マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
惑星レハーム行き民間シャトル・個室
ch.3 「Training for Kaname Buccaneer ONLY」
惑星レハームに向かうシャトル内のカナメの個室に、銀色の小型クレートが届けられる。
「これは何かしら……?」
訝しむカナメの手に持つ端末が震える。
レディMからの指令メールの着信だ。
件名は【極秘・慰安任務研修資料と実技練習器具について/視聴必須】。
クレートの中身の実技練習器具を確認後に、VRゴーグルを装着して極秘・慰安任務研修資料を視聴するよう指示される。
研修資料のタイトルは「Training_for_Kaname_Buccaneer_ONLY」。
カナメの指が凍りつく。
タイトルに自分の名前が堂々と入っていることに、背筋がぞくりと震えた。
「……レハームに着くまでに見なきゃいけないのね。そして。これが……実技練習器具?」
カナメは震える手でクレートを開けた。
中には、VRゴーグルが一台の他、ディルドーが一本と、小さなボトルに入ったローション、そして吸盤付きの固定台が入っていた。
ディルドーは明らかに成人男性の平均を大きく超えていた。
「……こ、これを……私が……?」
カナメは何度もクレートを閉じそうになり、そのたびに自分を叱咤した。
――世界がかかってる。
――フレイアの想いを無駄にするわけにはいかない。
――私はワルキューレのリーダーなんだから……!
カナメは意を決して、クレートからディルドーを取り出した。
男根の形をしたものを初めて手に取った瞬間、
「……ひゃっ……!」
指先がビクンと跳ねた。
手のひらにずっしりと重く、温かみのあるシリコン素材。
先端から根元まで、血管までリアルに再現されている。
ただのゴムなのに、熱を帯びているような錯覚。
思わず両手で包み込むように握ってしまい、その重さと硬さに、子宮の奥がきゅんと疼いた。
(こんな……大きいものを……口に……? 中に……?)
想像しただけで膝が震える。
でも、逃げられない。
カナメはディルドーをそっとサイドテーブルに置くと、個室の照明を落とし、リクライニングシートに腰を下ろした。
VRゴーグルを取り出して装着し、教材ビデオの再生を開始するカナメ。
視界が暗転し、漆黒の背景に赤い文字が浮かび上がる。
【極秘指定・慰安任務「スイート・プリズナー」研修教材】
【視聴対象:カナメ・バッカニアのみ】
【無断複製・外部持ち出し厳禁/違反者は即時処分】
そして、ゆっくりと視界が明るくなっていく。
「こんにちは、カナメ・バッカニアさん♡」
現れたのは、ゴージャスな巻き毛の金髪を腰まで垂らした妖艶な美女。
深いワインレッドのスリップ一枚だけの姿で、胸元が大胆に開き、谷間がこぼれそうになっている。
唇は艶めかしく濡れ、瞳は獲物を狙う雌豹のようだ。
「私はミランダ・メリン。ケイオスのアダルト映像部門で現在売上No.1のAV女優よ。今日はあなたの先生になるわ♡」
カナメの顔が一瞬で真っ赤に染まった。
――な、なんでこの人が……!?
あのランカ・リーも出場した第12回「ミス・マクロス・フロンティア」コンテストの優勝者。
新人だったランカ・リーが助演女優賞を獲得した映画「BIRD HUMAN -鳥の人-」で、彼女もメインヒロインのサラ・ノーム役でデビュー。
しかし、同期のランカ・リーの大ブレイクもあって、その存在は完全に霞んでしまい、その後は泣かず飛ばず。
映画や歌の道をあきらめて舞台女優に転身するも、最終的に抜群のプロポーションのみが評価されてAV堕ち。
その堕ちた先のAVこそが、彼女にとって天職であった。
ランカ・リーに憧れてアイドルになったカナメは、当然「BIRD HUMAN -鳥の人-」を何度も視聴していた。
ミランダのことも勿論知っていたが、まさかAV女優になっていたとは……
「この映像は、あなたのためだけに作られた完全オーダーメイド教材。目的はただ一つ――あなたがあの男を骨抜きにして、完全に精神安定させること。レディMから、あなたの全部のデータはもらってるから安心してね♡ あ、そうそう。カナメさんは23歳、男性経験ゼロ、VIOはきっちり永久脱毛済みのパイパン処女……ちゃんと把握してるわよ?」
カナメは思わず映像を止めて、VRゴーグルを外しそうになった。
誰にも言っていないはずの秘密が、さらりと暴かれる。
ソロアイドル活動時の事務所が恋愛禁止で、ケイオスに勤め始めてからもワルキューレが激務過ぎて、これまで男と付き合う暇など無かった。
そして、戦場ライブで全身をぴったり覆うアンダースーツを長時間着用する場合が多く、ワルキューレの面々は全身の無駄毛を全て脱毛済みだ。
ワルキューレのメンバーに選ばれる際、候補者の身辺調査はかなり精密に行われており、ワルキューレの活動がスタートしてからも日々の生活は完全にトレースされている。
レディMは彼女の全ての個人情報を握っており、普段は厳重に管理されているその情報が、今回の任務にあたっては完全に開示されフル活用されていた。
恥ずかしさで耳まで熱くなるカナメ。
でも、世界を救うためだ。
カナメは深呼吸して、もう一度再生した。
ミランダ・メリンが朗らかに講義を始める。
「では早速始めましょう。教材は【初級編】と【応用編】に分かれてるわ。初級編は、キス → フェラ → パイズリ → セックス → 特殊プレイの順番になってるから、一つずつ丁寧に教えていくわね♡」
カナメは震える指で虚空に浮かんだチャプターを選択。
まずは【初級編・第1章:キス】
ミランダの顔がアップになる。
「キスって、単に唇を重ねるだけだと思ってるでしょ?甘い甘い。男を虜にするキスは、もっと奥が深いわ」
画面が切り替わり、ミランダが男優と絡み合う実演映像が流れる。
「まず、軽いチューから始めて……次に唇を軽く吸って……そう、ちゅっ、ちゅっ……そして舌を絡める前に、相手の唇を自分の舌でなぞるの。これだけで男はゾクゾクする♡」
カナメはミランダの口元に釘付けになった。
ミランダの舌が男優の唇をゆっくり這う様子が、超高画質で映し出される。
唾液の糸が引く様子まで、はっきりと。
「次はディープキス. 舌を相手の口の中に入れて、絡めて、吸って、噛んで……でも痛くしない程度にね。男は支配されてる感覚と、支配してる感覚を同時に味わいたがるの」
カナメの喉がごくりと鳴った。
自分の唇を無意識に舌でなぞってしまう。
「さらに上級テク。キスの最中に甘い吐息を漏らしながら、相手の耳元で囁くの。『もっと欲しい……』とか『気持ちいい……』とか……カナメさん、あなたの最大の武器は“声”。普段ライブで披露している美しい声で喘げば、貴女のファンなら即落ちよ♡」
映像はさらに細かく、
・角度の変え方
・唾液の量の調整
・息継ぎのタイミング
・相手の首筋や耳たぶ、乳首へのキスの仕方
まで丁寧に解説されていく。
カナメは必死にメモを取ろうとするが、あまりの羞恥に手が震えてうまく書けない。
「キスだけでイカせたいなら、最後はこう」
ミランダは男優の首に腕を回し、激しく舌を絡めながら、甘くくぐもった声で喘いだ。
「んっ……はぁ……もっと……奥まで……」
男優がぶるっと震えて果てる様子まで映っている。
カナメは息を荒くしながら、ようやく第1章を終了させた。
時計を見ると、すでに2時間以上が経過していた。
「……キスだけで、こんなに……」
画面のチャプターリストを見上げる。
まだ【フェラ】【パイズリ】【セックス】【特殊プレイ】が残っている。
応用編に至っては、さらに項目が増えている。
カナメは額に手を当て、めまいを感じた。
――こんな量……全部覚えられるの……?
股間がじんわりと熱を帯びていることに、今さら気づく。
キスの映像を見ているだけで、身体が勝手に反応してしまっていた。
「……だめよ、私」
カナメは小さく首を振った。
「これも、任務……世界を救うための……」
でも、胸の奥に小さな不安と、なぜか期待のような疼きが混じるのを、どうしても抑えられなかった。
あと十数時間後には、「熱烈なファン」の前に立つ。
カナメは次のチャプターに震える指を伸ばす。
まだまだ、学ばなければならないことは山のようにあった。
(続く)