクロス艦マクロス・オーオクが、ディバイドの中央首都イブコーアの上空へと厳かに降臨を開始する。
巨大な艦影が地表を覆い、オーオク社の専用シャトルが広場へと着陸する。
タラップが開き、精鋭エージェントたちに伴われて、ついにオリッシュ・ハメルマンが姿を現す。
絶対的な力で世界を平定した支配者特有の、圧倒的な覇気がその肉体から放たれていた。
その隣には、正妻としての気高い風格を纏ったカナメ・バッカニアが、誇らしげに寄り添っていた。
この記念すべき故郷への凱旋にあたり、カナメが身に纏っていたのは、ディバイドにおける「貴婦人の最高級正装」として仕立てられた格式高いドレスだ。
それは、大人の歌姫としての気品をこれ以上ないほどに際立たせる、淡いピンクと洗練されたラベンダーカラーが美しく溶け合うようなグラデーションのロングドレスである。
クラシカルなヴィクトリアンスタイルを踏襲したそのデザインは、オフショルダーの仕立てになっており、カナメの白く滑らかな背中のラインを大胆かつエレガントに覗かせていた。
特に目を引くのは、背面に施された豪奢なバッスル構造だった。
サーモンピンクとクリーム色の鮮やかなリボンが幾重にも重なり、大輪の薔薇のように腰元を彩りながら、美しく波打つトレーンとなって床へと長く裾を引いている。
頭部にはドレスと同色のフリルをあしらった気品あふれるトーク帽を斜めにちょこんと乗せ、まとめられた緋色の髪をさらに艶やかに引き立てていた。
白いロンググローブに包まれた細い手元には、優雅に折り畳まれた緋色の扇が握られており、彼女が一歩を踏み出すたびに、正妻としての、そしてこの星の「女神」としての神々しいまでの風格が周囲の空気を支配していった。
「おお……! 本当に、一人の犠牲もなく戦争が終わったんだ……!」
「内乱を止めてくれた! あの御方こそ、我らの救世主だ!」
「カナメ様! 私たちの希望、至高の妃カナメ様万歳!!」
中央首都イブコーアの広場を埋め尽くした無数の民衆から、地鳴りのような大喝采が沸き起こった。
昨日まで憎しみ合い、恐怖に怯えていた人々が、歓喜の涙を流しながら二人の降臨を称えている。
内乱の連鎖を絶対的な力で終わらせたオリッシュは名実ともに「救世主」として崇められ、その隣で微笑むカナメは、絶望の故郷に絶対的な平和を持ち帰った「至高の妃」として最大級の祝福に包まれていた。
「……すごい歓声ね、オリッシュさん」
カナメは豊かな乳房を誇らしげに揺らしながら、隣に立つ最愛の夫の逞しい二の腕に、そっと自らの柔らかな肉体を押し当てるように深く腕を絡めた。
その瞬間、押し寄せる喝采の渦の中で、カナメの胸の奥に封じ込められていた古い記憶の領域が、音を立てて開き始めた。
かつてこの星で、戦火の恐怖に怯えながら孤独に過ごしていた少女だった時代。
前大戦を歌で終わらせたランカ・リーの姿に激しく憧れ、自分も歌で誰かを救いたいと希望を抱いてディバイドを飛び出したあの日。
しかし、故郷を離れてソロアイドルとしてデビューした後は一転し、どれだけ命を振り絞って歌しても誰にも届かない惨めな下積みの連続だった。
さらに、ようやく掴んだワルキューレのリーダーとして銀河の戦火をくぐり抜ける中で刻まれた、数々の戦乱のトラウマ。
そして何より、自分を命がけで守り、その腕の中で冷たくなっていった若きエースパイロット、メッサー・イーレフェルトの凄惨な死――。
それらすべてが、彼女の精神を長年縛り付け、決して消えることのない暗い傷痕として遺っていたはずであった。
(ああ……不思議ね。あんなに苦しくて、あんなに悲しかったはずなのに……)
いま、オリッシュの大きな手に自らの細い指を絡ませ、しっかりと握り締めながら民衆の声を聞いていると、その胸の傷が、まるで濃厚な熱に包まれるようにみるみる融解していくのが分かった。
過去の悲劇も、戦火の恐怖も、失った戦友への未練も。
目の前にいる、自分を世界で一番激しく、狂おしいほどの独占欲で愛し尽くしてくれた夫の、あまりにも圧倒的な愛の質量によって、綺麗さっぱりと至上の幸福へと上書きされ、救済されていく。
誰のものでも難かった自分が、今やこの全能の支配者の唯一無二の正妻となり、その絶対的な力で故郷のすべてを救い上げてみせたのだ。
「カナメ、どうしたんだい? 急に黙り込んで……」
オリッシュが優しく覗き込んできた。
その眼差しは、かつて誰からも顧みられなかった頃の純粋さを残しながらも、一人の雄としての底知れない自信に満ちあふれている。
「ううん……なんでもないわ、あなた♡」
カナメの目から、一筋の美しい涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。
それは悲しみの雨ではなく、身も心もすべてをこの主へと捧げ、救われた新妻の至上の歓喜の雫だった。
彼女は蕩けた瞳で夫を見つめ、誇らしげにその胸へと身を委ねる。
カナメの下腹部、軌道上での弾込め行為の最中にたっぷりと注ぎ込まれたばかりのオリッシュの熱い白濁が、正妻としての至高の充足感に呼応するように、きゅぅぅと愛おしく、熱く収縮していた。
しかし、そんな感動に浸るカナメの横で、当のオリッシュは少し引きつった顔でソワソワと周囲を見回していた。
サキュバス砲の存在を全く知らない彼は、今回のディバイド行きを純粋な「カナメとのハネムーン」だと信じ切っていたからだ。
「ね、ねえ、カナメ……。なんだかものすごい騒ぎだけど、これ、本当に俺たちの歓迎式典なのかい? なんだか『救世主』だなんて大層な名前で呼ばれている気がするんだけど……」
自分がオーオク社の社長として銀河有数の億万長者であり、この星の復興支援や投資を行う立場であることは理解している。
だが、復興資金の融資を考えてはいたものの、まだ何もしていない段階で、なぜ世界を救った英雄のように崇められているのか、彼には見当もつかなかった。
「うわあ、みんな俺の方を見て泣いてるよ……。俺、何か勘違いされるようなこと、事前にしちゃってたのかな……?」
戸惑い、完全に圧倒されている新婚の夫を見て、カナメはクスッと愛おしそうに目を細めた。
サキュバス砲の極秘作戦について、彼に本当のことを教えるわけにはいかない。
大人の歌姫としての機転と、主を掌の上で転がす正妻としての余裕の微笑みを浮かべると、カナメは再びオリッシュの逞しい二の腕に、自らの豊かな乳房をむぎゅっと押し当てた。
「ふふ、心配しなくていいのよ、オリッシュさん♡ みんなね、銀河一の大富豪であるあなたが、この星を救うためにたくさんの支援物資やケイオスの艦隊を連れてきてくれたって、事前に噂を聞いて感激しているの。ほら、再進駐軍のみんながテキパキと武装解除を進めてくれたのも、全部あなたの圧倒的な財力と人徳のおかげでしょう?」
「え? お、俺の人徳……?」
「もうっ。私の愛する夫は、毎朝鏡を見てないのかしら?」
カナメは潤んだ瞳でオリッシュをうっとりと見上げ、細い指先で彼の引き締まった胸板を優しくなぞりながら、少し拗ねたように唇を尖らせてみせた。
「あなた、この三ヶ月で相当かっこよくなったのよ? 今ではこんなに素敵で逞しい、本物の『皇帝』のようなオーラを纏うようになったんだから。あなたがただそこに立って、優しい眼差しを向けてくれるだけで、傷ついたディバイドの人々は一瞬で救われたような気持ちになっちゃうの。だから、あなたが彼らにとっての『救世主』であることは、何一つ間違ってなんていないわ♡」
背中がばっくり開いたセクシーなドレス姿の最愛の妻から、耳元で極上の甘いフェロモンとともにそんな風に全肯定されて褒めちぎられた瞬間、オリッシュの戸惑いは一瞬で消し飛んだ。
「そ、そうか……! 俺のオーラが、みんなを安心させてるんだね! いやあ、カナメにそこまで言われると、なんだか男として自信が湧いてきちゃうな!」
単純で愛おしい旦那様は、鼻の下を信じられないほどデレデレに伸ばし、あっさりと納得してしまった。先ほどまでの引き締まった王者の表情はどこへやら、カナメの柔らかい感触に包まれて、完全に骨抜きにされた新婚の男の顔になっている。
「よし! カナメの生まれ故郷のみんながそこまで俺を頼りにしてくれているなら、大社長として、夫として、この星の復興にドカンと大金を投資しちゃうぞ! もちろん、一番はカナメを世界一幸せな奥さんにすることだけどね!」
「ふふ、ありがとう、私の素敵な旦那様。……大好きよ、オリッシュさん♡」
カナメは蕩けた笑顔でオリッシュの頬にチュッと音を立ててキスを贈ると、恋人繋ぎにした指先にさらにきゅっと力を込んだ。
周囲の民衆が「女神様のキスだ!」「なんと熱烈な救世主夫妻のご光臨か!」とさらなる大喝采を上げるなか、二人はお互いに顔を赤らめ、甘々でデレデレな新婚のオーラを隠すことなく撒き散らしながら、世界を掌中に収めた夫と共に、永遠の平和を告げる一歩を堂々と踏み出していくのだった。
(続く)
カナメ衣装:「 おしゃれまくろす 異国ロマンとワルキューレ in 神戸マルイ」 のドレス