マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル ロイヤルスィート「ルビー・プリズン」
ノーマルモードを選択すると、感度設定の画面が現れる。
『極小・小・並・中・大』
オリッシュは画面を見つめ、首を傾げる。
「この……感度設定ってなんだろ?」
側に控えていたカナメが同梱の説明書をめくり、嫋やかな声で読み上げてオリッシュをサポートする。
「極小は童貞向け、小は早漏な方向け、並は一般の方向け、中は遅漏な方向け、大は撮影時とほぼ同等だそうです。中以上はオプションのオナホールが必要になるみたいですね」
オリッシュはうーんと悩む。
(大は昨日みたいにヤバすぎて……またすぐにイッちゃいそう……でも小すぎると物足りないよな……)
結局、無難に「並」を選択。
瞬間、視界が切り替わり、深紅のドレスを纏ったカナメが三つ指をついて土下座する姿が広がる。
昨日より少しマイルドだが、それでも鮮烈な五感の再現。
柔らかな唇が重なり、甘い舌が絡みつく感触。
Eカップの重みが胸に伝わり、香水の匂いが優しく鼻をくすぐる。
「うおっ……これでもすげえリアルだ……カナメのキス、温かくて……甘い……」
カナメはベッドサイドに座り、白いシャツとショートパンツのオフスタイルのまま興味深く見守る。
(モードが違っても、こんなに感じてくれるのね……)
オリッシュの腰が自然に動き、カナメホール内で肉棒が脈打つ。
並の感度で昨日以上の余裕が生まれ、ゆっくりと快楽に浸れる。
(これなら……もっと長くカナメと一緒にいられる……)
ノーマルモードの甘い誘惑に、オリッシュは再び深く囚われていく。
カナメはベッドサイドで少し首を傾げながらその光景を見守り続けた。
やがてシーンは手コキのチャプターに移る。
深紅のドレスを纏ったカナメが、嫋やかな手つきで肉棒を優しく包み、ゆっくりとしごき始める。
ぬるぬるとした手のひらの温もり、親指が先端をくるくる刺激する感触が伝わってくる。
だがオリッシュは、思わずプッと吹き出してしまった。
「はは……なんだこれ……俺のあそこにモザイクかかってるよ……」
画面の中、自分の肉棒に薄いぼかしが入っている。
昨日は限定解除モードで一切の規制がなく、生々しい血管の浮き具合まで再現されていた。
しかし、市販用のノーマルモードではしっかりモザイク処理されている。
映像倫理基準に従った処置であった。
それはまあ許容出来たが、オリッシュはすぐに表情を曇らせ始める。
手コキの気持ちよさは、昨日体験した開発者向けの限定解除モードの、せいぜい半分程度。
奉仕してくるカナメの美しい顔や、Eカップの谷間が揺れる映像は完璧で、肌に当てられる手の感触も温かく柔らかいのに、肝心のチンポへの刺激が物足りない。
(こんなので……イケるのかな……?)
混乱したオリッシュは、ブツブツと文句を言いながらメニューを呼び出す。
「調整間違ってるんじゃないかな……大に上げてみよう……」
感度設定の「大」を選択しようとした瞬間、画面にメッセージが浮かんだ。
『大:撮影時のリアルな感覚をほぼお楽しみいただけます(開発者向けテスト用)。 ※市販版では過剰刺激による健康被害を防ぐため、大は制限されています。中で充分お楽しみいただけます。』
なんだそれ!と、しかたなく「中」を選択。
刺激は少し強くなったが、それでも昨日の七割程度。
実はケイオス・アダルト部門のABV開発チームが取り決めた内部指標では、撮影時の感覚の極小で一割、小で三割、並で五割、中で七割、大で九割という基準だった。
普通の人間なら身悶えして絶頂しているだろう。
テスターのミラージュもそうだった。
オリッシュの肉体は、宇宙再構築システムが彼の無意識の望み——「カナメともっと深く、長く、強く繋がりたい」という欲求——を叶えるために、知らず知らずのうちに極端な性豪へと強化されていた。
そのため、市販モードの「中」でも、彼にとってはまだ刺激不足に感じてしまう。
オリッシュはてんでその事実に気づいていない。
さらにコンテンツが進み、本番のシーンに突入するところで、オリッシュはまた噴き出してしまった。
「ぷっ……はは……カナメのあそこにもモザイクかかってるよ……」
挿入シーンで、カナメの秘部にしっかりとぼかしが入っている。
こんなにエロい五感再現システムを作っておいて、肝心なところは映像倫理基準を守っているのかと、オリッシュは苦笑いした。
モザイクがかかったままの秘部に肉棒が沈んでいく映像。
視覚的には隠されているのに、膣内の熱い締めつけ、ぬるぬると蠢く襞の感触、子宮口が亀頭に吸いつく甘い刺激はしっかり伝わってくる。
「モザイクなのに……こんなに気持ちいいなんて……なんか変だよ……はは……」
笑いが止まらず、オリッシュはベッドの上で体をくねらせる。
カナメホール内の肉棒は中程度の感度でじわじわと熱を増し、昨日ほどではないが確実に快楽が積み重なっていく。
カナメはベッドサイドで、少し心配そうにオリッシュを見つめた。
「オリッシュさん、どうかしました?大丈夫ですか?」
オリッシュはゴーグル越しに、笑いを堪えながら答える。
「いや……ちょっと笑っちゃって……でも、気持ちいいよ……カナメ……」
モザイクだらけのノーマルモードに最初は戸惑ったオリッシュだったが、徐々にその独特のギャップに興奮を覚え始めていた。
ノーマルモードの体験が終わった。
サイバーゴーグルを外したオリッシュは、ベッドの上で大きく伸びをして、爽やかな笑みを浮かべた。
昨日は八つもあったのに、カナメが回収してベッドサイドに置かれたトレイに並べたコンドームの数はたったの二つ。
しかもパンパンに膨らむこともなく、通常の量の白濁がコンドームの中で揺れるだけだった。
カナメは少し不安げにオリッシュを見た。
「オリッシュさん……今日はあまり出さなかったけど、あまり気持ちよくなかったの?」
オリッシュは首を振り、明るく笑う。
「いやいや、気持ちよかったよ! 昨日みたいにバクバク出ちゃうほどじゃなかったけど、じっくり味わえてよかった!」
昨日は限定解除モードの過剰な刺激で独占欲が爆発したが、今日はノーマルモードのマイルドな快楽のおかげで、心地よい余韻だけが残っていた。
オリッシュは上機嫌に続ける。
「これなら売りに出してもいいかもね! カナメのファンに売ったら、どんだけ金払っても買うんだろうな!ははっ」
冗談めかして笑ったが、カナメの顔が一瞬で真っ青になった。
カナメホールなら膣内のデータだけだから匿名で済むが、ABVは自分の顔、声、仕草、すべてがそのまま記録されている。
本人だとすぐにわかる。
しかもワルキューレのリーダーとしてのイメージ、チーム全体への影響は計り知れない。
喘ぎ声、濡れた秘部の感触、Eカップが揺れる姿——すべてが他の男に味わわれると思うと、背筋がぞわっと震えた。
(そんなことになったら、ワルキューレの活動に支障が出るわ。みんなに迷惑がかかっちゃう)
カナメの顔から血の気が引くのを見て、オリッシュは慌てて手を振った。
「あ、あああ、待って、カナメ、冗談だってば、冗談! そんなこと許さないよ! カナメは俺だけのものだし、絶対に他の奴になんか渡さないから!」
カナメはほっと胸を撫で下ろし、苦笑いを浮かべる。
「もう、オリッシュさん、びっくりしました」
だがオリッシュの内心では、昏い炎が静かに燃え盛っていた。
(でも、もし俺からカナメを取り上げようとするような奴が現れたら……)
(このアダルトBVを送り付けてやるのもいいかもな。カナメは俺のものだって、骨身に染みさて理解するだろ……)
その暗い独占欲を、オリッシュ自身も気づかぬうちに、宇宙再構築システムが敏感に検知していた。
システムはオリッシュの無意識の望み——「カナメを誰にも渡したくない」「永遠に俺だけのものにしたい」——を叶えるため、再び宇宙の理をわずかに歪め始める。
因果の糸がねじれ、可能性の分岐が静かに閉ざされていく。
カナメが他の誰かを愛する未来、オリッシュから離れる未来が、音もなく消されていく。
誰も気づかぬところで、世界がオリッシュの欲望に合わせて、少しずつ形を変えていく。
カナメはオリッシュの笑顔を見て、安堵の吐息を漏らした。
二人はまだ、この歪みの深さに気づいていなかった。
(続く)