マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル カナメ専用スィート
ch.69「ワクチン通信と熟慮のアンサー」
カナメはオリッシュにお願いして、今日の夕方の奉仕は休みにしてもらっていた。
惑星ラグナのマクロス・エリュシオンとコンタクトを取るためである。
映像通信の手配は全てミラージュが対応していた。
専用スィートルームでの医療用ポッドでの回復タイムを終えたカナメは、久しぶりにワルキューレのユニフォームを着ようとしていた。
紺と白を基調としたジャケットスタイルのトップスに、短めのスカート、黒のタイツ。
お腹が大胆に露出されたクロップド丈のデザインで、腰のベルトがアクセントになる、動きやすさと美しさを両立した衣装。
着替え終えて鏡の前に立つ。
(胸が窮屈だわ)
慰安任務開始時と比べて、明らかにハーフカップ以上大きくなっていた。
Eカップを超え、豊かに張り出した乳房がジャケットを押し上げ、ボタンの間から深い谷間が覗く。
乳首の形すら薄く浮かび上がりそうで、カナメは小さく息を吐いた。
一方でお腹は以前よりさらにスリムになり、くびれがくっきり浮かんでいた。
痩身巨乳化が進み、ウエストのラインがより強調され、ユニフォームの露出部分が以前より艶めかしく映る。
(このユニフォームも、採寸し直さないといけないわね)
独りごちながら、ジャケットの裾を整える。
時間となり、ミラージュを伴ってのマクロス・エリュシオンの艦橋と映像通信に臨むカナメ。
ワルキューレの三人とアラドは、久しぶりにカナメと対面できて安堵の表情を浮かべていた。
美雲は高飛車な瞳を細め、すぐに何かを感じ取った様子で口を開く。
「あら?カナメ、何か雰囲気が変わったわね」
鋭い視線が、カナメの胸元や腰のラインをさりげなく捉える。
マキナは目を輝かせ、甘え口調で身を乗り出した。
「カナカナ!あれあれ、なんか前より綺麗になってない?お肌ツヤツヤだし、おっぱいも……えへへ」
レイナは無表情に端末を操作しながら、ぼそっと呟く。
「……AI映像じゃない。生身のカナメ」
アラドは、ほっとした表情でカナメを見つめた。
瞳に安堵と、抑えきれない優しさが宿っている。
「カナメさん……無事でよかった」
四者四様の反応。
カナメは画面に向かって、穏やかに微笑んだ。
久しぶりの仲間たち。
胸が熱くなる。
(みんな……心配かけて、ごめんね)
だが、今は慰安任務を続けるために、彼女たちを納得させる必要があった。
レイナが無表情のまま端末を操作し、カナメとの通信映像を解析ツールに通す。
画面の隅に小さなウィンドウが開き、3Dスキャンデータが高速で構築されていく。
「……変化、検知。胸囲推定プラス5cm以上。ウエストマイナス3cm。全体的に……より、女らしくなってる」
淡々とデータを口にしながら、レイナの瞳にわずかな驚きが宿る。
天才ハッカーならではの技——映像から骨格・体型を精密に計測する自作ツールの結果だった。
マキナが「えー!ほんと!?カナカナ、やっぱり綺麗になってるー!」と騒ぎ、美雲も「へぇそうなの」と興味深げだ。
カナメは一瞬、息を止めた。
(まずいわ)
胸の奥が冷たくなる。
この変化は、慰安任務の結果——毎夜の激しい逢瀬で体が開発され、オリッシュの熱い白濁を何度も受け止めたせい。
乳房が豊かに成長し、腰がよりくびれ、肌が艶やかになったのは、すべて彼との夜の証。
それが、レイナのツールによってバレてしまった。
(このまま深掘りされたら、任務の内容を推測されてしまうわ)
カナメは平静を装いながら、内心で焦りが渦を巻く。
美雲の瞳がさらに鋭くなり、マキナが無邪気に身を乗り出す。
カナメは必死で笑みを張り、話題を逸らすように口を開いた。
「みんな、聞いてちょうだい!まずは、連絡できなかったことを謝らせてもらうわ。ごめんなさい」
画面の向こうで、美雲がわずかに眉を寄せ、マキナが目を潤ませ、レイナが無表情のまま端末を操作する。
カナメは言葉を続けた。
「内容は喋れないけど、とても大切な任務なの。しばらく戻れないわ」
美雲が高飛車な瞳を細め、静かに問う。
「どんな任務? と聞いても無駄のようね。ただ、カナメ、あなた大丈夫なの?」
カナメはキッパリと答えた。
「大丈夫よ。ヤリ甲斐のある仕事だわ」
その凛々しい表情に、嘘はなかった。
美雲は一瞬カナメを見つめ、静かに頷いた。
「そう。なら私からは何も言わないわ」
マキナは甘え口調で身を乗り出し、目を潤ませる。
「カナカナがいなくて大変なんだから! 早く帰ってきてよー」
カナメは優しく微笑み、穏やかに返す。
「泣き言言わないの。でもこれからは少し余裕ができそう。遠隔になるけど、アドバイスくらいならできるわ」
カナメのマネージャー役を引き継いでてんてこ舞いだったマキナは、目を輝かせた。
「ほんとー? 助かるー!」
レイナはぼそっと呟く。
「アルテミシア・グランドホテル、セキュリティ堅すぎ。絶対何か隠してる」
カナメは少し困ったように笑い、優しく叱る。
「ダメよ、レイナ。またそんなことしちゃ。お願いだから大人しくしてて」
カナメはレイナの瞳をまっすぐ見て告げた。
「今後は毎週、こうして顔を見せる時間を取るから」
レイナは一瞬画面を睨むように見つめ、静かに息を吐いた。
「……なら、いい。安心」
通信は続き、カナメはふと気づいた。
美雲の鋭い視線、マキナの甘え、レイナのぼそっとした言葉——すべてが、いつものワルキューレだった。
自分も、叱ったり、宥めたり、約束したり。
リーダーとして、みんなをまとめ、導く自分が、ここにいる。
この一ヶ月、オリッシュの側で体を許し、甘く溶かされ、任務に没頭する中で、少しずつ忘れかけていた感覚。
ワルキューレのリーダーとしての自分が、ゆっくりと戻ってくるのを感じた。
胸の奥に、温かな灯りがともった。
通信は続き、三人とのやり取りが一段落したところで、最後にアラドと向き合うカナメ。
画面に映るアラドの顔は、ほっとした表情を浮かべている。
瞳に安堵と、抑えきれない優しさが宿っていた。
「カナメさん……無事でよかった」
カナメは静かに息を吸い、穏やかに答えた。
「アラド艦長、ご心配をお掛けしました。そして……ごめんなさい」
言葉を選びながら、プロポーズへの答えを、短く伝える。
メンバーたちも画面に残っているため、任務の詳細は一切触れず。
しかし、それだけで、アラドはすべてを察した。
カナメの瞳に、決意と申し訳なさが混じっている。
あのプロポーズへの答え——それは拒絶だ。
アラドは一瞬、瞳を伏せた。
胸の奥に、鋭い痛みが走る。
(カナメさん……俺の想いは、届かなかったのか……)
痛みと諦めが、胸を締めつける。
(あの格納庫での告白、結婚を前提にって伝えた時……脈はあるって思えたんだがな……)
だが、大人の男として、感情を押し隠す。
静かに微笑み、優しく頷いた。
「わかりました、カナメさん。どうかご自愛ください」
アラドは視線を画面の端に移し、そこに控えていたミラージュに向かって静かに告げた。
「ミラージュ……カナメさんのことを、よろしく頼む」
その声には、艦長としての責任感と、男としての切ない願いが込められていた。
ミラージュは背筋を伸ばし、律儀に敬礼を返した。
「了解しました、アラド艦長。お任せください。カナメさんをお守りします」
真剣な瞳に、決意が宿る。
メンバーたちも、何かを感じ取った様子で沈黙している。
カナメは胸が締めつけられるのを感じた。
アラドの声は穏やかだったが、その奥に隠れた痛みを、敏感に感じ取った。
(ごめんなさいアラド艦長。あなたの優しさ、想い、全部受け止めたかった)
罪悪感と、大人な対応をしてくれたアラドへの感謝が混じり、胸が熱くなる。
(でも、今の私に貴方の前に立つ資格なんてない。あの人に関わって身も心も変わってしまった破廉恥な私を見て、幻滅してほしい。)
それゆえに告げる。
「アラド艦長、これからレディMから連絡があると思います。ご理解頂けると幸いです」
この映像通信に先立って、カナメはオリッシュの出してきた条件、アラドへのアダルトBVの供与を承諾していた。
(こんな女に振られたのは逆にありがたいって思ってくれればいい。貴方の失恋の痛みが、それで少しでも軽くなるなら)
それはただのカナメの優しさか。
いや、結婚を断ってしまったお詫びとして、せめて自分を抱く感覚だけは味わってほしいという贖罪の気持ちか。
それとも、幻影であってもセックスの記憶を植え付けて、いつまでも忘れられない女としてアラドを縛り続けたいという支配欲か。
実はただ、オリッシュに開発されてしまった自分を他の男に見せつけ、背徳の悦びを享受しようとしただけかもしれない。
何にしてもそのカナメの決断によって、アラドの未来は地獄への一本道が確定してしまった。
通信が終了し、スクリーンが暗くなる。
レディMの条件を飲んだことで、定期的な対話が許可され、アラドがもしもの時の抑止力になる。
ワルキューレの不穏な動きは、これで抑制されるはずである。
カナメは深く息を吐いた。
(続く)