※この作品はR-18です。

マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー   作:夜叉五郎

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2068年3月8日午後
ケイオス・レハーム支部 メイクルーム


ch.8 「伝説のヘアメイクと高級娼婦」

ミラージュに連れられてドレスルームにやってきたのは、紛れもないあの姿。

 

黒肌にアフロ、白いヘッドバンド、赤いスカーフ。

 

フロンティア船団の伝説のヘアメイクアーティスト――

 


ボビー・マルゴだった。

 

「……え?…………ボビー・マルゴさん!?」

 

ドレスルームでヘアメイクアーティストを待っていたカナメは、思わず声を上げた。

 

カナメの尊敬してやまない先輩アイドル、ランカ・リーの専属ヘアメイクが、こんな場所にいるなんて。

 

そのボビーはカナメのドレス姿を見て、目を丸くして大げさに両手を広げた。

 

「オーッ! マイ・ゴッドネス!! ちょっとちょっと、これは反則級の美人じゃない!……あんまり乗り気じゃなかったけど、こんな物凄い上玉が相手なら、話は別だわ!」

 

偶然にも星間旅行でレハーム滞在中だった彼は、レディMによって今回の任務に最適な人材と指定され、急遽ケイオスに頼み込まれてこの場に呼ばれていた。

 

ボビーはカナメの周りを回りながら、興奮を抑えきれずにため息を漏らす。

 

「はぁーん、この胸のボリューム……この腰のくびれ……この脚の長さ……そしてこのスリットからのぞく太ももに揺れるルビーチェーン……もう芸術!……いえ、芸術を超えたエロスね〜」

 

伝説のヘアメイクアーティストに褒められ、カナメは顔を真っ赤にしながら、深く頭を下げた。

 

「あの、はじめまして。ワルキューレのカナメ・バッカニアです。ボビーさんのヘアメイク、ずっと尊敬してました。こんな形でご一緒できるなんて……」

 

ボビーは「え?」と首を傾げ、一瞬考えた。

 

「あー、ワルキューレ? あの戦場で歌う子たちね! 名前は知ってるわよ〜」

 

そして、じっくり顔を見て、はっとした。

 

「……って、まさか貴女がリーダー!? ちょっと待って待って!ワルキューレのリーダーがこんな高級娼婦みたいな格好で私の前に立つって、どういうこと!?」

 

ボビーの声が一段高くなる。

 

「ステージ衣装にしては攻めすぎじゃない? これじゃ完全に夜のお仕事よ!?枕営業とか、前時代すぎてありえないわ!」

 

銀河の平穏の鍵を握るオリッシュ・ハメルマンへの慰安任務とは、カナメも口に出せない。

 

口籠るカナメに代わって、ミラージュがその問いに答えようとする。

 

「待ってくださいっ……彼女には非常に重要な任務が課せられています。このドレスは……」

 

ミラージュが口を開きかけたが、ボビーは手を振って制した。

 

「あなたは黙ってて! カナメちゃん、本当のことを教えて?こんな格好させられて、納得してるの?」

 

カナメは唇を噛み、震える声で答えた。

 

「……納得、してます。これは私にしかできない任務なんです。だから……どうか、このドレスに合うヘアメイクをお願いします」

 

ブリージンガル球状星団に住む80億人の生命が掛かっている。

 

ここで引くわけにはいかなかった。

 

ボビーはしばらくカナメをじっと見つめた。

 

その瞳に、迷いと同情と、そしてプロの矜持が揺れる。

 

「……本当にいいのね?」

 

カナメはもう一度、深く、深く頭を下げた。

 

「お願いします。ボビーさんの手で仕上げていただけるなら、私は……どんな姿になっても構いません」

 

静寂が落ちる。

 

やがて、ボビーは大きくため息を吐き、ゆっくりと微笑んだ。

 

「……しょうがないわね。貴女がそこまで言うなら、引き受けてあげる」

 

彼はメイクボックスを開き、道具を並べ始めた。

 

「やるからには中途半端は許さないわよ。今夜だけは、ワルキューレのカナメ・バッカニアを、『宇宙一の夜の蝶』に仕立ててあげる」

 

ボビーは指をぱちんと鳴らし、椅子を引いてカナメを座らせる。

 

重い空気を吹き飛ばすため、いつも以上の陽気なテンションでヘアメイクを開始するボビー。

 

彼は鏡の前でカナメの顔を両手で包み、うっとりと見つめた。

 

「肌の透明感が異常……戦場で歌ってきたなんて信じられないわ。そしてこの唇……もう、キスしただけで男がイっちゃいそうな色気ね」

 

ボビーはカナメを褒め称えながらブラシを手に取り、髪をアップにまとめていく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

うなじの白さが際立つ、艶やかなシニヨンスタイル。

 

「うなじ見せたら男はもうダメよ。首筋にキスしたくなるんだから」

 

ファンデーションは極薄に。

 

チークは頬骨に鋭く、淫らに。

 

アイシャドウは深紅と黒の濃厚グラデーションで妖艶に彩り、アイラインは長く吊り上げ、つけまつ毛と三度重ねたマスカラで、完全に男を誘う雌の目へと変えていく。

 

唇にはドレスと同色の深紅のリップ。

 

最後に艶やかなグロスをたっぷり重ねて、「これでキスしたら男の魂、吸い取っちゃうわよ」とニヤリ。

 

香水は、首筋、耳の裏、胸の谷間、そして……

 

ボビーは悪戯っぽく笑いながら、カナメの太ももの内側にまで吹きかけた。

 

「ここにもね。男が脚を開かせた瞬間に、頭が真っ白になる香りよ」

 

メイクが完成し、ボビーは大満足げに手を叩いた。

 

「完璧!! もう完璧すぎて泣けるわ!!」

 

彼はカナメを姿見の前に立たせ、背後から肩に手を置いて囁いた。

 

「見てごらんなさい、カナメちゃん、今夜のあなたは宇宙一の女よ。どんな男でも一瞬で虜にできる。自信持って、甘えて、吸って、しなだれかかって、押し付けて、全部やってあげなさい」

 

鏡に映る自分を見て、カナメは息を呑んだ。

 

あのボビー・マルゴにヘアメイクしてもらえるなんて夢のようであり、それゆえに残酷でもあった。

 

そこにいたのは、もうワルキューレのリーダーではない。

 

淫靡で、妖艶で、完璧に仕上げられた高級娼婦。

 

赤いドレスに包まれた肉体は、女の性そのものを具現化したようだった。

 

下腹部の奥に灯った熱が、一気に燃え上がるのを感じた。

 

(……私はワルキューレのリーダー。でも、この顔、この唇、この体はもう完全に娼婦そのもの……)

 

ボビーは満足げに微笑み、最後にこう言った。

 

「さあ、いってらっしゃい。貴女はこの美しさで世界を救うんでしょ?だったら恥ずかしがらないで。今夜の主役はあなたよ」

 

カナメは震える足で歩き出す。

 

赤いドレスを纏った慰安要員として、静かに、しかし確実に、堕ちていく運命へと歩み始めた。

 

(続く)

 




カナメの衣装
オシャレマクロス10の赤ドレス
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