マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル ロイヤルスィート「ルビー・プリズン」
午後、オリッシュはカナメと共に、やたら広いダイニングルームの豪華なソファに座り、クレアを待っていた。
(なんでクレアが……俺たちの会社に……他の女の子と会うの、ちょっと緊張するけど……まぁ、クレアなら……そこまで悪くない、のか?)
オーオク社への出向を希望するクレアの面接である。
エージェントスーツ姿のミラージュに連れ添われて、ワルキューレのユニフォーム姿のクレアがルビー・プリズンに入室する。
憧れの二人に会える悦びを押し隠し、ダイニングルームに颯爽と現れ、オリッシュとカナメに挨拶するクレア。
白いシャツに赤いベスト、黒いネクタイとスカート。
黒いベストが体にぴったりとフィットし、Fカップの豊満な胸の膨らみを強調する。
くびれた腰から伸びる長い脚がスカートから艶めかしく伸び、金髪をポニーテールにまとめ、勝気な瞳に決意が宿る。
クレアは明るく微笑み、オリッシュに深々と頭を下げる。
「初めまして、オリッシュさん。ケイオス・地球支部所属のクレア・パドルです。御社の広報担当を希望してます。よろしくお願いします」
カナメには懐かしげに目を細め。
「カナメ、久しぶりね。元気そうでよかったわ」
やけにテンションの高いクレアの様子に戸惑いながらも、微笑み返すカナメ。
「クレア。本当に久しぶりね。あなたが来てくれるなんて嬉しいわ」
オリッシュはソファから立ち上がり、クレアに握手を求める。
普段ならカナメ以外の女性を前にしたら、人見知りが爆発して言葉に詰まってしまうはずだった。
だが、カナメが側で見守ってくれている安心感で、意外と普通に応対出来てしまう。
(おかしいな……普段なら緊張するのに、カナメがいるからかな。なんか平気だ……)
「クレア・パドル、会えて嬉しいよ」
オリッシュの挨拶に答えるべく、その手を握ったクレア。
セレナがクレアの心の奥に仕掛けた催眠スイッチの二つ目が、カチリと押される。
オリッシュの体の温もりを直に感じた瞬間、AVでカナメと絡み合うオリッシュの姿が一気にフラッシュバックする。
熱く汗ばんだ肌がカナメの白い体に絡みつき、長大な肉棒が秘部を深く突き、彼女を蕩けさせる光景。
その記憶が、現実のオリッシュの手の温かさと重なり、クレアの体を甘く震わせる。
秘部が熱く疼き、蜜がじんわり溢れ出し、太腿の内側が滑る。
乳首が硬く尖り、ベストの下で甘い痺れが走る。
勝気な瞳が蕩け、頰が深紅に染まり、息が熱く乱れる。
心の奥で、甘い声が響く。
(この人が私の所有者。運命のご主人様。オリッシュさん、あなたに私の身も心も全部捧げるわっ♡)
淫らな欲が目覚め、握手した手が離れがたく熱く感じる。
クレアは無意識に指を絡め、オリッシュの手を優しく握り返す。
(うおっ……なんでこんな熱い目で見つめてくるんだ? クレア、こんな背高くて胸デカかったっけ……? はぁ、ベストがぴったりで形がくっきり……昔のライブより、なんか大人っぽくなって……)
昔の推しだったクレアが、まるで恋する乙女のような表情でせつなげに見つめてくる様に、心臓が少し速く鳴る。
クレアの長身と豊満な胸の膨らみに、視線が吸い寄せられる。
だが、隣のエージェントスーツのミラージュの視線が、隠しきれず冷たく刺さる。
ミラージュはオリッシュに悟られないよう極力冷静に振る舞っていたが、遺跡調査時に同僚たちが全滅したのはオリッシュのせいと思っていた。
また尊敬するカナメをこれまで散々嬲り続けまくっているオリッシュの存在には、忸怩たる想いを抱いており、どうしても不機嫌さを隠しきれない。
その鋭い眼差しに、オリッシュはハッとする。
(この視線……なんか、昔どこかで……)
遺跡調査前の全員参加ブリーフィングで見た、ミラージュのパイロットスーツ姿を思い出す。
あの時も、ついパイロットスーツで露わだった体の線を視姦してしまって、ミラージュに睨まれていた。
若いのに十階級も上の女の子の鋭い眼差しに気おくれしてしまった記憶が蘇る。
オリッシュは少し声を上ずらせて尋ねた。
「あの……貴女、ミラージュ中尉ですよね……?」
ミラージュの目が見開く。
「オリッシュ三等兵……記憶が、戻ったんですか!?」
部屋に緊張が走る。
カナメの表情がわずかに曇り、クレアは状況を察して勝気な瞳を輝かせる。
オリッシュの頭に、ぼんやりとした痛みが走った。
(あの時……遺跡で……なんか、変な感じに……)
ミラージュの同席はレディMの指示であり、ミラージュとオリッシュが直接するのは、遺跡エムシー・ハラメからパージされたオリッシュをミラージュが搬送した時以来となる。
これまでミラージュが直接オリッシュに接触することは、レディMによって固く禁止されていた。
その理由がこの日に明らかになる。
今年の初め、ヘイムダルの騒乱が銀河を震撼させた頃だった。
Yami_Q_rayの闇属性歌声が忌まわしい波動となって広がり、惑星レハームの孤島に、突如としてプロトカルチャーの遺跡「エムシー・ハラメ」が姿を現した。
レハーム政府の切迫した要請を受け、ケイオス・レハーム支部は2月下旬、調査隊を急遽派遣した。
ところが、調査隊の一員であるオリッシュ・ハメルマン三等兵が、遺跡の奥深くで謎のシステムに取り込まれてしまった。
次の瞬間、遺跡の防衛システムが目覚め、凄まじいエネルギーが爆発的に放出された。
それに反応した護衛のバルキリー小隊は、焦りと混乱から過度な反撃を仕掛けてしまう。
惑星レハームはブリージンガル球状星団の一番外郭に位置しており、かつウィンダミアとラグナから等距離に離れていた為、ウィンダミア戦役を通して戦争とは無縁の星であった。
ヴァールもほぼ発生しておらず、結果的にケイオス・レハーム支部のバルキリー小隊の練度もそれほど高くなかったことも災いした。
ロストテクノロジーが戦局に大きな影響が与えた戦乱と動乱が続いたことで、プロトカルチャーの遺跡の謎のシステムに対する恐れが極大化していたことも原因だろう。
ミラージュは通信で必死に叫んだ。
「待ちなさい! まずは様子を見ましょう! 無闇に攻撃したら――」
しかし、仲間たちのバルキリーは、遺跡内部に取り残された調査隊を救出しようと、強引に遺跡への突入を図ろうとする。
その瞬間、遺跡は完全に敵と認定し、猛烈な反撃を加える。
光線と爆発が交錯し、バルキリー小隊と調査隊のほとんどが、瞬く間に飲み込まれ、全滅した。
ただ一人、遺跡への攻撃を最小限に控えていたミラージュだけが、辛うじて生き延びた。
彼女は遺跡から強制的にパージされた、意識不明のオリッシュを必死に回収し、レハーム支部へと急行した。
搬送後、オリッシュはようやく意識を取り戻したが、遺跡にリンクしたあの瞬間の記憶は、まるで霧に包まれたように、完全に失われていた。
その記憶が、ミラージュとの再びの接触で呼び戻されそうになる。
部屋の空気が、重く張り詰める。
オリッシュの瞳がぼんやりと遠くを見つめ、声が震えながら漏れ出す。
「あのとき……意識がなんかブワッって広がってて……そしたらなんか敵意がいっぱい襲ってきて……でもミラージュ中尉だけは、それを止めようとしてて……あやうくまとめて撃ち落としそうになって……ヤベっ! てなって……その娘を落とすのはダメだって、必死に頼み込んだんだよな……って、誰に頼んだんだっけ? え? あれ? 俺、何言ってんだ……?」
言葉が途切れ、オリッシュの顔が困惑に歪む。
ミラージュの表情が凍りつく。
「嘘……」
まさかオリッシュが、自分の命の恩人だったとは思いもよらず、呆然とするミラージュ。
あの時、遺跡の暴走で仲間たちが次々と撃墜されていく中、オリッシュの意識が遺跡システムにリンクし、彼女だけを「敵ではない」と認識して守ったのだ。
反対に、遺跡エムシー・ハラメに入った後の記憶を失っていたオリッシュは、何か思い出しそうになって頭が痛み出す。
「う、うう……頭が……」
額を押さえ、顔を歪めるオリッシュ。
カナメとミラージュの左手首に嵌められたシルバーの細いリングが、慌ただしく警告音を発する。
赤いランプが点滅し、オリッシュのバイタル値に起こっている異常を知らせる。
オリッシュのストレス値が大幅に上がり、遺跡エムシー・ハラメが反応しだした警告だ。
カナメの顔色が変わる。
「いけないっ!」
カナメは即座にオリッシュに抱きつき、豊満な胸に彼の頭を引き寄せる。
柔らかなEカップの乳房が、オリッシュの頰を優しく包み込む。
甘い体臭と温もりが、オリッシュを安心させる。
「無理に思い出さなくていいわ……何も考えないで……私がいるから、大丈夫よ……」
カナメの嫋やかな声が耳元で囁き、優しく頭を撫でる。
オリッシュは震える声で縋りつく。
「カナメ……こわいよ、カナメぇ……」
子供のようにカナメの胸に頭を埋め、豊かな乳房の柔らかさと温もりにすがる。
谷間に顔を押しつけ、甘い匂いを深く吸い込み、体が少しずつ落ち着いていく。
(カナメの胸……柔らかくて、温かくて……この感触だけで、頭の痛みが……はぁはぁ、安心するよぉ……)
カナメはオリッシュの背中を優しくさすりながら、テキパキと指示を出した。
「クレア、ごめんなさい……面談は日を改めて。ミラージュは下がって」
「仕方ないわね。ここはカナメに任せるわ」
察しのよいクレアは、ご主人様であるオリッシュが楽になることを第一に考え、カナメの指示に従って部屋を退出しようとする。
だが、ドアに向かう途中でミラージュが動かないことに気づき、振り返る。
ミラージュはせつなげに、心配げにオリッシュを見つめ続けていた。
あの遺跡の悪夢が、鮮やかに蘇る。
仲間たちが次々と撃墜されていく中、自分だけが生き残った理由。
あの時、遺跡のシステムが自分を「敵ではない」と認識し、守ってくれた。
それが、この男——オリッシュの意識だったなんて。
恨みとトラウマで塗り固めていた心に、感謝と混乱が一気に押し寄せる。
(この人が私の命を救ってくれたというの? あの時、必死に頼み込んだ、ですって? 私を、守ろうとしてくれた? でも、仲間たちは一瞬で死んでいった。どうしてでしょう。この人を、許せないのに、心配で、胸が痛い)
ミラージュの瞳がわずかに潤み、複雑な感情が胸を締めつける。
オリッシュの苦しむ姿を見て、恨みの壁に亀裂が入る。
クレアはミラージュの異変に気づき、そっと袖を引いた。
「ミラージュ……行きましょう。カナメがうまく対応してくれるわ」
ミラージュはハッとして頷き、クレアに促されるまま部屋を出る。
その足取りは重い。
一方、クレアの足取りはミラージュとは対照的に軽やかだった。
オリッシュとの初対面を終え、カナメがオリッシュを完全に飼い慣らしている様子を目の当たりにし、心の底から安心感が湧き上がる。
(さすがカナメね。あんなにパニックになってるご主人様を、瞬時に落ち着かせて。あれだけ完璧にコントロールできるなんて舌を巻くわ。私もいつか、ご主人様をあんな風に癒せたら……)
実際に会えたオリッシュの第一印象も、事前のペーパーベースの情報——キモデブで童貞っぽい慰安対象——とは違い、かなり好印象である。
カナメが側にいることで、オリッシュがオドオドしなかったのが大きい。
極限状態の中でもミラージュを守ったという事実から、美人や可愛い女の子には甘く、決して命に危害を加えない性格だとわかる。
それは、ワルキューレ時代に戦場での死の恐怖がトラウマになっていたクレアにとって、新たな職場となるオーオク社に望む、何より大事なポイントだった。
(命を脅かさないご主人様なら安心してすべてを捧げられるわ。容姿も今はまだキモデブだけど、レポート通りダイエットが進んで痩せたらもっと素敵になるはず。ふふ、意外と私の好みの範囲に収まるかも……悪くないわね)
ドアが閉まる音が静かに響き、部屋に再びオリッシュとカナメの二人きりの静けさが戻った。
そのまま二人は自然にソファの上でもつれ合い、ストレス値を下げるための行為へとなだれ込んでいく。
(続く)